【完結】ワールド・トラベラー   作:行方不明

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第十話~遺跡の真実とは~

 瞼を開けた旅人の目に飛び込んできたのは見たことのあるとんがり帽子だった。

 

「起きたか?やれやれ、僕は何回気絶した君が起きるのを見ればいいのだろうな?」

 

「……どこだ?ここ?」

 

「む?記憶喪失になったのか?だったら少し試したい術があるのだが……」

 

 ワクワクとウズウズが混ざったような顔で言うウィザーモンに旅人は言いようのない悪寒を感じる。

 まず間違いなく、その術はロクなものではない。旅人の直感がそう言っている。

 

「なってねぇよ!あれからどうなったか聞いてるんだよ!」

 

「冗談だ。本気にするな」

 

「絶対半分位は本気だったよ……」

 

 ウィザーモンによるとここはあの遺跡の外でウィッチモンとドルモンと交代で旅人を看病していたらしく、ドルモンたちは近くで寝ていた。

 

「はぁ。それにしても何をしているのだ。いきなり加減ナシであの遺跡の情報を解読すればああなるのは当たり前であろう。何をしているのだ」

 

「いや……ちょっと……ね?好奇心ってやつで……」

 

「好奇心で死にかけていたらキリがないぞ」

 

「……なんだろう。そのセリフはウィザーモンだけには言われたくない気がする。まあ、心配かけて悪かったよ。それと看病ありがとう」

 

 やれやれとばかりに首を振るウィザーモンに対して旅人は自分が悪いのは確かなので素直に謝罪とお礼をする。

 そんな旅人に対してウィザーモンが欲しいのは謝罪とお礼ではないようだが。

 

「で?」

 

「で?って何が?」

 

「見たのだろう。遺跡に眠る大量の情報を?どうだったのだと聞いているのだ」

 

 ようするにそういうことだ。ウィザーモンは旅人が見たであろう、遺跡の莫大な情報を知りたいのである。

 一方で心配されていないことを察した旅人は頬が引き攣るのを抑えることができない。

 

「……オレの心配は無しか?」

 

「君のデタラメはよく知っている。いらぬ心配より、未知の情報だ」

 

 一瞬で感謝の念も何もかもが吹き飛んでいた。

 “コイツはこう……感傷というものがないのだろうか。そんなんだからウィッチモンが苦労するんだ”旅人の中のウィザーモンに対しての文句が湧き上がってくる。

 

「情報って言ったってなぁ?」

 

「どんなことでもいいんだ!あれだけの情報を一度に見たんだ!僕たちが見てない情報もきっとあるはず!さぁ……さぁ!」

 

「なんでそんなにテンション高いんだよ」

 

 テンションの高いウィザーモンに押されるように旅人は夢で見たことを思い出していく。ふと、その過程で旅人は少し違和感を感じた。

 

「あれ?」

 

「どうした?何か思い出したか!」

 

「いや……あの遺跡ってこの世界の歴史を残しているんじゃなかったっけ?」

 

「む?藪から棒に。そうだな。そういう風に伝えたな。正確には違うかもしれないが」

 

 ウィザーモンの言葉に引っ掛かりを感じながらも、旅人は話す。

 夢の中で見た幾つもの世界のことを。見た世界はどれも明らかに法則性が違う世界だった。

 中には見たことがあるような人物や風景など、類似点を感じさせる世界も幾つかあったにはあったのだが。

 

「……こことは異なる世界……。それがあの遺跡から読み取った情報だと?」

 

「あぁ。そうなんだ。あの遺跡がこの世界の歴史についてのものなら、オレが見た別世界については説明ができない。あるいはあの遺跡自体の解釈が違っているのか……どっちかだな」

 

 思考の海に潜り、黙り込んだウィザーモンを放っておいて、旅人は夢の中で見た様々な世界について思いを馳せる。

 どの世界も同じようで違っていた。

 “是非行ってみたい”旅人の中の旅心をくすぐられる世界だった。

 

「いろんな世界があったな。そういえばドルモンを相棒にしていた奴もいたな。まぁ、ドルよりしっかりしていそうな雰囲気ではあったが」

 

「旅人。いくつか質問をしたい」

 

「ん?いいけど……」

 

