【完結】ワールド・トラベラー   作:行方不明

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何とか今週も三話投稿完了。
次週からは本格的に大学の授業が始まるので厳しいかもしれません。


第六十三話~試練失敗?第二の試練!~

「ふんふんふーん……」

 

 その日。ウィッチモンは非常にご機嫌な様子で久方ぶりの至福の時間を過ごしていた。

 ちなみに機嫌がいい理由は単純で、昨日までこの時間を邪魔していた旅人がいないからである。

 だが、そんな久方ぶりの至福の時間も――。

 

「ここにいたか。ウィッチモン」

 

「……ウィザーモン」

 

 やはり、鈍感な乱入者(ウィザーモン)によって邪魔される運命にあるのだが。

 ウィッチモン。最近の彼女の運は底辺を行っていると言っていいだろう。

 

「何の用よ?」

 

「君に手伝ってもらいたい案件がある」

 

 ウィザーモンが手伝ってもらいたい案件とはもちろん、先ほど来たミスティモンの将からの依頼のことだ。

 

「ふーん……どうせ私の未熟な魔術で失敗するのがオチよ?」

 

「……まだ気にしていたのか」

 

 しつこく数日前の説教を引きずっているウィッチモンにウィザーモンは呆れるが、この依頼はウィッチモンの協力が必要不可欠である。

 ウィザーモンとしても、そろそろ部屋に仕掛けられるいたずら的な殺人魔術を解除して欲しいという思いがある。ようするに、仲直りしておきたいのだ。

 

「今回の案件は君の力が必要だ。悔しいが僕だけではどうしようもない」

 

「だからって必要になったら手のひら返すの?都合が良くない?」

 

「まあ、そう言われても仕方がないな。それでも、君の力が必要なんだ。そのためには何度でも頭を下げる」

 

 ウィッチモンは、自分に頭を下げるウィザーモンという珍しい光景を見た。

 そこまでされると、ウィッチモンとしても協力することは吝かではなくなってくる。というか、そこで機嫌を直すウィッチモンも大概単純である。

 

「しょ、しょうがないわね……それで?何をするの?」

 

「ああ、それは――」

 

 ウィザーモンから告げられた案件。

 そのことを聞いたウィッチモンは、数時間前のウィザーモンのように頬を引きつらせることになるのだが、それはほんの余談である。

 

 

 

 

 

 四大竜の試練を受けているコアドラモンは暗闇の中を歩いていた。

 第一の試練を、“そうだな……だから?”の一言で済ませたコアドラモンは、何事もなく終わった試練に若干拍子抜けしながら次の試練へと向かっていた。

 ちなみに後日そのことを聞いたドルモンは、己の情けなさに泣き崩れることとなるのだが、それはまた別の話だ。

 

――竜、その名は力――

 

「おっ!来たな!」

 

――汝、竜の名を持つものとして相応しい者か?――

 

 声が響く。先ほどの時とは違う。獄炎のような地に響く声が。

 同時に“次こそ、それらしい試練であってくれよ”と若干の浮かれと侮りを持って、コアドラモンは試練に望んだ。

 

「さあ、次は……俺!?」

 

 やる気を出して試練を待つコアドラモン。そんな彼の目の前に新たに現れるコアドラモン。ただし、体全体が少し黒ずんでいる。

 それを見たコアドラモンは一瞬呆気にとられるが、それも一瞬のことだった。

 現れたコアドラモンは間髪入れずに呆気にとられたコアドラモンへと襲いかかってきたのだ。

 

「ッ!こなくそ!」

 

「ギャァアアアアア!」

 

 空を飛ぶことでそれを躱したコアドラモンだが、敵も同じコアドラモンだ。すぐさま同じように空を飛び、追いかけていく。

 その姿を前にして、コアドラモンは自分の姿をしている敵を倒すことが第二の試練だと理解した。

 

「っへ……やっとそれらしくなってきたなっ!」

 

