フェバル~全知無能のイモータル~   作:華村天稀

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※2018.06.17.修正
本文中、イゴールにおける魔力許容性に関する記述が間違っていたので修正。

※2018.06.02.修正
一部発言のフォントを他の同条件の発言と統一。

前回のあらすじ:
せめて生き抜く力を得ないと、と決意したアスカはジャーキーを食べて身体を洗い、(インディアンっぽい)ラハール族の服を着て族長に会う。
アスカ「インディアン服けっこう可愛いかも(自分に似合うとは言っていない)」



0x03.族長さんと "フェバル様"

 話の流れからして族長と思わしき豪快なお爺ちゃんに案内され、他よりも少々立派な家へと入り、わらのクッションに座って向かい合う。(かがり)()のような形だが火ではないらしい照明3つに照らされ、室内はそこそこ明るい。

 

「改めて。ワシはこのラハール族の族長ちゅうことになっとる、ヤスールじゃ」

「はじめまして。アスカといいます。お風呂ありがとうございます、おかげでさっぱりしました」

「気に入ったかいのう?」

「それはこれからですね。後で温泉に入らせてもらうつもりです」

「そうけえ。あれは村の自慢じゃけえ、たんと浴びな」

「そうさせていただきます」

 

 日本は世界有数の温泉大国で、そこで育った日本人は基本的に温泉好きだ。私もそのご多分に漏れず温泉は好きなので、それはもう是非に堪能したい。何泉だろ?

 でもその話はさておいて。

 

「ところでヤスールさん。フェバルをご存知で?」

「ああ。よく知っておる。あんたもフェバル様なんじゃろ?」

「どうしてそう思われますか?」

「カリムから聞いた話の、死んでも他の星で生き返る、ちゅうところがな。言い伝えのフェバル様にそっくりじゃて」

「ということは、この世界は何かフェバルと関わりが?」

「フェバル様がおつくりになった、と言われておるよ」

 

 あら何とまあ、スケールの大きい話で。

 しかしそういうことなら納得だ。許容性の低い割に人工太陽&人工月光なんて大規模な魔法が動いてる……ちょい待ち。当たり前のようにスルーするところだったけど、なんか知らない単語が紛れてる。【(ばん)()】のせいだな。許容性って何さ。

 えーとなになに。世界には実は気術(フォース)魔法(マジック)のような、精神の作用によって物理法則を超越する現象が存在し、それらの力がどれだけ許されるのかが星域によって異なる。その許容度合をして【許容性】と呼ばれる、らしい。

 フェバルたちの間でよく語られるのが、気力許容性と魔力許容性。気力許容性が高ければ生命力を身体に纏って生身とは思えないパワーが出せたり、生命力を活性化させて負傷者を治療したりできるらしい。魔力は言うに及ばず。地球ではこの許容性が極端に低く、気力はプラシーボ効果レベルでしか機能せず、魔法は全く使えない。エーナが星海君を暗殺しようとして《バルシエル》と唱えたのに何も起きなかったのはそのため。もし地球に魔力許容性がちょっとでもあったなら、星脈から力を引き出した彼女の魔法が炸裂し、破壊的な嵐が彼を周囲もろともネギトロより細かく切り裂いていた、らしい。もれなく私も巻き添えじゃないですかやだー。発動しなくてよかった。でも結局心臓刺されて捻られたけど。おのれ。

 さてこの星の許容性は、気力許容性が低めで、魔力許容性はそれより少しだけ高い。どちらも地球よりは上か。つまり私でも頑張ったらオーラをまとったり魔法が使えたりするかも? 何それ楽しそう!

