【完結】ワールド・トラベラー   作:行方不明

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第九十九話~ベルゼブモンレディとの邂逅~

 旅人たちは荒野を飛行しながら、この状況を打破するというデジモンを探している。

 だが、それらしきデジモンは一体たりとして見つかっていない。というか、それらしき以前にその他のデジモンすら一体も見かけていない。

 ウィザーモンたちが手に入れたその情報が本当に正しいのか、疑問に思う旅人たちだ。

 そして、旅人たちが上空で頭を悩ましていたその頃――。

 

「……あれは」

 

 そんな旅人たちを遠くから見つまる人影がひとつ。

 金髪で人型の女性のような姿のその人影はその腰に二丁の銃を吊る下げている。だが、その人影は人型であるにもかかわらず、背丈は人間よりも大きい。そしてなにより、どこか人ならざる気配をその身に纏わしていることが、その人影がデジモンであることを端的に表していた。

 

「……敵か?」

 

 そのデジモンは先ほどからわざと自身の足跡を残しつつ、ずっと身を隠しながら移動していた。何者かがずっと自分の後をつけていたことに気づいたそのデジモンは、戦闘の可能性を考えてこのような場所へと移動したのだ。

 そうして、ようやくしっかりと確認したその者たちは一言で言えば妙だった。強力な力を感じる者もいれば、とるに足らない者もいて、かと思えばよくわからない者もいる。

 ただでさえ後をつけられるという不快な経験をしているのに、さらによくわからないチグハグさを目の当たりにしたそのデジモンは眉間にしわを寄せた。

 

「……」

 

 だが撃ち落とせば関係ない、とそのデジモンはその腰の銃を引き抜く。ゆっくりと構えて狙いを定め、引き金を引いて――。

 刹那に放たれた銃弾が空を裂く。飛んでいたその集団内でそのことに気づき、対応したのはその中でもっとも強力な力を持つと予測された竜騎士だった。

 銃弾がその身に届くよりも早く、他の仲間を吹き飛ばし、その手に持った剣で銃弾を切る。その離れ業を前に、そのデジモンは敵ながら賞賛を送らざるを得なかった。

 だが、賞賛を送ってばかりではない。デジモンは、その後も竜騎士目掛けて刹那のうちに連続で発砲し続けていたのだ。

 だが、竜騎士は自身に迫るその幾つもの銃弾をまるでないものとばかりに、それらすべてを切り落とした。

 この程度で通じるとも思っていなかったデジモンだが、ここまで露骨だと思わず舌打ちしてしまう。

 

「誰だッ!」

 

「お前たちこそ、なぜ私を……このベルスターモンをつけてきた」

 

 そうして、ベルゼブモンレディと呼ばれるベルスターモンと、旅人たちが邂逅する。

 

 

 

 

 

 謎の襲撃があって、スレイヤードラモンに振り落とされた旅人たちは数瞬後、地面に着地した。突然の襲撃に驚いたものの、旅人たちはすぐさま戦闘態勢を整えて襲撃者を見る。

 稀に見るほどの人間に近い容姿のそのデジモンは己のことをベルスターモンと名乗った。

 そして現在進行形でスレイヤードラモンと睨み合っている。どうやら旅人たちは蚊帳の外らしい。

 

「やれやれ……せっかく見つけたというのに……まさか、あちらの方が引っかかるとはな……」

 

「あちらの方?複数いるのか?」

 

「そうだな。両方がベルゼブモンとほぼ(・・)同じデジモンだ。とはいえ、目的のデジモンはベルスターモンではなかったのだが……」

 

「おい、大丈夫なのか?」

 

「しょうがない。情報にあったデジモンがベルスターモンだったからには、もう片方のデジモンを探す時間はないだろう。次善の案を通すしかないだろうな」

 

