【完結】ワールド・トラベラー   作:行方不明

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第四十三話~一つの物語の結末~

 バグラ軍の城。そこでは皇帝のような威厳を持つデジモンであるバグラモンと黒き騎士のようなダークナイトモンが向き合っていた。

 だが、ダークナイトモンの体からはさまざまなデジモンの部分が飛び出しており、ダークナイトモンは狂ったような声を上げ続けている。

 

「クヒッ!ツヒニ……魔王リリスモンサヘもこノ身に!トリコンダ!」

 

 狂ったような、ではない。何が原因かは分からないがダークナイトモンは間違いなく狂っている。

 そんなダークナイトモンを見て、バグラモンは静かに、だが悲しそうにただ一つの問いを投げかけた。

 

「君は……私が誰か分かるかね?自分のことを……自分の名前を覚えているかね?」

 

「ナッマエ……クカッ!そんなコトハ……どうデモいい……」

 

 バグラモンは泣いていた。己の弟(・・・)の姿に。己の弟の末路に。

 結局、私の希望は無駄だったのだと、分かってしまったから。これが答え。この戦いの結末だと。理解してしまったから。

 ならばバグラモンのやるべきことは、決まったのだ。

 

「……私は人が未来への虚無感を克服しうるか試すためにこの戦争を、絶望と希望の相克の舞台を演出した」

 

「ナ……ニをイッテ……る」

 

「希望を持つものとして彼らを呼び、君には絶望の可能性を与えた。残念だが、君の勝ちだ。この世界(・・・・)の人間は……絶望を越えられない。デジタルゲート・オープン!」

 

 空間に裂け目が開く。

 そこからデクスドルゴラモンと旅人、そして最後にミレニアモンが飛び出して来る。

 “グェっ”と久しぶりの地面に叩きつけられる旅人とデクスドルゴラモンの姿を、優しい目でバグラモンは見ていた。

 

「君たちがイレギュラーか。我が弟も……君たちのように、死を、絶望を越えることができたのならば……。いや、もう意味のないことか」

 

「……何?どういう――」

 

「もはや一刻の猶予もない。今以上の狂気と苦痛の無間地獄に世界が陥る前に。我々自身の手で呪われた未来との決別をっ……!」

 

 聞き返そうとした旅人は無視して。

 バグラモンはもう言うことはないとばかりにダークナイトモンを見つめ、黒い靄を纏った人間に命令を下す。すべてを終わらせるその命令を。

 黒い靄を纏った人間は黒いクロスローダーらしきものを掲げて、ただ一つの命に従って最後の言葉を言い放つ――。

 

「ダークナイトモン。ミレニアモン。強制デジクロス!」

 

「もはや未来にその名を呼ばれるようなことは二度とないだろう。だが……忌まわしき太古の伝説になぞらいお前を名付ける。――――――――――」

 

 爆風が世界を吹き飛ばす。

 それを前にデクスドルゴラモンと旅人は巻き込まれないようにその場を離脱した。

 

 

 

 

 

 離れゆく城を振り返った時、旅人たちが見たものはいつか誰かが言っていた赤黒の双頭竜の真の姿であるズィードミレニアモンの姿だった。

 だが、そこにミレニアモンやバグラモン、ダークナイトモンの姿はどこにもない。

 世界を滅ぼすというそのズィードミレニアモンの姿を前に、現状を少しも理解できていない旅人とデクスドルゴラモンは動くことができなかった。

 

「まずくね?っていうか、今ってどういう状況?」

 

「さぁ……どうするの?」

 

 空に滞空しているのはいいが、いい案が思いつかない。しかも、ズィードミレニアモンは周りを絶えず吸い込んでいる。戦うとしたら接近戦はほぼ無理だと思ったほうがいいだろう。

 “どうしようもないじゃん”とそう考えた旅人たちの視界の端には不意に白い光がこちらに飛んでくる何かの姿が――。

 

「アレって……デュナスモン?」

 

「だね」

 

「オレの見た感じだと……何か大技放とうとしているんだけど」

 

 デュナスモンの周りに複数の竜の形をしたオーラが広がっていく。それらは空間に溶けるようにだんだんと広がっていっている。

 見ただけでも、途方もないエネルギーが集中しているのだと分かるほどだ。

 

