【完結】ワールド・トラベラー   作:行方不明

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すみません。少し遅くなりました。前話と合わせてまさかこんなに長くなるなんて……。


第五十三話~デジタル西遊記?サンゾモン!~

「へぇ?」

 

「……?」

 

 ゴクウモンの棍はあらぬ方向を突いていた。

 別にゴクウモンが外そうとしたわけではない。たが、ゴクウモンの意思に反して棍はあらぬ方向へと突き刺さったのだ。

 その現象にゴクウモンは“おもしれぇ”と内心で呟く。ゴクウモンは分かっていた。一連の現象を起こしたのが誰であるかを。

 その誰かがいるであろう方向をゴクウモンは睨んだ。

 

「ドラコモン大丈夫か!?何で食料調達でこんなことになってんだよ」

 

「大丈夫~?……この山の中にキノコはないよね?」

 

 ゴクウモンが睨んだ方向からドラコモンのもとへと駆けてくる旅人とドルモン。

 少し前に、そろそろ日が暮れるからとドラコモンの下へと戻っていた二人は、ゴクウモンに遊ばれているドラコモンを発見した。

 “何でこんなことになっているんだ”と二人はその後しばらくの間事情が分からず呆然としていた。だが、ドラコモンが避けることができそうになかった最後の突きを見て、何とか正気に戻った旅人が『反発』のカードを使って棍を逸らしたのだ。

 

「お前ら……っへ、これは俺の戦いだ。手を出すな」

 

「いや、負けてたろ。強がり言ってる場合か」

 

 未だ強がりを言ってゴクウモンへと向かおうとするドラコモンを押し退けて、旅人とドルモンはゴクウモンと向き合った。

 一方でドラコモンは焦る。自分が勝てない相手に旅人とドルモンが勝てるはずもないと考えたのだ。

 

「よせっ!お前らが勝てる相手じゃない!」

 

「旅人……すっごいこと言われてるんだけど」

 

「まぁ、気にすんな」

 

 そんなドラコモンを無視して、旅人は未だ自分たちを興味深そうに見ているゴクウモンを睨む。

 ゴクウモンはかなり強いだろう。だが、正直言えば旅人もドルモンも負ける気はしなかった。ゴクウモンからは、別世界で出会った猛者たちほどの怖さを感じなかったからだ。

 そんな旅人とドルモンを見てゴクウモンは満足げに頷いた。

 

「やっとマシな奴らが出てきたな。どうだ?ひと試合願おうか!」

 

「いや、こっちは戦う気がないんでね。どうしてもって言うなら逃げるだけだ」

 

「つれないこと言うなよ。なんならその隠している力を準備する間、待ってやっててもいいぜ?お互い全力でやったほうが気持ちいいもんな!」

 

 その言葉に旅人は、ゴクウモンに自分のアームズデジクロスやドルモンの進化のことがバレていることを悟る。とはいっても、旅人もドルモンもそれらを別に隠しているわけではない。ゴクウモンの言葉に二人は違和感を覚えた。

 誰かから聞いたのか、そういう能力か、はたまた野生の直感とでも言うべきもので気づいたのか。なんにせよ、厄介なものである。

 

「ま、何にせよ。勝負だ!」

 

「おい!俺の時にはそんな対応しなかったじゃないか!」

 

「お前は弱い。こいつらは強い。それだけの話だ。やっぱり戦うのなら強い奴がいい!さあ!さあ!」

 

 “なんだそれ!絶対俺の方がこいつらより強い!”と旅人とドルモンを指差して喚くドラコモンのことは、既にゴクウモンの頭の中から消えているのだろう。ゴクウモンはギラギラとした目で旅人たちを見ている。

 一方で“流石にタダで逃げるということはできないよなぁ”と旅人はゲンナリしながらゴクウモンと向かい合っていた。

 “進化するぞ”とドルモンにアイコンタクトして、旅人はカードを引き出した。

 

「お?やる気になったか?」

 

「set『進……」

 

 そこで旅人はどこからか聞こえてくる謎の声に気づいた。

 聞こえてくるのは女性の声。そして仏教で読まれる経のような清廉としながらも力強い言葉。

 

「ぐ……ぁあ……頭が……」

 

「……な、なんだ?」

 

