【完結】ワールド・トラベラー   作:行方不明

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第四十話~戦闘開始~

 もう何度目になるかも分からない、不思議な空間を抜けて旅人たちはデジタルワールドの一ゾーンへと戻って来た。

 そのゾーンでは戦闘こそ行われていないが、遠くには不気味な城があり、周りのデジモンたちもどこか落ち着きがなくソワソワしている。明らかに戦争真っ只中の雰囲気だ。

 

「……まぁ、こんな気はしてたけどさ」

 

 急いでここを離れないと巻き込まれる。

 そのことを一二もなく理解した旅人は、再会の挨拶をしているウィザーモンたちとタイキたちの下へと向かっていった。

 だが、タイキに話しかけようとしたその瞬間、旅人は見知った顔を見つけたので進路を変更。タイキたちの再会の挨拶の邪魔をする前にそちらへと挨拶をすることにしたのだった。

 

「久しぶりだな……デュナスモン」

 

「旅人か!無事だったのだな」

 

「そっちもな。コテモンやグラディモンも無事なのか?」

 

 名前も知らないあのゾーンで別れてしまったデュナスモンとの再会を果たし、全員無事だというデュナスモンの返答に、旅人は安堵の息を吐く。

 旅人たちには彼らがあの後どうなったか分からなかったのだ。全員無事だというのならば、それに越したことはない。

 

「そういえば、ナムたちがどこにいるか知らないか?」

 

「ナムは知らないが、オウリュウモンならばここにいるはずだ」

 

「オウリュウモンだけ?」

 

 どこにいるにせよ、てっきり二人は一緒に行動しているとばかり思っていた旅人はその事実に少し驚いた。

 というよりも、リュウダモンではなくオウリュウモン。進化した状態でいるということは絶対に何かある。

 そのことを感じた旅人は、当初の目的を忘れてオウリュウモン探しを始めるのだった。

 

 

 

 

 

 結論から言えば、オウリュウモンはすぐに見つかった。

 オウリュウモンは蒼沼キリハという名の金髪の少年と何かを話している。

 

「ふむ……なかなかいい目をしているな少年。うちの若造とは大違いだ」

 

「その若造というのはタイキが言っていた奴のことか?」

 

「そうだ。楽観的なアホヅラ晒しているアホだ」

 

 いろいろと付いているがそれはもうただのアホでは。

 そう思ったキリハだが口には出さない。

 一方で会話の内容は聞こえなかった旅人だが、何やら悪口を言われていることだけは分かった。

 どんどん近づいていく旅人に、オウリュウモンとキリハはもちろん気がついていた。

 もっともオウリュウモンは先程からずっと気がついていたりするのだが。

 

「なぁ君……コイツは人がいないことをいいことに散々なこと言ってなかったか?」

 

「ああ。……アホだとな」

 

 オウリュウモンに話しかけても、皮肉くらいしか出ないだろうと踏んで、キリハの方に話しかけた旅人。

 だが、ニヤリと笑ったキリハから帰ってきた返答はどストレートな毒舌だった。

 気を利かせたのか、そのまま片手を上げて去るキリハを見送って、旅人はオウリュウモンと向き合う。

 

「ふん。本当のことを言って何が悪い?」

 

「っぐ……まぁいいや。ナムはどうしたんだ?」

 

「話を逸らしたな。姫様は別行動だ。しばらく待っていろ」

 

「この戦争の最中でか!?」

 

 別行動はいつものことなのでなんとも思わない旅人だが、そうなるとなぜオウリュウモンがここに居るのか分からない。

 “なぜここにいる?”とそう尋ねた旅人だが、オウリュウモンの返答はシンプルなものだった。

 

「こやつらを手伝っているからに決まっているだろう?」

 

「いや、なんでオウリュウモンが戦う必要があるんだよ」

 

「姫様に言われたからだ。それに手伝っているだけだ。ここからは前線で戦うという訳ではない」

 

 オウリュウモンの返答は実に分かりやすく、そしてシンプルな理由だった。

 オウリュウモンはナムの命令第一で動く。絶対にこの決戦が終わるまではこの世界を去ることはできないだろう。

 ともすれば、旅人とドルモンはさっさと避難していたほうがいい。

 