 超高速で行われる空中戦。戦況は互角だった。

 コアドラモンが放った蹴りをコアドラモンが蹴り返す。コアドラモンが口から放った炎をコアドラモンも放ち、相殺させる。

 まるで鏡合わせのように。コアドラモン同士の戦いは続く。

 当たり前だが、コアドラモンという種族内でも力の強弱は存在する。だが、二人のコアドラモンはそんな次元ではない。力も速さも、そのすべてが同じだった。

 

「っく……!」

 

 もちろん、そんなことは戦っているコアドラモン自身がもっともよく分かっている。

 だが、分かっているからといってどうにかできるとは限らない。

 かつてのゴクウモンとの戦いの時のように圧倒的に負けているわけではない。かつてのエアドラモンとの戦いの時のように相性が悪いという訳でもない。

 ただひたすらに同じ。

 そのことがこれほどまでに精神的にもキツイことだとはコアドラモンは思わなかった。

 ことここに至って、コアドラモンはこの第二の試練の本当の恐ろしさを知ったのだ。

 

「あぁあああああ!いい加減に……しろっ!『ブルーフレアブレス』!」

 

「――!『ブルーフレアブレス』」

 

 コアドラモンの必殺の意思を込めた技でさえ、まったく同じ技で返される。

 苦い顔でコアドラモンは空を駆け、その後ろを少し黒ずんだコアドラモンが追従する。

 まったく同じ力を持つもの同士での戦い。だというのに、コアドラモンはどこか自分が押されているかのような錯覚をしていた。

 

「くそっ……一体どうなってやがるんだ!」

 

「グァアアアアア!」

 

 技も、力も、速さも。相手と自分は同じスペックで、同じ戦い方をする。だが、コアドラモンの持つものすべてが通じない。

 “何をしても……無駄なのか?”と戦い続けるうちに、コアドラモンの心の中に絶望が広がっていった。それは、無力感。何をしても無駄という。

 戦いが続いてくうちに、こちらの攻撃は通じないということでコアドラモンはそう思い込んでしまっているのだ。

 もちろんそんなことはない。搦手を使った戦い方をすれば勝てるだろうし、微々たるものだがお互いにダメージは蓄積している。

 敵は理性がない。ただひたすらに機械的な戦いだけをするだけの存在。

 そんな相手と戦っていると、こちらの攻撃が通じていないように感じて、一方的にやられているだけのように感じてしまう。

 ゴクウモンの時のように歴然とした差があったのならばまだ良かったのだろう。或いはエアドラモンの時のように相性の問題でも。

 スペックが同じであるがゆえに勝敗がつかないということ、そしてそこから引き起こされた錯覚が、コアドラモンの精神を蝕んでいた。

 スペックが同じだというのならば、勝敗を分けるのは第三者の存在か、またはそれ以外の要素だ。

 例えば――。

 

「くっそぉおおおお!」

 

 精神状況とか。

 業を煮やしたコアドラモンは、自身がもっとも嫌う最後の禁じ手を使ってしまう。

 自分の顎下辺りに生えている逆鱗。触れたが最後、激痛で意識を失ってしまう代わりに自分の持つ技の中でも強力な技を乱射し続ける技とも呼べぬ技。

 コアドラモンは今の自分に出来ることはすべて試した。だが、相手には通じない。ゆえにその技とも呼べぬものにすべてを賭けたのだ。

 

「グァアアアアア!『ジ・シュルネン‐Ⅱ』『ジ・シュルネン‐Ⅱ』『ジ・シュルネン‐Ⅱ』――」

 

 コアドラモンは頭部の角が発光し、拡散レーザービームである『ジ・シュルネン‐Ⅱ』を無差別に放ち始めた。

 だが、それはこの場でもっともしてはならない悪手である。

 強力な技の無差別攻撃は確かに強い。だが、それだけだ。

 無差別ゆえに単調な攻撃のソレを掻い潜って、敵のコアドラモンは接近する。

 

「『ジ・シュルネン‐Ⅱ』『ジ・シュルネン‐Ⅱ』『ジ・――」

 

