一話でまとめるつもりが、まさかの一万越え。なので分割します。
ちなみに今回の話はとある伝説に登場する主人公が出てくる話であって、伝説の主人公が出てくる話ではありません。
かつては豊かな自然が満ちる草原。しかし、今は辺り一面焼け野原である。
「逆鱗には触るなって言っただろうが!」
「ごめんなさ~い!」
そんな場所で現在、ドルモンはドラコモンに怒られている。先ほどドルモンがドラコモンにしたイタズラ。それが辺り一面焼け野原となったこの光景を作り出した原因である。
“ちょっと懲らしめてやろう”と軽い気持ちでイタズラしたドルモンだったのだが、それがこのような惨事を引き起こしたのだ。
“こんなことになるとは思わなかった”と。今ドルモンは、思わぬ惨事を引き起こしてしまったいたずら小僧の典型的な心情だった。
「こっちにだって我慢の限界ってもんがあるんだぞ!」
「うぅ……」
ドラコモンに怒られるドルモン。そんな光景の一部始終を眺め続けているのは旅人だ。
“いい加減に終わらないかなぁ……そろそろ出発したいんだけど”などと、その光景を眺めながらボンヤリと考えている。
だが、そんな旅人の心情をさておいて、ドラコモンの怒りはヒートアップするばかりだ。
このままでは埒があかないと判断した旅人は、仕方なく、この説教を止めることにするのだった。
「ドラコモン……まぁ、もういいだろ。そろそろ出発したいんだけど?」
「旅人……!」
「ん?……っち。そうだな」
ドラコモンの説教を止めた旅人を、ドルモンはまるで救い主を見るかのような目で見ている。感極まった目と言えば分かりやすい。
一方でドラコモンもかなり不満そうではあったのだが、旅人の言っていることも分かるのか、一応ドルモンに対しての説教はやめたようだった。
そんな二人を見て、旅人は溜息を吐く。おそらくこれからこのメンバーで行動するのだから、メンバー間が不仲ではこれからの旅路が辛いものとなってしまうだろう。
「ドルももう一度、謝っとけ。ドラコモンも……ドルに悪気は無かったんだ。許してやってくれ」
「う、うん。ごめんなさい」
「っち……分かったよ。俺もグチグチと言い過ぎた」
“何でこんなことしなけりゃいけないんだ。オレは学校の先生じゃないんだぞ”と旅人は二人の様子を見ながらさらに溜息を吐く。
旅人はこのメンバーでのこれからの行動に不安しか感じられなかった。
さてそんなメンバー内の事情は置いておいて。
焼け野原を抜けた一行は、森の中へと入っていた。その奥に見えるのは巨大な山脈。
学術院は北にあるというからにはこの進行方向で正しいのだが、“このまま本当に北へと歩き続けていいものか”という不安が旅人とドルモンを襲っていた。
見るからに
「……学術院の場所が分かれば、カードでひとっ飛び何だけどな」
「まぁ、しょうがないよ。どうするの~?」
カードは便利だが、万能ではない。カードの力で寒さや高山病をどうにかすることが出来ても、それだけでどうこうできるほど山は甘くない。
旅人の頭の中で、軽装で師匠と共に山を登って雪崩に巻き込まれた過去が蘇る。あの時のことは旅人が死を覚悟した場面トップスリーに入るほどだ。
そのこともあって、いくら旅好きの旅人でもなんの支度もなしに数千メートル級の山を越えようとは思わない。
「とりあえずこの森の中で食料調達。場合によっちゃ本当にあの山越えないといかんかも」
「はぁ?そんなことせずにさっさと登っちまえばいいだろ!食料調達なんかして、あの山を楽に越えちまったら修行になんねぇじゃん!」
「これから数日でとりあえず一ヶ月分くらい食料を集めよう。その間に山を越えずに済む方法を考える」
「無視すんなよ!」
“あの山なんて絶好の修行場所だろ!”と喚くドラコモンは放っておいて旅人とドルモンはそこら辺にある食料になりそうな物を集め始める。
別に旅人もドルモンも、危険な場所
「ドルお前あっちな。ドラコモンは休んでいてもいいぞ。その分取り分が少なくなるだけだけど」
「おっけ~!」
「おい待てってば!あの野郎ども……!」
さっさと食料を集めに消えた旅人とドルモンを前にドラコモンは悪態をつく。
しばらくはそこで黙っていたドラコモンだったが、“食料調達?……サボるか。いやでも、一人だけサボるってのも……俺がアイツらより弱いみたいでなんか嫌だ”と葛藤し始める。
実はキノコがあるというだけで集めた食料をコッソリと捨てる某犬に似た竜もいるので、効率的には一人二人増えてもあまり変わらなかったりするのだが、そんなことをドラコモンが知っているはずもない。
しかして、ドラコモンは負けず嫌いだった。
