【完結】ワールド・トラベラー   作:行方不明

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年内最後の更新です。


第三十一話~猛将!武者龍!暴走再び!~

 自軍の軍団を下がらせたタクティモンは旅人とドルモンに向き合う。

 そんな中でもナムとリュウダモンは気絶。敵は多勢に無勢。状況は限りなく悪かった。

 

「……行くぞ!set『進化』『究極』」

 

「ドルモン!ワープ進化――ドルゴラモン!」

 

 先ほどの不調の原因は解らない。しかし、今は迷っている暇ではない。

 そう考えて、旅人は戻っていないカードの代わりに白紙のカードを二枚使ってドルモンをドルゴラモンへと進化させる。

 

「進化の力……!」

 

「アァアアアア!」

 

 どこか驚愕したような声を上げたタクティモンだが、それでも殴りかかってくるドルゴラモンの毆撃を冷静に刀で捌いていっていた。

 

「……!一撃一撃がブラストモンすら凌ぐ程の力!このような猛者がいたとはな……いや、これこそが進化の力……というわけかね?」

 

「っふ!っは!せい!」

 

 “不調だからこそ早くケリをつけないといけないのに”と一撃を軽々と避け、捌き続けるタクティモンを前にドルゴラモンは焦りが募っていく。

 

「はぁああ!はっ!」

 

「ふんっ!」

 

 ドルゴラモンが力を込めた一撃をタクティモンは飛び上がり、空中で反転して避ける。そのまま反転した勢いを利用して繰り出した刀でドルゴラモンに斬りかかった。

 その刀は鞘に収まっているにもかかわらず、ドルゴラモンの右肩に食い込み、切り裂く。

 信じられない武器である。或いはタクティモンの技量が優れているのか。

 

「グァ!っく!舐めるなぁ!」

 

「ふむ……潔い……だが……それはどちらかというと……む?」

 

「落ち着けドル!」

 

 ムキになって突進するドルゴラモンを旅人が諌める。

 旅人の声に従ってドルゴラモンが急ブレーキをかけると、ドルゴラモンのすぐ手前をタクティモンの刀が通り過ぎた。

 

「危なっ!」

 

「ったく……set『捕縛』『最大強化』……今だ、ドル!」

 

「おう!おぉおお!」

 

「……ほう!これはまた……!」

 

 強化された鎖がタクティモンを縛る。感心したような声を上げたタクティモンは力ずくで抜け出し、殴りかかったドルゴラモンの一撃を刀で防ぐ。

 これでもダメか。

 二人がかりで攻めきれない事実に旅人たちは苦い顔をするしかない。そしてその事実は焦りを生む。

 

「っち!set『加速』」

 

 タクティモンの強さを前に旅人は自身を強化し戦うより、今この場においての最大戦力であるドルゴラモンのサポートに回ることを選択した。カードの力を自分にではなく、ドルゴラモンに使うのだ。

 『加速』によって素早さが上がったドルゴラモンは連続してタクティモンへと攻撃を続けていく。

 

「っく!いい加減に……!」

 

「おい!攻撃が雑になって――」

 

「当たれぇえ!」

 

 ドルゴラモンは旅人の忠告を受けずに大振りの一撃をタクティモンに放る。

 だが、所詮おお振りの一撃だ。タクティモンはその腕の合間を縫うようにして避け、振り返り狭間に一撃を当てる。

 

「っぐ……」

 

「ふむ。その力……並みの魔王級デジモンならば敵うまいよ。だが……」

 

 攻撃を加え続けるドルゴラモンをどこか見極めるかのように観察するタクティモン。焦りが募り余裕を失っていくドルゴラモンとは正反対にタクティモンは余裕であり、冷静そのものといった風である。

 

「経験も足りぬ。戦の常道もわきまえてはおらぬ……何より……心に迷いがある!『壱の太刀――!」

 

「あぁあああ!『ブレイブメタル』」

 

「鬼神突』!」

 

「グァ!」

 

「その意気……その切っ先や……鈍し!心の迷いが刃を鈍らせておるわ!力だけの鈍がっ……!」

 

「ドル!」

 

 タクティモンが放った突きがドルゴラモンの攻撃に先んじて当たる。

 ドルゴラモンはかなりのスピード、パワーで突進していたにも関わらず、タクティモンの攻撃によって逆に吹き飛ばされた。

 それはパワーで上回っていたというよりも、タイミングの合ったカウンターが上手く入ったという事実なのであろう。信じられないほどの技術である。

 しかも吹っ飛ばされたドルゴラモンはドルモンまで戻ってしまう。

 