「それじゃオレらはしばらく避難しているから。……死ぬなよ」

 

「ふん……余計なお世話だ。そちらもな」

 

 口だけの激励を交わして、その場を離れた旅人はタイキたちのもとへと向かう。

 そこではタイキとキリハ、そしてクロスハートの主力が何やら話をしているところだった。

 

「おーい。タイキ……悪いんだけどさ、そろそろ……」

 

「あっ、はい……そうですね。あ、ドルモンならウィザーモンたちと一緒にいますよ」

 

「分かった。ちょっと呼んでくるよ」

 

 そう言った旅人はドルモンを呼ぶためにタイキたちから離れてウィザーモンたちの方へと向かう。

 そこでは何かをしているウィザーモンのみがいた。てっきりテイルモンとドルモンも一緒にいると思っていたが、旅人のその考えに反してその二人は影も形もない。

 

「あれ……ドルモンは?」

 

「旅人か。ドルモンなら先程食料を分けてもらいに行ったぞ」

 

「アイツ……」

 

 ドルモンのあんまりな行動に旅人は目眩がする。今は戦争中である。そんな時に大切な食料を部外者が分けてもらいに行ったのだ。

 図々しいなんてものではない。

 もっともそこら辺は旅人もあまり変わらなかったりするのだが。

 

「しばらくしたら戻ってくるだろう」

 

「んじゃ、しばらく待つか。タイキたちはまだ何か話しているし」

 

 こっそりとタイキたちの方を見れば、タイキたちはまだ何かを話していた。

 その真剣な表情からして、邪魔するのは気が引ける。旅人はウィザーモンを眺めて待つことにした。

 もっともそういうことをしている時点でどんだけ暇なんだという話だが。

 

「よし……出来た。旅人!」

 

「ん?また何か作ってたのか?」

 

 いきなりバッと顔を上げたウィザーモンは旅人の下へと来て、手に持ったある物を旅人に渡す。

 受け取った物を見ると、旅人が見たことがない四角い機械だった。表面はおそらく画面になっているのだろう。ボタンは下部に一つ付いているだけだった。

 “何だこれは?”と、説明を求めてウィザーモンを見る旅人だが、肝心のウィザーモンは満足げな顔をして頷いている。

 

「それは君用にカスタマイズしたクロスローダーだ。外見は……人間界の最新型の携帯の真似をしている。ホマスだかフォアイだったか……まぁ、名前はよく分からなかった」

 

「いや、実験失敗からまだ数時間も経ってないんだけど……」

 

「しかも今流行りのタッチパネルというらしい。タッチするだけで画面をいじれる」

 

 “カスタマイズした”と、ウィザーモンは簡単に言ったが、本来簡単にできるようなものではないだろう。

 “コイツは化物かよ”と、引きつった頬を抑えられずにウィザーモンを見る旅人。ついでにタッチパネルとやらを知って流石異世界の携帯だと驚く。自分の知る携帯象をぶち壊しにされた旅人だった。

 

「フフフ……基本はもう出来ていた。細かいところの修正と外見の変更ならさほど時間はかからない。せっかくだから君にプレゼントできるように急いで作った」

 

「……凄いことさらりと言うなよ」

 

「名前もクロスローダーではカッコつかないから、クロスローダーアナザーにした。それと丁寧に説明書付きだ。そのボタンを十連続で押すと説明書が見れる」

 

「後ろに少し付くだけなのはカッコいいのか?」

 

 旅人はクロスローダー改めクロスローダーアナザーを見るが、ウィザーモンが言うには機能はほぼ一緒なのだという。ただデジクロスが特別仕様になっているだけで。

 なぜ外見が違うのかというと、せっかくカスタマイズするなら外見も弄った方がいいだろうとのこと。

 ちなみに元となる機械はどこかのゴミ捨て場で拾ってきた物だったりするのだが、旅人はそれを知らない。

 

「何だよ……特別仕様って」

 

「使ってみれば分かる。フフ……これで僕の実験も……」

 

「……」

 

