【完結】ワールド・トラベラー   作:行方不明

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第四章にさっさと入りたいので、少し投稿ペースを上げます。

今回はタイトル通りあの0歳児が登場します。前後編です。
まぁ、若干後編の内容がタイトルに入ってますが、気にしないでください。


第四十五話~自分探しの旅の途中?ブラックウォーグレイモン!~

 元の世界へと戻るために世界を超えた旅をしている旅人たち。

 現在は夕食後の団欒タイムである。ただ、ナムやリュウダモンは娯楽を楽しむタイプではないので食事を終えた後早々に眠りに就いているのだが。

 

「旅人何してるの~?」

 

「説明書読んでる」

 

「何の?」

 

 “これの”と旅人が見せたのは、前の世界でウィザーモンから貰った機械であるクロスローダーアナザーだった。

 “説明書付きなんだからオレでも扱えるだろ”とタカをくくっていた旅人だったが、説明書では難しい専門用語や漢字などが使われていて、読めたものではなかった。

 毎日唸りながら読んでやっと少し理解できるという程度である。

 

「やっぱりうまいことはいかないか。クロスローダーアナザー……長い。アナザーでいいか。アナザーにはもっと分かりやすい説明書ないのかよ……」

 

「いや、旅人それ毎日言ってるでしょ」

 

 溜息を吐きながら、アナザーの電源を切る。ここ数日、暇さえあればこのアナザーを眺めている旅人からすれば、“そろそろ扱えるようになってもいいのでは?”と少しイラついているのだ。結局、説明書というのは名ばかりのただの専門書だった。

 “仕組みとかいいから使い方だけ書いといてくれ”とは、旅人談である。

 

「はぁ。まぁ、特別仕様のデジクロスの扱い方が分かっただけでもよしとするか」

 

「あ、それは分かったんだ」

 

「なんとかね」

 

 旅人としては、デジモンの収納機能や世界間ログなどいろいろと知りたい情報満載なのだが、使い方が分からない。後者は使い方が分かったとしても、情報を理解できないのだが、残念ながら旅人はそれを知らなかったりする。

 一方でその特別仕様のデジクロスができるようになったという言葉にドルモンは惹かれた。

 “見てみたい”それがドルモンの心情だった。

 そのことに気づいた旅人は、その視線に気づかないフリをしてアナザーをしまう。

 それを見たドルモンが肩を落としているのだが、ほんの余談である。

 

「もう寝るぞ。明日は一日かけて食料調達だ」

 

「え~キノコはやだよ?」

 

「それは……まぁ、明日次第だな」

 

 ちなみにここ数日で食料は尽きていた。

 辺りには人里も見えず、デジモンの姿もない。もちろん普通の生き物の姿も。であるからして、そこら辺に生えている植物から食料を調達するしかない。木の実も見かけてないことから、キノコと草くらいしか食べるものがないというのが現状である。

 “キノコ嫌~”とうるさく叫ぶドルモン。ドルモンがキノコを食べなくてすむかどうかは、明日のドルモンの頑張り次第である。

 

 

 

 

 

 翌日。“なんかいる”と旅人は木の陰に隠れていた。視線の先にはここへ来て初めて目にする生き物。それも旅人が前に見たことがあるような姿――色は違うが――をしている。ちなみに隠れたのはなんとなくである。

 両手には三本の爪が生えている籠手、ドラモンキラー。そして背中には盾にもなる羽、ブレイブシールド。別の世界で見た竜戦士を黒くしたようなデジモンがそこにいた。

 とはいっても。その黒き竜人は何をするわけでもなく、ただ歩いている。よく見ると歩いた道が陽炎のように揺らいでいる。

 不意にその黒き竜人は立ち止まって、振り返った。。

 

「そこの影に隠れている奴」

 

「ッ!」

 

 ドキリと旅人の心臓がはねる。その黒き竜人にとってはさっきから隠れている旅人など丸分かりのようだった。

 しょうがないので旅人は木の陰から出る。

 だが、黒き竜人は出てきた旅人を見ても、何もしようとしなかった。ただジッと旅人のことを見ている。

 

「何をしていた?」

 

「いや、特には。食料調達を……」

 

 責め立てるような口調の黒き竜人を前に、“何でこんなことになってるんだ”と旅人の気分は沈み始めている。もっとも明らかに自業自得なのだが。

 対して黒き竜人はそんな旅人を気にも留めていないようだった。無駄に重い雰囲気が辺りを包み込む。

 沈み込む気分に身を任せている旅人は事の起こりを想起して行く。そんな中で旅人が思い出したのは、今自分がやるべきこと。すなわち――食料調達である。

 

「な、なぁ……ここら辺で何か食べられるものってないか?肉でも、植物でも何でもいいんだ」

 

「何?お前は……俺のことを何とも思わないのか?」

 

 質問した旅人を、黒き竜人は不審な目で見ている。“何を考えている?”そんな意思がはっきりと分かるような目だった。

 

「何が?」

 

