【完結】ワールド・トラベラー   作:行方不明

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第四話~スカルグレイモンとの激闘~

 森を抜けて数日が経った。森の外は草木が一本も生えていない荒野であり、異世界のデタラメな法則性が垣間見えた場所だった。

 

「お腹減った~!」

 

「ちょっと待ちなさいよ!まだ作っている途中なんだから!」

 

 ここ数日のうちにいつの間にか追いついたウィッチモンが新たに旅仲間として加わり、パーティー内の雰囲気は明るいものとなっていた。

 ちなみにウィッチモンはウィザーモンに対して素直になれないだけであって他の人への対応は普通である。

 

「はい。とりあえずできたわよ?今晩の夕食。あとこれを逃すと次はいつ食べれるか分からないから。後、これは本当の緊急手段として作った保存食」

 

「ご飯~!」

 

「はぁ。変なものを入れてないだろうな?」

 

「入れてないわよ!私のことなんだと思っているの!」

 

 そんな素直になれないウィッチモンとウィザーモンのやり取りを放っておいて。 旅人は荷物になるであろう保存食をしまうことにする。

 

「その保存食貸してくれ」

 

「いいけど、どうするの?」

 

「いちいち持ち歩くの大変だろ?オレが持っておく。……set『転送』これで良し。食うか」

 

「そんなことしなくても良かったのに……」

 

 『転送』は物をどこかに送る力ないしどこかから物を持ってくる力で、対象を送るないし持ってくる場合、自動で何処かに行く場合と意識して何処かを決める場合とがある。

 ちなみに自動で何処かを選択した場合、送った物がどこに行くのかは、旅人は知らない。何を送っても、腐らないし、変化ないしでいいじゃん。と考えている。

 料理スキルのあるウィッチモンの参加によって食生活が改善されたのは良いのだが、ここは植物のない荒野。既に食料は尽きかけていた。後一日二日で尽きる計算なのでそれまでに荒野を抜けなければいけないこととなる。

 

「いっそのことドルが進化して強行突破するか?」

 

「いや。やめておいた方がいいだろう。ここに生息するデジモンは凶暴で強力な種が多い。あまり目立つことをすると戦闘になる確率が高くなる」

 

「それに一回戦闘すると他の奴らがよって来ることもあるしね」

 

 強行突破という案がすぐさま否定される。だからと言って何もせず、歩きで行く。これもできない。なにせ歩きで後一二週間、間違いなく食料が持たない。

 

「進化といえば、ドルモンはどれくらいまで進化できるのだ?」

 

「そういえば、そうよね。大抵の相手は私か、ウィザーモンか、旅人が相手しているし」

 

「ドルの進化なんかに興味あるのか?」

 

 言外に“ドルモンの進化はどうでもいいことだ”と告げている旅人だが、ウィッチモンやウィザーモンは引く気がない。

 それどころか、“ものすごい興味あります”と顔にはっきりと書いてあった。

 

「当たり前だろう。旧時代(・・・)のソレに近い……しかも、姿が変わった後、しばらくすると元の姿に戻るときた。こんな不思議な現象に興味を抱かないはずがない」

 

「だってさ……ドル」

 

「オレ……?究極体までだよ?まあ、旅人のカードがないと進化できないし、したくないけど」

 

「え?」

 

 予想外の答えに固まるウィザーモンとウィッチモン。

 明らかに言葉が足りていないドルモンの説明を旅人が引き継いだ。この手のことで勘違いされるのは良くない。

 

「完全に進化できるのは完全体まで。だけどな。……ギャグじゃないぞ?それにコイツはあまり戦わない。この間のように冷静でなくなるほど飲まれている(・・・・・・)ときを除いてな。究極体は一度進化しただけなんだが……」

 

「なんだが……?」

 

 言葉を濁した旅人にウィザーモンが疑問に思う。よく見るとドルモンが落ち込んでいる。

 “話していいか”と尋ねる旅人にドルモンはいつか分かるだろうしと首を縦に降る。

 

