【完結】ワールド・トラベラー   作:行方不明

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第二十二話~対面!戦闘!屍の竜!~

 イグドラシルへと続く一本道。あらゆる一面が真っ白で上も下も分からないような場所で、それでも目の前が一本道であるということが理解できるというのは、旅人にとっては不思議な感覚だった。

 

「へぇ?ほ~。ふぅん?」

 

「ドル……何か怒ってる?」

 

「べっつにぃ?」

 

 その道すがらドルモンに今までのことを話していた旅人はドルモンの急激な機嫌の低下に首をかしげていた。

 最も理由は明白で単なる嫉妬なのだが。ちなみに一緒にいたのが、ドルモン系でなければここまで機嫌は下がらなかった。ついでに最終進化系がアルファモンであることも機嫌の低下に拍車をかけている。

 

「旅人の相棒がオレのことを睨んでいるんだが……」

 

「……気にしないでくれ。別のアルファモンに対して思うところがある……のと、ちょっと家を空けていたら間男が入り浸っていた?みたいな感じだ」

 

「はぁ?いや、分かった……」

 

 微妙な雰囲気のままイグドラシルを目指す。

 ちなみにオメガモンはこの雰囲気の中会話することを少し前に諦めていたりする。

 

「……」

 

「旅人何とかしてくれ。この空気は耐えれない」

 

「なんとかって……あ、そういや、ドル?お前この前結晶だった時にキノコを除いた食料がほぼ無くなるってことがあったんだけど何か知らない?」

 

「……」

 

 ドルモンはさっきとは別の意味で無言になった。ついでに明後日の方向を向いて決して旅人と目を合わせようとしない。

 “こりゃ確定か?”旅人の中でフツフツと怒りがこみ上げてきた。

 

「ドル?」

 

「し、知らないよ!ちょっと夢の中で美味しかった気もするけど覚えがない!」

 

「おまっ!百パーセントお前のせいじゃねぇか!せっかくオレが苦労して集めたのに……何してくれんだ!」

 

 苦労して集めた食料を寝ぼけて食われたという事実に旅人は怒る。

 そんな旅人を前に取るドルモンの反応は一つだった。

 

「美味しかったです!」

 

「開き直るな!」

 

 突如始まった喧嘩にオメガモンとアルファモンはウンザリする。

 しかし、その雰囲気も長く続かなかった。身の毛のよだつような死の気配とでも言うべきモノが出口付近から漂ってきたのだ。

 

「何かいる?気をつけろ!」

 

「どのみちただではすむまい。マグナモンがイグドラシルに緊急警戒の印を出した。……オレたちは反逆者だ」

 

 アルファモンの声に全員が意識を一新し、オメガモンが呟いた寂しげな声が妙に全員の耳に残った。

 やがて訪れた出口。その中を通り過ぎた瞬間に見たモノそれは――。

 

 

 

 

 

 

 白い。ただひたすらに白い空間。頭上には巨大な球体が浮かんでおり、オメガモン曰くあの中にイグドラシルがいるらしい。

 そして白い空間に黒が一つ。染みのようにも見えるそれは拘束具に包まれた屍の竜――デクスドルゴラモン――だった。

 

「何者だ!?」

 

「アイツは……?」

 

 見たこともないデジモンに警戒するアルファモンとオメガモン。対して旅人とドルモンの反応は二人とは違うものだった。

 

「あの姿は……!」

 

「ドルゴラモン?やっぱりドルゴラモンもいたのか」

 

「ゲッゲッゲ……グァア!」

 

 まるで旅人たちを嘲笑うかのように鳴くとデクスドルゴラモンはいきなり飛び掛ってきた。

 一瞬のことで反応が遅れるがそれでも全員がしっかりと躱した。

 約二名みっともない躱し方をしたのだが。

 オメガモンが躱した瞬間にデクスドルゴラモンの懐に飛び込みグレイソードで右腕を切り飛ばす。そのまま追撃しようとしたオメガモンをデクスドルゴラモンの右腕(・・)が吹き飛ばした。

 

「何っ!?」

 

「戻った?」

 

「グッゲッゲッゲ!」

 

 一瞬で切り飛ばした腕が再生したのを見て旅人たちは驚きを隠せない。

 そしてデクスドルゴラモンはそんな旅人たちを嘲笑うかのように嗤いながらオメガモンに向かって行く。

 

「っち。ドル!」

 

「オッケ~!向こうがドルゴラモンならこっちもドルゴラモンだ!」

 

「っていいのか?」

 