「まずくね?」

 

「まずいね」

 

「……」

 

 二人は一二もなく猛スピードで逃げ出した。

 アレがどのくらいの攻撃範囲なのかは知らないが、あのエネルギー量だと、余波だけで周囲が消滅する可能性がある。

 一刻も早く逃げなくては。

 そうデクスドルゴラモンと旅人の二人の意見が一致した。

 

「旅人っ!カード!」

 

「そうだっ!set『転移』」

 

 景色が歪む。直後、『ドラゴンコライダー』という声が聞こえた瞬間、旅人たちの目の前に広がる景色が変わる。

 そして助かったという安堵の息とともに二人は今までいたであろう遠くの方角を見ると、巨大な爆発が見えた。

 というか、もうあの攻撃で世界が滅びるんじゃないかというほどの一撃だ。

 

「あっぶねー……」

 

「旅人っ!あれっ!」

 

 冷や汗を垂らしている旅人だが、焦ったようなデクスドルゴラモンの声に意識を引き戻された。

 そこではデュナスモンが触手のようなものに捕らわれていた。あれは見間違いでなければ、ズィードミレニアモンの一部だ。

 そしてズィードミレニアモンは吸収能力がある。

 

「こなくそっ……間に合えっ!set『転送』」

 

 即座にカードを使ってデュナスモンをこちらへと呼ぶ。間に合うかどうかは微妙な時間だ。

 祈るような一瞬の後、旅人たちの前にデュナスモンが現れた。

 

「ぬあっ……ここは?……旅人!」

 

「よ!まぁ、無事でよかったよ。ちなみにデュナスモンがさっきまでいたのはあっちね」

 

 突如の現象にデュナスモンは何が起こったのか分からないといった風だった。攻撃されて死んだと思ったら、生きていたのだ。混乱するのも無理はない。

 だが、すぐ近くに旅人がいるのを見て、助かったという事実だけは分かったようだった。

 

「……そうか。助けてくれたのか。すまない、助かった」

 

「まぁ、それはいいよ。問題は……アレだろ。」

 

 旅人が指差した先。そこにはズィードミレニアモンの姿がある。先ほどよりも大きくなっており、心なしか吸収スピードも上がっている。

 その間、デュナスモンは仲間と何か連絡を取っているようだったが、やがて目を見開いて何かを頻りに尋ねていた。

 

「旅人……アレってタイキたちじゃない?」

 

「ん?あ。本当だ。どうする気だ?」

 

 見るとタイキたちがシャウトモンX7に乗ってズィードミレニアモンの方へと向かっていっている。

 やがて、シャウトモンX7の周りを取り囲んだオーラが見たことのある形を形作った。

 あれは――。

 

「オメガモンか?なんで?」

 

「さぁ……」

 

「……。今タイキたちが突入した。博打ではあるが、それが一番可能性が高いようだ」

 

 タイキたちが突入(・・)した。攻撃ではなくて突入。

 フーンと話半分で聞いていた旅人だったが、やがて気になる一つの単語を思い出した。

 

「……突入!?」

 

「アレを内側から解体するらしい」

 

「また無茶を……」

 

 とは言ったものの、デュナスモンのあの攻撃でも倒せなかったのだ。それくらいやらなければ無理だろうなとも旅人は思う。

 タイキたちの奮闘の間で、デュナスモンに先ほどのオメガモンのオーラのことについて聞きたかった旅人だが、何かを惜しんでいるような、そんなデュナスモンを前に結局聞くことはできなかった。

 そして――。

 

「旅人!ズィードミレニアモンが!」

 

「うぉ!ほんとだ。あいつらやったんだなぁ」

 

 しばらくの後にズィードミレニアモンが崩れ出した。

 そしてそこからさまざまなデジモンたちが飛び出して来ている。それだけ見ても、旅人たちはタイキたちがやったのだと理解することができた。

 飛び出してきたのは、今まで取り込まれたデジモンたちだろう。それにしては多すぎるような気がしないでもないが。

 あと、ついでとばかりに明らかに狂気に駆られたような気配がするデジモンたちも何体か出てきて、他のデジモンたちを襲い始めていた。

 