 次善。ということはつまり、最善ではないということで。明らかに暗雲が立ち込め始めた未来に旅人たちは不安を抱かずにはいられなかった。

 一方でスレイヤードラモンとベルスターモンは睨み合ったまま動かない。どうやら、お互いに動きあぐねているようだった。

 

「答えろ。なぜ――」

 

「ちょっと用があっただけだよ」

 

「用だと?」

 

「ああ。詳しいことはあっちに聞いた方が……」

 

 そう言ったスレイヤードラモンは旅人たちの方を指す。清々しいくらいの丸投げだった。

 一方で急に話を振られた旅人とドルモンは驚いて固まるしかない。そんな中で話を始めたのは、やはりウィザーモンだった。銃を構えて警戒心を顕にするベルスターモンを前にしても、一歩も引かずに向き合っている。

 

「丸投げか。まあ、下手な説明をして誤解されるよりかはマシだが……自分の頭をひねった方がいいのではないか?」

 

「……俺、馬鹿にされてる?」

 

「リュウ、間違いなくされてるぞ」

 

「言っておくが、君“たち”は、だ」

 

「……」

 

 明らかに呆れたような目で見られていることが旅人にはわかった。だが、言い返そうとして、言い返せない自分と下手な言い訳すらもできない自分に気がつき、押し黙る。

 ちなみにその時点でウィザーモンの言ったことを正しいと証明されたことになるのだが、そのことに旅人は気づいていなかった。

 

「三流の漫才はいい。……答えろ」

 

「やれやれ……急かすことだ。僕らはある目的のためにベルゼブモンに会いたくてね」

 

「ベルゼブモンに?奴はもう死んだ。確かに私はこの容姿からベルゼブモンレディと言われるが、奴ではない」

 

 ベルゼブモンの名前を聞いたベルスターモンの顔が僅かに歪んだ。それは思い出したくもないことを思い出したというような感じだった。それだけベルゼブモンが嫌いなのか、はたまたベルゼブモンに思い出したくないほどの強い思い入れがあるのか。

 

「わかっている。だが、ベルゼブモンを埋葬したのは君だろう?」

 

「……墓あさりか?悪趣味だな。あそこにあるのは墓とせいぜい残留思念のようなデータの残りカス程度だ。行く意味もないぞ」

 

「まあ、趣味がいいとは確かに言えないな。だが、こちらもなりふり構っていられないのだよ。最善の手が使えないのなら、次善の手だ。やり方にこだわってこの世界と心中したくはないからね」

 

「心中だと?ふーん?どうやらただのハイエナではないみたいだな」

 

 今まで話半分に聞いていたベルスターモンだったが、ようやく真面目に聞く気になったのだろう。その手に構えた銃を腰のホルスターに収めてその場に座り、楽な体勢になった。

 だが、楽な体勢であるにも関わらず、何かあれば即座に銃を引き抜けるであろう位置に手を置き、警戒を怠らずにいるのはさすがというべきだろう。

 

「もうすぐ……罪が目覚める」

 

「ッ!罪が?なるほど、それでベルゼブモンを……だが、他の七大魔王はどうする?」

 

「他のメンバーの力はもう集めてある。残るはベルゼブモンのみなんだ」

 

「そういうわけか。それならしょうがないか。墓荒らしなど反吐が出るけど……嫌がらせだと思えばいいか」

 

 反吐が出るなど言った割には、ベルスターモンは嫌がらせの部分でだいぶ楽しそうな声を上げた。おそらくベルゼブモンとは相当複雑な関係だったのだろう。それが素の性格でないことを祈る面々だった。

 

「ま、いいわ。連れて行ってあげる。ついて来て」

 

「……飛んだ」

 

「あのマフラー……翼だったのかよ」

 

 風に吹かれて舞っていたマフラーが翼となってベルスターモンは空を飛ぶ。

 一方で思わぬマフラーの使い方に唖然とする旅人たち。だが、ベルスターモンの急かす声を聞いて、ハッとなり慌てて追いかけたのだった。

 ――スレイヤードラモンが。旅人たちはスレイヤードラモンに掴まっているだけなので楽なものである。

 

