…………もっと宇宙戦闘が書きたかった。わかりづらいかもしれません。(月、壊れてます)
誰が壊したんだろうね?
感想ありがとうございます。
ルナ・サーカス1
視野の端に新たな文字列が標示されていた。レーザー通信で送られてきたデータはこれからの
『目標情報が入った。全員に転送する。……これより目標を
通信とセンサ群は私の指示あるまでレーザー通信とパッシブに限定しろ』
『
端的な全員の返答をうけてからボーデヴィッヒ大佐はディスプレイに表示されている相手の軌道を確認していた。想定される軌道では最接近時、数キロ圏に入るはずだが、現時点の距離では数多のデブリによって観測がむつかしい。だが、軌道上に存在するトライデント
その中で最初に目標を捕捉したのは先頭を航行するデュノアだった。
『こちらオニョンⅡ。目標を光学で捕捉した。データを送る』
ボーデヴィッヒ大佐は観測された地点に向けてパッシブのセンサ群をむけた。すると赤外線センサに反応があった。底辺がぼやけているが、二等辺三角形の形をしている。おそらく目標が搭載している追加加速用のエンジンが発した推進剤が、ガス塊として時間とともに拡散しているのだ。しかも高加速用でなければありえないほどガス塊の拡散速度が速かった。やがて、固有の赤外線の放射パターンも照合したデータと一致した。
──間違いないだろう。
ボーデヴィッヒ大佐は確信した。
『赤外線センサでも確認した。……だが、〝風〟が強い。
目標は秒速十二m、接触は一瞬だ。各機相互データリンク開始。攻撃開始三秒前にレーダーを起動、精密観測を行う。目標に一撃離脱を仕掛けた後、高機動エンジンに点火。再加速して敵を振り切る』
僚機から音声での返答はないが、ボーデヴィッヒ大佐は楽観視していた。僚機の操縦士とは長い付き合いだった。全員が相互に思考パターンを把握している。意思の疎通に齟齬を生じさせないため、事前に思考の癖を読み解いた上で記憶に刷り込むか、記憶領域に保存していた。記憶領域を有しているのはボーデヴィッヒ大佐とあと一人だけだったが、あとの二人にも心配していなかった。
相手のセンサにかからないように、ひたすら慣性航法を続けた。そして時間が過ぎた。
索敵は一瞬で終わった。目標を斜め後ろから追い掛けている。あまり理想的ではなかったが、幸いにも目標自身が放射しているガス塊が邪魔している可能性が高い。加えて高比重なデブリも身を隠す陰になった。こちらのほうが速度が優速だったが、どちらにせよ再加速するまで高機動エンジンにダメージがなければ、加速して容易に振り切れる。
続けて目標の詳細な観測結果が主モニターに転送され、それを確認してからボーデヴィッヒ大佐は続けていった。
「
四機のISが攻撃を開始する。無反動銃二門、大口径砲一門、大口径レーザー砲一門がFSCに支援されて、一斉に撃ち始めた。だが、実弾兵器の初弾はすべて外れた。
「高比重衛星多数、この距離では当たらないよ!」
「泣き言を言う前に手を動かせ。接近しきるまでに当てろ!」
デュノアの泣き言はボーデヴィッヒ大佐が一蹴する。
だが、レーザー砲は初撃から命中していた。
「目標Dに命中しましたわ!」
「風があると光学兵器の方がいいなぁ!」
デュノアがオルコットを羨む。デュノアは射撃モードを単射からバーストに切り替えてから攻撃を再開した。
「目標A、Cに命中、目標は健在!」
「こちらソードⅢ。目標Bに命中。軌道がずれだしている」
完全な奇襲に相手の反応が遅れていた。目標Bは光学センサでもわかるほど軌道がずれている。先ほどと比べて赤外線パターンが変化していた。どうやら推進機構にダメージを受けたらしい。相手が立ち直る隙を与える前に、連続して打撃を与える必要があった。
「目標が応射してくる!」
「かまわない 相手も条件は同じだ」
聆藤少佐のいつもと同じ、冷静な声にボーデヴィッヒ大佐は安心した。揺るがない人間の存在はチームの柱になる。
相手の応射も高比重衛星の微細重力によって、命中率が低下していた。対して微細重力ではほとんど影響を受けない光学兵器の存在は大きい。
最接近時が近づく。ここまで近づけば光学観測でも相手の機体を識別できた。Aが赤、Bが白、Cが紫とオレンジ、そして最後尾のDが薄い水色の機体だった。
「爆雷投下する。巻き込まれるなよ!」
ボーデヴィッヒ大佐が注意喚起するのと同時に、シュヴァルツェア・レーゲンの機体が大きく揺れて、軌道が変化する。それをスラスタを噴射して制御する。この時間、ボーデヴィッヒ大佐は完全に無防備になるが、僚機はそれぞれが死角をカバーし、相手に反撃の隙を与えなかった。やがて爆雷が加速を始めた。
爆雷は一定距離を進んだ後に、炸裂し破片をばらまき、破片の質量と運動エネルギーで目標を破壊する兵器だった。その破片の拡散方向に指向性を持たせたものがボーデヴィッヒ大佐が投下した機動爆雷だった。爆雷よりも加害半径が狭い代わりに、指向性を持たされた方向に飛散する破片の密度は通常の爆雷より高く、高い命中率が期待できた。加えて加速するため、初速より早く、その分運動エネルギーも増加する。命中箇所によっては大型の航宙艦でも撃破が期待できる。
しかも爆雷自体が有り合わせのもので、技術的にも難易度が高い訳ではなく、それゆえに信頼性も抜群だった。