「……デュナスモン!?」

 

「あのデジモンたちはまずい。行ってくる!」

 

 それを見たデュナスモンが、焦って飛んで行く。デュナスモンの様子からしてあのデジモンたちはそれなりにまずいデジモンらしかった。

 とは言っても、ここで待っているというわけにも行かない。旅人とデクスドルゴラモンは頷き合うと、デュナスモンの後を追った。

 

 

 

 

 

 一方でその頃、現場では凶暴な赤い竜であるメギドラモンや草のような怪人のデジモンであるアルゴモンがデジモンたちを襲っていた。

 

「まったく……アレで終わりでいいだろうに!」

 

「ほんとにね~」

 

 到着したデクスドルゴラモンがメギドラモンを打ち倒す。

 ふと。旅人が周りを見てみると、その場にいるほとんどのデジモンたちを光が包んでいた。

 旅人はこの光を知っている。いつも見る光。この光は――。

 

「進化だ」

 

 そう、進化の光だ。

 この場にいるほとんどのデジモンたちが進化していく。これほど大勢のデジモンが一斉に進化したところを旅人は見たことがない。

 というか、進化しているところなど、ドルモンとリュウダモンくらいしか見ていない。

 普通ならば大変な事態なのだろうが、旅人には不思議と、この進化は良いもののような気がしていた。

 

――オールデジモンズ!ファイナルクロス!――

 

 どこかでそんなタイキたちの声が聞こえる。自信のある、未来を見つめた真っ直ぐな声が。

 次々にデジモンたちが――デクスドルゴラモンを含めて――先陣を切っていたシャウトモンX7の下へと集っていく。そしてすべてのデジモンをデジクロスさせたその姿は光り輝いてた。

 そのデジモンが振り下ろした攻撃によって――最後のデジモンが倒され、この戦いは終わったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ?もう帰るのか?」

 

「はい。人間界の道はもう閉じちゃうらしいので。旅人さんたちは……」

 

「あぁ……オレたちは別口だから気にすんな」

 

 タイキと別れの挨拶だけは済ませておこうと考えて、旅人はタイキに会っていた。

 旅人はタイキがどんな戦いをして、どんな選択をしてきたのかは知らない。旅人は途中少し関わっただけだ。

 だけど、何かをやり遂げた――自信のある顔をしているタイキを見て、もう少し頑張ってみようかなとそんな気分になった旅人だった。

 もっとも旅人自身何を頑張るのかは分かっていなかったりするのだが。

 

「それじゃ、シャウトモンのところに行くので。ではまた」

 

「あぁ……またな」

 

 タイキに別れを告げた旅人はタイキとは別の方向、テイルモンの方へと向かっていく。

 テイルモンは何かを袋詰めしており、直ぐにでも旅立つ気満々だった。

 

「みんな早いな……テイルモンももう行くのか?」

 

「えぇ。ここまで来てまた迷子になった誰かさんを探しにね。下手したらまた別の世界へ行くかも……」

 

「そっか。それじゃまた会うかもな……」

 

「え?……いや、何でもない。それじゃあね」

 

 それだけ言って足早に去っていくテイルモンはウィザーモンを探しに行ったのだろう。ウィザーモンはズィードミレニアモンの攻撃で、どこかの時空へと吹っ飛んだと旅人は聞いてる。

 一方でコトネはうわんうわんと泣いていて話せるような状況じゃなかった。だが、一応挨拶だけはしておいた。

 後はナムとリュウダモンと合流するだけである。ふと、旅人が気配を感じて後ろを向くとナムが一人で立っていた。

 

「準備。いい?」

 

「相変わらず神出鬼没なやつ。どこ行ってたんだよ」

 

「特に。リュウダモンが調べてくれたから」

 

 “何を”とそう聞いた旅人にナムはタクティモンとだけ返した。

 “そういえばナムはタクティモンに並々ならない感情を抱いていたな”と旅人はどこか他人事に思いながら、会話が終了した。

 相変わらずナムとの会話は続かない。

 

「あとどれくらいでゲートって開けるようになる?」

 

「もう行ける」

 

「あれ?……あぁそう……って今!?」

 