「どこに行くんだ?」

 

「結構遠いよ?あの山の向こうにある山脈を超えてしばらく行ったところにある海を超えた大陸にある。私と貴方だけなら速いかもしれないけど……」

 

 ベルスターモンはスレイヤードラモンに所狭しと掴まる旅人たちを見て微妙な声を上げた。ベルスターモンもわかっているのだ。旅人たちがいるからこそ、スレイヤードラモンは速度を落とさなければならなくなっているということが。

 

「まあ、しょうがないか。旅人たちは大丈夫か?」

 

「……結構ギリギリ……」

 

「本当に大丈夫かな?」

 

 スレイヤードラモンにしがみついている旅人たちは結構キツそうだった。いくら速度が落とされているとはいえ、音速に迫る速度の中を腕の力だけで掴まっているのだ。圧力に耐えられず体がバラバラになったり、振り落とされるのが普通である。

 そうならないのは、この面々が割かし並外れているからだろうか。

 

「……まぁ、ほっといても大丈夫だろ。もっとスピード上げるか」

 

「え?いいの?」

 

「いいんだよ。俺にしがみついて何もしてないんだし」

 

「おい!リュウおま……ッ!」

 

「舌噛むぞ……遅かったか」

 

 舌に感じる激痛を必死に耐えながら、旅人はスレイヤードラモンに掴まり続ける。スピードが上がったことにより、これ以上力を抜くと振り落とされるのだ。

 現在、旅人が耐えられる限界辺りの速度でスレイヤードラモンは飛行していた。わざわざ限界ギリギリの速度を出すあたり、嫌らしさが感じられる。七大魔王を探す羽目になって、なんだかんだ言ってスレイヤードラモンも、何かしらのストレスを感じていたのかもしれなかった。

 ちなみにこの飛行速度でも目的地までは数日かかる計算になる。それを旅人は知らない。

 

 

 

 

 

 数日後。目的地まで後一日くらいというところで旅人たちは野宿をしていた。本来なら夜通しで行きたいところだが、さすがに夜通しであの速度の中を掴まり続けるのは旅人には不可能だった。そんなこんなで休憩を兼ねて野宿である。

 

「最近は銃を使うデジモンが減ってるのよね。どうしてだと思う?」

 

「そもそも、銃を使う奴らって元々少なくなかったか?」

 

「いや、でもオメガモンとか……」

 

「ドル、オメガモンはもうこの世界にはいないだろ。つーか、オメガモンのアレって銃か?」

 

 ベルスターモンとはこの数日でずいぶんと仲良くなった。それには誰とでも気兼ねなく打ち解けるベルスターモンの性格の影響が多分にあるだろう。

 ベルスターモンは上手い。具体的に何がと言えることではないのだが、強いて言うなら空気や雰囲気を読んだりすることが上手い。他人の踏み込んで欲しくないところ、踏み込んでもいいところ、他人が心地いいと感じる空気、他人が不快に感じる空気。それらを――意図してかどうかはわからないが――感じ取って、ちょうどいいコミュニケーションを取るのだ。

 

「あれはどちらかといえば大砲ね。あーあ……そういえば、貴方たちは銃は使わないの?」

 

「使う必要がない」

 

「俺は剣だしなぁ……」

 

「僕は魔術だな」

 

「オレは状況によりけりだけど……銃は使ったことないなぁ……使えないことはないだろうけど」

 

 あのナムでさえ、ベルスターモンとの会話に参加している。ナムの正体を知る身の旅人たちとしては、微妙な表情にならざるを得なかった。

 

「そうなんだ……。昔はもうちょっといたんだけどね。マグナキッドモンとか……アイツとか。まぁ、時代の流れでみんないなくなっちゃったけどね」

 