ボーデヴィッヒ大佐達は機動爆雷を投下することで進路上の掃除を目論んでいた。しかも多弾頭タイプだから、機動爆雷特有の加害半径の狭さを補うことができる。すり抜けるときに邪魔になる敵の一掃を狙っていた。
やがて、爆雷は最適な地点で炸裂した。
破片が目標の進路と交差した。この距離では破片の威力は強烈だ。一撃でも命中すればエネルギーを一気に持っていかれるはずだ。これを防ぐためには、シールドを全開にして、密集隊形で切り抜けるしかない。
その瞬間を狙って、ボーデヴィッヒ大佐は射撃を集中させた。バーストがフルオートに代わり、爆雷の破片と合わせて雨あられとなって降り注ぐ。
もう、有視界距離にまで接近していた。
「久しぶりだねっ、鈴!」
銃撃にのせたデュノアの声には怒りが隠れていた。
『ずいぶんな挨拶じゃない!』
「そう? また間違えようとしているのに、また同じことを繰り返すの!?」
『何度でも繰り返すわ。一夏のためなら』
それを聞いて、デュノアが爆発した。
「あれだけの事をしたのに! みんな帰って来なかったのに! そうやって、甘やかして。ほんっと、懲りないねっ!」
『アンタにはわからないわよ! アタシがどんな思いで待ってたかなんて』
双方の火線が交差し、嵐となって宙域を覆う。ガス塊が各所に生じてセンサの感度が著しく低下していた。運動エネルギー兵器をできるだけ防御するため、ジャミングも兼ねて意図的に分厚いガス塊を発生させていた。光学センサがもっとも頼りになるセンサだった。
ボーデヴィッヒ大佐はディスプレイの点滅が視界に入った。トライデントベースから新たな情報が来ている。戦闘中に送られても見る余裕はないが、確認するべきだという直感が囁いた。ファイルを開いて内容を確認してから、ボーデヴィッヒ大佐は決断した。
「わからないし、わかりたくもない! 私を一夏は助けてくれなかった! 好き勝手言って。助けてって、言ったのに! 何も助けてくれなかった!」
デュノアの絶叫に敵の動きが僅かに重たくなった。
「一夏は私を見捨てた。……いや、私になんて最初から興味なかっただけだったのにね」
その言葉がざっくりと突き刺さり、視界が真っ白になる。真っ直ぐに、そして何より明らかな殺意を向けてくるかつての友人たちに何も言えない自分に凰は気がついた。
そして最接近の瞬間が過ぎた。お互いを視認できる距離で擦れ違った。それだけで、もう二度と笑い会えないことが互いにはわかってしまった。
「そんなに一夏が大事? そんなに一夏に構ってもらえて嬉しい? ふざけないでよ。私をバカしないで!」
ついに何も返せなくなった凰に一瞥してデュノアは更にぶつける。溜め込んでいた怒りも、不快さも、すべてをぶつけていた。まだ続けようとしていたデュノアを遮ったのは聆藤少佐だった。
『射程を出るまで攻撃を継続。大佐、第二次攻撃は?』
『……無しだ。トライデントベースが新たな熱源反応を送ってきた。第二次攻撃の為に軌道を変更すれば追い付かれる可能性が高い。今、転送する』
ボーデヴィッヒ大佐と聆藤少佐の会話を聞きながら、デュノアはディスプレイを開いた。転送された情報を確認しながら、デュノアは視界がぼやけていたが、返答が詰まる愚はおかさなかった。たぶんチームの誰もがデュノアの内心を察していた。だから、それには触れずに別のことを聞いていた。
『ずいぶん盛んにレーダー波を飛ばしていますのね。位置を特定されてもかまわないということかしら。あるいは威嚇でしょうか?』
敵は低軌道上から加速して上昇しているようで、一旦上昇しきってから大気ブレーキで減速することで、最終的な進路を決めようとしていた。このまま当初の予定通りに第二次攻撃を仕掛けた場合、こちらの進路と交差するのは第二次攻撃開始直前だった。恐らくこちらの機体の赤外線パターンなどは把握されているため、推進剤の運用効率や消耗傾向から経済軌道を見抜かれた可能性が高い。
だからといって、欺瞞軌道をとってからの第二次攻撃では減速のための推進剤が不足する恐れがある。減速できなければ外宇宙に向かって進むしかなく、なにより救助の宛は無かった。
たとえ減速できたとしても新手の敵は万全な状況で、しかも機数で優位に立つ。このまま戦闘に突入すれば不覚を取る恐れがあった。どちらにせよ、このまま進むのは危険すぎた。
『数は六機。ずいぶん多いが、多分威嚇だろう』
転送されたデータには複数の赤外線パターンも含まれていた。ドップラーシフトからある程度の敵速も判明している。だが、聆藤少佐はそのデータに見覚えがあった。
『……まて、このパターンはまさか?』
『あぁ。恐らく元部下だ』
重くなった空気と返答に詰まった聆藤少佐を感じてか、ボーデヴィッヒ大佐は気にするなと言ってから、仕切り直すように続けた。
『第二次攻撃の上、トライデントベースに帰投予定だったが、予定が狂った。直接地上降りることになる。降下指定地点はまだだが、しばらくはこのまま慣性航行で行方をくらます。新たな目標は
全員が了解してから、高機動エンジンに点火した。加速による重力が生じるのを感じながら、四人は欺瞞軌道に乗った。
デュノアは回収されるまで何も話しかけなかったが、全員その事には帰投してからも触れることはなかった。
できるだけ再開したいと思ってます。
劣等生もよろしくお願いします。
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