ちょこっとなのであまり変わってないように感じるかもしれませんがこれからはこんな感じでいきます。
「……遠い。後どれくらい?」
「このペースであと半日くらいだ!」
旅人とウォーグレイモンXとトコモンXは森の中を走っていた。
しかも夜からぶっ続けで。旅人のために少し休憩を挟みながら来てはいるが、あまり意味はなく、旅人本人は死にそうである。
「ゼーハーゼーハー死ぬ……休憩……」
「しょうがない。一時間休憩にしよう」
「アイ!」
旅人は休憩に入ってすぐに倒れこむようにして休むが、ウォーグレイモンXは余裕そのものといった表情をしており、トコモンXに至っては走っていない。
ウォーグレイモンXの肩にずっと乗っていた。だからだろうか?トコモンXの表情は不満そうである。
「頑張れ。場所はこの森を抜けたところにある大空洞の中の洞窟だ。そこには仲間も大勢いる」
「だからって言っても……あと半日だろ?」
「あと半日だな」
あと半日走り詰め。その事実に旅人は溜息を吐くことしかできない。カードを使おうにも走って半日の距離では、楽になる部分などたかが知れている。
「……はぁ。無駄に広いんだよこの森」
「アウ!アウ!モーン!イキター!」
「元気だねぇ。モーン?」
そんな中で元気の飛び回るトコモンXの姿は旅人にとって輝いて見えた。
その時旅人は自分が年寄りになった気がして、トコモンXとウォーグレイモンXの姿をまともに見れなくなった。
「はは。まぁ、その子ももうすぐ会えると思って嬉しいんだろう。とにかく、無事でよかったよ」
「まぁな」
その時、ウォーグレイモンXが何かに気づき、空を見上げる。
「……ん?アレは……?」
「どうした?」
急に空を見上げたウォーグレイモンXに続くように旅人も空を見上げた。そこには青空が広がっているだけだった。だがしかし――。
「…これは…翼の音か?」
「あぁ。それも大勢の。一体……?」
しばらくして空に赤黒い影が現れた。ポツリポツリとした感じだったソレはだんだんと空を埋め尽くすほどの量となっていく。
空を埋め尽くすその影はよく見ると竜の形をしている。
「……ウォーグレイモン。あれって……」
「旅人が言っていた昨日の奴と似ているが……あんなにたくさんいたのか?」
「そんなわけ無いだろ。一匹だよ」
そう。空を埋め尽くすほどのデクスドルグレモンの大群。
それらが一斉にどこかへと飛んでいた。しばらくそれを見ていたウォーグレイモンXだったが、あることに気づく。
「あの方向は……マズイ!隠れ家の方だ!旅人!悪いが休憩はここで終わりだ!トコモンしっかり捕まれ!旅人!君もおぶされ!一気に飛んでいく!」
「分かった!」
「アイ!」
「行くぞ!」
旅人とトコモンXがしっかりと捕まったのを確認するとウォーグレイモンXが猛スピードで森の中を飛ぶ。そのスピードは今までの比ではなかった。
その頃。旅人たちが向かっていた隠れ家では、多くのデジモンたちが慌ただしく逃げていた。
旅人たちが確認したデクスドルグレモンの群れが隠れ家に襲撃してきたのだ。襲撃してきてすぐに飛び出したナムとリュウダモンが抑えたために被害は最小限で済んでいるが、それでも尚、襲撃は続いている。
「動ける者は負傷者を運べ!早く奥の非常用出口へ!急ぐんだ!」
「は、はい!」
“何故ここがバレたのか、何故襲撃者はロイヤルナイツではないのか”様々な疑問は残るが今はそれを言っても仕方がない。焦る気持ちを抑えて全員が生き残るために行動する。
「おい!そいつは置いていけ!」
「置いていくぐらいなら、はじめから助けたりはしない」
そんな中、シルフィーモンの避難誘導の声を背後にマミーモンとウィザーモンが口論する。
その内容は未だ目覚めないドルガモンを置いていくかどうかだった。
「ナムとリュウダモンが奴らを足止めしているのにも限界がある!」
「それでもだ。言ったろう。置いていくぐらいなら、初めから助けたりはしない。心配するな。遅れてきた組と一緒に行く」
「あ~もう!分かったよ!……死ぬんじゃねぇぞ」
「お前もな」
譲る意思を見せないウィザーモンについにマミーモンが折れる。
お互いにこれが今生の別れにならぬように、軽い口約束をする。
ウィザーモンは先に行くマミーモンを見送り、ドルガモンを魔術で持ち上げながらゆっくりと歩いて行った。
「う……」
「全く。面倒な時にで来るものだ……来るならもう少し後で来ればいいものを……」