 その言葉が聞こえ始めると同時に、ゴクウモンが頭を抱えて苦しみだした。

 一方で旅人たち三人は何が起こっているのか理解できない。

 “新たな敵襲か!”と三人が辺りを見回すと、森の入口の方向から法衣を着た人間のような女性が近づいてくるのが見えた。

 ゴクウモンが苦しみだした声は間違いなく、その女性のものだ。そのことに気づいた旅人たち全員がその女性を警戒している。

 だが、その女性は旅人たち三人の警戒を気にすることもなく、ゴクウモンの隣に立つと、経らしきものを読むのをやめて旅人たちに深々と頭を下げたのだ。

 

「私はサンゾモンという、悟りを開くためにこの世界を旅している者でございます。このたびは不肖の弟子がご迷惑をおかけしました」

 

「はい?」

 

 その女性から告げられた事実に旅人は一瞬固まった。いや、旅人だけではない。ドルモンもドラコモンも固まっている。

 それほどまでにサンゾモンの言葉は衝撃的だったのだ。清廉潔白といった雰囲気を地で行くサンゾモンの弟子が、戦闘狂の気があるゴクウモン。どう考えたとしてもありえない組み合わせだろう。

 そんな様子の旅人たちを気にする様子もなく、サンゾモンはゴクウモンを厳しい目で見ている。

 

「貴方もすぐに謝りなさい!魔術によって頭の緊箍児が弱まったといったからってすぐに調子に乗って!」

 

「っへ!誰が謝るか!お師匠さんの戯言にはうんざりなんだよ!」

 

「……」

 

 緊箍児というものが何か分からないが、ゴクウモンの奔放さはそれが原因らしいということを旅人たちは察する。

 サンゾモンは説教を止める気配はなく、ゴクウモンもまた説教を聞く気配がない。

 その姿に旅人は、話の中でしか知らない母子の姿を見るのだった。

 

「へーへー。ま、分かりましたよー。……古枯れババァめ」

 

「ッ!」

 

 ブチッとその場にいた全員が何かが切れる音を聞いた。

 瞬間、ゆらりと体を揺らしたサンゾモンは手を合わせて言葉を紡ぐ。

 

「宇宙天地與我力量……降伏群魔迎来曙光……」

 

「ぬがぁああああ……頭がぁああ!」

 

「なるほど、サンゾモンが経を読むとゴクウモンは苦しむのか……えげつねー」

 

「あのゴクウモンがあっさり……サンゾモンって武器持ってねぇのに強いんだな」

 

 頭を抱えて苦しむゴクウモンを前に、旅人たち三人は静かにサンゾモンから距離を取る。

 サンゾモンがそれに気づくのはまだしばらく先。ゴクウモンが必死に謝ってしばらくしてのことだ。それまで三人はゴクウモンの悲鳴をBGMに、ドラコモンの集めた食料をせっせとしまう作業をするのだった。

 

 

 

 

 

 その後夜になってしまったために、これ以上の移動は危険だという観点から、旅人たちはサンゾモンたちと一緒にキャンプ中である。

 ちなみにゴクウモンの緊箍児とやらは先ほどサンゾモンに修復されたようだった。

 

「ちぇッ!せっかくこの緊箍児から離れられるチャンスだと思ったのによ」

 

「その緊箍児って何なの~?」

 

「この頭にある冠だよ。度が過ぎる悪態を俺様が取ると頭を締め付けるんだ。この俺様がそんな態度とるわけねぇのによ……お師匠様のばかや……ぬぐぅうう!」

 

「あぁ……こういう風にか」

 

 ゴクウモンの頭を締め付ける金色の冠を見て、旅人たちは引き攣った笑みで納得する。おそらくこのような光景は日常茶飯事なのだろう。サンゾモンは何も言わない。

 それどころか少し呆れた様子まで見せている。

 

「はぁ。今この瞬間もサゴモンやチョ・ハッカイモンも貴方を探しているのですよ。明日には彼らと合流しますからね。いいですね?」

 

「へー……ぬがぁああああ!」

 

「……いいですね?」

 

「……はい」

 

 たった一二分会話するだけで、緊箍児に頭を締め付けられるという間抜けを晒しているゴクウモンに旅人たちはどういう対応をしていいか分からない。

 ちなみに一般的な人のゴクウモンに対する対応は馬鹿な人にする対応だ。

 しばらくしてサンゾモンが旅人とドルモンの下へと近づいて来た。

 

「貴方たちにも……ご迷惑をお掛けしましたね。再度謝罪させてください」

 

「いや、いいよ。別に。ドラコモンがボコられただけだったし」

 

