【完結】ワールド・トラベラー   作:行方不明

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冬休みに入って曜日感覚が薄れていたせいで更新逃すところだった……。

そんなこんなでヒヤヒヤしつつ更新します。


第三十話~バグラ軍の襲撃~

 朝――といっても時刻はもう昼近くなのだが――起きた旅人達は集まって朝食を食べていた。食事の内容はもちろん祭りで手に入れた商品の残りである。

 

「旅人なんか凄いことになっているけど……」

 

「まるで落ち武者の顔のようだぞ。全く……夜ふかしなぞするからだ!」

 

 ちなみに現在の旅人の顔には目の下に濃いクマができていた。その凄まじさといえば朝会ったおそらく子供の――幼年期クラスであろう――小さなデジモン達が揃いも揃って泣き出した程である。

 

「誰のせいだと思っているんだ……」

 

「少なくとも儂のせいではないな」

 

「……え?オレのせい?」

 

「……お前もう少し静かに寝ろ!一時間おきに叫びながら起きるのをやめろ!寝れん!」

 

「……ゴメン」

 

 旅人の魂を込めた叫びに思い当たることがあるのか、ドルモンは黙り込む。

 一方の旅人はフラフラしており、今にも倒れそうな程である。

 

「……眠い……グゥ……はっ!やばい寝てた……ん?量が少ない……ドル?」

 

「なんで!?」

 

「……食べカス付いてるぞ」

 

 そんな旅人がウトウトした一瞬の間に旅人の朝食の量が減っていた。犯人であろうドルモンを睨む旅人。

 しかし、今回に限っては、ドルモンは無罪であり、冤罪である。

 

「いやいや!今回は違うって!」

 

「今回()って何だ!」

 

「朝くらい静かにしておれんのか!」

 

「リュウダモン。旅人。ドルモン。みんなうるさい」

 

 ちなみにリュウダモンたちはもう朝食を食べ終わっており、食べ終わってないのは旅人のみである。

 朝食後のティータイムを邪魔されたとあってナムも若干イライラ――結局無表情なのだが――している。

 

「あれ?……リュウダモン食ったか?」

 

「何を言っておる!貴様らならいざ知らず、このリュウダモン……そんなはしたない真似はしん!」

 

「ドルと喧嘩している時にオレの朝食が無くなったんだからお前しかないだろうが!」

 

「貴様何言っておる!」

 

 いよいよ飛び火してきた濡れ衣にプライドが高めのリュウダモンは黙っていられない。そこで喧嘩腰になるあたり、リュウダモンも大概程度が低い。

 ちなみにナムは犯人を知っているし、見つけている。だが、ティータイムの最中なのでわざわざ面倒なことはしないだけである。

 

「旅人」

 

「何?ナム、今ちょっと忙しい――」

 

 だがこのままだといつまでもやっていそうな気配を見せる事態に、ナムはため息を吐いて犯人を捕まえることにする。

 ちなみに犯人は見つからないと思っていたのか、かなり早くにナムに捕まることとなった。

 

「これ。犯人」

 

「あはは……こんにちはっぴ……」

 

「ピッコロモン……」

 

 犯人はピッコロモンだった。理由は単純にお腹がすいたからである。

 もちろん、旅人やドルモンが喧嘩しているところを見て面白がっていた部分もないわけではないのだが。

 

「……喜べドル!今日はピッコロモンの丸焼きだ!」

 

「やった~!」

 

「待つっぴ!待つっぴ!ゴメンっぴー!」

 

「っち!逃げたか!」

 

 さすがというべきか、見かけによらずというべきか。

 ピッコロモンは全身をロープで縛ってあったくせに、一瞬で抜け出した。

 

「物理的に不可能だろ」

 

「そこは魔法っぴ!」

 

「便利だな……」

 

 ちなみにこの時点で旅人の中の怒りはほぼ消えている。

 面倒くさくなったとも、どうでも良くなったとも言う。

 

「はぁ。何しに来たんだよ」

 

「その前に貴様は儂たちに言うべきことはないのか……?」

 

「……疑ってスミマセンでした」

 

「……まぁいい。それでそこなピッコロモンは一体何をしに来たのだ?」

 