「君が見た世界に何か共通点はなかったか?」

 

 “共通点と言われてもな……急に言われたって思いつかねえよ”ない頭を必死に使って考え込む旅人をウィザーモンは急かすわけでもなく、黙って見つめている。

 そんな中で旅人はふと、気づいたことがあった。

 

「あ、……デジモンだ」

 

「デジモンがどうかしたのか?」

 

「あぁ……えーっと……幾つもの世界を見たけど大抵の世界ではデジモンがいた。逆にデジモンがいない世界は……なんていうのかな。見にくかった。ノイズが走っている感じ。数も少なかったし」

 

「成る程……そうか」

 

「なんか分かったのか?」

 

「いや、まだ考えがまとまっていない……だが……」

 

 どこまで行っても真実が分からないことが楽しくて堪らないといった体でウィザーモンは何かを考えている。傍から見ればニヤニヤとしていて気持ち悪いのだが。

 そんな旅人の視線を感じ取ったのか、ウィザーモンはマントで口元を覆い隠す。

 

「いや、そういうことじゃないだろ」

 

「気分だ。ごほんっ!話を戻すぞ」

 

 話題がズレかけたことが嫌だったのか、単純に恥ずかしかったのか。真相はウィザーモンしか知らないが、旅人としてはどうでもいいことだった。

 

「まずこの遺跡はこの世界の歴史を表したものではない」

 

「?違うのか?」

 

 ぶっちゃけると旅人にはそういった知識がないのでそう言われても“そうなのか”としか答えられない。

 ウィザーモンもそれを分かっているようでちゃんと補足を入れる。

 

「いや、完全に間違いというわけでもないのだろうが。まぁ……言うなれば、この遺跡はただの端末だ」

 

「端末?って言うとどこかに本体があるっていうことか?」

 

「そうなる。おそらくここの遺跡は情報を保存か整理……もしくはその両方をすることが役目の場所なのだろう。結果としてこの世界の歴史も情報としてこの遺跡に残っているということだ」

 

 ようするに歴史を記す遺跡ではなく、歴史()記す遺跡ということである。

 初めに分かったことが歴史についてだったので、ウィザーモンは勘違いしたのだ。

 

「本体については……分からないな。この遺跡を誰が作ったのかも。あるいは……本体らしきものが作ったのかもしれないが」

 

「マジで?」

 

「あくまでも仮定だ。まぁ、あながち間違いでもないだろう。少なくともかなりの力を……それこそ神話で語られるような力を持った者が作ったことには違いない」

 

 あまりのスケールの大きさに旅人の頬が引き攣る。神話クラス……それがどれほどの力なのかは分からないが、別世界まで見ることができるようなモノを作るのだ。

 相当な力を持っているに違いない。それくらいは旅人にも分かった。

 

「おそらく君が見たのは遺跡の記録ではなく、本体の記録だ。遺跡を見てその奥の本体の記録まで見てしまった。ということだ」

 

「聞いてみて思ったが、結構穴だらけじゃないか?まず、別世界が見えた理由にはならないし」

 

「本当のところは分からない。ただ、あの遺跡が相当なものだということには違いない」

 

 これ以上まだあるのかと旅人はウンザリする。もう旅人の頭の容量はいっぱいいっぱいで、パンクしそうだ。

 そんな状態の旅人を見てもウィザーモンは話をやめる気はないらしく、続きを話す。

 

「集まった情報を全て絵に変換、整理している。緩やかにだが、書いてある内容も変わっていたしな」

 

「絵が変化していた?」

 

「ああ。君の看病が僕の番じゃない時にいろいろと遺跡を調べた。結果断片的だが分かった情報を元にこの世界の在り方について、僕の知識とウィッチモンの知識を合わせていろいろと考察した。あぁ、今から言うことはドルモンたちには先に伝えてあるから心配しないでいい」

 

 “オレが倒れていた間に色々していたんだなぁ”もう悟りを開いたかのような気分でしみじみとウィザーモンの話を聞く旅人。

 そんな中で、妙な単語が旅人の耳に残った。

 

「心配?」

 

「ドルモンが仲間はずれにされたと落ち込む心配だ」

 

「あぁ。なるほど」

 