こんな些細なことでも“負けた自分は勝ったやつらよりも弱い”と感じるほどに。別に競争しているわけではないし、食料調達で力の強さが決まるはずもない。
それなのに、“俺は強いんだ。負けてたまるか!”とやる気を出すドラコモンを負けず嫌いと呼ばずに何と呼ぶのか。
「っち!やってやるよ!オォオオオ!」
馬鹿と呼ぶのかもしれない。或いは阿呆とも。
かくしてドルモンと旅人の知らないところで、無駄にやる気のドラコモンの参戦が決定。
食料調達の効率が普段の八割増となったのだった。
「これは食える!これは食えない!これは……食え……る?食えるでいいか!」
もっともその手腕の正誤は別問題なのだが。ドラコモンが集めた食料の半分は食べることの出来ないものだったりする。
ともあれドラコモンの活躍は目覚しい。あっという間に旅人たちが元いた場所に、ドラコモンが集めた食料が山のように積み上がっていく。
「ハッハッ……馬鹿にしてたけど……これって意外とトレーニングになるのかもな。はッ!もしかしてアイツらはこのことを知っていて……?」
ドラコモンは一休みとばかりにその場に座る。結構な勢いで集め続けたためか、ドラコモンはだいぶ疲れている。
そして、疲れていたドラコモンの目には山のように積み上がった食料は美味そうなご馳走に見えていた。
“俺が集めたんだし、ちょっとくらい良いだろ”とドラコモンは集めた食料の中から好みの食料を選んで食べ始める。一つ食べ終わるごとに一つ、また一つと食べていく。
何だかんだ言って満腹になるまで食べたドラコモン。だが、ドラコモンが集めた食料はまだ山のようにある。
“これで終わり”とドラコモンは目に付いた果物を手に取ろうとした瞬間、その果物が消えた。否、消えたのではなく誰かが先に取ったのだ。
「なっ!」
「ん?」
ドラコモンはその誰かを見て目を見開いた。別にその誰かがドラコモンの知り合いだった訳ではない。
ドラコモンはこれでも自分の実力に自信を持っている。その自分に気づかれないように接近し、自分が見えないほどの速さで獲物を横取りする。
誰かのそれらの行動は、ドラコモンにその誰かの強さを知らしめるに十分だったのだ。
ドラコモンは思わずゴクリと唾を飲み込む。
初めてだった。ドラコモンは自身が“勝てないかもしれない”と思うほどの強さを持った者と出会うのは。
「お、お前!」
「んぁ?何だテメェ?」
服の隙間から見える体は白い毛で覆われ、人型で身長的にも人間に近いと言えるその姿。腰には猿のぬいぐるみ。そして尻尾。全体的に猿を連想させるその姿。名前は違えど、人間の世界に伝わるとある伝説にその名を記すその存在。それが――。
「俺はドラコモンだ!」
「ふーん……トカゲが何の用だ?」
「トカゲじゃねぇ!竜だ!それよりお前は何者だ!」
「俺様か?俺様は……泣く子も黙るゴクウモン様だ!」
この世界でゴクウモンと呼ばれる者だった。そしてその啖呵は、切ったゴクウモン自身にとってはそれほど気にするほどのものではなかっただろう。
だが、ドラコモンにとってはゴクウモンのこの啖呵だけで、思わず逃げ出したくなるかのような畏怖を感じていた。
別にゴクウモンは何をしたわけでもない。ただ自分とゴクウモンの間に広がる純然たる力の差。それを感じ取ってしまったドラコモンは、その差を前に恐怖してしまったのだ。
だが、ドラコモンにとって、己がゴクウモンに恐怖したこととこれから己がしようとすることは関係がない。
自らの恐怖を押さえつけ、ドラコモンはその言葉を言う。
「ゴクウモン!俺と勝負しろ!」
「やだよ。お前弱いだろ」
「……」
だが、自らの恐怖を押さえつけて言ったドラコモンの言葉は、一二もなくゴクウモンに跳ね除けられた。
ドラコモンとしては決死の覚悟に匹敵するほどのものを込めて言った言葉だったのだが、生憎ゴクウモンにとってはどうでもいいことだったらしい。
ゴクウモンはポケーっと鼻糞をほじりながらも時折、“お?これうまそうだな”とドラコモンが集めた食料を食べている。
ゴクウモンにとって“自分は相手にするほどの価値などない”ということを知ったドラコモンの頭は急激に沸騰していく。そしてその怒りが頂点を超えたとき、ドラコモンは“だったらその気にさせてやる!”と駆け出した。
高速で全身を縦に回転させて、勢いをつけたドラコモンはその尾をゴクウモンに叩きつける。
「『テイルスマッシュ』!」
「へぁ?」
勢いに乗ったその攻撃はゴクウモンに直撃する。
だが、ゴクウモンは何も感じていない。“何か当たったか?”とばかりに相変わらずの表情で鼻糞をほじくっている。
ゴクウモンのその余裕そのものといった表情が気に入らないドラコモンはますますヒートアップした。