 

 っと、いけない話が大幅に逸れちゃった。軌道修正っと。

 

「一応言っておきますが、私は確かにフェバルですけど、そんな大層なことはできませんよ?」

「うん? フェバル様なんじゃろ?」

「フェバルですけど、成り立てですから」

「成り立て? あんた大人に見えるが、実は生後一ヶ月くらいだったりするのか?」

「この爺さんはフェバルを何だと思っているのか……」

 

 はっ、いけないちょっとだけ素が出た。

 

「あー、もしかしてフェバルのこと『なまらすげー種族』くらいしか知らないんですね?」

「違うのか!?」

「そんなに間違っていませんけど、少し説明したほうがよさそうですねぇ」

 

 というわけで、アスカ・スミノエぷれぜんつ、フェバル講座はいりまーす。

 生徒はラハール族族長ヤスールさんです。

 といってもそんなに大したこと言わないんだけど、私が極少ない接触事例と【万智】から得た知識を披露するくらいで。

 

「なるほどのう」

「というわけで、私はフェバルになってまだ一月くらいですかね。ちょうど魔女コス女に心臓をしゅっぐりっとやられるあたりで」

「カリムから聞いてはおるが、なんとも痛そうじゃのう」

「実践はおすすめしませんよ、死にますから」

「そりゃそうじゃ」

 

 フェバルでないと生き返るの無理だろうしね。あるいはゾンビなら平気で動けるけど。

 まぁどっちも、好き好んでなるものじゃないよ。ロクでもないったらありゃしない。私は両方経験したけど。なんてこった……

 

「さらに言うと、普通のフェバルはどう控えめに見ても超人!てくらい強いんですが、私はまだたいした力がないんです。だからこの一月、何度も死ぬ目に遭いました」

「あー、わざとじゃなかったんかい」

「わざとであんな死にまくるとか、どんなマゾですか」

 

 年月を重ねて磨り減ったフェバルの中にはそういう異常者もいるかもしれないけど。でもそれって『もはや並大抵の刺激では満足できない』ってことで、たぶん完全に磨り減って星脈に()()()される一歩手前くらいじゃなかろうか。

 私はフェバルになったばかりなのでそんなことはないし、究極マゾ的な異常末期を迎えたくもない。

 

「そんなわけですんで、この世界をおつくりになったという "フェバル様" と同じ役割や能力を求められても無理ですので」

「ふむ」

「ですので特別扱いも無用です。ただの客人として扱ってください」

「わかった、では族長(ワシ)専用の風呂にこの後入る話もなしじゃ」

「やっぱりフェバル待遇でお願いします」

「嬢ちゃんは言うことがすぐ変わるのう」

 

 いやいや、日本人にとって温泉に入れるかどうかは死活問題なんだから、テノヒラクルーも当然じゃないですか。

 まぁお互い冗談であることはちゃんとわかってる。その証拠に爺様はがっはっはと豪快に笑ってらっしゃる。

 

「ところでじゃ、嬢ちゃんは力が無いとのことじゃが、能力のほうはあるんかの?」

「そちらはありますよ。私の能力は【万智】と言って、簡単に言うと知りたいことが知れる能力です。例えば、誰も知らないアルミラージの極上の味わい方を知ったりできます」

 

 アルミラージはこの村で主食の一角ウサギだが、幼体の角を折って生け捕りにし、丁寧に皮を剥いでから殺して捌いて、新鮮な馬刺しならぬ兎刺しにして食べると極上の味わいになるらしい。そしてその食べ方をこの村の誰も知らないらしい。

 案の定、爺様はその食べ方に興味を示した。ていうか興味津々だ。

 

「ふむ、便利なのかそうでないのかよくわからんが、興味深いの」

「ですから、村にいる間は知恵袋として働こうかと思っています」

「あいわかった」

 

 こうして私は、ラハール族の客人兼相談役になった。

 

「では早速、アルミラージの極上の食べ方を教えてくれんか」

「こんな時間から狩りは無理ですよ明日にしましょうよ……」

 

 幼体を探して生け捕りにするとか、新鮮なうちに生で食べるとか、色々と気をつけねばならぬ点があるので準備に時間がかかる、と説明してしばらくの我慢を納得してもらうのに小一時間ほどかかった。

 

 

 会談後は約束どおり族長専用の風呂で、炭酸泉という日本では珍しい種類の温泉をじっくり堪能させてもらった。なお族長専用風呂は今日だけ特別にということで、明日からは大浴場を使えと言われた。残念。でも大浴場にも温泉があるとのことで、独りで入るという贅沢は難しいが今後も温泉を楽しめるのは嬉しい。

 風呂はそれ以外に特に語ることも無いので割愛。たっぷり楽しんだ後、私にあてがわれた例の家に戻り眠りについた。

 当たり前だけど、この一月で一番安らかに眠りにつけたと思う。

 

 

 

 

 そして翌日……きました毎月恒例のアレ。

 そういえば前回は孤島にいるときに来たんだっけ、確かにあれから約一月だ。

 でもまさか心機一転したこのタイミングでくることないじゃん。しかも今回も予兆なし。やだもー!