「暴走というか、そんな感じの何かでな。進化したのはほんの一瞬だったのにその間で街一つ吹っ飛ばした。ついでにそんときにオレも死にかけたし……な。以来完全体以降は恐ろしくて使えないというわけだ」

 

「トラウマになっちゃたのね」

 

「ちょっと違うが……まあ、そんな感じ。戦闘を……破壊を好む本能的な感情が嫌なんだと」

 

「そうか。短期で急激に進化するなんて何か有るとは思ったが、やはりそう簡単にはいかないか。三大ターミナルの悲劇以降、進化とは長い年月をかけるようになったらしいからな」

 

 それきりその話題はそこまでといった感じで進化についての話題は終わった。

 ついでに言うと本来の話題から話が逸れていたと気づくのは翌朝の出発後の話である。

 

 

 

 

 

 

「ははっ。どうせオレなんて……」

 

「……お水」

 

「……」

 

 出発して三時間。無駄に重い空気がパーティー内を漂っていた。事の始まりは三十分前。水を飲もうとした旅人が水筒を出したところで、キノコを発見したことにある。

 荒野の中の一輪のキノコ。食糧難の現在、価値のある大発見に叫んでしまったのだ。“キノコ!”と。

 後はキノコ嫌いのドルモンが発狂しかけ、旅人に体当たり。勢い余って水筒を落とし、水をこぼしてしまったというわけである。水を対価にキノコ一つ。明らかに等価交換ができていない。

 ウィッチモンは魔術で水が出せるのだが、二人の落ち込みようがすごいので言うタイミングを逃していた。そのことを知っているウィザーモンも同じくである。

 ちなみに旅人もカードを使えば水くらい出せるのだが、あまりの落ち込みように気がついていない。

 

「え……と、あのね?私って魔術でっ!」

 

 ようやくウィッチモンが意を決して言おうとした慰めの言葉は続かなかった。

 地面から伸びた骨のような腕がウィッチモンを吹き飛ばしたのだ。緊急事態に落ち込んでいた旅人とドルモンもすぐさま臨戦態勢を取る。

 

「ウィッチモン!ろびのよちつ!『アースバインド』」

 

「set『武装』『風』」

 

 すぐさまウィザーモンは土で出来た鎖で謎の腕を縛る。その隙にドルモンがウィッチモンを救出。

 旅人は『武装』によって――武器・防具を召喚する能力――で剣を召喚。ついで風を薄く変化させ、剣の切れ味を強化。そのまま斬りかかった。

 

「っく。硬い!」

 

 旅人は腕の硬さに声を荒げながらもひとまずバックステップでドルモンたちの下へと戻る。

 腕はウィザーモンの土の拘束など無いように引きちぎり、残る体全体が土の中から姿を現した。

 

「スカルグレイモン!土の中に居たのか!」

 

「これは……少しマズイな」

 

 土の中から出てきたのは背中にオレンジ色のミサイルを背負った恐竜の骨格のような生物――スカルグレイモン――だった。

 サイズ的には数メートル。旅人は先程の交戦でおそらく今まで戦った中でも一二を争う相手だと悟る。

 

「ウィザーモン。ウィッチモンを連れてとりあえず安全なとこまで逃げろ。話している暇なさそうだ。とりあえず逃げる時間だけは稼ぐ。いざとなったら『転移』で逃げるから、さっさと逃げてくれ。Set『進化』ドル!あと任せた」

 

「ドルモン進化――!ドルガモン!分かった……すぐ戻る!」

 

「待て!旅人!」

 

 ウィザーモンの返事を聞かずに旅人は走り出す。スカルグレイモンは一番近い旅人に狙いを絞ったのか、旅人だけを攻撃し始める。

 

「……死ぬなよ!」

 

 ドルガモンはウィザーモンとウィッチモンを掴んでそのまま飛び去る。

 