「アイツ?誰~?」

 

「……ベルゼブモンよ」

 

 ベルゼブモンの名前を言う時、明らかにベルスターモンの表情が変わる。ついでに空気も。そのことはここ数日で全員が理解していた。だからこそ、ベルゼブモンの話題は極力出さないようにしていたのだ。だというのに、いつの間にか出てくるベルゼブモンの存在に旅人たちは戦慄の感情を隠せなかった。

 

「……おい、ドル。地雷踏んだんじゃね?」

 

「ごめんなさ~い!そんなつもりじゃ……」

 

「ふむ。ベルゼブモンは孤高の魔王と聞いていたが、ベルゼブモンレディの君は逆に人付き合いがうまいのだな」

 

「ウィザーモ~ン!」

 

 もっとも、天然で地雷を踏み抜く馬鹿(ドルモン)もいれば、自身の知的好奇心のために構わず地雷を踏み抜くアホ(ウィザーモン)もいる。だからこそ、残った旅人とスレイヤードラモンは気を抜けないのである。

 ちなみにナムはそこら辺はガン無視である。どちらかというとナムのようなタイプが今はとてもありがたく思える旅人たちだった。

 

「あんなコミュ障のアイツと一緒にしないで」

 

「ふむ?しかし、そう言う割には君の二丁拳銃リゾマデロートはベルゼブモンの愛用するベレンヘーナの妹分にあたるそうではないか?」

 

「お前はもう黙ってろ!」

 

「しかしだな、旅人。気になるものは気にな――」

 

 旅人はウィザーモンの口を無理やり塞いで、これ以上話すのを止めさせる。あまりベルスターモンの機嫌を損ねるのはよろしくないのだ。こんなウィザーモンがこれ以上口を開いてもいいことはありそうにない。

 もっとも、こうして遠慮なく話すのも仲良くなったからだと言えなくもないのだが。

 

「フフ……仲いいのね」

 

「仲がいいというか……」

 

「……遠慮がなくなったというか」

 

「どちらにせよ、いいことよ……きっとね。いなくなるのは突然。いなくなってから、仲良くしたかった、もっと話したかったと言っても遅いんだから」

 

 そう呟いたベルスターモンはどこか寂しそうな表情で。それはベルスターモンの経験からくる言葉だったのか。どちらにせよ、長く生きているだけあって、ベルスターモンの言葉には重みがあった。思わず旅人たちが頷いてしまうくらいに。

 自分の言葉によってその場の空気がしんみりとしたものに変わったのがわかったのだろう。ベルスターモンは立ち上がって歩いて行った。

 

「ごめん。嫌な空気になっちゃったね。また明日……」

 

 ベルスターモンは近くの木の辺りで眠ることにしたようだった。その木にもたれかかって目を閉じている。

 

「……おい、ウィザーモン……」

 

「やれやれ、僕のせいだというのか?事の発端はドルモンだろう?」

 

「えっ……僕?いやいや、そんなこと言ったら旅人だって……」

 

「三人、うるさい」

 

「つーか、ぶっちゃけ三人ともだろ」

 

 その後は特に会話する気もなくなった旅人たちはそのまま眠ることにしたのだった。

 

 

 

 

 

 翌朝。昨日のことが嘘だったかのように何事もなく旅人たちは行動を開始した。

 ベルスターモン曰く、ベルゼブモンの墓はだいぶ危険かつわかりづらい場所にあるらしい。なぜそんな場所にあるのかというと、やはりどんな時代でも墓荒らしのような者はいるからだ。

 そもそもデジモンに墓が作られるというのはだいぶ珍しい。有名どころのメンバーでさえ、墓というものが作られることは少ない。というよりも、この世界では墓という概念があんまり浸透していないのである。