「グァアア!『ストライクボマー』」

 

「ガァッ!」

 

 強靭な尾による痛恨の一撃が、コアドラモンの頭に決まる。

 逆鱗に触れられた怒りによって意識を失っていたコアドラモンでさえ、その一撃には耐えられなかった。

 一瞬、正気へと戻り、その後すぐにまた意識が沈んでいく。

 “負けたくない……勝ちたい!”と沈み行く意識の中でそう望んだコアドラモンだったが――。

 

「……くそっ……」

 

 以前とは違い、今度はその願いは届かなかった。

 

 

 

 

 

 一方でその頃の旅人は、消えたドルモンとコアドラモンを探して彼方此方を調べて回っていた。

 旅人もおそらくはこれこそがコアドラモンが言っていた試練だということに当たりをつけてはいたが、万が一の可能性もある。気を付けるに越したことはないだろう。

 もっとも、“本当に試練を受けに行ったのなら……オレって待っている間は暇だよなぁ”という思いがないわけでもなかったのだが。

 

「……ドルたちが言ったように像は動かんし……この建物はこの部屋だけだし。『解析』のカードで見た情報は、魔術らしきものが使われていてよく分からんし……」

 

 一通り調べて、本当に旅人は暇になった。

 『解析』のカードでこの建物を調べたところ、さまざまな魔術らしき仕掛けが――専門知識がないので断言できないのだが――あり、旅人には理解できなかった。

 『解析』のカードでもっと正確に見れば話は別だろうが、そんなことをすればいつかのように旅人はぶっ倒れる羽目になるだろう。

 前はウィザーモンたちがいたから何とかなったが、今回はいない。

 大事をとって――臆病風に吹かれて――少し軽めに調べた旅人だったりした。

 

「……『転移』使って帰ろうかな……帰れるかどうか分かんないけど」

 

 『転移』のカードの効果範囲を旅人は詳しく知らない。何かから逃げる時など、そんな時くらいしか使わなかったので詳しく知らないのだ。

 そんな冗談をいうくらいには、旅人は暇を持て余していた。

 具体的には、“こんなことならウィザーモンの言っていたアナザーを使った通信用の魔術とやらを作っておいて貰えば良かったな”と思うくらいには。

 

「……ふわぁ……寝るか……」

 

 本人は今まで忘れていたが、旅人は丸一日以上寝ていない。暇になるやいなや、睡魔に襲われ始めた。

 “暇だったし……ちょうどいいや”とそう思って、旅人は睡魔に身を任せる。数分も経たないうちに旅人は眠りについたのだった。

 

「……くー」

 

 巨大な部屋の中心で眠りについている旅人。幸せそうに眠っているのは結構なのだが、残念ながら眠りについてからの数分後にその幸せそうな眠りは邪魔される運命にある。

 数分後、旅人の頭上に影が現れた。

 傷だらけで落ちてきたその影は運良く旅人を下敷きにしなかったものの、巨体ゆえの重量で轟音を立てながら落ちた。

 

「うぇっ……一体何だ!?」

 

 突然のことに驚き飛び起きる旅人だが、目の前に転がっている物体を見てさらに驚くことになる。

 そこに転がっていたのは傷だらけのコアドラモンだ。瀕死というわけではないのだが、それでも重傷と呼べるだけの傷を負っている。

 

「ちょっ!大丈夫か、お前!set『回復』」

 

「うぅ……くそぉ……次は覚えとけよぉ……」

 

 旅人はすぐさま、白紙のカードを変化させた力でコアドラモンの傷を治す。

 傷を治したことでコアドラモンはすぐに目を覚ますが、極度の疲れで動けないようだった。

 そんな様子のコアドラモンを前に流石に心配になった旅人。

 だが、負け犬の遠吠えとばかりに捨て台詞を言うコアドラモンだ。その姿を見て、“あぁ……この調子なら、大丈夫だな”と呆れながらも旅人は安心するのだった。

 

