クリシスから口にしていたMHCP。
それはストレスや悩みを持つ人間の心のケアを手助けするAI、メンタルヘルスカウンセリングプログラムの略称だった。
真理奈の話によれば、新光太郎が世界主要国の首都からの要望で構築した10体の内8体のMHCPを貢献し、残りの2体は行方知らずとなった。
ただ、ヴィヴィオ達の話によると、クリシスの夢でMHCP・Ⅹ・KIKIについて話した事を真理奈に話すものの、関連性は不明との事だった。
次の日、フェイト・T・ハラオウンと八神はやてが飛騨山脈で昨夜に河童山の瓢箪池の周囲に火事が起きたことを知る。
そしてその火事を起こした張本人がモロボシ・シンが変身するウルトラマンゼロだった。
それを知ったフェイトとはやてはゼロの対策を整えるべく、なのはを探すことにした。
そのなのはとユーノは深夜で起こった河童山の火事を調べる為、スーパーGUTSの隊員に見つからないように、瓢箪池付近に降り立つ。
「ここで起きたんだよね?」
「うん。スーパーGUTSが巡回してるから動けないけど、この有様・・・」
なのはとユーノは木の陰に隠れて、周辺を調べる。
火事の影響で倒れた木、焼け焦がれた草原、焦げ落ちた葉が浮かぶ池、一見それだけにしか見えなかった。
〈マスター。この一帯の大気成分を分析しました。人体に害はありませんが、僅かながら魔力反応が確認されました。〉
「本当に?もしかして、はやてちゃんかな?前に空港で火災が起きた時、はやてちゃんが消火してくれたから。」
「その可能性は低いね。当時、はやてが消火に使った魔法は広域凍結魔法。この山の火災を消したのは霧。今回の一件ははやてが消火したわけじゃないようだね。」
なのははレイジングハートの報告を聞いて、深夜の山火事を消火したのははやてじゃないかと思い込んでいたが、ユーノは違うと言い出す。
「いずれにしても、ニュースで発表したように、スーパーGUTSが調査している以上、これ以上は調べられないね。」
「うん。夜中に気付いて、ここに来るべきだったかな。」
なのはとユーノは現状を見て、事件の調査は出来ない事を悟った。
「管理局の人なら調査しやすいけど、違う人じゃあ・・・」
確かに現場に調査している人達は時空管理局の局員なら調査は捗るが、スーパーGUTSの隊員では無理な話だろう。
なのは達が住んでいる次元とは違うし、今のなのは達は空間の歪みによって幼児化されたので、相手になれない。
「仕方ないね、真理奈はスーパーGUTSの基地に行ってるから、あの子から情報を貰えばいいしね。」
「うん、一旦家に戻ろう。」
なのはとユーノは河童山の調査を断念せざるを得なくなり、一先ず真理奈の家に戻ることになった。
その頃、真理奈はダニエルからの情報でツンドラ森林地帯で怪獣を操っているという少女について聞くべく、ぎんがの運転でスーパーGUTSの基地・グランドームへ移動中である。
「しっかし、研究チームとして設立していたGUTSが、スーパーGUTSって言う戦闘部隊として各地の怪獣と対応していたなんてね。イルマ財閥が防衛省とのコネで防衛チームを立ち上げたって聞いたけど。」
「えぇ。各国の防衛隊、自衛隊の少数がそこに異動することになって、怪獣との戦闘を繰り広げられているわ。今のこの世界はもう、プリキュアだけの問題じゃなくなってきているし、ユグドラシルのように怪獣を利用しているものも僅かながらいるから。」
「まぁ、実際そうだしね。ヤマザキがクローン怪獣を作っていた辺り、現実問題だし・・・」
真理奈とぎんがはスーパーGUTSの設立の事、現在起きていた世界の現状の事、ユグドラシルの事を話していた。
「ねぇ、ダニエルから聞いたけど、ヴァベルの騎士って連中が動き出してるって噂なんだけど、スーパーGUTSからはそんな情報を聞いた?」
真理奈はぎんがにヴァベルの騎士について聞いてみた。
「えぇ。世界各地で不審な動きをしている人物をあちこち目撃されていたと聞いてたわ。しかもその人物には首に下げている共通のメダリオンを所持している。真理奈達がトランプ共和国で祝勝会をやっていた頃、北方領土で建てた研究施設が放火された件も彼等の仕業であることも判明したわ。」
「!本当に!?」
真理奈はぎんがの話を聞いて驚く。
「ヒビキ総監からの連絡で知ったけど、その放火は引火物も爆薬も使われていなかったという報告も聞いたわ。」