 あまり心がこもっていないように感じる旅人の謝罪にリュウダモンは怒りを感じる。だが、リュウダモンにとって旅人に怒りを感じるのはいつものことだ。そこら辺のことは諦めの境地にある。

 もっとも旅人よりピッコロモンの方に興味があったともいうが。

 

「まぁ、用はないっぴ。強いて言うなら次のゾーンに行かないかっていう誘いっぴ!」

 

「次のゾーンに?」

 

「そうっぴ。コードクラウンを使うわけじゃないっぴから行き先はランダムっぴが、移動できることはできるっぴ」

 

 ランダム。つい最近の出来事からその言葉に嫌な予感しかしない旅人たちだが、旅人だけは昨日の話から別の予感を感じていた。

 

「……厄介事を追い出そうとしているのはオレだけか?」

 

「まぁ、そうっぴ」

 

「断言したよ……」

 

 隠そうともしない思いっきりの良さに思わず口を開けて唖然とする。表情に出しているのは旅人だけだが、内心は珍しくもナムとリュウダモンとて同じ気持ちである。

 ちなみにドルモンはどちらでも良いから知ったことではないと我関せずを貫いていたりした。

 

「バグラ軍は主にコードクラウンを狙って来るっぴ!だからコードクラウンがなければ、このゾーンは安泰っぴ!」

 

「……ここまで来るといっそのこと清々しいな。しかし、ピッコロモンよ。そちらの真意は何だ?今言ったことが本心ではあるまい?」

 

 “冗談じゃない、コードクラウンを返す!”とコードクラウンを収納袋から取り出そうとしている旅人に変わって、リュウダモンが質問する。

 旅人やドルモンと違ってリュウダモンはその裏としか思えない発言にさえ裏があると感じているらしい。

 

「……さすがっぴ。二人は旅人やドルモンとは違うっぴね」

 

「どういう意味だ!?」

 

「教養がないってことっぴ!」

 

「お前……オレが難しい言葉わからないと思っていたら大間違いだぞ!」

 

「でも無いことには変わりないでしょ」

 

「ドルは黙ってろ!」

 

 いまいち話が先に進んでないのだが、そんなことは関係ない。

 旅人は取り出したコードクラウンをピッコロモンに押し付けるが、ピッコロモンは魔法を使ってまで旅人の返却行為を妨害している。

 

「何してんだ!やっぱり返す!」

 

「無理っぴ!コードクラウンには意識のようなものがあるっぴ!その意思が旅人を選んだのだからしょうがないっぴ!」

 

「選んだってオレは選ばれたつもりはないわ!」

 

 旅人としてはマグナモンに言われたことに悩んでいたこともあり、あまりこの世界の事情に深入りするつもりはない。当然だが、バグラ軍と事を構えるつもりもない。

 しかし、ピッコロモンは断固として譲らないつもりだった。

 

「コードクラウンの意思って怪しすぎるだろうが!」

 

「怪しくないっぴ!」

 

 だが、お互いが譲る気がないために話し合いは少しも進まない。

 ナムは紅茶のおかわりが十杯目に突入しているし、ドルモンにいたっては飽きて寝ている。

 

「だーかーらー!っ!」

 

 尚も旅人が言い募ろうとした瞬間、建物全体が揺れた。というより、世界が揺れた。

 

「何?何!どうしたの~!?」

 

「何事っぴ!?」

 

 突然の事態に飛び起きたドルモンは放っておいて、全員が窓から外を見る。

 すると街の中央に咲く巨大な桜から黒い煙が立っていた。

 

「一体……?」

 

「ピッコロモン様!バグラ軍です!ついにこのゾーンにもバグラ軍の魔の手が!」

 

「バグラ軍っぴ!?急いで戦えない者を逃がすっぴ!私が時間を稼ぐっぴ!」

 

「な、何をおっしゃられるので……!?」

 

「早くするっぴ!」

 

 鬼気迫るピッコロモンの顔に伝令に来た亀のようなデジモン――カメモン――は急いで駆けていく。

 一方でピッコロモンは大規模な魔法を使っておうとしているのか、体中が薄く、だが確かに発光し始めていた。

 

「すまないっぴがここまでだっぴ!バグラ軍は様子見しているみたいだっぴ!今のうちに逃げるっぴ!」

 