「さて、しばらく相手してもらおうか。Set『加速』」

 

 幸いとしてスカルグレイモンはパワー、スピード共にかなりのものだが動きが大きい。しかも意思がないため、戦略もない。それだけなのに強い。意思のない暴力でもここまで行くのかと驚く程である。

 『加速』によってスピードを上げ、腕の攻撃を避けながら隙を見て切り込んでいく。現状の最大火力の攻撃ならダメージを与えられる可能性があるが隙が大きい。『防壁』で防御しようにも防壁を貫いてくる可能性があった。

 

「あの背中のミサイルってやっぱり拙いよな」

 

 もう一つ。最大火力の攻撃は遠距離タイプである。遠距離に移ると今度はあのミサイルを使う可能性がある。接近戦がこの強さなのだ。これみよがしに有るミサイルはハリボテではないだろう。

 

「この速さ的に後、一時間位は持たせないと不安か。あとはドルがいつ来るか……だな。長いな……」

 

 戦いは始まったばかりだ。

 

 

 

 

 

 荒野を猛スピードで飛翔する影がある。先程、旅人と別れたドルガモンたちは他のデジモンに見つかることを構わず飛んでいた。

 

「おい!どこまで行く気だ!」

 

「安全な場所!今探してる!」

 

 “今探している”と言っても安全な場所などある訳がない。荒野は草木が生えておらず、隠れる場所などどこにもないのだ。

 

「そんなものある訳が……」

 

「あった!今着地する!ちょっと衝撃があるから気をつけて!『ダッシュメタル』」

 

 あると言いはり着地したドルガモンに驚く。ドルガモンが技によって開けた穴はどこかで深い洞窟のようだった。

 

「ここは……?」

 

「たぶん、スカルグレイモンが出てきた穴につながっている。空を飛んでいてさっきの場所から伸びている亀裂があったんだ。たぶん地下でつながっているんだと思う」

 

「スカルグレイモンの……?安全なのか?」

 

「……たぶん。他のデジモンの気配がないし、スカルグレイモンだって旅人が引きつけている間はここには来れない。それじゃ、ウィザーモンはウィッチモンを治療しておいて。オレは旅人を助けに行く」

 

 “旅人を助けに行く”その言葉に驚くウィザーモン。

 あの破壊の化身に完全体に進化できない身で、戦いを嫌うという身で助けに行こうというのだ。

 

「本気か?旅人は逃げると言っていたじゃないか。戻った時に旅人がまだ戦っている可能性は低いんだぞ?」

 

「……まぁ、そうかもしれない。でも約束しちゃったからね。すぐ戻るって。約束は守らないと」

 

「スカルグレイモンは完全体だ。単独で完全体に進化できないドルガモンは足でまといだし、そも、『転移』が使えるならば助けに行く必要がない。無駄に命を賭けるだけだ」

 

 ドルガモンの強固な姿勢にウィザーモンは冷静に説得しようとする。やがてドルガモンの姿勢に説得は不可能と悟ったのか、純粋な疑問をドルガモンに投げかけた。

 

「理解できないな。自分のしていることは意味がないかもしれないと、分かっていながらどうしてそこまでする?」

 

「分からない。意味がないかもしれない。分かってる。それでも、行かなくちゃ」

 

 ドルガモンの言葉をウィザーモンは理解することができなかった。

 一方でドルガモンも同じなのかどこか釈然としない雰囲気ではあったが。

 

「非効率的だ。不合理だ。旅人だって、争いが嫌いな君を待ってはいないだろう?」

 

「いや……たぶん旅人は待ってる。すぐ戻るって言ったオレを。だから行かないと。戦いは嫌いだよ?いろんなものを壊したくなる。でも……嫌いなものから逃げて、大切な相棒を見殺しにしたなら、()はきっと生きていけなくなる」

 