(となると、ダニエルが言ってた高町と同じように魔法って奴で放火させたってことか・・・)
真理奈はぎんがが言っていた研究施設の放火は魔法による行使だと推測した。
「そういえば、河童山で山火事が起きた時、突如発生した霧で消火されたってニュースで聞いてたわね。それと関係があるのかもしれない。」
「確かに、水噴霧消火設備は水蒸気による窒息作用で燃焼を抑えることができるけど、河童山にはそんな消火器はないし、それ以前に人が行くような場所じゃない。あの霧が発生させたのはヴァベルの騎士って事になるわね。」
真理奈とぎんがは今日のニュースで聞いてた河童山の山火事について話し出す。
「いずれにせよ、スーパーGUTSの基地に行って、大まかな情報を得る方がいいわね・・・っと、話している内に見えてきた。」
真理奈は助手席側の窓から目を向けると、広大な設備が広げられており、その中心にキノコのような外観のタワーが建てられていた。
そのタワーこそ、スーパーGUTSの本部基地・グランドームである。
ガッツウイングやガッツイーグルのようなライドメカの格納庫、巨大シェルター、開発・整備工場などが配備されいる。
アスカ・シンが元居た世界・ネオフロンティアスペースにも存在していた。
「へぇ!これはまたすごいな!?驚いたよ!」
「ウフフ。私も最初は圧巻されたけどね。」
真理奈はグランドームや下の設備を見て圧巻させられた。
(あの基地の中にユグドラシルと取引してた奴が・・・)
真理奈はグランドームを見て、ツンドラ森林地帯に現れたガッツシャドーと怪獣を操るアイテムを所持している少女・イリスを頭に思い浮かべる。
「もしかしたら、なのはさんやユーノさんのように別の世界から来た魔導士がいるかもしれないわね。」
「え?あぁ、そうね。それも含めて聞いてもらわないとね。」
真理奈はぎんがにそう言われ、改めて真剣な表情になる。
その頃、ヴィヴィオ達は、かつてユグドラシルがアジトとして身を潜めていたというバラージ王国に足を踏み入れた。
管理世界デントの鉱山で発見されたウルトラマンノアの石像がこのバラージ王国の地下にも発見された事を知り、メイド服を着た茶髪のロングヘアーの少女と黒髪のショートヘアーの少女の案内でノアの石像の元へ案内された。
前者の少女はアリアで、後者の少女はライラ。
ユグドラシルのリーダー・デニーズ・ポーカーの召使いとして働いていた剣崎真琴の古い友人である。
今はトランプ共和国の大統領ジョナサン・クロンダイクと王女のマリー・アンジュのお世話役をやっている。
バラージ王国の地下は怪獣も徘徊できるほどの空間になっているため、とても広く、ユグドラシル事件解決の後、調査のために彼方此方照明が設置しているが、地形の問題で移動が困難。
しかし、元々バラージ王国の生まれであるアリアとライラのおかげで、無事ノアの石像の所まで辿り着いた。
「うわぁ・・・なんていうか・・・」
「今までのウルトラマンと桁違いだね・・・」
トーマとリリィはノアの石像を見て圧巻する。
「なのはママとユーノ司書長もデントで同じ石像を見たけど、実際見てみるとすごいですね・・・」
「えぇ。シンさんから聞きましたけど、ネクサスは元々、このノアと同じなんですよね・・・」
ヴィヴィオとアインハルトもそれぞれの感想を述べる。
「はい、10年前、このバラージ王国が平和で豊かな国でした。ですが、この国の近郊に魔王獣と呼ばれる7体の魔物が現れ、この国は滅亡されました。魔王獣はあらゆる自然災害を引き起こし、あらゆる文明を滅ぼしたのです。闇を齎す魔王獣は狂信教によって人の心を蝕み、光を齎す魔王獣は太陽の力で眠りについた獣を呼び覚まし、風を齎す魔王獣は暴風を引き起こし、土を齎す魔王獣は地上の全てを沈め、水を齎す魔王獣は一面の水を汚し、火を齎す魔王獣は熱で自然を干ばつに見舞われました。それらの魔王獣は1体の魔王獣によって生み出されたのです。」
アリアはヴィヴィオ達にバラージ王国に纏わる魔王獣の事を語り始める。
「その魔王獣って奴、生き物って言うより災害そのものだな・・・」
「そうです。これらの事を考えると、それぞれの魔王獣を生み出した存在は、あらゆる災害を引き起こすことができるという事です。しかし、その魔王獣の前に光の巨人が舞い降りました。その巨人こそがノアの神様なのです。ノアの神様は魔王獣の猛攻にも関わらず、自身の光の力で全ての魔王獣をジュラン諸島に封印したのです。」
