変更点自体はそんなに目立つものではないので読み直さなくても大丈夫です。
圧倒的な力を見せるデクスモンを前にして旅人たちは並び立つ。これを逃せばチャンスはほぼ無いのだ。
一方で、その圧倒的な力を持つデクスモンでさせ、先ほどまでの侮りは存在しなかった。己に届きうるモノを相手は使う。そのことに本能で気づいたのだ。
故に旅人達もデクスモンも出し惜しみはしない。最初から全力である。
最も、デクスモンは己が傷つかない理由を知っているし、万が一死にそうになってもソレを回避する術がある。そのことで全く侮りがないといえば嘘になるのだが。
「行くぞ?」
「グァアアアアア!」
旅人がカードを使おうとした瞬間、デクスモンが襲いかかる。
侮りはあるが、そう簡単に自分の勝率を下げるほどデクスモンも馬鹿ではないのだ。
旅人に迫る腕をオメガモンが『ガルルキャノン』で跳ね上げる。
オメガモンは先ほどの捕まっていた間に、ダメージは通らなくても衝撃はしっかりと伝わることを学んだのだ。
「サンキュー、オメガモン!set『武装進化』アルファモン!あと任せた!」
白紙のカードが変化してその力を発揮する。
ドルゴラモンの姿が一瞬歪んで白銀の片刃大剣となる。
その剣をアルファモンが持った瞬間、アルファモンの肩から白銀の翼が生える。その姿は神々しいものだった。
「グァアアアアア!」
一方でやることをやった旅人は安全なところへと下がろうとするがそうは問屋が下ろさない。
デクスモンは旅人に狙いを定めて口内にエネルギーを貯め始めたのだ。
「アレ?ちょっとマズイ?」
「っく!『ガルルキャノン』」
デクスモンの口に集まる緑色の閃光を前に旅人は焦る。
そんな中、オメガモンはさすがというべきか。『ガルルキャノン』で妨害しようとするが、直撃してもデクスモンは攻撃をやめる気配はない。
一瞬後……無慈悲に緑の閃光は放たれた。
「っく……アレ?」
「グァア?」
思わず目をつぶった旅人だったがいつまでたっても何もない。
目をつぶっている旅人の耳にデクスモンの訝しがる声が聞こえた。
「あぁ……任された!」
旅人が目を開いた先。そこにはその言葉とともに白銀の剣を持って
一瞬で旅人の下へと来たアルファモンはその手に持った剣で緑色の閃光を切り裂いたのだ。
「……あーあ……結局最後はあいつら任せか……オレって弱いなぁ」
呟くように捻り出した旅人のその言葉を聞く者は誰一人としていなかった。
一方で白銀の剣――究極戦刃破竜剣――を持って切り結ぶアルファモンは違和感を感じていた。
攻撃力は上がった。相手にダメージを着実に与えている。なのに同じ分だけのダメージを自分も負う。まるで鏡合わせのように――!
「っく!っは!せい!」
「グァア!グォ!グォオォ!」
アルファモンが振り下ろす剣をデクスモンがその手の爪で迎撃する。デクスモンは、アルファモンが牽制で放つ魔法陣からのエネルギー弾には目もくれず只管に剣だけを警戒して対処する。
まるで、その剣をありえないモノと見るかのように。
「っは!っふ!」
「グァアアア!」
剣と爪が火花を散らす。十合、二十合、三十合……増えていく打ち合いに呼応するようにアルファモンの違和感が増していく。
空気の振動、剣戟の音、そしてこの戦闘。それらのすべてに違和感を覚えていた。例えるならば、文字を見てその文字の形に違和感を覚えた自分に違和感を覚える感覚。そのような感覚にアルファモンは襲われていた。
おかしい。どこがとは言えない。言葉に出来ない。自分がアルファモンで目の前にいるのはデクスモンのはずなのに……まるで自分がデクスモンで目の前に居るのはアルファモンであるかのような――!