 ナムはすでにゲートを作り、次の世界への道を開いている。

 旅人としては時期が聞きたかったのであって、今移動したかったのではない。

 “だが開いたものはしょうがないか”と、旅人は諦めることにしたのだった。

 だが、移動するにあたってリュウダモンとドルモンが見当たらない。旅人が辺りを見渡していたら、リュウダモンはドルモンを引きずってきていた。

 どうやらリュウダモンはドルモンを連れてきてくれたらしい。相変わらず仕事の速い奴である。

 

「ちょっと待って!ポップコーン!ポップコーンを!」

 

「わがまま言うな!やれやれ……少しはマシなツラになったと思ったら……」

 

「さて……行きますか」

 

 旅人はポップコーンが欲しいと喚いているドルモンを旅人は見なかったことにした。

 そのままドルモンの尾を引きずってゲートへと飛び込む。リュウダモンとナムもそれに続いて、ゲートの飛び込んだ。新しい世界へと向かったのだ。

 

 

 

 

 

 ある世界。とある城で。

 仮面をかぶった男と、漆黒の騎士のようなデジモンであるアルファモンは向かい合って話していた。

 そしてもう一人、声のみだがその話し合いに参加しているものがいる。

 地の底から響くような紳士的な声の主。声の主はどこか驚いたような雰囲気を声に纏わせていた。

 

「これは……面倒なことになりましたね」

 

「どうした。貴様が面倒などと言うからには相当なものだろう」

 

「まさか()のデクスリューション……死の進化をしてしまうとは……」

 

 声の主とは違って仮面の男はどこか不機嫌そうな声を上げている。

 アルファモンは我関せずといった体で、目をつぶって何かを考えている。

 

「何?死の化身。死の進化。有り得ない。死は終わりそのものだから。だが……」

 

「貴方の言うとおりですよ。ですが……もしですよ。……もし仮に死を乗り越えることができたのならば……それは――。……このままではまずいかもしれませんね。死の進化……もっとも禁忌されるべきその進化は世界のバランスを崩して……」

 

「どのみちこの世界には時間がないだろう。無駄な考察をする必要はない」

 

 突然発した、何かを耐えるかのようなアルファモンの言葉。その言葉は、大前提とも言えるものを正確に捉えていた。

 そして、その事実は熱く議論していた声の主と仮面の男を黙らせる。

 

「このままではまずい。それはもう分かっていることだ」

 

 それだけを告げるとアルファモンはその場から去った。思い出した事実にこれ以上の議論は必要ないと踏んだのか、仮面の男も後に続く。

 誰もいなくなった部屋で、声の主は一人呟いた。

 

「まぁ……アルファモンの言うとおりではあるのですけどね。この世界はもう……壊れている」

 

 返す声はどこにもない。

 




はい。というわけで半分位訳ワカメな話でした。
まぁ、ワザとこういう風に書いているんですけどね。第三章はクロスウォーズ世界の所々には触れるけど、全容が分かる程には触れないという風に書いてました。
そのせいで分かりにくい章だったと思います。ここら辺の匙加減が難しいです。

それから、前回言い忘れましたが、ワールドトラベラーのデクスドルゴラモン並びにデクスリューションには多分なオリジナル設定が含まれます。ご了承ください。
ネタバレするのはだいぶ先なんですけどね……。

さて……この後番外編を二三話やって、第四章となります。それでは。


けっして忘れていたわけではないカード解説

『無臭』――周囲の匂いを消すカード。白紙のカードからの変化。
      焼肉屋へ行った後に使ってあげると喜ばれます。

『気配遮断』――気配を消すカード。白紙のカードからの変化。
        お化け屋敷で使うと効果的です。

『無音結界』――自分の一定周囲の音を外部へと漏らさないようにするカード。
        早い話が見えない防音室を作るカード。
        白紙のカードからの変化。効果範囲は大体二メートル前後。
        住宅街でカラオケ大会をしたいときにオススメ。

『黒いカード』――異世界のドルモンから(その時はアルファモンだった)から
         受け取った命という名のカード。
         使用用途は不明。旅人の願いを受けてドルモンと同化した。
         命って名前が付いているんだから、命に関わることなら効果を
         発揮するんではないかと思った。とは旅人談。
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