まあ、ともかく書き溜めがまだあるのでさっさと二話目を投稿します。
ではどうぞ。
クワガーモンとの戦闘のあと当初の目的通りに隠れ里へ向かう。
あの種――タネモン――はすっかり旅人の頭の上が気に入ったようで頭の上から降りてこない。
「お~い!」
「アレはドルモンじゃないか?」
隠れ里の入口ではドルモンが待っていた。どうやら飯を前に金がないことに気づき待っていたらしく、“遅い!”と言った雰囲気を全開にして旅人たちの下へと近づいて来た。
「遅いよ!いつまでかかってい……る……?アレ?」
「?」
ドルモンの言葉が止まった。ドルモンは旅人の頭の上を指して震えている。
“どうしたのか”と訳が分からずに旅人とウィザーモンは二人で首をかしげる。 今の旅人の頭の上といえばタネモンが乗っている。旅人はそこでようやく納得がいった。要するにタネモンを指さしているのだと。
「ああ。コイツ。さっき助けた時に懐かれてね」
「えぇ!最近オレを頭の上に乗せてくれなくなったのに!」
“どういうこと!”とドルモンはまるで浮気された妻のように旅人に詰め寄る。無駄に真剣である。
「アホか。今のオマエが乗ったらオレの首の骨が折れるわ!」
そう、ドルモンは大型犬より少し大きいくらいのサイズである。子供一人くらいだったら楽勝で背負えるサイズだ。
そんな存在が頭の上に乗られたら、旅人は首の骨を折る事態になるだろう。ドルモンはそれでも諦められないらしく、わざとらしい独り言が続く。
「昔は乗せてくれたのにな~?他所の子は乗せているのにな~?」
「さて。行こうか」
「いいのか?」
ウィザーモンが“放っておいていいのか?”と尋ねるが、こればかりはどうしようもない。卵から生まれたばかりの時やその次の姿だった時とは違うのである。
恨めしそうに、それでいて羨ましそうに後頭部を見るドルモンに“将来ハゲないだろうな”と旅人は余計なことを考える。
その後一行は隠れ里へ入っていった。ちなみにドルモンの機嫌はこの後、食事の時間まで良くなることはなかった。
「タネモーン!」
「パルモーン!」
隠れ里に入った一行を迎えたのは華々しい歓迎……ではなく三千里離れていたような親と子のような者たちの再会である。
頭に花がある植物のような生物――パルモン――とタネモンの再会に旅人達は若干の空気と化すが、邪魔するほど無粋な者はここにはいないのでしばらくの間待つ。
「旅人~お腹減った~」
「いい加減に我慢を覚えろ!」
訂正。一匹無粋というか
「だって!今朝からロクに食べてないんだよ?そろそろ限界なんだけど!?」
「だからって……!」
「あの~?」
再会を果たしていた二人が話しかけてくるが、言い争いを始めた二人は気づかない。
早くもこの感じに慣れ始めてきたウィザーモンがため息一つ吐き、代わりにパルモンたちの話を聞くことにした。
「えーっと、タネモンを助けてくれたそうで。ありがとうございます」
「いえ、こちらもなりいきでしたから」
「それでですね、ぜひお礼がしたいのでこの里一番のレストランでご馳走させていただきたいのですが……。」
その提案について考える。ウィザーモンとしてはもっと別のモノ――情報とか物とか――がお礼としてはいいのだが……。
「ドルは仙人って知っているか?あいつらって霞を食って生きているらしいぜ?」
「だから何?まさかオレに霞を食って生きろと!?」
「あ、あははは」
「ぜひお願いします」
あの二人組がうるさそうだったので諦めた。あちらのことについては見ないことにしたのか、パルモンとタネモンはレストランに向けて先導するように歩き出した。と言っても歩いて数分の距離だったが。
「お~い!お礼にご飯を奢ってくれるそうだ。行くぞ!」
「はっ!?」
「ご飯~!」
里のど真ん中で喧嘩をしていたことに気がついたらしい旅人はまたやっちまったとばかりに顔を覆ったが、ドルモンはそんなことお構いなしにレストランに向けて駆けていった。
ドルモンはよほど我慢できなかったのか、扉に向けて綺麗に飛び込みながら入っていった。
「キノコってる~!」
と思ったら、レストランに入った瞬間にすぐに出てきた。どうやら苦手なキノコがあったらしい。
旅人としては“いい加減慣れろ”と思いながらレストランに入る。
旅人はついでになんの事か分からない顔をしているウィザーモンに、ドルモンはキノコが苦手ということを伝えておく。
「マシュマシュシュシュ。こんなクソ不味いメシよく食えるマシュね~」
「……これは予想外だったな」