 サンゾモンのあまりに丁寧な対応は、旅人が逆に申し訳なく思うほどだ。

 そんな旅人たちの後ろでは、昼に負けたことがよほど悔しいのか、ドラコモンがゴクウモンに勝負を挑もうとしていた。それに対してゴクウモンは悪態をつき緊箍児に頭を締め付けられるというコントにしか見えないような光景が行われている。

 

「そう言っていただけると助かります」

 

 そう言うとサンゾモンはジッと旅人を見つめた。

 ジッと見つめられたことで居心地が悪くなった旅人は、ついそっぽを向く。

 そんな旅人の行動を、気を悪くさせてしまったと取ったのか、サンゾモンは慌てて謝り始めた。

 

「あぁ……すみません。いえ、本当に人間なのだなと思いまして」

 

 その言葉に旅人も納得する。

 この世界のデジモンは人間のことを知識としては知っていても、実際に見たことがあるデジモンは希だ。人間とはつまりちょっとした有名人でもある。それは気になるだろう。

 

「あぁ。やっぱり人間って珍しいのか?」

 

「あ、いえ、それもあるのですが……」

 

 一度は納得しかけた旅人だったが、それは違うと言うかのようにサンゾモンは首を横に振った。

 そして“貴方は知っているのかもしれませんが”と前置きして、サンゾモンは話し始めた。

 

「人間がこの世界に現れたことがあるのは、三大ターミナルの悲劇のように大きな混乱の前後です。そんな時に現れる人間が、こんな時代(・・・・・)に現れた。そのことが何かの前兆のようで……」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ」

 

 旅人はサンゾモンの話を遮るように声を上げる。サンゾモンの話自体は、前にも似たような話を聞いたことがあった。だが、そのサンゾモンの話の中に出てきた言葉の一つ。それが旅人のまったく知らない情報だったからだ。

 

「こんな時代……?こんなってどう言う意味だ?」

 

「そうですか。貴方は知らないのですね」

 

 そう言ったサンゾモンは少し悲しそうだった。

 そんなサンゾモンを前に聞かないという選択肢もあった。だが、旅人はそのことを聞く。それが重要なことだと何故か思ったから。

 

「今この世界は……壊れています。最近になって突然発生し始めた進化という現象もそう。それだけではありません。七大魔王や四聖獣、四大竜に三大天使といった者たちの不在。オリンポス十二神族にあのロイヤルナイツたちでさえ、そのほとんどが歴史の中にだけ存在する……」

 

「なっ!」

 

 そのことに旅人も、そばで話を聞いていたドルモンも絶句する。

 ロイヤルナイツにオリンポス十二神。そして七大魔王。旅人たちは彼らの力を知っている。その彼らのほとんどがいない。その事実は衝撃的だった。

 だが、そこでふとドルモンは思ってしまった。“別にいいんじゃないのかな”と。

 

「それ何か問題なの?だって強い力を持っている人がいないだけでしょ?」

 

 そのドルモンの言葉に、旅人も“そういえばそうだな”と納得する。

 別に強い力を持った個体が存在しないからといって外敵がいるわけでもないのだから、どうということはないハズなのだ。

 しかし、サンゾモンは未だ深刻な表情のままだった。

 

「そう単純なことでもないのです。かつてのこの世界には、さまざまな善悪の勢力がありました。善と悪。相反する二つの概念が存在することこそが世界のあるべき姿といってもいいでしょう」

 

「えぇと……」

 

 “なんだか難しい話になってきたぞ”とドルモンと旅人は顔を見合わせる。正直言ってそろそろ訳がわからなくなってきているのだ。

 だが、そんな旅人たちの様子に構うことなくサンゾモンは話を続ける。

 

「確かに今この世界は、表面上は平和に見えるかもしれません。しかし、何事も度を過ぎることは良くないのです。私には今のこの世界は平和過ぎる(・・・)ように見えます。……そのせいで彼のようなデジモンたちが苦しみ、嘆いている」

 

 サンゾモンの言う彼が誰を指しているのか、旅人たちにもすぐ分かった。

 だが、何を気にするでもなくドラコモンをあしらっているその本人を見ていると、とてもサンゾモンが言うように苦しみ嘆いているようには見えないのだが。

 

「この世界では世界が大きな混乱に陥った時に、どこからともなく現れた人間がパートナーと共に幾多もの試練をくぐり抜け、この世界をあるべき姿へと戻すという言い伝えがあります」

 

「でも言い伝えだろ?」

 

「いえ、そのようなことが歴史上何回か確認されています。もっとも最近のことでは三大ターミナルの悲劇を解決したのも、漆黒の騎士と黄金の龍をパートナーとした人間たちだったと聞いていますし……」