 死体が残らないこの世界では墓というものの主な役割は気休めか、それか名誉ある者の名を残すためである。だが、それでもそこには持ち主の埋葬品やデータの残りカスがあることが多い。あまり墓というものが作られないからこそ、存在する墓は学者系のデジモンや伝説を追い求めるデジモンにとって文字通り宝の山になるのだ。

 ゆえに、ベルスターモンは墓荒らしにあわないように、危険かつわかりづらい場所に墓を作ったのだ。

 

「せっかくの墓なのに、無粋なことする奴もいるんだな」

 

「僕たちもこれからするんだけどね」

 

「しょうがないだろ」

 

 ベルゼブモンの墓がある場所は巨大な城だった。だが、入口から墓のある場所に行くまでかなりの時間がかかっている。道が入り組んでいて迷路のようになっているのは当たり前で、さらにそこに至るまでにさまざまな罠や仕掛けが多く設置されているのだ。

 

「あ、そこは確か……岩が出てくる罠が」

 

「何もないけど」

 

「と思ったらこっち!?旅人~リュウ~!」

 

「っち、しょうがねぇな!」

 

 しかも、ベルスターモンが時々忘れている罠があるものだから、始末に悪い。つまり、ベルスターモンの言うことが信用ならなくなったのだ。

 結果、旅人たちは罠とベルスターモンの言葉という二重の意味の警戒をしなければならなくなったのである。

 

「やれやれ、いつになったらたどり着くことやら」

 

「不定。しょうがない」

 

「お前たちは呑気でいいな!っと、また……岩が……」

 

 ともあれ着々と進んでいることには違いない。というよりも、着々と進んでいなければ、旅人たちは悲しい現実にうちのめされることになっただろう。

 

「キノコいやぁっ!」

 

「……なんでキノコ?」

 

「いやぁ……毒キノコを出したら食べるかなって」

 

「……こんなところで出てきた怪しいキノコなんか食わんだろ」

 

 なんだかんだ言っても楽しい道のりである。もっとも、“楽しい”道のりであって“楽”な道のりではないのだが。

 ちなみに一番肉体的に疲れたのはスレイヤードラモンで、精神的に疲れたのはドルモン。楽だったのはその他の面々である。もっとも、ドルモンは疲れたというより憔悴していたのだが。

 

「着いたよ。ここが……」

 

「やっ……と……着い……た?」

 

「無駄に疲れたな」

 

「旅人たちはほとんど何もしてないだろ」

 

 そうしてたどり着いたのは大広間とでも言うべき場所だ。ドルゴラモンが十体入ってもまだ空きがあるほどの広大な部屋。そこの中心にポツンと石碑らしきものがひとつだけある。

 だが、部屋の一面にさまざまな種類の花が咲き乱れていて、不思議と殺風景な感じは受けなかった。

 

「ま、コミュ障のアイツが寂しくないようにね。さすがにうるさいとキレるだろうし、これくらいはって」

 

「……半ば嫌がらせじゃね?」

 

「どうかな?アイツって結構ひねくれてたから。性格その他諸々とね」

 

 とにもかくにも、あの世でうるさい生活を送っていそうな孤高の魔王様である。

 墓荒らしすることを申し訳なく思いながら、さっさと用件を済ませることにした旅人たちだった。

 

「よし、今から僕が残留データを集め――」

 

「私。ベルゼブモンのデータ。復元する」

 

「旅人は投影のカードでそれを具現化し、白紙のカードに移し替えてくれればいい」

 

 ウィザーモンは簡単に言うようだが、まず間違いなく難しい作業だ。だが、本来の魔王ベルゼブモンに会わなければいけなかったことを考えれば、まだ易しい方法と言えなくもないかもしれない。

 

「つーか、この方法でやれば、いちいち他の世界に行かなくてもよかったんじゃね?」

 

「無理。他の魔王。墓ない」

 

「従って残留データもないというわけだ。今のナムはゼロからいろいろとできるほどの力はないみたいだしな」

 