 ドルガモンは今までを振り返り、何故こうも自分が頑な姿勢をとっているのか、その理由に行き当たる。すなわち……一人ぼっちは嫌だと。

 

「……この世界に来てやっと分かったよ。()が戦う相手は僕自身(・・・)だ。」

 

 それだけではない。今までは別に良かった。戦うことなどなかったから。命の危機も何もなく、ただ日々を過ごせばよかっただけだった。

 しかし、これからはそうはいかない。きっと旅人は命の危険があろうと、旅をすることをやめたりしないだろう。

 

「この先で()僕自身(・・・)に負けた時、それはきっと旅人と別れる時なんだ」

 

 自分自身……自分の本能に抱く恐怖に負ける。それは戦うことをやめるということだ。

 裏を返せば、危険に抗うことをやめるということであり、危険と隣り合わせの可能性のある旅をすることができなくなるということでもある。そして旅を続けることができないドルガモンを、旅人は容赦なく置いていくだろう。それが旅人との別れだ。

 明らかにドルガモンの考えすぎなのだが、緊急事態で感覚が麻痺しているのかドルガモンは気づかない。

 

「……それだけは嫌だ。オレ(・・)は旅人の相棒だ。旅人の相棒として旅をしたい……し続けたい。一人きりで旅をするつもりはない……。だから……旅人の相棒で居続ける為にも。逃げるのは……戦いから逃げるのは、今日でおしまいだ。負けない。絶対に」

 

「行くのか……?」

 

 答えはなかった。ただ翼をひと振り、空へと飛び立った。不意にその姿が白銀の巨竜のようにも、漆黒の騎士のようにも見えてウィザーモンは目を見開く。

 後にあるのは紫色のような、灰色のような毛色の竜が飛んでいく姿だった。

 

 

 

 

 

 

「set『捕縛』『爆破』」

 

 スカルグレイモンを拘束した『捕縛』によって作り出された鎖が『爆破』によって一瞬で爆発する。

 普通の生き物ならばくらっただけで木っ端微塵になるであろう爆発を受けてなおカスリ傷程度しか負わないスカルグレイモンに驚きを隠せない。

 

「まったく、面倒だなっ!」

 

「グオォォォ!」

 

 咆哮。響くような感覚と共に旅人の体が一時停止する。スカルグレイモンは咆哮の音圧だけで旅人の進行を妨げ、その隙を逃さず攻撃する。

 意思が無いハズなのに唸りたくなるような戦闘技術である。

 

「っち。そろそろいいかな?……まだ早いか。Set『転送』ついでにオラッ!」

 

 スカルグレイモンが砕いた岩をスカルグレイモンの頭上に転送する。ついでに剣を地面に叩きつけて未だ効果が切れていない『風』の力で土を舞い上げて視界を潰す。

 スカルグレイモンは腕のひと振りで転送した岩を砕き、視界を晴らす。

 

「最大出力!set『反発』」

 

 スカルグレイモンが腕を振り切ると同時に振り切った腕に着地、そのまま『反発』の力で腕と自身を反発させて急加速。

 風の出力を上げて、切れ味と耐久が上がった剣をそのままスカルグレイモンの胸に突き刺した。しかし……浅い。

 

「浅い!」

 

 抜けなくなった剣を手放して離れる。あと一瞬離れるのが遅かったらくらっていたであろう一撃が旅人の前を通り過ぎた。依然として剣は胸に突き刺さったまま。

動けない。

 距離が近すぎて、カードを使う隙がない。あの胸の剣が鍵になりそうだなと考えながらスカルグレイモンの様子を伺う。その瞬間――。

 

「『パワーメタル』」

 

 予期せぬ上からの一撃にスカルグレイモンは地面にめり込んだ。

 それだけではなく元々もろくなっていたのであろう地面が落盤。スカルグレイモンは元いた地下へと落ちていった。

 

「遅い!」

 

「ゴメン、ゴメン。ちょっと疲れちゃって」

 