「グゥ……ァア……」

 

「……力は名刀……しかして、その意気は鈍……」

 

 止めを刺そうと、刀を振り上げるタクティモンを前に傷ついたドルモンは動けない。

 

「ふむ……兵の危機……そのジェネラルの意気は……っ!」

 

「set『氷』『最大強化』『落とし穴』……ドル!大丈夫か!?」

 

 タクティモンが言葉を続ける前に旅人は白紙のカードまで使ってタクティモンを氷漬けにし、落とし穴へと落としてそのまま落とし穴の口を氷で蓋をする。

 

「おい!本当に大丈夫か?」

 

「うぅ……多分」

 

 急いで旅人は死にそうなドルモンに声をかける。

 一方で、バグラ軍のデジモンたちのどよめきはない。それはまだタクティモンは健在ということを示していた。与えられた命令を守っているのか、それとも別の理由か。彼らが旅人たちに攻撃を仕掛けてくることはなかった。

 

「っく……まあいい!ラッキーだ。今のうちにナムたち拾って逃げる……!」

 

「……分かった!」

 

 傷を押さえながら歩くドルモンと旅人が、リュウダモンとナムを抱えて門へと向かう。

 いっそのこと『世界転移』を使って一気に離脱することを頭に思い浮かべた瞬間、とてつもない衝撃波が旅人たちを吹き飛ばした――。

 

「グェ!」

 

「グァ!」

 

「ふむ……自身も戦うジェネラルとは……!いや、驚いた。だが、その切っ先はともかくとして……その心意気は未だ鈍しっ!」

 

 落とし穴から飛び出したタクティモンはほぼ無傷だった。

 というより、負っている傷は全てドルゴラモンが付けたかすり傷である。

 そこまでだと旅人としても自信を失ってしまう。最近はいろいろと傷つきっぱなしの自信ではあるのだが。

 

「ふむ……無駄な力と無駄に齢だけを重ねているだけ……これならば、赤のジェネラルと青のジェネラルの方がマシであるな……」

 

「く……好き勝手ばかり言ってくれるな……」

 

「違うのか?」

 

「……」

 

 タクティモンはどこか、ガッカリとしたような雰囲気で話す。一方で旅人は心当たりがありすぎる言葉に返事をすることができない。

 

「……迷いに経験不足……デジモン、ジェネラル双方の不足が否めないな……」

 

「くそ……舐めくさって……」

 

「……しかし、今切り捨てることに莫如(しくはなし)……!」

 

 刀を振り上げたタクティモンが地を駆ける。

 カードを使おうにも間に合わない。タクティモンの刀が旅人とドルモンに迫る。

 しかし、タクティモンが駆けだす前、旅人はその声を確かに聞いたような気がした――。

 

――リュウダモン。全力。叩き潰せ――

 

 

 

 

 

 旅人たちに迫るタクティモンの刀をそれより短い二本の刀が迎撃する。

 それは旅人たちが見たことのない刀だった。そしてその二刀を持つのは黄金の兜をかぶった、東洋龍のようなデジモン。

 

「何っ!?」

 

「っふ!姫様の命により、タクティモン……貴様を殺す!」

 

「もう片方も進化できたとはな……!」

 

 オウリュウモンだ。

 オウリュウモンがタクティモンの刀を迎撃する。驚愕するタクティモンを前にオウリュウモンはその手の二本の刀――鎧龍左大刃と鎧龍右大刃――を巧みに使い連撃を仕掛けていく。

 

「……はぁああ!『黄鎧』」

 

 そのままオウリュウモンは攻勢に出る。手に持った二本の刀と刀のような二対の翼――鎧馬大名刃――の計四本の刀を使ってうねるように突進していくオウリュウモンは全てを切り裂きながら進む。

 タクティモンは、そんな荒れ狂うような大河のごとく突進してくるオウリュウモンを見て防ぐことは不可能だと悟ったからこそ、防御の準備をする。

 

「む、これは……!『三の太刀・天守閣』」

 

 タクティモンが刀を地面に突き刺すと、地面が隆起し、巨大な城となる。オウリュウモンはその城を切り刻み、粉砕しながら突き進むが、タクティモンはその僅かな間に上空へと逃れていた。

 

「……外したか」

 

「成る程。先ほどの者たちとは違うようだな……」

 