「おい!逃げるって……!お前は!?」

 

「……ピッコロモン。まだ儂の質問に答えてもらってないのだが?最後に答えてもらいたい」

 

 リュウダモンの言葉の最後という部分に諦めたような笑いを漏らすピッコロモン。その顔には生き残るという意思はなく、死を悟ったような顔だけがあっただった。

 

「私は今までずっとこのゾーンを見守ってきたっぴ……」

 

「……」

 

「これは私のわがままだっぴ。このゾーンは奪われたくないっぴ。コードクラウンさえアイツ等に渡さなければ、このゾーンは本当の意味でアイツ等のものにはならないっぴ」

 

 このゾーンだけは絶対に奪われたくない。

 その思いだけは旅人にも伝わってきた。それは真っ直ぐな想い。そのような想いが揺らぎ始めている旅人にとっては目を背けたくなるような想いである。

 

「……」

 

「コードクラウンの意思に乗っかる形になるっぴが……このタイミングは良かったのかもしれないっぴ。だからどうか……コードクラウンを守ってほしいっぴ」

 

「……」

 

「お願いしますっぴ!」

 

「……責任は……持てないからな……さっさと取りに戻れよ」

 

「……ありがとうっぴ」

 

 その旅人の返答にピッコロモンは感謝する。ピッコロモンとて分かっているのだ。旅人たちは部外者でこのようなことを頼むことが筋違いだと。

 それでも旅人はかなり葛藤した上で、ピッコロモンの願いを聞いてくれたのだ。

 だからこそ。ピッコロモンはお礼にとばかりに槍を振るい、魔法を使う。

 

「ん?ナニコレ?」

 

「時間は稼ぐっぴ!この先の……中央の桜に門があるっぴ!門の中のデジタル空間を真っ直ぐ進み続ければ、ランダムに別のゾーンに行けるっぴ!」

 

「っておい!コレなんだ!」

 

 旅人の言うコレとは旅人たちを包むシャボン玉のような膜のことである。おまけに膜自体が超高速で移動している。旅人たちを包んだ膜は凄まじいスピードで街を飛んでいく。

 

「それじゃあっぴ!」

 

「おい!」

 

 それきりピッコロモンの姿が膜の中から消える。

 どうしようもない旅人たちはしばらく狭い膜の中でピッコロモンの無事を祈りながら、辛抱しているしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 時間にして一時間。

 飛び続けた膜はいきなり消える。そして膜が消えたことによって訪れる旅人たちの未来は決まっている。

 そのまま宙に投げ出されることになったのだ。

 

「うわっ!」

 

「グェ!あの野郎……落ちるならそう言っておけよ……ん?」

 

 前を見る。横を見る。そして後ろを見るまでもない。

 ナムたちは既に戦闘態勢に入っている。旅人たちが落ちたところはデジモンたちが大勢いた。

 それらすべてがすべて良いデジモンというわけでもないだろう。

 

「……」

 

「……」

 

 その殺気立った雰囲気からおそらくバグラ軍のデジモンたちであろうことがわかる。

 ピッコロモンのいう桜――門――は既に包囲されており、逃げ場はすでに塞がれていたのだ。転移系のカードは使おうにも転移した先で蜂の巣の可能性があるために危険すぎる。

 故に取る手段は一つしかない。

 

「……アイツ今度会ったら覚えてろ。……ドル気合入れろよ?とりあえず門にたどり着くこと最優先で。一点突破で一気に行く」

 

「え?……分かった……」

 

 “大丈夫か?”とどこか上の空のドルモンの反応が気になった旅人だが、今はそんなことをしている場合ではない。

 一刻も早くこのゾーンから脱出しなければならないのだ。

 

「set『進化』『二重』」

 

「リュウダモン」

 

「……ドルモン。ダブル進化――ドルグレモン!」

 

「はっ!姫様!リュウダモン!進化――ギンリュウモン!ギンリュウモン!進化――ヒシャリュウモン!」

 

 ナムと旅人はドルグレモンとヒシャリュウモンに進化させるとそのまま二匹の背に乗った。

 瞬間、ドルグレモンとヒシャリュウモンは動き出す。

 何故か動こうとしない、ゴムのような体を持つデジモンであるトループモンを蹴散らして、桜の下に見える門へと目指す。

 門は半分開いており、そこから光が漏れている。

 すべてが滞りなく進んでいる。旅人もナムも、その場の全員がそのまま何事もなく進むかのように思えただろう。

 