“あと少しでコイツの治療も終わったのに”そう考えながら歩くウィザーモンは後方から自分よりもゆっくりと歩いてくる集団に気づいた。
「うぅ……」
「大丈夫か?君たちで最後か?」
「は、はい。僕らが初めに襲われて……ナムさんたちが助けてくれました。ナムさんたちを除けば僕らで最後です」
傷だらけの面々を見れば、襲撃がどれほどのものか理解できた。ついでに襲撃者のレベルはあまり高くないことも。
ロイヤルナイツたちならば、怪我などできずに一瞬で消し炭になる。怪我で済んでいる時点で襲撃者のレベルが知れた。
もっとも、あくまでロイヤルナイツクラスと比べた場合の襲撃者のレベルだが。
「そうか。ここを抜ければ安全な場所につく。それまでもう少しの辛抱だ」
「はい……皆、頑張るぞ……」
「お……う……」
傷だらけのメンバーを励ましながらウィザーモン達は緊急用の出口へと向かう。 逃げ道など、とうの昔に塞がれていることに気づかずに。
一方、隠れ家の入口ではナムと進化したギンリュウモンが襲い来る大量のデクスドルグレモンを相手に時間稼ぎをしていた。
最も戦っているのはギンリュウモンのみだったが。
「ギンリュウモン。キツイ。完全体」
「はっ。了解しました姫様!ギンリュウモン進化――!ヒシャリュウモン!」
ナムの命令にギンリュウモンは完全体に進化する。その姿は成熟期だったギンリュウモンよりもさらに龍らしくなり右手に橙、左手に緑の水晶を持っている。
ヒシャリュウモン。それがリュウダモンの完全体の名だった。
「行くぞ?屍の竜達よ!」
咆哮と共に武将龍が戦場を駆ける。尻尾を、腕を、頭を、巧みに使ってデクスドルグレモンを片付けていく。
だがいかせん数が多い。おまけに
“これは不味いか?”ヒシャリュウモンがそう考え撤退も視野に入れたとき――。
「ヒシャリュウモン。いい。来た」
「『ガルルバースト』」
「……なるほど。あの若造が……ようやくですか」
降り注いだ声と共にミサイルや冷却砲など多種多様な攻撃が雨霰と降り注いだ。
攻撃が止むと同時にナムたちの下へと降り立ったのはメタルガルルモンXである。
「君たちは……?いや、それよりも皆は無事か!?」
「無事。被害は最小限」
「誰にモノを申しておる!それくらいのことは当然だ」
「そうか。ありがとう。ここはオレに任せてくれ」
“逃げてくれ”そう言外に伝えたメタルガルルモンXだったがナムもヒシャリュウモンも引く気はなかった。
「大丈夫」
「ふん!若造にはまだまだ負けん!」
「っな!いいのか!?」
「いい」
次々に襲いかかるデクスドルグレモンに攻撃しながら答える二人を見て、メタルガルルモンXは説得を諦め攻撃に専念する。
“キリがない”それが一時間攻撃し続けてメタルガルルモンXの思ったことだった。倒しても倒してもまるで噴水のように湧いて出るデクスドルグレモン。
“十分時間稼ぎはした”メタルガルルモンXは撤退の意思を二人に伝える。
「オレが隙を作る。後ろに向かって走れ!」
「分かった。ヒシャリュウモン」
「この……!姫様に無礼な口をきくな!」
ナムとしてもこの現状をよく思わなかったのか、あっさりと頷いた。
約一名は全然別のことで怒っているのだが。ナムはヒシャリュウモンの背に乗ってその時を待つ。
「行くぞ?『コキュートスブレス』……今だ!」
「ヒシャリュウモン。急ぐ」
「了解しました。姫様!」
全ての装備をフル活用して攻撃範囲を広めた『コキュートスブレス』によって数体のデクスドルグレモンが氷の像となる。
それらを壁にして隠れ家の中を三人は翔んで行く。すぐさま氷の像を破壊してデクスドルグレモンが後を追い始める。追いかけっこが始まった。
「姫様!このままでは先に逃げる者たちを危険に晒してしまいます!」
「メタルガルルモン。案」
「……この先の広間は万が一の場合隔離できるようになっている!洞窟を崩壊させたあとそれを使って無事なところを隔離する!」
“このままでは追いつかれる”その事実に焦ったような声を上げるヒシャリュウモン。対してメタルガルルモンXは冷静に案を出す。
博打に近い案ではあったが、敵の勢力が分からない以上今はこれしか無かった。
「待てっ!」
声が聞こえた。危機感を感じたメタルガルルモンXは反射的に避ける。
瞬間、メタルガルルモンXの横を銃撃が通り抜ける。通り抜けた銃撃は柱の役割を持つものに当たって洞窟を崩壊させた。
