ちょっと書き方変えました。えぇ。これからこれでいきます。
一応伏線回です。暴投投げてそのままってことはないので安心してください。
第四十四話~どの頃のその二人?~
これはとある世界でのとある二人の話。
近未来的な装いのビルの一室に一人の聖騎士デジモンであるアルファモンがいた。アルファモンは誰かを待っているようで、先ほどから落ち着かない様子を見せている。
そんな中、部屋の中にノックの音が響き渡った。
返事をし、入室許可をアルファモンが出すと、ノックした者が部屋に飛び込んで来る。部屋に飛び込んできたこと自体は驚くに値しない。いつものことだ。
アルファモンの部下であるこの騎士はいつもこうやって入ってくるのだ。“もう少し落ち着きを持てないものか”とアルファモンが頭を抱えているが、残念ながら治らないだろう。
「アルファモン様!またです!今度はベルサンディで現れたようです!」
「またか……分かった。オレが行こう。彼が来たら待っているように言っておいてくれ」
「了解しました!」
部下である騎士のナイトモンに告げて、アルファモンは飛び出した。
アルファモンは直後に魔法陣を使って、ゲートを開く。
この新世界――NEWデジタルワールド――においてはレイヤー間を移動することで未来、過去、現在のそれぞれを司る世界に移動できるのだ。
アルファモンはできる限りの最高速で移動する。アルファモンにとっては思い出深い、現在の世界――ベルサンディターミナル――へと向かうために。
「出た!」
「アルファモン様!」
この地域担当の、先ほどとは別のナイトモンが現状を説明する。“例のデジモンではない、黒いナニカで構成されたデジモンモドキが暴れている”という話だった。
最近現れ始めたそのモドキは外見だけは従来のデジモンと同じだ。その強さも。
だが、中身が違う。中身は黒いモノで構成されており、心がない。ただ暴れるだけの存在。
旧世界――旧デジタルワールド――、そして新世界両方で現れては暴れている。暴れている者たちは成熟期から完全体が多く倒すことには訳が無いのだが、いかんせん数が多い。
だから、こういった風にアルファモンたちのような強い力を持つ者に救援要請が来ることもあるのだ。
今回の敵は、ミサイルを背負った恐竜の骨格のようなデジモンのスカルグレイモンに人型の吸血鬼デジモンのヴァンデモンと緑色の足が生えた卵のようなデジモンであるデジタマモンらしかった。
「スカルグレイモンが三体とヴァンデモンが十体……デジタマモンが五体か」
アルファモンが見ると、ここの担当であろうナイトモンが小さいデジモンたちを庇いながら戦っている。戦っているナイトモンもかなりの技量を持っているのだが、いかんせん数が多い上に庇いながらの防戦だ。長くは持たないだろう。
アルファモンは魔法陣を展開して、そこから聖剣グレイダルファーと呼ばれる光の剣を取り出す。
「そこの騎士!その子たちを連れて今すぐ下がれ!」
その声にナイトモンが上を見上げてアルファモンに気づいた。
同時に敵であるデジモンモドキたちも。スカルグレイモンの形をしたモドキが背中のミサイルを発射する。
だが、アルファモンはミサイルを手に持った剣で切り裂く。切り裂かれたミサイルは爆発した。あのミサイルは核兵器並みの威力を持つと言われるが、その程度ではアルファモンには効かない。余波ならなおさらだ。
逃走するナイトモンたちと追撃しようとする敵との間に入り、アルファモンは剣を一閃。それだけで空を飛んでいなかった敵は真っ二つになった。切った敵の断面を見るとやはり黒い粘土のようなものが詰まっている。石が動いているようなものだ。
相変わらず得体の知れないソレにアルファモンは溜息を吐く。
ついでに上を見上げると、先ほどの剣閃を逃れた十体のヴァンデモンがアルファモンに空から攻撃を仕掛けようとしていた。
「グガァアアガ!」
「何を言っているのか……分からないな」