入ったところで出迎えたのはキノコ――マッシュモン――だった。生き物の。
しかもキノコ――デジキノコというらしい――を食べている。共食いである。
「ゆ、許してくださいピヨ~」
コック帽をかぶったピンク色の鳥が泣いている。状況を見るにどうやら粗悪な品を作ったらしい。
「マシュ~!吾輩が来た時は、デジキノコはミドリデジキノコにしろって言ったはずだマシュ!」
「ただのクレーマーかよ」
旅人は思った以上にくだらないことに脱力する。ウィザーモンはさすがというべきか、タネモンとパルモンを救出して隠れていた。
「マシュ……?文句あるマシュか……?」
「はあ。いい加減やめてくれ。飯が食えない」
「マシュー!生意気~!」
ため息を吐いたことがまずかったらしく、マッシュモンはいきなり切れ始めた。その勢いや酔っているのかと思うほどである。
多分ヤンキーでもここまで酷くはない。
「語尾取れてるし。作ってたのか?」
「マシュマシュ!いい加減にするマシュ!コテンパンになるがいいマシュ!」
「set『炎』」
炎が走り――と言ってもかなりショボイサイズだったが――キノコのカサの部分を燃やす。
マッシュモンはしばらく走り回っていたが消えないのを悟るやいなや逃げていった。
「覚えているマシュ~!」
「旅人!早く食べようよ!」
ついでになんでもないようにドルモンたちは机に座って料理を頼んでいた。ドルモンに関してはいつ戻ってきたのか分からない。
マッシュモンがいなくなるまではいなかったはずである。
「ありがとうピヨ。ピヨモンというピヨ!さっきは助かったピヨ!」
「……どういたしまして」
料理を運んできたときにお礼を言ったピヨモンに地味に癒された旅人だった。
そんな中で旅人は、一通り食べ終わって団欒しているところで来た一言に変な声を上げた。
「いい加減にカードのことについて教えてくれないか?」
「ほあ?」
ちなみに料理は見た目はイモムシパラダイスという感じのゲテモノだったが、何故か味が肉だったり魚だったり、果物だったりと訳が分からない味だったことを明記する。
「めんどくさい。以上」
“よく分からないし、だってめんどいんだもの”一言で済ませようとする旅人だったが、引き下がる気配がないウィザーモンにうんざりしたのか触りだけを話すことにした。
「カードは前も言ったようにいろいろある。一応参考までに言うと、しばらく効果が続くタイプ……さっき使った『炎』みたいなやつな。と一回の発動につき一回だけ効果を発揮するタイプがある。持続するタイプはこっちの意思で範囲とか出力とかある程度決めれる。ってくらいだな」
「ふむふむ。疲れるのか?それと使ったカードは二度と使えないのか?」
「別に疲れねえよ。使ったカードは手からなくなる。がいつの間にかケースに戻ってる。こんな感じか?あぁ、あとsetの声でカードを待機状態にしてカード名を言うことで発動する」
「ふむ。ではどれくらい……」
「あー!もう!めんどくさい!オレ専用で、とにかく便利でいろいろある!これだけ覚えとけばいいの!」
これ以上は喋らないとばかりに口を閉ざした旅人にこれ以上は聞けないと判断して、ウィザーモンは思考の海に潜る。
実際、カードについては旅人ですら知らないことが多いのだ。師匠が何故持っていたのかも。何故自分が使えるのかも。
ちなみにドルモンには使えなかった。あとで試したがウィザーモンすら使えなかった。
「それでは行ってくる」
その後、ウィザーモンはパルモンたちを家まで送るついでに珍しい薬草を分けてもらいに行った。
タネモンが旅人の頭を離れなかったので、別れるのに予定より時間がかかったのは余談である。
「しっかしホントにファンタジーだな……」
ドルモンと里を歩きながら周りの家を見る。木に張り付くような感じの家。地球では見られない造りに旅人は少しテンションが上がっている。ついでにピヨモンにお礼としてもらったソフトクリームっぽいものがうまい。
どこかで見たような自然色と食感に違和感を抱いてはいけない。食べられなくなる。
助けたのは旅人なのに、何故かドルモンたちももらっていたのが旅人は納得いかなかったのだが。
「あ~!いたマシュ!」
どこかで聞いた声に振り返る。というかさっきレストランで会ったマッシュモンだった。頭が黒く焦げている。
“めんどくさいことになりそうだな”と旅人はマッシュモンの雰囲気を見て悟った。
「何の用だ?」
「キノコッ!」
旅人はキノコということで逃げ出しそうになるドルモンの尻尾を捕まえて確保する。
旅人のこの対応は面倒を運ぶタイプだと分かったが故のぞんざいな対応である。
