「オレが覚えているのは其処までだ。後のことは分からん。旅人たちも別のところに飛ばされたらしいしな」
「なるほどな」
丘の上でオメガモンXとデュークモンXが話している。あの後、オメガモンXはウォーグレイモンXの隠れ家があった滝の上で目を覚ました。
しばらくの間、オメガモンは自身に何が起こったのかは分からなかった。自身の中のX抗体は存在しても、その中にあるXプログラムは存在しなくなっていた。
それが自身だけの特別なのか、そうでないのかを調べているうちにデュークモンXと合流。
その後の調査の結果としてこの世界のXプログラム自体が無くなっていた。
「あぁ、そうか……ようやく分かった。我が君イグドラシルの真意……プロジェクト・アークはなぜ実行されたか……」
「聞こう」
「我が君イグドラシルは遍くこの世界に関与していた……しかし、世界は複雑かつ煩雑になりすぎたのだ。そこで……」
「全てを仕切り直そうとした……か?結局、オレたちは皆、イグドラシルに踊らされていた訳だ」
結局全てはイグドラシルの手のひらの上だった。自分たちは道化として踊っていただけ。
それを知ったオメガモンXは自嘲気味に呟く。しかし、返ってきたデュークモンXの解釈は別のものだった。
「言っただろう?我々もそうであった様に……かの君も必死だったのだろう……必死に……生きたかったのであろう」
「命は受け継がれていくもの……か……」
「そして、全ての命は生きるためにある。これからのアイツが楽しみだなぁ」
二人はここにはいない……世界を変えた一匹のデジモンを思い浮かべる。
運命を、その宿命を乗り越えたあのデジモン。その行く末を。
「これからどうなると思う?」
「それは我々か?アイツか?それとも……」
「全てだ」
あれからロイヤルナイツが集まる場だったあの空間には行けなくなっており、今ロイヤルナイツ内ではかなりの混乱が起きている。
他のメンバーは今回の一件を知らなかったのだから当然である。下手をしなくても内部崩壊の危機でもある。
「今世界ではかなりの混乱が起きている。認めたくはないが、我々の中にも不和はある。我が君イグドラシルはもういない。それに加えてデジモンたちの我々へのイメージは最悪といってもいいだろう」
「イグドラシルについてはまだ生きてそうなものだがな」
「っふ。まあ、そう言うな。どちらにせよ、ここからは我々次第といったところだろう」
これからのオメガモンXたちロイヤルナイツの行く末は苦しいものだろう。なにせ、今回の一件でイメージは最悪、他のメンバーは知らない間に君主を失っていたのだから当然である。
“それでも頑張っていこう、むしろ頑張っていかなければ”そう思うことができた。それはこの世界で必死に生きた者たちを見続けた、オメガモンXたちだからこそ思えたのかもしれない。
「アイツについては心配はいらないだろう。いつか我々とも会う日が来る」
デュークモンXが今回の一件の中心にいたデジモンについて言うが、オメガモンXが最も気になっているのは別の人物である。
「……あの人間……旅人については?」
「っふ。随分と気にかけるのだな?オメガモン?」
「マグナモンにボロクソに言われていたからな。……それに奴にはオレたちや他のデジモンにあったような
オメガモンXは短い時間で感じ取ったことを言っていく。
だが、少し心配そうなオメガモンXと違ってデュークモンXはそれほど心配していないようだった。
「確かに。だが……あやつに関しては大丈夫であろう」
「その発言の意図は?」
「奴は……一人ではないのだろうしな」
「そうだな……そうだったな。いらぬ心配だったか……」
空を見上げる。変わった世界で……これからを始めるためにオメガモンXとデュークモンXは歩いていく。
その頃。旅人たちがウォーグレイモンXと初めて出会った遺跡に、旅人とドルモンはいた。