 ウィザーモンはターゲットがイタズラに掛かるのを待つ子供のような顔で旅人を見ている。“絶対に驚くぞ!”というある一種のサプライズ顔だとも言えるだろう。

 そしてそんなウィザーモンを見て旅人は少し引いていた。

 “まぁ、せっかく貰ったのだし……使わなければ損か”と、旅人がクロスローダーアナザーを弄ろうとした瞬間――。

 

「っ!何だっ!」

 

「所属不明のデジモン軍がっ……こちらとバグラ軍双方に攻撃を仕掛けています!」

 

 戦争が動く。

 報告にあるデジモン軍はバグラ軍とも争っていると聞いてその場の全員が混乱していた。

 そんな中で、旅人にはっきりと分かることはただ一つだけ。もう時間はなくなったのだということだけだ。

 そんな中で、タイキとドルモンが別方向から、しかし同じように急いでやってくる。

 

「旅人っ!」

 

「旅人さん。オレたちはもう行かないといけないのでっ!ゾーン移動!」

 

 よほど慌てていたのか、タイキは急いで前と同じように空間の歪みを開いた。

 タイキたちだって時間がないのに、旅人たちのために時間を作ってくれている。

 だとすればここでグダグダ言っている場合ではないだろう。

 

「分かった。ウィザーモン!タイキ!いろいろとありがとうな。オレたちは何もできないけど……頑張ってくれ」

 

「まったく……結果を知ることができないのは残念だが、もし次会えたら。それの使い心地をしっかりと教えてくれ」

 

「はいっ!旅人さんたちも気をつけて!」

 

 それぞれの言葉を受け取ってドルモンと旅人は空間の歪みへと突入して、二人は空間の道を走り続ける。

 この世界の彼らに負担をかけるわけにはいかないのだ。

 

 

 

 

 

 次元の空間。その道をひたすらに走る。その先に光とともに出口が見えた。

 あと少し。

 ドルモンも旅人もそれを感じて安心に身を委ねそうになった瞬間。声が聞こえた。いつかどこかで聞いたような、呻くような、苦しむような声。

 “まずい”と旅人がそう思った時にはすべてが遅かった。あの(・・)怪物がいきなり上から落ちてきて、旅人たちの前に立ちふさがったのだ。

 

「千年魔獣……ミレニアモンだったか?」

 

「旅人……マズイよ」

 

 ミレニアモンは出口である空間の裂け目の前に陣取っている。ミレニアモンを躱さなければ、出ることはできない。

 だが旅人とドルモンは気づいてしまった。下手に動くと殺されると。

 だが、動くことができずに様子見するしかない二人を差し置いて、ミレニアモンは手を軽く振るった――。

 

「なっ!」

 

「っぐ!」

 

 たったそれだけ。だが、それだけによって生じた余波は旅人とドルモンを軽く吹き飛ばした。

 目を離してはならない。

 その事実に急いで顔を上げた二人が見たのは、ミレニアモンだけ(・・)だった。

 つまり出口が失われたのだ。先ほどの腕のひと振り。ミレニアモンはそれだけで空間を砕き、出口を消滅させたのだ。

 

「やばいって……」

 

「どころじゃないよね?」

 

 旅人の言葉をドルモンが引き継ぐ。『世界転移』は転移完了まで時間がかかる。 使っているうちに殺される。『ゲート』で外へ出ようものならまず間違いなく、ミレニアモンは着いてくる。普通の『転移』はそもそもここでは使えない。

 結論として逃げれない。助けはもっと期待できる状態ではない。外では最終決戦の真っ最中なのだ。

 

「っぐ……覚悟を決めるしかないか。Set『投影』」

 

「グァアアアアア!」

 

 『投影』によってミレニアモンのコピーが造られる。ミレニアモンコピーはミレニアモンと戦いはじめた。その余波は凄まじく、空間が揺れている(・・・・・・・・)ほどだ。

 

「……今のうちに行けるか?set『ゲート』」

 

 “あれ今ならいけんじゃね?”と旅人は白紙のカードを使って外へのゲートを開く。

 今ならミレニアモンの意識はこちらにないだろうと判断してのことだ。

 もっとも、この判断は二つの意味で誤りだったと言えることに旅人はすぐ気付くのだが。

 