「さて。まあいい。今のうちに逃げ……!」

 

「グオォォォオ!」

 

 スカルグレイモンは速攻で這い上がってきた。心なしかさっきより怒っているようで、攻撃が苛烈になっている。

 ドルガモンにアイコンタクトで撤退は不可ということを伝える。

 

「こうなったらやるしかないな。Set『念話』」

 

「オーケー!」

 

 二人になった分避けるのが楽になり、余裕が出来た。その余裕を使って、旅人はドルガモンに作戦を伝える。スカルグレイモンに聞かれない為に『念話』まで使って念入りに準備する。

 一方でドルガモンの返答は“できなくもないけど難しい”というものだった。

 

「やるしかないだろ!set『土』」

 

 ドルガモンは作戦実行のためにタメに入る。旅人の役割は止めることである。

 『土』の力で柔らかくした地面が動き鈍らせることに成功するも、このままではすぐに解き放たれそうな勢いである。

 

「やれやれ。仕方ないな。ろえまかつよちつ!『アースバインド改』」

 

「ウィザーモン?来たのかよ!」

 

「まるで来ちゃいけなかったような口ぶりだな。安心しろ。ウィッチモンは無事だ」

 

「いや、そうじゃなくて……」

 

「さっさとしろ。謎原理の君の力と違ってこっちは疲れるんだ」

 

 ぞんざいな対応にイラッときたが言っていることは確かなのでドルガモンの背に乗り、伝える。“準備は出来た”――と。

 

「行くよ!『パワーメタル』」

 

「コイツはおまけだ!set『強化』」

 

 強化した『パワーメタル』がスカルグレイモンの胸の剣を押し込む。それで終わり。スカルグレイモンは断末魔の叫びを上げる。

 断末魔の叫びとともに消滅していくスカルグレイモンを眺めながら、ウィザーモンは“たまにはこういうのも悪くはないかもしれないな”と先ほどの説教内容を思い返した。

 

 

 

 

 

 

「れおなよずき『治癒』ふう。これで大丈夫か」

 

 ドルガモンが去ったあと地下洞窟でウィッチモンの治療を終えたウィザーモン。その顔は終わったというものではなく複雑なものだった。

 

「……。愚かな行動だと分かってやる……か。理解できないな」

 

 数週間共に過ごした二人組を思い浮かべてすぐに消す。どのみちあの二人は助からない。助かったとしてもどちらか片方だけだろうと。

 それでも尚、複雑な気持ちでいるのはあの二人組が数週間でウィザーモンにもたらしたものはウィザーモンの知らないことばかりだったからだ。

 学者気質で友人――ウィッチモンを除く――のいないウィザーモンは自分以外の価値観を知る機会がなかった。もともとの性格もあるだろうが、ウィザーモンが知識に貪欲なのは、自分の知らない価値観を知りたいと思ったが故にだ。

 今までは問題がなかった。知識に意思はなかったから。しかし今度は違う。今度は人であり、デジモンであり、意思がある。そこには一方的な知るという行為では成り立たず、必ず相互理解が必要である。

 そのことに慣れてないウィザーモンはこうして悩んでいる。今までの方法で知ることができないから。

 

「まったく……情けないわね」

 

 ウィザーモンが聞き覚えのある声に振り向くとウィッチモンが起き上がっていた。もっとも全開しているわけではないのか、フラフラと今にも倒れそうではあるが。

 

「アンタらしくないわよ。そんな顔でうんうん唸って。本当にアンタらしくない。いつものアンタならすぐ知ろうとしていたじゃない!何より、わ、私が認めたアンタはもっと堂々と貪欲だったんだから!が、頑張りなさいよ!」

 

 ウィッチモンの激励は支離滅裂で、論理も何もない激励だったがウィザーモンは不思議と悪い気はしていなかった。むしろ逆の清々しい気分にさえなっていたのだ。

 

「っく。くくく」

 