「本当にここでいいのか?」
「……うん」
旅人たちが目を覚ましたのは旅人がドルモンと初めて会った川の近くだった。
自分たちの置かれた状況が理解できなかったが、取り敢えず全員の無事を祝い合った。――のが二週間前。
それから旅人たちはトコモンXやウォーグレイモンXを探していたが、どこにも――隠れ家にも――いなかったことで落ち込んだのが一週間前。
ナムとリュウダモンを見つけてウォーグレイモンXたちの居場所を聞いたのが三日前。
ナムにウォーグレイモンXたちへと連絡を取ってもらい、旅人の相棒の方のドルモンをナムたちに預けて出発したのが昨日のことである。
「ウォーグレイモンたちとの待ち合わせの場所にはまだあるけど……」
「意外に旅人って心配性だな。もう大丈夫だよ」
「そうか?」
ドルモンはあまりに心配性な旅人の言い草に思わず苦笑する。
だが、ドルモン自体空元気なのは分かっているし、旅人にもバレている。
「それじゃあ……オレは行くからな?……じゃあな」
「……ちょ、ちょっと待った!」
ドルモンに背を向けて歩き出した旅人を引き止める。
分かっているのだ。この別れはしばしの別れではない。下手をしたら今生の別れとなることに。
ドルモンは何かを言おうとするが言うべきことが見つからずに口を閉じたり開いたりする。
「どうした?」
「あ……えっと……」
急かすこともせずに静かに待つ旅人を見て“何か言わなくては”と、ドルモンの中の急く気持ちが強くなっていく。
だが、そういう時に限って言うべき言葉が見当たらない。
「本当に大丈夫か?なんならもう少し一緒に行くか?」
「それはいい!」
「そうか?」
「あぁ!」
そんなドルモンを見かねたのか旅人は一つ提案するが、その提案はドルモンの望むところではない。今日ここで別れなければきっと……分かれることができなくなる。ドルモンはそんな気さえした。
勇気を出す。自分が最も伝えたいこと。それだけを伝える。それだけを言葉にする。
「旅人!オレは……旅人のおかげで今、ここにいる。だから今度はオレの番だ。旅人が困ったときはいつでも呼んでくれ。いつでもどこでも駆けつける」
「あぁ……そん時はよろしくな」
最後に握手をして別れる。二人の間に目に見えない
旅人の姿が見えなくなってからドルモンは一人思う。自分がここに居るのは旅人とオメガモンXのおかげであると。二人が自身の命を受け継いでくれたから、消え行く定めのデータに逃げ道ができ、自身はこうして今ここにいられるのだと。
「またな……旅人……オレのパートナー……ってこんなこと言ったら旅人の方のドルモンに怒られちゃうか」
「おーい!ドルモーン!」
「モーン!イタ!イタ!ミツケタ~!」
「トコモン!ウォーグレイモン!」
ちょうど旅人と入れ替わるようにウォーグレイモンXとトコモンXが現れた。
ドルモンたちは再会を喜び、新たなる一歩を歩き出す。その先にある明日を信じて。
一方でドルモンと別れた旅人はナムたちと合流していた。
「遅い!」
旅人を出迎えたのはドルモン。旅人を発見するやいなや涙目で旅人へと駆け寄ってきた。
「遅いってドル。昨日の今日だろ」
「だって!だって!話題が続かないんだもん!空気が……キツいんだよ!?ナムは表情変わらないし、リュウダモンは口うるさいし!」
「口うるさいとは何だ!口うるさいとは!」
「ほら~!」
ナムたちの方を見て半泣きになっているドルモンは旅人に詰め寄った。
確かに表情の変わらないナムと口を開けば嫌味の連続のリュウダモンと一緒では子供気質があるドルモンではそれは辛いことだったろう。
「まぁまぁ。そういやナム?結局確かめたかった事ってなんだったんだ?」
ドルモンを宥めながら話題をそらそうとする。旅人としては当然答えないと思っていたのだが――。
「この世界の……厳密にはイグドラシルの結末」