 

「おい、大丈夫か?」

だい……うぶ

 

 困った、カリムさんに「大丈夫」ってちゃんと言い返すことができない。全身(手足以外)あちこち痛いし、吐き気もするし、息もうまくできないし、そして左目から涙も止まらない。だから何でいつも片目だけなの?

 痛みはもう慣れきってるけど、どう頑張っても浅くしか呼吸ができなくて、そのせいか身体が思い通り動かせない。まさかしゃべるのも満足にできないなんて。これ普段より明らかに重症だわ。ホントよりにもよって何でこのタイミングでこんな……ホントにもう!

 

「しっかりしろ! 今薬師(くすし)を呼ぶ!」

まっ……

 

 これ生理痛なんでどんなに苦しそうでも命に別条ないです、寝てれば直ります、呼吸が浅くてもじっとしてれば酸欠にならないし。とだけ説明することすら満足にできない。困った。

 とりあえずカリムさんが人を呼びに走り去らないようになんとか捕まえる、が虚弱貧弱万智無能な日本人の握力じゃラハール族の戦士は止まらない。

 待ってー、カリムさんお願い待ってー。

 

 待ってくれませんでした。

 

「アスカ、いま薬師を連れてきたぞ、って血の臭い!」

「重傷ですか!? 見せてください! カリムは回れ右!」

ち、ちが……

「フェバル様が重傷というのは本当か!」

「族長! 診察中です! いきなり入らない!」

 

 どったんばったん大騒ぎ。あう、大丈夫のたった一言がちゃんと言えないせいでとんだ大事に……

 うん、もう何でもいいや。とりあえず今日から三日間、有給ください、族長様。




◇許容性
本文で説明したとおり。さらなる詳細は原作者様の用意された設定をご覧ください。
https://ncode.syosetu.com/n5969bs/4/

◇プラシーボ効果
本来なら病状に対して効果の無い療法や偽薬投与を、その病状に効果があると説明して実施し、患者がその効果を信じると本当に療法や偽薬の効果が現れる現象のこと。
簡単に言えば、思い込みが結果をもたらす、ということ。
作中の地球における気力の効果はその程度の域を超えない。

◇アスカ・スミノエぷれぜんつ、フェバル講座
説明した内容はこんなところ。
・フェバルとは種族名みたいなもの。数は多くない、宇宙全体で百人~千人くらい?
(人数については【万智】の知識がぼやけてたので、あんまり明白じゃない)
・覚醒前は各世界の現地人類として過ごし、覚醒すると超人化して宇宙に放り出される。
・種族としてはフェバルであると同時に、一応は各出身地の現地人類でもある。
・全てのフェバルは不老である。
・フェバルの言葉は何故かどの世界でも相互に通じる(自動翻訳)
・フェバルは各世界での滞在時間に制限があり、ゼロになると星を離れて次の星へ飛ばされる。
・致命傷を受けて死亡した場合も制限時間がゼロと同じ扱いで次の星へ
・フェバルは世界移動の際、活動に支障のある病傷(死亡を含む)が全て完治する。
・よってフェバルは事実上不死、ただし客観視点では普通に死ぬ。
(一度死んだ世界には通常二度と戻れないため)
・フェバルは各世界の住人と比べて非常に強い(例外あり)。
・フェバルは各々が何らかの固有の能力を持つ(例外あるかも、未確認)。
星脈とフェバルの最後については言及しなかった。

◇炭酸泉
二酸化炭素が溶け込んだお湯。日本ではこれが沸くところは極稀で、2つくらいしかないらしい。
ラハール族の集落では炭酸泉の温泉が豊富に沸いている。
これが炭酸泉だと判明したのは【万智】によるため、集落の人は『なんか気持ちいい』くらいにしか思っていない。

◇毎月恒例のアレ
生理痛(月経痛)のこと。アスカのそれは最悪だと入院が要るレベルで、ピークの前後三日間は行動不能になる。
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