 ドルモンのその言葉を、聞き返すほどに旅人は不安だった。

 ドルモンが究極体であるドルゴラモンに進化したのは、一回だけ。しかも決死の覚悟を抱いて戦ったあの時だけだ。

 それ以前はその姿に進化することを拒んでいた。復活していきなりの戦闘で、拒んでいた姿での戦闘をあっさりと許可したドルモンに、旅人は戸惑いを隠せない。

 

「いいって。もうオレは負けるのは……嫌だから。それに出し惜しみしちゃ勝てるものも勝てないよ~」

 

「……分かった!行くぞ?set『進化』『究極』」

 

 最後は巫山戯た物言いで誤魔化していたが、ドルモンも旅人と同様にあの戦いで様々なものを感じ取ったのだろう。

 そんなドルモンの意思を汲んで旅人はカードを使った。

 

「ドルモン!ワープ進化――!ドルゴラモン!グァアアアアア!」

 

 『進化』のカードと白紙のカードを使って一気にドルモンは究極体へと進化する。

 進化したドルゴラモンは咆哮しながらデクスドルゴラモンへと向かって行き、取っ組み合いを始めた。

 拮抗するように見える取っ組み合いの末押し負けたのはデクスドルゴラモンの方だ。

 そんな中で旅人はあることに気づいた。

 

「……やっぱりアイツはドルゴラモンより弱い?っていうかドルの奴……小さくなってるな」

 

 そう、ドルゴラモンは小さくなっていた。元は十数メートルはあるかという程だったのに、今はどう贔屓目に見ても数メートルくらいしかない。

 その後の戦いはドルゴラモンの圧倒的優位で進んでいた。

 時折、オメガモンやアルファモンが絶妙な具合でドルゴラモンをサポートする。 しかし、その圧倒的優位性が逆に不気味でもあった。

 

「『ガルルキャノン』」

 

「『聖剣グレイダルファー』」

 

「……アレ?」

 

 それぞれの技を喰らいながらも尚も戦い続けるデクスドルゴラモン。

 そこで旅人は一つの疑問を抱く。“おかしい。明らかに”

 先程からドルゴラモン、オメガモン、アルファモンの攻撃を幾度となく喰らっているのに傷一つない。いや、傷一つないというよりもむしろ――。

 

「傷が超高速で再生している?これじゃあ、いくら攻撃しても意味ないな。Set『念話』」

 

 『念話』のカードでテレパシーを送る旅人。もちろん全員が再生能力に気づいており、どうしたらいいか、考えを巡らせているところだった。

 旅人はすぐさま自身が考えついた計画を伝える。

 それに対する返答は“試す価値はある”というものだった。

 

「アルファモン!」

 

「旅人!任せた!」

 

「了解。Set『氷』『最大強化』」

 

 アルファモンが後方に下がると同時に旅人がデクスドルゴラモンを氷漬けにする。デクスドルゴラモンは出ようと足掻いているが、氷が割るのはまだ先になりそうだった。

 氷が割れそうになる瞬間、ドルゴラモンが思いっきりデクスドルゴラモンを殴り飛ばし、吹き飛んだ先でオメガモンが『ガルルキャノン』でデクスドルゴラモンを撃つ。

 起き上がったデクスドルゴラモンは一番近くにいたドルゴラモンへと殴りかかるが、そのまま取っ組み合いとなる。

 一連の攻撃によって発生したダメージは無いに等しいが時間稼ぎは十分だった。

 

「旅人!」

 

「了解!ドル!戻れ!set『転送』」

 

 アルファモンの声と共に『転送』を使ってドルゴラモンを旅人の近くに持ってくる。

 当然、デクスドルゴラモンの周りには誰もいない。

 そして、そこには十分に力を溜めたアルファモンがいる。

 デクスドルゴラモンが旅人たちを無視してアルファモンへと向かったのは本能か、それとも別のナニカか。どちらにせよ間に合わないのだが。

 

「『デジタライズオブソウル』!」

 

 アルファモンが展開した魔法陣からとてつもない量のエネルギー波が大量に出てくる。その一つ一つがガルルキャノンに匹敵するほどであり、デクスドルゴラモンの拘束具を一つ残らず消し飛ばしていく。

 やがて形を保てなくなったデクスドルゴラモンは静かに崩れ落ちていった。

 

「……終わったか?」

 

「あぁ、どうやらそのようだ。しかし、旅人の相棒の……その姿は……?」

 

「ん?まぁ、アレだ。お前がアルファモンにならなかった場合のたどり着く進化の一つとでも思ってくれ」

 

「そうか。……行こう」

 

 アルファモンはデクスドルゴラモンのいた場所を見て何かを考えていた様子だったのだが、今がそんな場合ではないことを思い出してすぐさまイグドラシルの方へと飛んでいく。

 オメガモンやドルゴラモンに掴まった旅人もそれに追従するように飛んでいった。

 その場でデクスドルゴラモンのデータの残骸が不気味に鼓動していることには最後まで誰も気づかなかった。

 