ヴァンデモンは大量のコウモリの群れを発生させている。アルファモンの知識が正しければ、ヴァンデモンの必殺技『ナイトレイド』だ。
アルファモン自身にはこれっぽっちも効かないが、『ナイトレイド』は攻撃範囲が広い。しかも
「全部叩き落とす!『デジタライズオブソウル』!」
持っていた剣を地面に突き刺して、両手のひらに魔法陣を展開する。そこから無限とも言えるエネルギーを放出し続ける。エネルギーは砲撃となり、断続的にコウモリを消し飛ばし続けた。
すべてのコウモリをヴァンデモンごと撃ち落とした。
これであと一体。先ほど攻撃に参加しなかったヴァンデモンがアルファモンの方へと向かって来ている。
「……終わりだ」
地面から剣を引き抜いて一閃する。剣が煌めいて、ヴァンデモンを両断する。最後の一体もこれで倒した。
戦いが終わったことでアルファモンがふぅと息を吐いて肩の力を抜いていると、後ろから複数のデジモンが駆け寄って来ていることに気づいた。
もちろん敵ではなく、先ほど助けたデジモンたちだ。
「あるはもんさま、ありがと~!」
「ありがと~!」
ナイトモンと小さなデジモンたちがこちらへと戻ってきてアルファモンにお礼を言う。
“怪我らしい怪我がなくてよかった”とアルファモンが安堵していると、そこへ別のナイトモンがやって来た。
「アルファモン様。スラッシュエンジェモン様がお見えです」
「そうか。分かった。すぐ戻る。引き続き警備を頼む」
「はっ!」
ナイトモンはそれだけ告げると、急いで持ち場へと戻っていく。最近の慌ただしさからして、目を離した隙に自分の担当場所が襲われているなど、よくあることなのだ。
“さて戻るか。あんまり待たせるのもアレだしな”と踵を返そうとすると、小さなデジモンたちが不安そうな顔でアルファモンを見ていた。
「あるはもんさま……いったうの?」
「……ゴメンな。待っている奴がいるんだ」
「ても……」
呂律の回らない口で行かないでと口々に言うデジモンたちを、わがままを言うんじゃないと、この場所を担当するナイトモンが叱っている。
その仕草一つ一つに仲の良さが感じられて、アルファモンは若干の羨望を込めてナイトモンたちを見ていた。
一方でアルファモンにジッと見られていることに気づいたのか、ナイトモンは慌てだした。
「な、なんでしょうか!」
「ん?いや、仲がいいなと思ってな。それにそんなにかしこまらなくてもいい」
「いえ!アルファモン様は我々にとって伝説のお方です!私のような一騎士がお目にかかれただけでも幸運です!」
ナイトモンの雰囲気に若干引きながら、アルファモンは小さなデジモンたちに別れを告げてその場を離れる。
行き先はアルファモンが元いた場所。未来の世界――スクルドターミナル――だ。
しばらくの後にアルファモンは元いたビルの一室に戻って来ていた。
もっともビルの入り口あたりで、先ほどとは別のナイトモンに“結構な時間お待ちになられていますよ”と告げられたときにはアルファモンは思わず逃げたくなったのだが。
だが、そういうわけにも行かないだろう。アルファモンが決心して扉を開けると、部屋の中には全身が刃のような天使型デジモンであるスラッシュエンジェモンがいた。
「スマン……遅れた」
「また……ですか?」
「あぁ、また……だ」
事情説明はそれだけでこと足りた。今、あのデジモンモドキは新旧どちらの世界にとっても脅威の存在となっているのだ。
アルファモンだけじゃない。かつてのロイヤルナイツのメンバーや、あのXプログラムの脅威の時に活躍したメンバーの生き残りは総出で事の解決に当たっている。
面々だけ見ればそうそうたるメンバーだ。
だが――。
「それでもまだ原因は分かっていない」
「少し前までは普通だったのですけどね。Xプログラムの脅威がなくなって……NEWデジタルワールドだけじゃない。旧デジタルワールドまで普通に住めるようになって。故郷に戻れると泣いて喜んでいた者も……」