 一方で何故そんな目をされるのか分からない旅人は狼狽えるしかない。

 “何とも思わないのか”そう問われても、旅人には少し怖い奴だなとしか思えないので、その黒き竜人が何のことを言っているのか分からない。

 

「……ついてこい」

 

「へ?」

 

「食料が欲しいのだろう?」

 

 それだけ言って黒き竜人は旅人に背を向けてゆっくりと歩いていく。相変わらず、黒き竜人の周りには陽炎のような歪みができていたが、旅人は気にする余裕もない。置いていかれないように旅人は後を追った。

 そんな奇妙な組み合わせの二人がしばらく歩いていくと海が見えた。黒い竜人はそこで立ち止まると気合を入れて力を溜める。

 

「っふ!『ガイア……」

 

「ちょっ……」

 

「フォース』!」

 

 黒い竜人の両手から放たれた赤黒い火球が海を割った。あまりの事態に旅人は口を開けて呆然とするしかない。

 一方でそんな旅人を放って置いて、黒き竜人は割れた海を歩いて、水がなくなり海底をのたうち回っている魚を拾っている。

 しばらくそれを見ていた旅人もハッとして魚を拾う作業に移った。

 ちなみに。その後割れた海が元に戻るときに、旅人が波に飲まれそうになったのは、ほんの余談である。

 それを見た黒い竜人が溜息を吐きながら旅人を助けたのも、やっぱり余談である。

 

 

 

 

 

 粗方魚を拾い終わった黒い竜人と旅人はナムたちとの集合場所へと戻って来た。

 ちなみに黒い竜人がいるのは旅人が“お礼に飯でも”と誘ったからである。

 初めは鬱陶しがっていた黒い竜人だったが、仕方なくといった体で付いて来た。

 それを見て“怖いのは雰囲気だけだな”と若干失礼なことを旅人が感じたのはまた別の話だ。

 

「どちら様?」

 

「コイツは……そういや、まだ名前聞いていなかったな。お前はなんて名前なんだ?」

 

 “聞いていなかったの!?”とドルモンが叫んでいるが、旅人は無視。話題を振られた黒い竜人にナムとリュウダモンを含めた四人の視線が集中する。

 黒い竜人は何か動揺しているようだったが、やがて口を開いた。

 

「俺は……ブラックウォーグレイモンだ」

 

「ブラックウォーグレイモンね……まぁ、よろしく」

 

 確かめるようにブラックウォーグレイモンが呟いたその名前を聞いた旅人が差し出した手を、ありえないモノを見るような目で見てから。ブラックウォーグレイモンは手を差し出した。否、差し出そうとした。

 直後。上空に轟く雷鳴が響き渡ると共に、稲妻が旅人たちとブラックウォーグレイモンの間に落ちる。全員が稲妻を避けて、上空を睨む。先ほどまで晴れ渡っていた空は、薄暗いカミナリ雲で満ちている。

 その雷鳴轟くカミナリ雲の中に、白き羽でできたマントと黄金の甲冑に身を包んだ一体の神がいた。その神が両手に持った小型のハンマーがバチバチと音を立てて帯電している。

 

「ユピテルモン」

 

「ユピテルモン?」

 

「オリンポス十二神という究極体集団の一体だ。しかし……一体何をしに現れたのだ?」

 

 ユピテルモンと呼ばれたその神はただ機械のような感情のこもっていない目で旅人たちを、正確に言えばブラックウォーグレイモンを見ている。リュウダモンもドルモンもユピテルモンの真意を測りかねているようだった。

 だが、ただ一人ナムだけは当然だと言うような表情を見せていたことに、ユピテルモンを見ていた誰もが気づくことはなかった。

 一方でそんな旅人たちを無視して、ユピテルモンが口を開く。

 

「暗黒の意志によって生まれし者よ。汝の存在は世界を乱す。我は神として貴様のような存在を許すわけにはいかない」

 

「ふん。……貴様に許される謂われはない」

 

「その心……もはや一刻の猶予なし。その業。己が存在をもって償え。裁きを……受けよ!」

 

 取り付くまもなくユピテルモンから雷が飛ぶ。狙いはもちろんブラックウォーグレイモンだ。

 だが、飛んできた雷はブラックウォーグレイモンに当たることなく彼の真横に突き刺さっていた。その一連の光景を見ていたリュウダモンは感心したような声を上げている。

 別にユピテルモンが雷を外した訳ではない。ブラックウォーグレイモンが雷の着弾点を予想して体をずらして避けたのだ。ブラックウォーグレイモンは雷を紙一重で避けたのだ。紙一重というと偶然のように見えるがそうではない。ブラックウォーグレイモンはかなりの精度で雷の攻撃を予測したということなのである。

 

「やはりこの世界も俺の存在は認めないのか……」

 

 どこか寂しそうに呟いたブラックウォーグレイモンに旅人とドルモンは顔を見合わせる。

 だが、そんな二人を無視してブラックウォーグレイモンは空へと飛び上がり、ユピテルモン目掛けて飛んで行った。

 

「俺に裁きを下すといったな。……力ずくでやってみろ!」

 