「マシュマシュシュ。そんなことを言えるのも今のうちマシュ!先生!やってください!」
「オラオラどけどけ雑魚ども!」
「人頼みかよ……」
“これは面倒な流れだな”と旅人は直感し逃げる準備をする。現れたのは混紡を持った緑色の鬼――オーガモン――だった。
旅人達を品定めするような顔で見ている。
「へぇ。オメェが俺様の縄張りを荒らしているって奴か!このオーガモン様の縄張りを荒らすとはな!度胸あるじゃねえの!」
「先生。あとはお願いしマシュ!」
マッシュモンは逃げた。全力で。何しに来たかは知らないが面倒事だけを置いていってくれたらしい。
しかもオーガモンはやる気満々である。一方で旅人達のテンションはダダ下がり。逃げる準備万端である。
「オラ~!行くぜ~!」
「っ!意外と速い!」
いきなりの突進は直線ゆえにカードの力を使わなくても避けることはできたが、意外な速さに旅人は驚く。ついでに旅人のソフトクリームらしきものとドルモンも無事だった。
「やべっ!ドルっ!」
……ドルモンの顔以外。旅人が尻尾を掴んでいた為、逃げきれなかったドルモンは、ソフトクリームらしきものごとオーガモンに吹き飛ばされて、顔面から落ちたのだ。
「くく……はははっ!」
旅人にはこのあとの展開が読めた。幸か不幸かオーガモンには分かってなかったが。
「あ~ドルモン?あのな……」
直後旅人は悟る。“あ、これ無理だ”と。ドルモンは完全に正気を失っている。口から涎を垂らし、今にも飛びかかりそうな雰囲気だ。
基本子供っぽいドルモンだが、いや、子供っぽいからこそキレると手がつけられないのだ。
ドルモン曰く、“戦いは嫌いだが、竜の因子、本能がときどき暴れようとする”とのことであり、正気に戻ってからひどく落ち込む。
とは言ってもどうしようもないので旅人は素直に従う。後のフォローについて考えながら。
「あ~……、恨んでくれて構わんぞ~?」
「ん?なんだなんだ?その毛玉が相手かぁ~?あっはっは、叩き潰してやるぜぇ!」
何も知らないオーガモンを旅人は道化のように見ることしかできない。
いくららしくないといってもドルモンは好戦的で強大な力を持つ
その力が発揮されるときは凄い。あまりの凄さに平和な人間の世界では役に立たなかったほどだ。しかし、ここは違う。
「グァルル……イクゾ……タビト……」
「……はぁ。悪い。Set『進化』」
「ドルモン進化~!ドルガモン!」
ドルモンの姿が変わる。
――それは本来あるべき姿、経過するべき経験を超えて成長する、進化の力だった――
獣のような姿はそのままに、さらに大きく、羽が生える、より竜に近い姿へと。
当然一瞬とはいえその変化を見せられたオーガモンとしてはたまったものではない。
「進化だと!こんな短時間で姿が変わる?いったい……てめぇは……」
目の前の現象を何事かを考えていたオーガモンだが、埒が明かないと判断したのか、そのまま真っ直ぐにこちらへと駆け抜け、混紡を振り下ろしてくる。
ドルガモンはその混紡を口で受け止め……そのまま噛み砕き、同時に尻尾を使いオーガモンを吹き飛ばす。
「ゲホッ。姿が変わっただけあるな。っは!てめぇ強ぇな。だが!これくらいで俺様がどうこうできると思ったら大間違いだ!くらえ!『覇王拳』」
決死のオーガモンの一撃をドルガモンは軽く受け止める。驚き固まるオーガモンをドルガモンは掴み空へと上がる。
もちろんオーガモンも反撃する。しかしそのどれもがドルガモンには効いてはいなく、オーガモンはそのまま地面に叩き落とされた。
「コレデ……オワリダッ。『パワーメタル』」
口から吐き出された鉄球は一瞬で巨大化。地面に叩きつけられ身動きが取れないオーガモンをそのまま押しつぶした。
「やべっ……いやいや、やりすぎだろ」
「ウゥ……あれ?どうしたの~?」
ドルガモンはスッキリとした様子でドルモンに戻った。カードを使って進化すると、しばらくすると何故かドルモンまで戻ってしまうのだ。
周囲――主にドルモンの最後の一撃の――惨劇を見て旅人は冷や汗を垂らす。軽いクレーターが出来ていた。
「これは……どういうことだ?」
「ウィザーモン!」
騒ぎを聞きつけたらしいウィザーモンがやって来た。辺りの惨状を見て首をひねっていたが、ドルモンと旅人を見てすべてを悟ったらしい。
このあとにあるであろうトラブル回避のために頭を抱える羽目になる旅人達――主に旅人とウィザーモン――だった。
ちなみに旅人の戦闘能力は成熟期クラスです。完全体なら相手によっては戦える程度です。