口に息を溜める。直後、口内で高温となった吐息をドラコモンはゴクウモンに向かって放った。
「『ベビーブレス』!」
「お?暖かくていいな。もっとやってくれよ」
だが、これも効いていない。ゴクウモンはドラコモンの必殺技を暖房設備か何かと勘違いしている。
“ダメなのか”と一瞬ドラコモンの中に諦めの気持ちが湧く。だが、ドラコモンはここで負けを認めたくはなかった。負けを認めるということは自分が弱いということを認めるということだ。ドラコモンはそれだけは嫌だった。
「どうしたんだー?」
「っち!今食らわせてやるよ!」
ドラコモンの角が激しく発光する。今から放つ技は逆鱗を触れられたドラコモンが意識を失った時に放ってしまう技。だが、意識があるときでも放つ分には問題はない。逆鱗に触れられて意識がない時と違うのは、連射ができない点だけだ。
“絶対にそのアホヅラに吠え面をかかせてやる!”と文脈的に合っていんだが間違っていんだが判断に迷う言葉を思い浮かべるドラコモン。
口内に溜めたエネルギーも最高潮だ。
「おい、まだかー?」
「今撃ってやるよ!『ジ・シュルネン』!」
ドラコモンの口から放たれたビーム弾は間違いなく今までで最高のものだった。
それがゴクウモンに直撃した。
土煙で横たわるゴクウモンは見ることができないが、その事実にドラコモンは“やってやったぜ”と一人満足げな顔をする。
だが――。
「ふーん。正直もうちょいやれると思ったんだけどな。ま、成長期ならこんなもんか」
「なっ!」
ついで聞こえた声にドラコモンは身を固くする。
土煙が晴れたそこには、先ほどの体勢のまま無傷のゴクウモンがいた。
その事実にドラコモンは驚く。先ほどの攻撃は、ドラコモンにとって最高と言えるほどの攻撃だったのだ。
その攻撃を受けて尚、ゴクウモンは無傷。それはドラコモンの攻撃ではゴクウモンに傷一つ付けられないことを意味する。
呆然とするドラコモンを一瞥すると、ゴクウモンは立ち上がった。いつの間にかその手に棍のような武器を持っている。
素振りをするかのようにゴクウモンはその棍を振り回し始めた。ビュンビュンと棍が風を切る音が辺りに響き渡る。
「俺様的には弱ぇ奴なんて興味ねぇんだが……ま、暇つぶしにはちょうどいいか。そっちは覚悟できてるんだよな?……一撃目はサービスだぜ?」
「ッ!」
ゴクウモンのその言葉にドラコモンは一気に距離を取る。
だが、ドラコモンが取った距離など、ゴクウモンには無いに等しい。ゴクウモンが構え、棍を突き出す。明らかにドラコモンまで届かない場所からの突き。
だが、その瞬間――。
「なっ!」
「お?反応はいいな!こりゃ、将来は大物になるな!ハハハッ!」
棍が伸びた。ゴクウモンの背丈と同じくらいの長さだった棍は、一瞬にして十メートル以上もの長さへと伸びていた。
なんとか伸びた棍を避けたドラコモン。だが、実際はドラコモンが避けたのではなく、ゴクウモンがワザと外しただけである。
「っく……伸びるとか。あんなんアリかよ……」
「おお!アリだ、アリ。大アリだ!」
武器が伸びるという現象にドラコモンは驚きを隠せない。だが、未だ飄々とするゴクウモンを前にドラコモンは更に目を見開いた。
ゴクウモンがその手に持つ棍が元のサイズまで縮んでいたのだ。
伸縮自在。それがゴクウモンの棍の特徴だとドラコモンは理解する。先ほど、ゴクウモンがいつの間にか棍を持っていたのはこれが理由だったのだ。短くして隠し持っていた棍を長く伸ばしただけ。たったそれだけのこと。
だが、それが分かったからといってどうにかなるものではない。伸縮のスピードはドラコモンの目には見えないほどに速い。普通に考えて、ドラコモンはゴクウモンの棍を避けることはできないだろう。
だが、だからといってドラコモンは諦めるつもりなど毛頭ない。
“何が何でも勝ってやる!”その気合とともにドラコモンはゴクウモンを睨みつけた。
「いい目だな。そら、今度は当てるぞ?しっかりと避けろよ」
「ッ!」
ゴクウモンが棍を突き出す。ドラコモンが感で動く。
一瞬後――。
ゴクウモンにボコられるドラコモン回でした。
流石にカードのある旅人のバックアップなしでは、いかに強かろうと完全体の生粋の戦闘系デジモンであるゴクウモンには勝てません。当たり前ですね。
そういえば、西遊記の主人公って孫悟空ですよね?三蔵法師じゃないですよね?
もしそうだったらタイトル変えます。とある伝説の猿に。
前後編でさらに元々一話だったものだったので、明日には続きを投稿しようと思います。
次回予告?……思いついた時にはやるようにするかもしれません。