「っく……『究極戦刃破竜剣』って何!?」
「何!?」
「なんでだ!?」
遠くで旅人とオメガモンの驚愕の声が聞こえた。
『究極戦刃破竜剣』……その剣の最も強力な一撃を放った。
溢れ出した破壊のオーラはデクスモンの左腕を丸ごと消し飛ばした。だが、その瞬間に同じようにアルファモンの左腕が消滅した。
幸いなことに剣を持っているのは右腕だったので剣を落とすことはなかったが……それでも片腕を失ったのは痛い。
「っく!っふ!っはぁ!」
「グギャァア!」
続けざまにデクスモンの翼――空を飛ぶことのないデクスモンには全く必要のないものであるのだが――を切り裂く。やはり同じようにアルファモンの翼も切り裂かれた。
アルファモンは急いでデクスモンの攻撃が届かない距離まで緊急回避する。
一瞬……遠ざかっていくアルファモンが見えたような気がしたが、今のアルファモンにその現象を気にする余裕はなかった。
「……これは?」
「グッグッグ……」
まるで嘲笑うかのように鳴くデクスモンの声が耳に残る。
今まで気がつかなかったがアルファモンが傷を負った場所はデクスモンも傷を負っている。そしてデクスモンが傷を負った場所はアルファモンも傷を負った――。
「……まさか?いや、それなら……」
“納得できる”旅人のドルモンの究極体の姿がここに来る前に戦った敵と酷似していたこと。そして自身の前の姿――完全体だった頃の姿――が、デジタルワールドの皆を襲った敵と酷似していたこと。そして、相手に負わせた傷は自身も負うこと。
デクスモンがアルファモンの考えている通りの存在ならば全ての辻褄が合う。
「……なるほど。そういうことか。」
どこか納得したような、何かを覚悟したような表情になるとアルファモンは剣を自身の腹に突き刺した。
「アルファモン!?」
「何を!?」
オメガモンと旅人の焦ったような声が辺りに響く。
それと同時にデクスモンがもがき苦しむかのように暴れ始めた。ただ暴れるだけの存在となったデクスモンへと接近し、アルファモンは自身の腹から引き抜いた剣をデクスモンへと突き刺す。
やがてアルファモンがその場に崩れ落ち、動けなくなるのと同時に、デクスモンも動かなくなった。
「何してんだよ!」
「……旅人……こうでもしないと……コイツは死なない……」
旅人とオメガモンはアルファモンの戦闘の終わりを感じ取ってアルファモンの下へと駆け寄っていく。
二人の表情にはアルファモンの今の状況に対する焦りが浮かんでいた。
「コイツは……オレの影だ」
「影だと?」
オメガモンと旅人の心配そうな顔がアルファモンには見えた。
アルファモンが次いで言った影という言葉に旅人とオメガモンは疑問を感じる。
「この影はこうまでしなければ倒せなかったのか?」
「おそらく……オレとコイツは繋がっていた。だから……オレが傷を負うとコイツも傷を負う……オレしかコイツに傷つけられなかった……のはソレが原因だ」
「……だからッ!」
「コイツを倒すにはオレとコイツ……二人同時に死ななければならない……片方が生きていると……もう片方もいずれ回復する……」
衝撃の事実に固まる二人を前にして、アルファモンは二人を安心させるかのように気楽に話す。こんなことは大したことではないとばかりに。
アルファモンは残った片腕に意識を集中させる。すると二つの光の玉がその手に乗っていた。
「……二人にコレを……託したい」
「でも……」
「しかし……」
渋る旅人とオメガモンを見てアルファモンは二人を真っ直ぐに見据えて呟く。
「
「でもそれは……」
「大丈夫……命は……受け継がれていく……ものだから……」
最期が近い。そのことを感じ取った旅人とオメガモンはアルファモンから光の玉を受け取った。こんな問答で残された時間を消費させるべきではないと考えたからだ。
その瞬間、オメガモンはより精錬された雰囲気となったオメガモンX抗体へと進化する。
旅人が受け取った光の玉は一瞬光輝くと真っ黒なカードとなる。
「アルファモン……お前の命はしっかりと受け継いだ……だから……」
「あぁ……ありがとう。……またな」
それを確認したアルファモンは静かに頷くと、その体がだんだんと薄れていった。