トーマの言葉にライラは肯定し、更に続けるようにノアについて語る。
「想像を絶しますね・・・」
「なんだか古代ベルカ戦争の方が可愛く思えちゃうかも・・・」
アインハルトとヴィヴィオは今の話を聞いて言葉を濁したように言う。
「?何の話か分かりませんが、ノアの神様のおかげで、今のバラージ王国は復興し始めていましたし、元の豊かな国に戻りかけて来てます。」
「ユグドラシルが壊滅されたことで平和になりましたし、空間の歪みで怪獣が現れる点を除けば魔王獣の脅威はないでしょうから。」
アリアとライラは苦笑い気味にそう言い出す。
その時、台座の窪みとその付近に光が放出する。
「わわぁっ!?」
「な、なんだ!?」
ヴィヴィオ達はあまりの眩しさに両腕で顔を覆う。
光が治まったと思い、両腕を下ろすと、台座に短剣のようなアイテムが置かれ、台座の後ろに石造りの翼とも言える石碑が置かれていた。
まず、短剣のようなアイテムの名前はエボルトラスター。
ウルトラマンネクサスに変身する時に必要な変身アイテムである。
デュナミストのみが使え、それで変身してスペースビーストと戦っていた。
そして石碑の方はストーンフリューゲルである。
ネクサスに変身するデュナミストが召喚する石棺である。
デュナミストの傷やダメージを回復させることができる。
「えぇっ!?」
「これは一体!?」
ヴィヴィオとアインハルトはストーンフリューゲルを見て驚きを隠せなかった。
「エボルトラスター!?」
「邪神が消えた後、行方知らずになった物が何故!?」
アリアとライラもエボルトラスターの出現に驚く。
「あれが10年前に魔王獣を封印した巨人の石像か。」
突然、どこからか声が聞こえ、ヴィヴィオ達は周囲を見渡す。
その時、ヴィヴィオ達の背後に茶色の三角形の魔法陣が二ヵ所展開される。
しかも、その内一つは一回り大きかった。
「なっ!?魔法陣!?」
「でも、私達が使ったものとは違う!」
アリアとライラは出現した魔法陣に驚く。
「ベルカ式の魔法陣!?」
ヴィヴィオは今見た魔法陣にそう言う。
その魔法陣から金色のショートヘアーをし、黒い貴族風な服装を着た男が現れた。
そして、それに続けるかのように巨大な魔法陣からは頭部に赤い水晶が付いた怪獣の石像が現れる。
「しかし、我々としては世界を破滅に追いやるこの厄介者を封印というイカサマではなく、本当に倒して欲しいものだな。ポーカーというトランプゲームで優れた手札を競い合うように。」
貴族風な男は怪獣の石像を見上げながら言う。
「その石像は・・・まさか・・・」
アリアは怪獣の石像を見て、恐怖を感じ取る。
その時、怪獣の石像の頭部にある赤い水晶が発光し始めた後、石像にヒビが入り、崩れ落ちていく。
石像の内側から青みがかった機械のような怪獣が露わになる。
その怪獣の正体は土ノ魔王獣マガグランドキングだ。
ジャグラス・ジャグラーのダークリングの力によって復活した土を司る魔王獣である。
ウルトラマンオーブの攻撃が一切通用せず、スペリオン光線も効かなかった。
「ふ、ふぇえぇ~っ!?」
「な・・・なっ・・・!」
「土ノ・・・魔王獣・・・ッ!」
ヴィヴィオ達はマガグランドキングの前に圧巻する。
「驚くのも無理はないが、このままでは城ごと崩壊される。早く奴を倒さないと、生き埋めになってしまうぞ。」
貴族風な男はヴィヴィオ達にマガグランドキングを倒せと促す。
「自分から怪獣を連れてきて何言ってるんだよ!?」
トーマは貴族風な男にそうツッコむ。
「アインハルトさん、トーマ、リリィ!ここは私が!アリアさんとライラさんもあの人を捕まえてください!」
ヴィヴィオはオーブリングを取り出し、アインハルト達に貴族風な男を捕らえるよう伝える。
「はい!」
「気を付けてください!魔王獣は並の怪獣とは違います!」
アインハルトはヴィヴィオの言う通りにし、アリアはヴィヴィオに忠告する。
「大丈夫です!任せてください!」
ヴィヴィオはアリアの忠告を聞き入れる。
「タロウさん!メビウスさん!熱い奴、頼みます!」
ヴィヴィオはタロウとメビウスのカードをオーブリングに通し、そのオーブリングを頭上に掲げる。
よってヴィヴィオはオーブ・バーンマイトに変身する。
アインハルト達は突如現れた謎の貴族風な男と対峙し、オーブは封印が解かれたマガグランドキングに立ち向かう。
ついに、オーブに出て来る怪獣が登場です。