 そこで、ユピテルモンの行為に納得のいかなかった旅人は余計なことをしてしまう。

 ようするに“触らぬ神に祟りなし”というその格言に真っ向から逆らうことをしてしまったのだ。

 

「待ってくれ!ユピテルモン!」

 

「ぬ!若造!?やめい!」

 

 リュウダモンの言葉も無視した旅人はユピテルモンに話しかける。もっとも上空の遠く離れた位置にユピテルモンはいるため自然と叫ぶ形になる。ブラックウォーグレイモンとユピテルモンは自然と旅人を見る形になり、動きを止める。

 旅人はブラックウォーグレイモンに食料調達を手伝って貰ったのだ。先ほどのブラックウォーグレイモンの寂しそうな声も旅人の耳に残っている。だから、何とか戦闘だけでもやめさせようと旅人は声を上げたのだ。

 だが、それが完全に裏目に出る。ユピテルモンの知識を知らなかった旅人のミスである。

 ついでにドルモンは旅人の行動に賛成しているが、その横のリュウダモンは頭を抱えていた。

 

「汝。我が決定に異を唱えるか?」

 

「若造、言うんじゃない!」

 

「えぇと……まぁ、そういうことになるか?」

 

 直後、旅人に向かって雷が落ちる。間一髪ドルモンが旅人を抱いて避けた。

 “何をする”と旅人がユピテルモンを睨みつける。だが、ユピテルモンは機械的なまでに冷たい瞳を旅人とブラックウォーグレイモン、そしてドルモンにも向けていた。

 巻き込まれないように早々にその場を離れたナムとリュウダモンにユピテルモンは気づいていたが、見逃していた。

 そしてそんなユピテルモンがドルモンに問う。

 

「汝も我の決定に異を唱えるか?」

 

「当たり前でしょ!旅人がやられるのを黙って見てられないよ」

 

「ならば。悪を庇う汝らのその業。己が存在を持って償うがいい」

 

 ユピテルモンが両手のハンマー同士を撃ち合わせる。すると小さな雷雲が召喚され何かの陣を組み始めた。上空の雷鳴と共に、バチバチといった帯電音が辺りに響き渡る。

 

「裁きを受けよ」

 

「ッ!set『進化』『究極』!『転―』」

 

「『マボルト』」

 

 ユピテルモンの言葉と共に、雷がブラックウォーグレイモンと旅人とドルモンの三人に落ちる。

 世界を砕くような轟音。その雷の威力は旅人がカードを使うことで出せる雷の最大威力を遥かに超えていた。

 ユピテルモンが冷静に辺りを見回す。

 次の瞬間。ドルゴラモン(・・・・・・)がユピテルモンの背後に現れた。ドルゴラモンの拳がユピテルモンを捉える。完全な不意打ち。だが、ドルゴラモンは拳越しの感覚に眉をひそめた。ユピテルモンの背にある羽でできたマントによって防御されたのである。

 “姿が変わったことには驚いたが、それでも己が神罰を下す存在であることに変わりはない”

 そう思考するユピテルモンがドルゴラモンにと向き合った瞬間、赤黒い火球がユピテルモン目掛けて向かってきた。撃ちだした雷でその火球を相殺したユピテルモンは、ボロボロになりながらも現れたブラックウォーグレイモンへとその視線を向ける。

 

「ふん、お前たち……何故俺の味方をする?」

 

「食料のお礼と~」

 

「成り行き。……ドルの進化と『転移』が間に合ってほんっと良かった」

 

 “発動があと一瞬遅かったら死んでいたな”と『風』のカードを使って浮く旅人は内心で冷や汗を垂らしている。その手には既にカードを構えて戦闘態勢バッチリである。

 一方でユピテルモンは三対一であるにも関わらず、焦った様子はない。バチバチと帯電音が鳴り響き、油断した者をその雷で容赦なく焼くだろう。

 

「……そうか。どうなっても知らん。行くぞ!」

 

 ドルゴラモンとブラックウォーグレイモンが空を翔る。二対一で戦っているにも関わらず、ユピテルモンは崩れず、ドルゴラモンとブラックウォーグレイモンの猛攻を捌いている。

 総合的なスペックはドルゴラモンと同じか少し上くらいだろう。だが、ユピテルモンは二対一であることを巧みに利用し、敵の攻撃が敵に当たるように差し向けていた。

 これは両者の経験の違いと旅人たちが慣れない者と連携を行っているからだろう。

 “本当はもっと余裕あるときにお披露目したかったんだけどな”と旅人はある機械とカードを取り出しながら溜息をつく。だが、出し惜しみして、負けるのは馬鹿がすることである。

 旅人がアナザーと名づけた機械とあるカードを掲げて――旅人も戦線に加わる。

 




このブラックさんは02のブラックさんです。えぇ。02の第三十七話から第四十六話の間の“何処でもない何処か”へと行っている最中のブラックさんです。

ブラックさんのキャラに違和感を感じる人もいるかもしれませんが、個人的にブラックさんは敵意のない弱者には優しいと思ってます。敵意付きなら別ですが。
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