 

 

 

 

 先ほどと同じような白い空間。そこの中央に水晶の玉が一つ浮かんでいた。この空間には何もない。然るにその水晶がイグドラシルなのだろう。

 旅人たちは当然、その姿を見たオメガモンでさえ驚きを隠せなかった。

 

「アレが……イグドラシルだと!?」

 

「知らなかったのか?」

 

 自身が忠誠を誓った存在の姿を知らないというのは、酷く奇妙な話しだ。現にオメガモンはその姿を見て驚いている。

 

「あぁ、ロイヤルナイツでさえイグドラシルに会ったことはない」

 

「それでよく忠義の騎士とかやれてたな?」

 

「まぁまぁ、旅人。それでどうするの?」

 

 それぞれの驚きの中、全員が睨みつけるようにイグドラシルと向かい合う。口火を切ったのはやはりアルファモンだった。

 

「イグドラシルに問いたい。貴方の真意はどこにある?何を成そうとしている?」

 

「私も知りたい。プロジェクト・アーク……なぜかくも強引なやり方で推し進める必要があったのか?」

 

「……」

 

 アルファモンとオメガモンの問いかけにイグドラシルは答えない。沈黙で返すだけだ。

 

「イグドラシル!これ以上沈黙を続けるのならばこちらにも相応の覚悟がある!」

 

「……」

 

アルファモンが発した最後通告とも取れる言葉を前にしてさえ、イグドラシルは沈黙する。

 何か沈黙する意味があるのか、それとも元から言葉を発することができないのかは分からない。

 だが、既に問題は起きているのだ。旅人たちにそれを確かめる時間があるわけでもなかった。

 

「イグドラシルが沈黙を続ければ……問題は解決するのだろうか?」

 

「……しないかもしれん」

 

「どう見てもしないだろ」

 

「しないと思うよ?」

 

 この状況下でのイグドラシルの沈黙……それはこのデジタルワールドの崩壊を意味する。この状況で待っていられるほど、旅人たちは悠長な性格をしていない。

 

「だったら……俺たちがしている事はなんだ?」

 

「確かな事が一つある。どちらにせよ、このままではデジタルワールドは崩壊するということだ」

 

「それなら!」

 

「あぁ。放ってはおけまい」

 

 その場の全員が覚悟を決める。すなわち、すべての原因であろうイグドラシルを破壊する覚悟を。

 それぞれがそれぞれの武器を取り出してイグドラシルを破壊する為に動き出した。

 

「行くぞ!『ガルルキャノン』……何っ!?」

 

 牽制にオメガモンが『ガルルキャノン』を放つが水晶――イグドラシル――の前に発生したバリアのようなもので防がれた。

 

「ならば直接斬るのみ!はぁああ!」

 

 防がれたからといって他の攻撃まで効かないというわけではない。オメガモンは直接斬るため、左手のグレイソードを構えて駆け出した。

 オメガモンが切り込もうとした瞬間、それを邪魔したのはまたもデクスドルグレモンたちだった。

 

「っち、またこいつらか!set『雷』『加速』」

 

「邪魔だァ!旅人!カードの残りは!?」

 

「ちょっとマズイ!あんまり力になれんかもしれん!」

 

 マグナモンとの戦いで使ったカードがまだ戻っていない。

 白紙のカードは残り二枚しかないし、元からあるカードは主力級のカードはほとんど使いきっている。

 一応足でまといにならないようにスピードを上げるが、無駄遣いは出来そうにない。旅人は己の無力を噛み締めることしかできなかった。

 

「あまり無理するな!『デジタライズオブソウル』」

 

「おりゃ!おりゃりゃ!後一歩!」

 

 ドルゴラモンとアルファモンがデクスドルグレモンを片付けていく。ドルゴラモンが前衛でアルファモンが後衛。その息の合い方たるや長年連れ添った夫婦のようでもあった。

 そしてその間をオメガモンが駆ける。

 

「これで!『グレイソー……」

 

 必殺技を放とうとしたオメガモン。だが、その技は放たれることはなかった。

 グレイソードを構えてイグドラシルを攻撃しようとしたオメガモンを突如、何かの巨大な一本の手が鷲掴みにしたのだ。

 

「オメガモン!?」

 

「アレは……手?」

 

「グッグッグ!グァアアアアア!」

 

 聞き覚えのある嗤いと咆哮が耳に届く。

 直後、真下の床を突き破って所々が半透明になったデクスドルゴラモンのようなナニカが飛び出して来た。

 

「アイツ!まだ生きていたのか!ドル!」

 