 オウリュウモンの先の一撃で、タクティモンはオウリュウモンの実力をある程度把握する。

 実際、先程の一瞬の攻防の間では高度なやり取りが繰り広げられていた。上空へと逃れたタクティモンが牽制に放っていたいくつかの攻撃。それら全てをオウリュウモンは躱して逆にカウンターを放っていた。どちらも全ての攻撃を捌ききり、ダメージはない。

 力押ししかできなかったドルゴラモンとは雲泥の差である。

 

「……あれは……」

 

「ウゥ……」

 

 強い……少なくとも自分達よりは……ずっと。

 そんな中で旅人はオウリュウモンとの実力差を感じ取っていた。旅人は今まで少なくともナムたちが異常であることは知っていたし、分かっていた。

 だが、人は分かっていても露骨にその差を見せ付けられると落ち込むものである。

 だからというわけではないが、旅人は気がつかなかった。となりにいるドルモンの異常な雰囲気に。

 

「はっ!っふ!はぁっ!なかなかやるものだ……武者龍!」

 

「かぁ!っふ!はっ!そちらこそな!いい加減にやられるといい!」

 

 そんな旅人を知ったことではないとばかりにオウリュウモンとタクティモンは戦闘を続けている。

 オウリュウモンの二刀とタクティモンの一刀が交差するたびに凄まじい衝撃が辺りに広がっていた。両者の実力は拮抗しているように見えるが、その実オウリュウモンが押している。

 

「はぁぁあああ!『永世竜王刃』」

 

「何!?」

 

 オウリュウモンの二刀より十字を書くように斬撃が放たれる。放たれた斬撃は弧を描くように飛び、タクティモンに迫った。

 一方のタクティモンは一瞬驚くも、背中に装備した大砲――タネガシマ――から放った砲弾の勢いを利用し、斬撃を避ける。

 しかし、斬撃を避けたタクティモンの先にはオウリュウモンの尾が迫る。尾での攻撃を避けることができなかったタクティモンは地面に叩きつけられた。

 

「いやはや……大したものだ。この私が地に伏せられるとは……最近は猛者が多いな」

 

「それはそれは……そのまま地に埋まってしまえば良かったものを」

 

 両者は睨み合ったまま動かない。

 オウリュウモンが押しているとはいえ、いや、押しているからこそ、動かない。 オウリュウモンは有利ではあるが、窮鼠に噛まれることも計算に入れないといけない。一方のタクティモンはその実力が劣っているため動けない。

 両者がこれ以上戦うのならば、それ相応の覚悟をしないといけない。

 ちなみにタクティモンにとってはこの場で戦う意義は無いに等しい。ならば、することは一つである。

 

「撤退だ!撤退の合図が出たぞ!」

 

 タクティモンの背中のタネガシマから複数の色付きの花火が空に打ち上がる。それに伴いバグラ軍が撤退を始めた。

 

「臆病な私と我が軍は尻尾を巻いて逃げさせてもらうとしよう」

 

「姫様の命を受けたこの儂が貴様を逃がすと思うのか?」

 

「……ふむ?このまま本気で我が軍(・・・)と戦うと……?」

 

 タクティモンは我が軍といった。

 それはこれ以上続けるのなら個々の戦いではなく、軍同士での戦いとなることを示している。そして個々の戦いならばともかく、軍同士での戦いだというのならば、どちらが有利か一目同然である。

 

「……」

 

「では……む?」

 

 立ち去ろうとしたタクティモンが立ち止まる。その先には異常な雰囲気のドルモンがいた。

 

「おい!ドル!?何してんだ!?」

 

「……!」

 

 焦ったような旅人の声を無視して、理性を失ったかのような雰囲気のドルモンはそのままタクティモンへと突き進んでいく。

 いつの間にか隣から消えており、自殺願望ともとれる行為をしているドルモンに旅人は驚くことしかできない。

 

「ほう?この期に及び無駄な争いを続けるのならば……是非もなし……」

 

「……!」

 

 刀を構えたタクティモンにドルモンは無言で鉄球を放つ。タクティモンは迫る鉄球を刀で斬ろうとして、不意に悪寒を感じた。そのまま直感に従うように鉄球を避ける。

 

「……今のは?」

 

「……!」

 

 再度、無言で放たれた鉄球をタクティモンは自身の直感に従い、避ける。しかし、避けた先には先回りしているドルモンの姿が。

 進化の力を使っていない目の前の小さな存在のありえない力にタクティモンは驚愕しっぱなしである。

 

「何っ!?」

 

「……!」

 