 

 漆黒の騎士に黄金の龍。その言葉にどこか引っかかるものを覚えながらも、“まさかな……”と旅人はすぐに頭を振った。

 彼らがそのような英雄的存在とは思えなかったのだ。

 

「最近再び目撃される英雄と呼ばれる者も、かつては人間の魔法使いと共に世界を救ったといいます。それほど、人間という存在は大きなものなのです」

 

「ならなんで……皆人間のオレを見てもっと過敏に反応しないんだ?」

 

 旅人はふと湧いた疑問をサンゾモンへと投げかけた。

 そのことについて話し始めるサンゾモンはやはり少し悲しそうな顔をしていた。

 

「それは……やはり、実感がないのだと思います。誰もが人間というちっぽけな存在を見て、世界という大きな存在の危機と結びつけることができましょうか」

 

「それは……」

 

「明日、世界が大変なことになるかもしれないと言って信じ、行動することができるものがどれだけいることでしょうか。ですが、貴方の存在を知り、行動を起こしている者もいることでしょう?」

 

 それを聞いて旅人が思い出すのは、あの英雄だ。かつて“お前はいずれ英雄になる”と言い、自身に戦いを挑んできたあの英雄。

 あの時は訳が分からないと憤っていた旅人だが、確かによく考えればあの英雄の言っていることは、サンゾモンの言っていることと同じ内容を信じているからこその行動と言えた。

 

「それに……失礼ですが、貴方がたも既に幾つかの試練をお受けになさったのでは?」

 

「いや、そんなはずは……」

 

「ない……と言い切れないよね……」

 

 あの英雄に始まり、漆黒の騎士との戦闘。異世界での数々の苦労。確かに試練と言えるものなのかもしれない。

 言いようのない漠然とした不安に旅人とドルモンは襲われる。これから先、サンゾモンの言うような大きな混乱に自分たちが立ち向かわなければならないかもしれないのだ。

 “なんて面倒なことに巻き込まれ始めているのだろう”と確証はない話ではあるが、旅人もドルモンもサンゾモンの言っていることを嘘だと言い切ることができなかった。

 旅人とドルモンは見ているのだ。異世界で、人間たちがデジモンたちの世界を救うところを。

 

「それに……ドルモン。貴方からはとても濃い死の気配がします」

 

「え!オレもう死んじゃうの!?」

 

「いえ、おかしいことですが同時にとても強い生の力も感じます。私も未熟者ながら、さまざまな悩める者たちを見てきました。しかし、貴方のような方は初めてです。まるで、命が二つあるかのよう……それこそが試練を乗り越えた証とも思ったのですが……」

 

 慌てるドルモンにサンゾモンが言った言葉。

 それらの言葉を聞いて旅人とドルモンは同時にあることを思い浮かべた。

 かつてドルモンが進化した死の化身。今日再び進化しようとして、失敗したような気がする新たな進化。

 “そのヒントが掴めるかもしれない”と旅人とドルモンはそのことをサンゾモンに話してみた。

 

「……なるほど。よく分かりませんが、死という試練が関係しているのではないでしょうか?」

 

 とは言っても、ドルモンのことなので旅人にはうまく説明ができない。だから旅人は説明をドルモンに任せることにした。

 だが、ドルモンのした説明は、唸ってばっかりで意味が分からない説明だった。それを何とか聞き止めて理解しかけているサンゾモンは凄いという他ないだろう。

 

「死?」

 

「おそらく何かしらの条件が必要なのだと思います。今この世界に現れ始めた進化は、心情や経験、生活といった条件で同じ種族でも進化する先が違うと言います。それと同じなのではないでしょうか?それらの条件が整ってなかったからこそ……」

 

「失敗した……か。心情や経験に生活……面倒だな」

 

 “何かしらのヒントになれば”と聞いただけあって、サンゾモンの話は確かにヒントにはなった。難解パズルというおまけ付きだが。

 もっとも、簡単にわかるようなら苦労はないことだろう。

 

「貴方がたの悩みも含めて、今話したことは未熟な私の言葉です。真相は分かりません」

 

「いや、十分だよ。ありがとう」

 

 三人は随分と長く話し込んでいたらしい。

 旅人たちの後ろでは、ゴクウモンにあしらわれて気絶したドラコモンと飽きて寝ているゴクウモンが転がっていた。

 

「ふふ……私たちも眠るとしましょうか」

 

「そうだな。明日早そうだし」

 

「おやすみ~!……グゥ」

 

「はやっ!」

 