「アレ?そ、そうか……。まぁ、分かったなら良かったな」
思ったよりあっさり答えたので旅人としてはかなり拍子抜けである。
もっともそれがどういう意味を持っているのかは旅人には分からなかったのだが。
「良くない。奴は最後まで奴だった」
「?」
それがどういう意味だったのかは分からない。
ただ、イグドラシルのことを口にしたナムは無表情ながらもどこか怒っているようだった。
場の空気に当てられたドルモンが再び旅人の方に寄ってくる。リュウダモンは既に避難していた。
「旅人!旅人!地雷踏んだんじゃない?早く何とかしてよ!」
「無茶言うな!」
「そこぉ!姫様の前で何をこそこそ話している!」
格好良く旅人たちを叱るリュウダモン。だが、それは木陰に隠れていなければの話である。
「リュウダモン。うるさい」
「そう言うなら木の陰から出てきて言え!」
「で、出てこれるわけ無いだろう!」
旅人と話していて自身の言うことを聞かなかったのか、聞いていなかったのかは、分からないが頭にきたナムはリュウダモンに再び同じことを言う。
「リュウダモン。うるさい」
「はいっ!姫様!」
リュウダモンは一瞬震え上がるとものすごく綺麗な敬礼をした。
リュウダモンのおかげでいつもの雰囲気のナムに戻ったと安堵するが、ナムは常時無表情なので実際はどうか分からない。
“無表情のまま怒っている”の確率が一番高く、怖い。
しかし、いつまでもこうしているわけにはいかないので行動を起こす。
「……よし。それじゃあそろそろ帰るか。ナム!よろしく」
「貴様ァ!姫様に向かってなんという口の聞き方を!」
「リュウダモンうるさい。旅人。無理」
「は?」
旅人の口から思わず間抜けな声が漏れた。
“今なんと言った?”そう思考する旅人の聞き間違えでなければ、無理である。無理。つまり不可能。
「ど、どういうことだ?」
「ゲートの移動はランダム。元の世界に帰れる保証はない」
「マジか……」
初めて知る驚愕の事実。確かにランダムならば確実に帰れる保証はない。
しかし、色々な意味で起死回生の案を出したのは今まで黙っていたドルモンだった。
「だったら旅人は?白紙のカードって何にでもできるんでしょ?世界を移動することできないの?」
「……どうだろう?」
「できる」
「マジで!?」
ナムのお墨付きの言葉に旅人は本日二度目の驚愕の声を上げる。
思ったより簡単に済みそうだと安堵し、白紙のカードを取り出した時……ナムから待ったをかけられた。
「待って。使うときはどんな世界かしっかりとイメージする」
「もししないと?」
「全然違う世界に行く。もしくは次元の狭間で迷子になる」
「……試す前で良かったぁ」
ナムの忠告が取り返しがつかないことになる前にされたことで旅人は安堵する。
ナムに言われなければうっかり、どこか別世界で迷子になり、そのままその世界で旅をしたことになっただろう。
「アレ……別に不都合ないんじゃね。っていうかむしろ大歓迎?」
“いやいや、ウィザーモン達との約束はどうした”流されかけた約束を思い起こして旅人は気合を入れる。
それ以降もやたらしつこく繰り返されるナムの同じ注意をしっかりと聞いて、旅人は白紙のカードを取り出した。
全員が近くに寄ったのを確認して……しっかりと世界をイメージ。白紙のカードを変化させる。
「set『世界転移』」
光が全員を包む。
旅人たちが次に移動した世界は果たして元の世界か、それとも――。
というわけでこれで第二章が終了。前の話でも書いたとおり、二話ほど番外編的な話を入れて、本格的に第三章へと入ります。
以下読まなくてもいい作者のこぼれ話。
最近文章力を上げるために漫画やアニメ、ドラマ等を見たらとりあえず頭の中でそのシーンを文章化してみることにしている。これでちゃんと結果が出るかは怪しいけれどかなり難しくてびっくりした。