「いいタイミングだった」
「ナイス」
奇しくもマミーモンのおかげでほぼ計画通りに事を運べたメタルガルルモンXは皮肉を込めて答える。
一歩遅ければデクスドルグレモンらと共に生き埋めになっていたのだ。皮肉の一つも言いたくなるだろう。
マミーモンはそれを分かっているのか、愛用の銃を片手に引きつった笑いを浮かべるしかない。
「メタルガルルモン!ナムさんたちも!お疲れ様です!」
「大丈夫」
「これくらいなんともない」
「ここにいるメンバーが最後尾か?」
後ろで扉を閉め終わったシルフィーモンが労いの言葉を言う。
部屋の中には最後尾のメンバーが休憩をしており、その中にはウィザーモンとドルガモンも含まれていた。
「ドルガモン!」
「なんだ、メタルガルルモンも知り合いだったのか?」
「あ、あぁ。しかしなんでここに?」
「ウォーグレイモンの話だとロイヤルナイツに連れ去られたらしい。ゴミ捨て場に捨てられていたのを見つけた」
思いがけない再会にメタルガルルモンXが声を上げて近寄る。しかし、依然として、ドルガモンは起きることは無かった。
「おい!今はそんなことよりも早く移動したほうがいい!」
「む、そうだな。あまり他と離れるわけにもいかない。続きは後にしよう」
「出口はこちらです。皆、もう少しだ!」
出発を急かすマミーモンの声にその場にいた全員が腰を上げる。励ますようなシルフィーモンの声が妙に響き渡った。
「何体いる?」
非常用の出入口付近にたどり着いた旅人の第一声がこれである。縦に空いた空洞の底いっぱいにデクスドルグレモンがひしめき合っていた。
「数百……下手をすると千を超えるな」
「あの横の壁の穴が入口か?」
「緊急用のものだけどな」
数十メートルはある壁にポッカリと穴が一つ空いており、そこが入口なのだとわかる。
「オレは奴らを片付けてくる。旅人、トコモンを頼む。トコモン、旅人の言うことをしっかり聞けよ?返事は?」
「アイ!」
「分かった。気をつけろよ?」
行こうとしたウォーグレイモンXが急に立ち止まり旅人の方へと向いた。
“まだ何かあるのだろうか”と旅人が不思議に思っていると――。
「旅人。オメガモンに使ったあの一撃はできるか?」
「?できるけど……?」
「なら、頼む。アレはオレ単体でやるよりも威力が高い。一気に数を減らしたい」
「分かった。Set『武装進化』」
ウォーグレイモンXの言葉に納得し、白紙のカードを取り出して『武装進化』に変化させる。
続けざまにウォーグレイモンXへと使い、グレイソードXとなったウォーグレイモンXを構えた。
「っぐ、やっぱりキツイな」
「アウ!アンバレ!」
「はは、ありがとな!『グレイソード』」
斬撃が放たれる。相当な威力のはずだが、デクスドルグレモンが肉の壁となったのか、縦穴自体にそれほどの被害はなかった。
続けざまに元に戻ったウォーグレイモンXがデクスドルグレモンに突っ込んでいく。
「だいぶ数を減らしたけど……」
「イッパイ…イル~」
「だよな」
いっぱいいることには変わりないが、数百から数十になっているだけマシである。
その時、隠れ家の非常用出入口からいくつもの影が見えた。
「アレはナム?それにドルガモンも!……なんでウィザーモンもいるんだ?別人か?」
「モーン!イター!」
「トコモン静かに。ってまずい!気付かれた!」
思わずといった風に上がったトコモンXの声にデクスドルグレモンが反応する。
真っ直ぐにこちらへと来ようとするデクスドルグレモン一匹をウォーグレイモンXが倒す。
だが、来ていたのは一匹ではなくて二匹である。
「……トコモン!」
“間に合わない”カードを使うよりデクスドルグレモンがこちらに来るほうが早いと悟った旅人はトコモンXを抱えて逃げようとする。
だが、やはりそれすらも間に合わない。
デクスドルグレモンが旅人たちに襲いかかろうとした瞬間――飛び上がったヒシャリュウモンによって吹き飛ばされていた。
「ふん。若造が……子供のお守りもできんのか?」
「……いちいち皮肉を言わんと気が済まないのか。あと呼び方統一しろ」
「……ふん。邪魔だ……どこかに行ってろ!」
相変わらずの言い草にイラッと来た旅人であったが、助けられたことは事実なのでおとなしく聞く。
「……トコモン。ドルガモンのところに行くぞ!」
「アイ!モーン!」
「久々にset『不可視』」