「いつの話だ。もう何百年も前の話だろう」
「……そうでしたね。幼かった頃の思い出が強いもので。でもあの頃のことは今でも鮮烈に思い出すことができますよ」
スラッシュエンジェモンは目を閉じる。おそらくその瞼の下では、幼き頃の激動の生活が思い出されているのだろう。
“幼かった頃の思い出が強いもので”スラッシュエンジェモンのその言葉はいい意味で使われたのか、悪い意味で使われたのか分からない。
だが、アルファモンにはいい意味で使われた言葉だと思えた。
「アルファモンだって……そうでしょう?」
「そうだな。あの頃が……一番良かったのかもしれないな。いや、正確にはあの頃の少し前か。オレがドルモンで。お前がトコモンで。そして……アイツがいた」
懐かしさと親しみを込めてアルファモンが言ったアイツ。それが誰を指しているのか、スラッシュエンジェモンにもすぐ分かった。
もっとも世界が変わる瞬間の一ヶ月だけこの世界にいた、すぐ落ち込む――ヘタレともとれるが――あの一人の人間。
「タヒトさんですね」
「いい加減旅人のことをはっきりと呼んだらどうだ」
「慣れてしまいました」
無駄にいい笑顔で言うスラッシュエンジェモンにあの頃のトコモンはもういないことを再確認したアルファモンだった。
名前をちゃんと呼んでもらえないのは不憫だなと思うアルファモンだが、すぐに“まぁ旅人だしいいか”と納得してしまう。
結局二人から扱いの悪い旅人だった。
「だけど旅人は人間だ。人間の寿命なんて長くて百年。生きているはずがない」
旅人がこの世界からいなくなって数百年。順当に行けば旅人はもう死んでいるだろう。
そのことをアルファモンは何でもないことのように言う。だがスラッシュエンジェモンは知っている。自分よりも長く旅人と一緒にいたアルファモンは、誰よりも旅人との再会を望んでいたことを。
「……そうですね」
「あぁ」
つらい顔をしているであろうアルファモンをスラッシュエンジェモンは見ないようにして、この会話を終了させる。
久しぶりの再開なのだ。しんみりとした雰囲気になるのは間違っているだろう。スラッシュエンジェモンとて最近の事件に駆り出されている。
せっかくの再会楽しく行かなくては――。
「アルファモン様!スラッシュエンジェモン様!大変です!」
「……」
「……はぁ」
と考えたところで、“こういうときに限って面倒なことが持ち込まれる”ということを実感したスラッシュエンジェモンだった。
アルファモンも、報告を持ってきたナイトモンに相応の目を向けている。
もっとも報告をしたそのナイトモンは職務を全うしていただけなのに、二人に睨まれて可哀想になるほど萎縮しているのだが。
アルファモンとスラッシュエンジェモンはレイヤーを抜けて、急ぎ過去の世界――ウルドターミナル――へとやって来ていた。
「うわぁ……」
二人の頬が思わず引き攣った。目の前には黒黒黒――。
見渡す限りの暗黒系デジモンのモドキの群れ。この中に普通のデジモンも混じって戦っているというのだから始末に負えない。普通のデジモンがいなければ一気に殲滅もできるのだが、いるのだからしょうがない。
「どうします?」
「一体一体潰していくしかないだろ」
「日が暮れそうですね」
アルファモンは光の剣を構える。スラッシュエンジェモンも剣となっている両手を構えた。
頷きあった二人は、黒い群れに向かって行く。どれがモドキでどれが普通のデジモンか分からない。
スラッシュエンジェモンだけ残らせて他は一度下がらせようか。
そう思ったアルファモンだが、この状況では撤退も危険が伴うだろう。
だが、このままでは同士討ちの可能性もある。
「っち……面倒だな!」
“危険を承知で下がらせよう”そう思ったとき、アルファモンが見たのはモドキたちが一斉に一つに集まっていくところだった。
普通のデジモンたちが怪訝な顔をしてその一点を見ている。やがて集まりきったモドキは巨大な黒い卵になった。
「ヒビが入っているぞ!」