「できなくもない。でも数ヶ月に一度。今、時間ない」

 

「……投影で作り出した奴は暴れるんだけど」

 

「それは今まで意思ある者を写していたからだろう?別に今回は意思ないものだから、暴れない……いいからやるぞ」

 

 まぁ、戦うよりはずっといいかもしれない。そう考えて、旅人は気を入れなおしてカードを取り出した。正真正銘これで最後なのだ。ここで失敗するというヘマはしたくないのだろう。

 ウィザーモンが何かを呟くと共に、煙のような何かが石碑の上に立ち上った。続いてナムがそれに手を当てて、目を閉じる。すると、その煙がデジモンの姿になった。ベルスターモンとどこか似たその姿のデジモンこそがベルゼブモンなのだろう。だが、このベルゼブモンは半透明で、今にも消えてしまいそうだ。

 

「どこかベルスターモンに似ているな」

 

「言っておくけど、似ているだけだからね」

 

「怪しい~」

 

「早く、しろ」

 

 急かすナムの声はらしくなく苦しそうで辛そうだ。この現象を起こしているのも相当大変なのだろう。

 辛そうなナムとウィザーモンの姿と先ほどまでよりもずっと薄れてきたベルゼブモンの姿を見て、旅人は急ぐのだった。

 

「set『投影』……それで、こう!」

 

 投影のカードによって実体を持ったベルゼブモンに白紙のカードを押し当てる。直後、白紙のカードがベルゼブモンの姿を描く。こうして、無事に七大魔王の力を集めることは終了したのだった。

 そしてその直後、ナムとウィザーモンが倒れ込む。相当な力を使ったらしく、二人の回復を待ってからこの場を離れることに決めた旅人たちだった。

 

「ベルゼブモン……」

 

「ベルスターモン……友達だったの~?」

 

「いや、ムカつく奴だったよ。最後は深紅の聖騎士と相打ちになって死んだ……ムカつく奴ほど早くいなくなるなんてね」

 

 そう呟く、ベルスターモンは複雑そうな表情だった。やはり、良くも悪くもベルゼブモンとはそれなりの思いがあった相手だったのだろう。

 ベルスターモンの表情といい、墓荒らしの真似事といい、今回はいろいろとスッキリとしない旅人たちだった。

 

「……二人もある程度回復したみたいだし、行きましょう」

 

「本当にある程度なのだが……」

 

「ってちょっと待って!」

 

 旅人がナムを、ドルモンがウィザーモンを抱えて、先に行くベルスターモンを慌てて追う。

 ちなみにドルモンは背丈的が足りずにウィザーモンを引きずって歩いていたりする。そのためか、後の抗議によって途中からスレイヤードラモンがウィザーモンを背負うことになったりするのだが、それはほんの余談だ。

 

「ここまで来れば後はいいでしょう?」

 

 出口で語られたベルスターモンの言葉はつまり、ここでお別れということで。

 

「縁があったら会いましょう。また私にできることがあったら協力するけど……とりあえずまた今度。……世界をよろしくね」

 

 マフラーを翼にしてベルスターモンは飛び立った。ここに来るのも結構ストレスを溜めさせていたのかもしれない。少し悪いことをした気になった旅人たちだった。

 




これで七大魔王の力集めは終了。最後は割とあっさりでした。
ベルスターモンを出した理由は、立ち位置、性格共に複雑なあのテイマーズのベルゼブモンのキャラを書ききれる自信がなかったからです。

初めはベルゼブモンを書くような感じでベルスターモンを書いていたら、ちょっと調べたらベルスターモンの公式設定がいつの間にかできていたようで。書き直し、話の内容まで直す羽目になりました。携帯アプリのデジモンゲームってやってないのでわからないんですよね……早くデジモンウェブにそこら辺の載せてくれないだろうか、と常々思います。

さて、次回はいよいよ……?
ではまた次回に。よろしくお願いします。
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