 “そうなるわな”そんなこと今まで思いつかなかった旅人は、ウィザーモンの手際の良さに感心する。

 もっとも見方を変えれば、旅人だけ仲間はずれにされたとも取れるのだが、旅人とは気づいていない。

 

「時に旅人?君はこの世界やデジモンについてどう思う?」

 

「どうって言われても……デジモンについては不可思議だなとは何回か思ったな」

 

「それだ」

 

「どれだよ」

 

 ウィザーモンは旅人の答えに満足したとばかりにうんうんと頷いている。

 一方で話についていけない旅人は不機嫌になるしかない。

 

「この世界は君達人間の世界との共通点が多い。語彙であったり、姿形であったりとな。しかも君に初めて会った時もそうだが、僕は人間の世界についてある程度のことは知っていた。生まれながらの常識としてな。考えてみればこれほどおかしいことはない。君がこちらに来ても金銭についてや食べ物の食べ方など困ることはなかっただろう?」

 

「まあたしかに。食べ物については同意できないが」

 

 旅人が初めてこの世界で食べたものを思い出したのだろう、ウィザーモンは苦笑している。

 もっともそれは旅人が思いつかなかっただけで、人間の世界でも場所によってはアレを普通に食べているところもある。

 

「それだけじゃない。この世界はデジタルワールドと呼称される。デジタル……その名からも分かるようにこの世界の在り方は君たちで言う電脳……いわゆるコンピューターの法則に近い。そういう意味ではデジモンはデータの塊に近い」

 

「ちょ、ちょっと待て。この世界がパソコンの中ってことか?それはいくらなんでもありえないだろ」

 

「黙って聞け。あくまでも近い。というだけだ。そのものというわけではない。ただ、近すぎる在り方ゆえに君達人間の世界のコンピューターやネットワークにも入ることができるし、また逆に人間の世界のコンピューターやネットワークがこの世界の入口になることもありそうだ」

 

 ここまでの話で頭が痛い旅人であったが、ウィザーモンの例え話のおかげで何とかついていけている。

 しかし、分かりやすいがゆえに、旅人の中に次々に疑問が生じる。

 

「いやいや。だってドルは人間の世界でちゃんといたぞ?それがデータって言われても……」

 

「まぁ、訳が分からなくなるのも分かる。君達で言うデータは本当に情報だけだ。間違ってもそれに物質が付随することはない。しかし、人間だってDNAだの原子・分子の塊だと言われてもよく分からないだろう」

 

「あぁ……まあたしかに。でも訳がわからなくなりそうだな。それにようはこの世界はデータの世界ってことだろ?オレはデジモンじゃないけどここに居るぞ?」

 

「おそらく異なる世界に移動したときに世界法則の影響を受けたのか、移動手段の中に環境適応手段込みだったのかどちらかだろうな。」

 

 流石にもうついていけない。知恵熱が出るギリギリのところを彷徨っている旅人はついに根を上げる。

 ウィザーモンもため息を吐くが、旅人のその言葉がいつか来ることは分かっていたようだった。

 

「……よくわからないんだけど。要点だけ言ってくれる?」

 

「はぁ。説明しがいのないやつだな。って話がズレている。いや、ごちゃごちゃ言ってもアレだな。話を元に戻そう」

 

「それはオレがバカと言いたいのか?」

 

「悪いことだったか?少し親切心を出したのだが?」

 

「……いや、いいよ。続けて?」

 

 “これドルには理解できたのか?”などと途切れた集中力で少し横道に逸れたことを考えている旅人。ちなみにドルモンは理解できていない。そう言う意味では旅人は安心できる。

 

「卵が先か、鶏が先かなんていうことはどうでもいいのだがな。要するに人間の世界とこの世界はお互いに密接な関係にある。人間の世界がこの世界の影響を受けているのか、この世界が人間の世界の影響を受けているのか……まぁ後者だと思うけどね」

 

「なんでだよ?」

 

「……僕たちデジモンはほとんどが人間を知らない。人間の世界も。なのに人間の世界の常識、法則についてやけに詳しい。皆、生まれた時から知っていることだ。ということは、だ。下手するとこの世界が人間の世界に内包される下位世界もしくは人間の世界を内包する上位世界という可能性がある」