 そのナニカは未だオメガモンを掴んでおり、オメガモンを助けるためにも旅人はドルゴラモンに指示を飛ばした。

 

「りょーかい!『ブレイブメタル』ってえ!?」

 

「何っ!?」

 

 驚愕が全員の総意である。

 ドルゴラモンの技『ブレイブメタル』はオメガモンやアルファモンをして、驚嘆に値する程のものだった。

 しかしそのナニカ――デクスモン――はオメガモンを掴んでない方の手でドルゴラモンを難なく受け止めたのだ。

 

「っマズイ!ドル!そこから離れろ!」

 

「……っ!ぐぁ!」

 

「ドル!」

 

 ドルゴラモンが旅人の声に意識を引き戻された瞬間、その腕で吹き飛ばされて壁に激突する。

 旅人が駆けつけるとドルモンにこそ戻ってはいないが、体に力が入っていない。戦闘続行は難しそうであった。

 

「大丈夫か!?」

 

「まだ……大丈夫……アレ?」

 

 本来ならばまだ戦えただろう。しかし、復活してから間もない時間で行なった連続した全力の戦いにドルゴラモン自体の体がついていけていないのだ。

 

「旅人たちは休んでいてくれ!『聖剣グレイダルファー』」

 

 ドルゴラモンの戦闘続行が無理と見たアルファモンが魔法陣から光の剣――グレイダルファー――を取り出して駆ける。

 デクスモンは何故かアルファモンの一太刀をガードして……そのままオメガモンをアルファモンに投げつけた。

 

「ぐぁ!」

 

「っが!」

 

 オメガモンを受け止めたアルファモンはそのままデクスモンに殴り飛ばされ、二人とも壁に激突する。

 それでもデクスモンにアルファモンの攻撃は通ったらしく、半透明の右腕によく見るとカスリ傷らしいものがついていた。

 

「っく、これでやっとカスリ傷か……!?」

 

「アルファモン!オメガモン無事か!」

 

 激突した二人の下へと旅人は駆け寄る。いくら残りのカードが少ないとはいえ、ゼロではないのだ。出来ることはまだある。

 

「っく……あまり無事とは言い難い……」

 

「オレはまだいける。今の攻防で少し右腕にカスリ傷を負った程度だ。だけど……威力が足りない」

 

 その間、デクスモンはこちらに攻撃してこない。

 “お前たちのやっていることは無駄だ”と言いたいかのように旅人たちを見て嗤っている。

 

「……っち、あと二枚か。イグドラシル用にとっておきたいからな……オメガモン!ドル!実力云々はともかくどっちの方が素のスペックが高い?」

 

「それならば……おそらくドルゴラモンの方だ。さっき程の技の威力は同じ時間で出せる私の技よりも上だった。……実際に戦うのならば、分からんがな」

 

「……オメガモンって意外と負けず嫌いだな。まぁ、いいや。『武装進化』でドルゴラモンを武器にする。単純に考えて究極体一体分の力を持った武器だ。それならまだ可能性はあるだろ?」

 

 旅人の出した案にその場の全員が思案顔になる。

 “なるほど、それならまだ可能性がある”そう思考するオメガモンは『武装進化』も力を身をもって知っているし、何よりオメガモンはまだ戦える。

 一方でドルゴラモンは既に戦うことはできない。本人も少しでも可能性のあるならば実行したいと考えている。

 アルファモンは今のままではダメだと分かっている。

 

「だが……いや、いい。なるほど。それならば実力よりも素のスペックが優先されるか」

 

「分かった」

 

「オレもオーケーだ。どのみちこのままだと戦えそうにないしね」

 

 全員の意見がまとまった上で、全員が出来ることのために動き始める。

 デクスモンは“まだやるのか?”とばかりに呆れた雰囲気で旅人たちを見ていた。

 そんな中、最後の博打が――。

 

「行くぜ?set『武装進化』」

 

――始まった。

 




いつまでたっても出ない天廻龍の光玉にイラついてモンハン4を一時中断し、久しぶりにリデジ・デコードをやってみた。
……あの地味な活躍しかしていないドゥフトモンにX抗体バージョンがあったことに驚いた。しかも必殺技が秒間約一兆回の刺突って……そりゃ、アルファモンやオメガXに比べると地味に思えますが、改めて究極体デジモンのチートさを思い知りました。そっちやっていたせいであんまり小説の方が進んでいなかったりするんですけどね。


カード説明

『究極』―『進化』のカードと併用することで対象を段階関係なく究極体へと進化させる。単体だと意味はない。



そういえば小説検索した時、この小説って感想一件入っている表示が出ているみたいなのですが、見れません。あれってこちらの不手際かなにかなのでしょうか?
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