「このまま行く――?」

 

「……」

 

「ドル……?うわっ!」

 

 だが、すべては気づいた時には遅かった。

 ドルグレモンの様子がおかしいことに気づいた旅人が声をかけるが遅い。一瞬後にドルグレモンは元のドルモンに戻ってしまったのだ。

 

「ドル!?」

 

「あれ?なんで……?」

 

 何が起こったのかわからない。

 そんな表情を浮かべるドルモンだが、そんなことを考える暇はない。何故ならここは戦場。敵陣のど真ん中である。

 カードを取り出し、その場を脱出しようとする旅人はその瞬間。いかにも珍しいヒシャリュウモンの焦ったような声を聞いた。

 

「若造!」

 

「マズッ!」

 

 感じた悪寒に従い、すぐさま旅人はドルモンを引きずってその場を転がる。瞬間、とてつもない衝撃波によって旅人たちは吹き飛ばされた。

 

「っく……一体何だ……?」

 

「痛た……」

 

 何が起こったのかも理解できず、すぐさま攻撃の方向を見る。

 そこにあったのは鞘に収まったまま、鎖に繋がれている巨大な刀だった。

 

「ふむ……これくらいは避けるか」

 

「タクティモン様!」

 

 “タクティモン様”とバグラ軍のデジモン達が声を上げる。武人とも言うべき姿のデジモンはゆっくりと旅人たちへの方へと振り返った。

 様付けからして、あのタクティモンというデジモンが幹部クラスと見て間違いない。

 そしてタクティモンから発せられる威圧感はあの英雄と呼ばれたデジモンや、別世界で出会ったロイヤルナイツに匹敵する。あるいは凌ぐほどの威圧感を持っていた。

 そして先に挙げたデジモンたちと戦って旅人が生き残れたのは単にそのデジモンたちが本気でなかったこと、そして途中で助けが入ったことが大きい。

 ドルモンが謎の不調のこの状況では不味いというどころの話ではない。

 

「お前たちは下がっていろ。ふむ……来ないのか?」

 

「……」

 

「旅人……」

 

 白紙のカードを取り出して構える。いっそのこと一か八かで転移系のカードを使うべきか。

 そう考える旅人だったが、ゆっくりとだがタクティモンはこちらへと向かってきている。ただでは逃げさせてくれないだろう。どのみちこの状況をなんとかしないといけないわけだ。

 だが、旅人たちの意に反して目の前でタクティモンの歩みが止まった。刀を担ぎ、こちらへと向かってくるタクティモンを止めたのは――。

 

「貴様達が持っているこのゾーンのコードクラウン。渡してもらおう」

 

「お前……一体何!?」

 

 ナムだ。

 ナムはいつもの無表情が怯えたような顔になっており、その表情には今までにはない焦りのようなものが見受けられた。

 

「知らない!私は……我は……お前のようなデジモンは知らない!」

 

「ナム?」

 

「姫様!お気を確かに!」

 

 感情を剥き出しで取り乱すナムを、沈めようとするヒシャリュウモン。

 だが、この場においてそれは最もしてはならない行動の一つである。

 

「おい!ヒシャリュウモン!っち!set『――」

 

 旅人の焦ったような声が辺りに響き渡る。

 だが、旅人がカードを使うより早くにタクティモンの刀がヒシャリュウモンを吹き飛ばした。

 

「グア!」

 

 桜の木に激突し、動かなくなるヒシャリュウモンとナム。ヒシャリュウモンにいたってはリュウダモンへと戻っている。

 だが、急ぎ駆け寄ろうとする旅人たちの前にタクティモンが立ちはだかった。

 幸いにしてナムとリュウダモンの周りには敵はいない。ほんの少しの時間だけは大丈夫であろう。

 

 そして――戦いが始まった。

 




この前に天然気味の知人と、どうしたらUAとか評価とか感想とかお気に入りとか増えるのかなと冗談交じりに話したら、
「行方不明っていう名前がエタリそうだから、無理だろ。」
と言われた。問題はそこじゃないと言いたい。
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