「なっ!消え……ってマズっset『捕縛』『最大強化』」

 

 そんな旅人の安易な案は結論として失敗だった。ミレニアモンの攻撃は空間にまで届く。それの影響をモロに受けたゲートも閉じてしまったのだ。

 ついでにミレニアモンがコピーを無視してこちらへと向かってきたのも想定外だった。

 白紙のカードと『捕縛』を使って足止めするが、例によってミレニアモンクラスには効果が薄い。コピーが来るまでの時間しか稼げなかった。

 結論として白紙のカードを二枚も無駄遣いしただけで、現状は変わらない。事態は最悪に近かった。

 そんな中でドルモンはこのままではいけないと己を奮い立たせる。戦うのは嫌だが、旅人()死ぬのはもっと嫌なのだ。

 

「旅人っ!オレも……戦えるっ!」

 

「ドル!?大丈夫なのか?」

 

「今はそんなこと言っている場合じゃない!」

 

 そう叫ぶドルモンだが明らかに強がりだ。手が――否、全身が震えている。

 それでもドルモンは戦うといった。その意思を尊重して、その震えを見なかったことにして。旅人はカードを取り出す。

 

「……すまん。set『進化』『究極』」

 

「ドルモン!ワープ進化――!ドルゴラモン!」

 

 そんな旅人の謝罪とともに訪れた進化によって究極体となったドルゴラモンが駆ける。

 ミレニアモンを見れば、コピー体に止めを刺そうとしているところだった。

 精神に不安がある今の状況ではドルゴラモンは不利だ。現状の有利を消さないように、一対一にならないように、急いでドルゴラモンはミレニアモンを殴り飛ばす。だが、元々限界だったのか、ミレニアモンコピーはそのまま光となって消えてしまった。

 一方で殴り飛ばされたミレニアモンはドルゴラモンとひいては旅人を見ている。

 その目には意思というものはなく、ただ暴れているだけのようだった。

 

「グギャァアアアア!」

 

「っく……」

 

 ミレニアモンを前にドルゴラモンは一瞬止まる。その姿に、自身のもっとも恐れる未来を重ねてしまったのだ。

 一方でミレニアモンは意思がないとはいえ、そんな隙を見逃すほど馬鹿ではない。

 ドルゴラモンの下へと一瞬で距離を詰めると、先ほどのお返しとばかりにその豪腕でもってドルゴラモンを殴り飛ばした。

 

「がっ」

 

「ドル!余所見すんな!set『炎』『最大強化』」

 

 旅人が放った一撃。それはミレニアモンに確かに当たった。しかし、ただ当たっただけだった。旅人の攻撃を受けながらもミレニアモンは何事もなかったように動く。

 痛みを感じていないのか、痛みを感じるほど旅人の攻撃は強くなかったのか。あるいはその両方か。

 白紙のカードを変化させた『最大強化』を使った一撃。それが効かないとなれば、もう旅人の手札の中で通用する攻撃は無いに等しい。

 唯一効きそうな『投影』は先ほど時間稼ぎに使ってしまった。『リリスモン』のカードは制御の必要性があるために、旅人が無防備になる。ドルゴラモンは本来の実力とは言い難い。

 

「なんか……いつもこんな感じがする……」

 

 運のなさと最悪の現状を嘆きながらも、ドルゴラモンと旅人は再びミレニアモンと向き合った――。

 




はい。ということで第三章のラスボス。ミレニアモン(劣)との戦闘開始です。
そして四十話でようやく登場したデジモンシリーズ恒例の携帯機械。ぶっちゃけ外見はアレです。ス○ホとかi○honeとかを思い浮かべてください。

ちなみに……これで分かったかと思いますが、旅人とドルモンは最終決戦には関わりません!
あの戦いはタイキたちの戦いであって、旅人たちの戦いではないですからね。

原作を知らない人に不親切な小説ですみません。どうしても最終決戦の概要を知りたい人は漫画をご覧になって見てください。

それではまた次回で。
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