 三度、放たれた鉄球を刀で防ぐ。

 だが、防いだ瞬間にタクティモンは有り得ないほどの力に刀ごと吹き飛ばされ、叩きつけられた。

 想像以上の力に防御ごと押しのけられたのである。

 

「っぐ……!先程までとは明らかに違う……何があった?」

 

「ウゥ……グアァァアアアアアアア!」

 

「っく!?あれは!?」

 

 天を衝くかのようなドルモンの咆哮。

 ドルモンから感じる威圧感は先ほどの比ではない。特に対峙しているタクティモンはドルモンから桁違いの強大な存在の気配を感じ取っていた。

 

「……開けてはならぬ箱を開けてしまったか?」

 

「グァアアアアア!」

 

 明らかに理性を失っているドルモンが連続して鉄球を放つ。

 その一つ一つの威力はドルゴラモンの時よりも上がっており、防御できない威力である以上、タクティモンは避けるしかない。

 避けられることで外れた鉄球は街を貫通し、幾つもの建物を破壊し、街を破壊していく。

 鉄球のサイズが小さいため、被害範囲は小さいが、明らかに威力は今までで最も強い。それはタクティモンが避けていることからも伺える。

 今は上空へと放たれているから良いものの地面に放たれれば確実に巨大なクレーターを作る。下手をすると町ごと吹き飛ばす可能性もある。

 

「ふむ……我が軍の撤退が終わるまで今しばしか……」

 

「ガァアアアアアア!」

 

 自軍の撤退の時間を稼がないといけないタクティモンはドルモンの相手をするしかない。

 もっとも、ドルモンは理性を失っているため、時間を稼ぐことは簡単であったのだが。

 だが、そんなタクティモンを嘲笑うかのように倒壊した建物に立つドルモンは上を向いて数十メートルはあろうかという巨大な鉄球を作り出している。

 巨大な鉄球は一瞬で野球ボールサイズの鉄球へと小さくなるが、それは圧縮されているからでけっしてただ小さくなっているわけではない。

 

「……ふむ。流石にあれは……マズイな……。む?」

 

 その鉄球に秘められているだろう威力にタクティモンは冷や汗を垂らす。

 鉄球が放たれる直前、タクティモンは後ろから急速に迫る気配を感じた――。

 

 

 

 

 

 一方で所構わず暴れるドルモンから必死に逃げていた旅人。

 そんな旅人は起きたナムとオウリュウモンと共に暴走ドルモンの作り出した巨大な鉄球を見てこの後の被害を予測する。

 その場の全員から思わず冷や汗が出ていた。

 

「……マズイどころじゃないって……」

 

「ゾーン。崩壊する」

 

「であろうな……」

 

 何とかするしかない。だが、何とかする方法が思い浮かばない。

 ゾーンの崩壊という想像以上の被害を前に旅人たちは焦る。

 

「……ん?アレって……」

 

 だがそんな時。

 旅人はドルモンの後ろにあったある物に気づいた。

 

「……これしかないか。ナム!オウリュウモン!」

 

「提案?」

 

「案があるのならば早くしろ!もう時間がない!」

 

 旅人が考えついた博打とも言える案に仕方なく乗ることにしたナムとオウリュウモン。珍しくオウリュウモンの焦ったかのような声からも今の状況の悪さを物語っている。

 旅人とナムが背に乗ると同時にオウリュウモンは鉄球を放とうとしているドルモンに向かって突撃した。

 

「グアァァアアア!」

 

「そこまでだ!」

 

 オウリュウモンがドルモンに体当たりして力ずくで扉を破壊して後ろにあった()へと押し込む。そこには次元の洞窟とも言える不思議な空間が広がっていた。

 

「今だ!若造!」

 

「set『反発』『最大強化』ついでにset『捕縛』いっけぇえええ!」

 

 強化された『反発』の力によってドルモンが吹き飛ぶ。

 方向を見失ったドルモンの口から放たれた鉄球は見当違いな方向の次元の空間のどこかへと消えていった――。

 




はい。というわけで戦闘回。
オウリュウモンの実力とドルモン無双?の話でした。
ちなみにオウリュウモンとドルゴラモンは総合的なスペックはほぼ同じです。パワータイプかスピードタイプかみたいな細かい違いはありますが。
ついでにスペックで勝るドルゴラモンがタクティモンに勝てなかったのは戦闘経験の差です。ドルモンの主な戦闘経験はこの物語が始まってからですからね。タクティモンの戦闘経験には勝てません。差があり過ぎます。

それではまた。来年もワールド・トラベラーをよろしくお願いします。
良いお年を。
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