「な、なによ!いきなり笑い出して」

 

「いや何。ときどき君はすごいなと思っただけの話だ」

 

「わ、分かればいいのよ。分かれば」

 

 “知らないならば、知ればいい。理解できなくとも、知ることはできる。今の自分が理解できないことなんて、それこそ腐る程ある……そんな単純なことを忘れていた”と、自身の状態を考えて、これからのことを考える。

 試しに魔術を使って見てみると旅人が戦っているのが見える。ドルガモンはまだ着いていないらしかった。

 

「さて。それでは行くか」

 

「行くの……?」

 

「ああ。あの馬鹿二人は僕の知らないことをまだまだ知っていそうだ。だから、少し馬鹿二人を助けてくる。待っててくれ」

 

「うん。待ってる。だから……その……」

 

 口ごもるウィッチモンに首を傾げる。ウィッチモンはやがて意を決したのか口の中の言葉を吐きだした。

 

「い、いってらっしゃい!」

 

 出された言葉に少し唖然としていたウィザーモンだったが、やがて微笑み、とある言葉を言い、地下洞窟から飛び出て行った。

 

「いってきます……か。まるで新婚さんみたいな……っは!」

 

 その後、旅人たちが迎えに来るまで羞恥に悶えていたウィッチモンがいたとかいないとか。

 

 

 

 

 

「疲れた……」

 

 あのままあの場所にいると襲われる可能性があるので戦ってすぐにスカルグレイモンが出てきた地下洞窟を移動中である。

 ちなみに出入り口はウィザーモンが封鎖した。

 

「旅人!」

 

「ん?どした?ドル?疲れているから後にして欲しいんだが?」

 

「今じゃないとダメ!」

 

 あまりに真剣な声色のドルモンに自然と旅人も真剣な表情で聞く。

 

「オレ……戦うよ。これからは……自分の意思で。ずっと旅人の相棒でいられるように」

 

「そうか」

 

 返答はぞんざいだったが、そこに彼らしか分からない何かがあるような気がしてウィザーモンは苦笑する。“いつか彼らの理解できないナニカがわかるようになればいいな”と思いながら。

 三人はウィッチモンの下へと歩いて行った。

 

 




一応、旅人のカードについて説明がいると思ったので説明します。
作中で旅人が言っているように一回だけ効果を発揮するタイプ――『転送』・『捕縛』など――としばらくの間効果が持続するタイプがあります――『炎』・『風』など――『炎』のような属性カードはその属性の力が使えるようになるモノと思ってくだされば結構です。
あと、旅人は使ったカードはしばらくすれば戻ると言っていますが、正確には一時間です。ので結構節約しながら使わないとすぐになくなります。setの声でカードを待機させてカード名を言うことでカードの力が発動します。連続して使う場合はsetを二回言う必要はないです。


カード説明

『転送』――行き先は某四次元ポケット的な場所に出し入れする場合と、自分が把握している場所から持ってきたり、送ったりする力がある。日常でいらないものを前者の場所に入れたり、戦闘で相手の背後を取るために使ったりと結構応用が効く。今回名前だけ出てきた『転移』と結果だけ見れば似ている。

『捕縛』――空間のあらゆるところから鎖が飛び出て対象を縛るカード。イメージとしては某慢心王の親友の名前の鎖。

『爆破』――対象を爆弾とし爆発させるカード。これだけ聞くと強力なものに聞こえるが、自分の持ち物でなければダメ、生き物には使えないなど、制限も多い。

『反発』――磁石のように自分と対象の間に反発する力を発生させる。足から地面の間に使えば急加速できるなど応用が効く。

『加速』――対象のスピードを上げるカード。これは効果が持続するタイプ。

『念話』――頭の中の言葉を相手に伝える。ぶっちゃけるとテレパシー。

『強化』――カードに限らず、いろいろな力を文字通り強化する。

『武装』――武器・防具を作り出す力。近代兵器でも可。
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