 

 もうウィザーモンは旅人に説明する気力がなくなったのか、例え話をすることもなくなった。

 もっとも、例え話のしようがないことを話しているせいでもあるのだが。

 

「……全然分からなくなったな。……話を変えるがオレが見た別世界って……?」

 

「……話を変えたな。全く」

 

「なんだよ?その目は!」

 

「いや、別に?」

 

 旅人はどこか納得してないが、ウィザーモンは明らかに呆れている。

 “もう少しちゃんと聞いて欲しかった”とはウィザーモンがドルモンにも感じた思いである。

 

「まぁいい。君が見た世界はおそらくこの世界と何らかの関わりを持つ、あるいは関わりを持つ可能性がある世界。もしくは未来か、過去だろう」

 

「未来や過去ってそんなもんが分かるのかよ」

 

「これくらいデジモンでも力あるものならばできる奴はいる」

 

 さらりと告げられた事実に旅人は絶句する。今の言葉は、現在でもできる者がいるということを表しているのだ。

 もう旅人には常識が何か分からなくなっていた。その当人は元から持っていないものだが。

 

「まぁ、ここら辺は少し情報を得たからといって何か変わるわけでもないしな。気長に調べていくさ」

 

「いまいちよく分からんが……まぁ、頑張れよ」

 

 “これってドルも聞いたんだよな……実はオレってドルより頭悪いのか!?”と戦々恐々としている旅人をウィザーモンは呆れた目で見ている。

 ウィザーモンにとっては頭の中の整理という意味で旅人に話したのでちょうど良かったのではあるが。親切心もなかった訳ではない。

 

「そういえば君はこの世界製のカードの力を使っているだろう。」

 

「……オレのカードってこの世界のやつだったの?」

 

「本当のところは分からないがな。以前英雄がそう言っていた」

 

「英雄……アイツか」

 

 旅人としては、以前英雄――メデューバルデュークモン――に拉致されボコられた記憶しかないので、あまりメデューバルデュークモンにいいイメージを持っていない。

 が、自分の使っているものが実はこの世界製だと知って驚愕している。

 

「マジか……ってことはこのカード持っていた師匠ってマジで何なんだ……」

 

 以前ドルモンが暴走した時ひょっこりと声だけ出てきた師匠を思い浮かべる。分かりそうにない疑問を胸にしまった旅人が顔を上げると朝日が昇っていた。

 

「……随分と話し込んでいたな。まぁ、旅人のおかげで考えがまとまったよ」

 

「……そういえばあの遺跡はこの世界の歴史って話はどうなったんだ?何かわかったのか?」

 

「ふむ。情報が断片的すぎてあまりに判別ができなかった」

 

 あれだけ“歴史が!”とテンションが上がっていたのはなんだったのか。そう問いたい旅人であったがその問いは胸にしまっておくことにした。

 

「いや、一応歴史関係で分かったこともあったのだがな」

 

「分かったこと?」

 

「あぁ。歴史でハッキリと分かったのはこれだけだ。御伽噺のようなものだがね。この世界のあの世……ダークエリアの奥底には罪が眠る。大昔、デジモンが生まれる前、神々は世界のバランスを崩しかねないその罪を封印し、その上にダークエリアを創った。そして監視のために一人の神がデジモンとなってダークエリアの奥に城を構え封印を見守っている。そしていつの日か封印がとける日にその罪は世界を滅ぼすとな」

 

「……なんだそれ?歴史か?っていうか、本当に御伽噺だな」

 

「だが、馬鹿にできない。あの遺跡のデータは断片的だが、確かなものだ。それにこの情報だけまとまっていた。何かあるのは間違いないだろう」

 

「不吉だな。オイ」

 

「おはよう~」

 

 ドルモンが起きてくる。今日の空は雲が多く、もう少ししたらせっかく昇った太陽も隠れてしまいそうなほどであった。

 




第十話です。今回は特には進展なし。モヤモヤした話となっております。っていうか書いていて私自身頭がこんがらがったのでもしかしたら矛盾点やおかしい表現があるかもしれません。
一応何回か読み直しと手直ししたので大丈夫かと思いますけど何かあったら遠慮なく言ってください。
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