一方でその背後に倒れていたデクスモンの体もアルファモンに呼応するように薄れて消えていく。
二つの命が完全に消えそうになった時、まるで薄れゆく身体が混ざり合ったかのような雰囲気を見せた。
そして完全に姿が消えた時、アルファモンがいた場所には横たわったドルモンの姿。
「生きてる?そうか……良かった」
“良かった、生きている”そう旅人は安堵する。ドルモンにこそ退化しているが、しっかりと生きていることは確認できた。ここまで来て死なれるのはゴメンであるし、何より辛い。
“肩の荷が降りた。安心した”そのような雰囲気の旅人にオメガモンXは声をかける。
「旅人。我々にはまだ……」
「分かってる。コイツの分まで最後にやらないとな。……まぁ、そういう訳だ。お前の考えも都合も知らないけど……オレはコイツに後を任されたんでね?」
「イグドラシル……これがあなたの答えですか?実験体を作り出し……その命を弄ぶのが貴方の正義ですか!?」
それぞれがイグドラシルに対して不満をぶちまける。お互いがお互いの言葉をしっかりと聞いていたが、旅人にはどうしても聞き逃せない言葉があった。
「実験体?」
「……そうか、旅人は知らないのだったな。このドルモンは純粋なデジモンじゃない。イグドラシルが実験により作り出した生命体だ」
それを聞いた旅人は感情のままに声を荒げる。
旅人にとってはその事実は受け入れ難いものだったのだ。
「なんだよ……それ……ふざけるなよ?コイツがどんな思いで自身の存在について苦しんだと思っているんだ?答えろ!イグドラシル!」
もちろんイグドラシルは答えない。
“ふざけるな”と旅人の中で怒りがこみ上げてくる。ここまで旅人が怒ったのは己の相棒を死なせた時ぶりである。
オメガモンXの言うことが本当ならばイグドラシルはドルモンの親である。
そして旅人はドルモンがどんなに苦しんで来たのか、その一端を知っている。
“それが親のすることか”と親について知らない旅人は旅人の中の親像をぶち壊しにする目の前のイグドラシルを見る。
「……ふざけるなぁ!Set『最大強化』っぐ!おも……い……!」
旅人は怒りのままに最後の白紙のカードを『最大強化』へと変え、自身を強化。使い手を失ってその場に落ちている破竜剣を拾う。
もっともその存在の重さとも言うべきものに、自身の力を限界まで強化しても持ち上げるので精一杯だった。ウォーグレイモンXに使った時には一応『最大強化』無しで扱えたというのに。
しかし、今から狙うモノは動かない。別に旅人が剣を自在に振る必要はない。
「……あぁあアアアァア!」
持ち上げた破竜剣をその重力に惹かれるまま
破竜剣は水晶であるイグドラシルの前のバリアのようなものに当たって……そのバリアを破壊した。
「っく。これで精一杯か……あとは任せた!オメガモン!」
「あぁ!」
アルファモンの使ったような破竜剣最大の一撃ならばイグドラシルをバリアごと破壊できただろうが、今の旅人では使うことができない。
使ったとしても威力は落ち、在らぬ方向を薙ぎ払う羽目になる。故に後はオメガモンXに任せたのだ。
旅人的には自分の手で終わらせられなかったのが不満だったのだが。
「イグドラシル……これが貴方の望みですか?私には貴方の考えは分からない……いや、分かりたくもない!『オールデリート』!」
オメガモンXの左手の籠手からグレイソードが出る。
一瞬でグレイソードに書かれた文字が光ると、オメガモンXはそのままグレイソードをイグドラシルに振り下ろし切り裂く。
切り裂かれた瞬間からイグドラシルは消滅していく。イグドラシルが完全に消滅した瞬間。イグドラシル存在していた場所から光が溢れ出た。
その光が世界を照らすのと同時に――。
「なっ!」
旅人とオメガモンXの意識はブックアウトした。
これでとりあえず第二章はエピローグ的な話を残すだけとなりました。
その後幕間的な話を二話ほどはさんで第三章となります。
ちなみにアルファモン・究極戦刃破竜剣は王竜剣装備のアルファモンの羽部分が銀色になったものをイメージしてください。破竜剣自体は大体王竜剣を半分にして大きくしたイメージです。