『不可視』のカードを使って透明になる旅人とトコモンX。デクスドルグレモンに見つからないように壁際の道を通って隠れ家の入口まで行く。
「タヒト!」
「ってあぶね!」
トコモンXの声と直感に従って一歩下がる。デクスドルグレモンが目の前に降り立っていた。
『不可視』のカードは対象をそれ以外から見えなくさせるカードだ。なのにデクスドルグレモンに見つかったことに旅人は驚きを隠せない。
「見えてないはずなのに……」
「この馬鹿者が!自分の弱点ぐらい知っておけ!匂いで丸分かりだ!」
「……マジか」
“そんな弱点があったなんて知らなかった……『不可視』は人間の世界でしか使ったことなかったし”そんなことを考えながら。思わぬ弱点に唸る旅人。ヒシャリュウモンに叱られながら助けられて事なきを得た。
いつまでもそこにいるわけには行かない。ドルガモンのもとへと急ぐ。
「『コキュートスブレス』ウォーグレイモン!」
「メタルガルルモン!?無事だったのか!」
「心配かけたな。動ける者は前に出ろ!ウォーグレイモンを援護するんだ!」
「おー!」
旅人たちが隠れ家の非常用出入口に着いた時、メタルガルルモンやそのほか、大勢のデジモンがデクスドルグレモンに向かって突撃していく所だった。
「モーン!」
「ドルガモン!」
「な、何だ?お前ら!」
焦るようなマミーモンの声に旅人は自分たちのことを軽く説明する。
そのことにウィザーモンはどこか納得したような感じで旅人たちを見ていた。ウィザーモンは旅人たちの前にいるドルガモンを一瞥すると戦場を見据えた。
「そうか、君たちが……スマン。こいつを頼む。オレも戦闘に出る」
「分かった。ありがとな」
「モーン!オッキ!オッキシテ!」
戦闘に出るウィザーモンを見送ってドルガモンへと意識を向ける旅人。
トコモンXが頑張って起こそうとしているが余り効果はないみたいだった。
「旅人」
「ナム?確かめたいことって見つかったのか?っていうか、なんでこんな所に居るんだよ?」
「まだ。成り行きとしか言えない」
「……意味のわからないことを。そういえば……」
“確かめたいことってなんだ?”そう問おうとした旅人の言葉は続かなかった。 トコモンXの奮闘が効いたのか、ドルガモンが起きたのだ。
「ここは……?旅人?トコモン?」
「モーン!」
「よう!あんまり心配ばっかりかけんなよ?寝坊助」
「一体何がどうなって……?ってこれは……!」
旅人たちの姿を確認したドルガモンは外の風景を見て驚愕する。
数百を超えるようなデクスドルグレモンとデジモンたちの死骸。そんな中でも戦い続けるデジモンたちの姿。
ドルガモンの心に僅かな波紋を呼んでいく。
どうして?タタカウ。何故?イキルタメ。やめろ。イキルコトヲ?タタカウコトヲ?命は……そんな簡単に……
「……ろ。……めろ!」
「ドルガモン?」
「ドシタ~?」
――消えていいものじゃない!――
「やめろー!」
「っ!ドルガモン!待て!」
ドルガモンの叫びに呼応するようにドルガモンを光が包んでいく。それに焦るのは旅人である。
ドルモン、ドルガモン。では次に来るのは?
もし、ドルガモンの進化が己の相棒と同じ道を辿るとしたら?この状況で完全体になるのはマズイ。敵と姿形が似通った存在が現れれば周りの反応がどうなるか分からない。
旅人の叫びも虚しく一瞬にして進化は終わる。光とともにその場に現れたのは旅人に馴染みのある完全体――ドルグレモン――だった。
「この感じは……やっと来たか。あの試練騎士め!」
「アレは別の」
「分かっております姫様!しかし、そう簡単には納得できぬもので……」
「そう。……行く」
「はっ姫様!」
ナムとリュウダモンは誰にも気づかれないようにその場を離れる。
あの世界の遠い過去に分岐したこの世界の行く末を見届けるために。
自分たちが結末の傍に居てはならないとばかりにその場から消えた。
種は芽吹き、賽は投げられた。あとはひたすらに結末に向けて加速する。
というわけで第十九話、ドルグレモンに進化、そしてナムたちの一時離脱(またですが)の回でした。アレですね。ちょこっと再開なわけです。
最近サブタイ考えるのが厳しくなってきました……。
それにしてもちょっとシーンの展開が映画準拠なためか慌ただしすぎますかね?
もうちょっとワンシーンを掘り下げれるようになるといいのですが……要精進ですね。
それではまた次回。