 話が終わるや否や、ドルモンは速攻で眠り始めた。どうやら、眠気が限界だったらしい。

 ドルモンが説明するときの唸りは、うまく説明できないが故の唸りではなく、眠いが故の唸りだったようだ。

 その素早さにしばし呆然としていた旅人とサンゾモンもやがて眠りにつくのだった。

 

 

 

 

 

 

 翌日。サンゾモンとゴクウモンは森の入口付近で旅人たちと別れの挨拶をしていた。

 

「この度は本当に申し訳ありませんでした。ほら、ゴクウモンも最後にもう一度謝りなさい!」

 

「へッ……誰がッイデデデ!」

 

 サンゾモンに反発して頭を締め付けられるというのはお約束なのか。

 短い間にその光景を何度も見た旅人たちは、既にその状態のゴクウモンを無視することにしていた。

 

「はぁ。まったく。……あぁ、ドラコモン少しいいですか?」

 

「何だよ?」

 

「いえ、こちらへ来てください。すいません。少しゴクウモンを見ていてくださいね」

 

 そう言ったサンゾモンは旅人たちから少し離れた場所までドラコモンと歩いていく。

 ここら辺ならば旅人たちにも聞こえないだろうという距離まで来て、サンゾモンはドラコモンと向き合った。

 

「いえ、少し親切心からの忠告を。貴方が何に焦っているのかは分かりませんが、焦るという行為はよくありません。ゆっくりと……」

 

「ッ!お前に何がわかる……アイツは俺よりも遠いところにいるんだ。約束を守るためにも……アイツに追いつくためにも……」

 

「……」

 

「……俺は強くならなきゃなんないんだ」

 

 宥めるようなサンゾモンの言葉はドラコモンには受け入れられなかった。

 サンゾモンの言葉で頭に血が上ったドラコモンにはこれ以上落ち着いてサンゾモンの話を聞き続けることはできないだろう。ドラコモンが最後に捻り出した言葉は、己の無力さを悔いているかのような、今にも消えそうなほどか細い声だった。

 ドラコモンのそんな様子を見たサンゾモンは、自分がもっとも伝えたいことだけを言うことにしたのだった。

 

「そうですか。ですが、これだけは言っておきます。貴方は弱い」

 

「ッ!余計な……」

 

「そして強さとは、貴方が思っているような単純なものではありません」

 

「お世話だ!」

 

 思わず怒鳴ったドラコモンの声に、何だ何だと旅人たちがやって来る。

 流石に盗み聞きなどはしないが、怒鳴り声などが聞こえると“荒事になっているのでは?”と心配になるのだ。

 

「何かあったのか?」

 

「いえ、何も。未熟な私の言葉で少し怒らせてしまっただけです」

 

「どうせまたお師匠様が、いつものように余計なことを言っただけだ」

 

 そう言ったゴクウモンは、サンゾモンがドラコモンと何をしていたのか分かっているようだった。呆れた目でゴクウモンはサンゾモンを見ていた。

 なんだかんだ言っても、ゴクウモンとサンゾモンはお互いにある種の絆があるらしかった。

 

「そろそろ行きましょうか。サゴモンやチョ・ハッカイモンが待っていますし。それではまたどこかで。貴方たちが悟る真実と見つけた答えが貴方たちの望んだものであることを祈っています」

 

「おい!トカゲ!もっと強くなったら俺様のところへ来い。相手になってやる!」

 

 そう言って手を上げるゴクウモンと頭を下げるサンゾモンを旅人たちは見送りながら――。

 

「あぁ。いろいろと教えてくれてありがとうな」

 

「うるせぇ!絶対に次こそけちょんけちょんにしてやる!」

 

「じゃあね~!」

 

 旅人たちも学術院へと向かう準備を始めるのだった。

 




ゴクウモンはもしかしたらもう一度くらい出番があるかもしれません。
チョ・ハッカイモンとサゴモンについての出番は無し。出すと書ききる自信がないからです。
ちなみに今回のサンゾモンの経はアニメ版ぬーべーのものです。本物じゃありません。


ふと思いついた次回予告。(アドベンチャー系風)
遂に訪れた学術院!
逃げ惑うドルモン。やる気を出すドラコモン。
彼らに一体何があったのか!
次回ワールドトラベラー、再会!学術院!
今、女の嫉妬が進化する。

はい。これだけでだいたい何があるか分かりますね。
まぁ、次回予告については気まぐれでいきます。ついでに次回予告と本編の内容は変わる可能性大です。
それではまた次回に。
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