それは誰が言った言葉だったか。黒い卵に罅が入っている。少しづつ、少しづつだが、罅は大きくなっている。おそらく、あの罅が全体に広がった時。あの卵の中からナニカが出てくるのだろう。
罅割れが卵全体に広がろうとしている。その場にいた全員が戦闘態勢を取った。
「割れたぞっ!」
その言葉を皮切りにスラッシュエンジェモンとアルファモン以外のデジモンたちが卵へと殺到する。だが、アルファモンとスラッシュエンジェモンは見た。卵の中にいた者を。
アルファモンは叫ぶ。デジモンたちを死なせないためにも。
「避けろぉ!」
直後、黒い閃光が世界を吹き飛ばす。たっぷり三十秒は続いたその閃光はアルファモンとスラッシュエンジェモン以外のデジモンたちをすべて消し飛ばした。
卵から現れたモノそれは――。
「オメガモン……!」
黒いオメガモンだった。もちろん本物のオメガモンではない。本来のオメガモン――正確にはオメガモンX抗体だが――は現在、旧世界にいる。
おそらくあの桁外れの数のモドキたちが集まって黒いオメガモンへと進化したのだろう。
「っく……スラッシュエンジェモン!」
「はい!」
スラッシュエンジェモンとアルファモンは二人がかりでオメガモンへと向かう。
先ほどの閃光はオリジナルのそれと比べても遜色なかった。下手に手を抜いていたらやられると判断してのことだ。
スラッシュエンジェモンがその手の剣でオメガモンに斬りかかる。オメガモンは左手の竜の籠手より繰り出した剣で迎え撃った。全身が剣であるスラッシュエンジェモンは、両手だけでなく両足や羽など、全身を使って手数で攻める。
だがオメガモンは左手の剣だけでその手数に対応してみせたのだ。
「っく……」
「スラッシュエンジェモン!」
アルファモンの声に応じてスラッシュエンジェモンが退く。追撃しようとしたオメガモンを上空からの大量のエネルギー弾が襲った。
あのまま戦っていたらどうなっていたか。おそらくは勝てただろうが、簡単にとはいかなかっただろう。
スラッシュエンジェモンは安堵の息を漏らす。だが、対照的にアルファモンの顔は厳しかった。
「助かりました。アルファモン。……アルファモン?」
「まだだ。構えろ!」
アルファモンの声に応じてスラッシュエンジェモンはオメガモンの方へと向く。
そこにはボロボロながらも立ち上がったオメガモンの姿があった。
「あれを食らって立ち上がるとは……オメガモンの姿は伊達ではない……ということですか」
「しょうがない……少し本気出す!」
アルファモンの背後に大量の魔法陣が展開する。その魔法陣一つ一つから出る剣。それらすべてが、アルファモンが普段使っている剣――聖剣グレイダルファー――だった。
振り下ろした手と共に大量の剣がオメガモンへと飛来する。始めは剣で弾いていたオメガモンだったが、やがて物量に耐えられなくなったのか。一撃、また一撃と食らっていった。しばらくしてオメガモンの姿が剣だけで見えなくなる。
「……終わったか?」
「みたいですね」
あの黒いオメガモンは完全に消滅していた。完全にオーバーキルである。
戦いには勝ったが、アルファモンとスラッシュエンジェモンの表情は優れなかった。今までは成熟期から完全体クラスだったから良かったのだ。だが、究極体――それも上位の存在であるオメガモンや、それと同クラスのデジモンのモドキが出てきた場合、自分たちだけでは手が回らなくなる。
それを理解してのことだった。
空を見上げる。平穏は遠そうだった。
さて。今回の二人は一体誰でしょうか!まぁ、バレバレですが。
そして名前しか出てこない主人公……大丈夫だろうか。
そして番外編。本当はこれ含めて三つの話で三話でまとめるつもりが長すぎて分割。五話になりました。
あぁ……第四章が遠のいていく……。
それから書き方変えましたが、読みにくいってところがあれば言ってください。
出来る限り直します。
もちろん普通の感想や批評も大歓迎です。