「って旅人!今の力なんだよ!」

 

「……そういや、お前の前でカード使ったのって初めてだったか。まぁ、オレ専用の力だ」

 

「へえ?やっぱり人間ってすごいんだな!」

 

 別に人間だからどうこうという訳ではないのだが、指摘することが面倒だった旅人は黙っておくことにした。

 “どうせオレ以外の人間に会うことも少ないだろ”という思いがなかったわけでもない。

 

「まぁ、それはいいとして。一体何があったんだよ?」

 

「ああ!そうだ!受けたんだよ!四大竜の試練!」

 

「興奮しているのは分かったから、もうちょっと声の音量落とせ」

 

「何だよ俺と同じ力って!ちっくしょー!絶対にもう一回チャレンジしてやる!」

 

「人の話聞けよ」

 

 旅人が未だ興奮冷め止まぬコアドラモンから聞き出したことは、四大竜の試練を受けたものの第二の試練で失格になったらしいこと。そして悔しいから再チャレンジを望むということだった。

 残念ながら、興奮している状態のコアドラモンから聞き取れたのは以上で、試練の内容が一体何だったのかは聞き取ることができなかった。

 

「悔しいのは分かったから。いいから少し落ち着けって」

 

「何だよっ!俺は落ち着いてる!」

 

「はいはい。落ち着いてない奴はみんなそう言うの。いいから聞け。おい、人の話聞くふりしてもう一度行こうとするな。だいたい……失格になった試練にもう一度今のままで受けて乗り越えることができるのかよ?」

 

「グッ……」

 

 旅人の言葉にコアドラモンは押し黙った。

 確かに一度受けて失格になった試練に、そのままの状態でもう一度受けても乗り越えられる可能性は低いだろう。

 旅人に言われてコアドラモンも少しは頭が冷えたのか、それ以降は先ほどまでのように“もう一度チャレンジする!”と騒ぐことはなくなった。

 ちなみに“一度失格になった者に対しても、もう一度試練を受けさせてもらえることができるのか”という単純な問題があったのだが、コアドラモンは気づいていなかった。

 

「さて……コアドラモンが試練を受けていたってことはやっぱりドルも受けていると考えるべきだよな」

 

「っへ!アイツなんか初めのわけわからん試練で躓いてるって!」

 

「……試練を受けて、乗り越えたハズなのに試練の内容を分かってないのってどうなんだろうな?まぁ……」

 

 “もしかしたら、もしかするかもしれないぞ?”と旅人は誰に言うでもなく内心で呟いた。言わなかったのは、コアドラモンがうるさそうだったからである。

 ちなみに旅人もドルモンがこの試練を確実に(・・・)乗り越えることができるとは思ってはない。ただ、“幾度となく悩んで、その問題と向き合った己の相棒なら、もしかしたら……”という思いがあるのだ。

 そんな旅人の雰囲気を見たコアドラモンはどこか面白くなさそうな顔をする。

 

「まぁ、オレたちがどうこう言ったって意味ないしな。ゆっくりと待とうぜ?」

 

「……っち。そうだな……」

 

 とはいえ、ドルモンがいつ戻ってくるかは分からない。

 関係ないコアドラモンと旅人が肩肘張っていても仕方ないので、二人は呑気な雰囲気で待つことにしたのだった。

 そして待つこと数時間。旅人とコアドラモンが待つことに飽きて眠りにつき。夜が明けて朝日が昇ったしばらく後のこと。

 そんな朝早くの時間帯にドルモンは帰ってきた。

 

「やれやれ……やっとか」

 

「どうだった……!?」

 

 コアドラモンは半ば焦るようにドルモンに詰め寄るが、結果は聞くまでもないことだった。ドルモンは今までにないほど凛々しい顔をしており、その表情の所々に自身が感じられる。

 

「お、お前……まさか……っ!」

 

「うん!さあ……帰ろう!」

 

 そう言ってドルモンは自信満々に頷いた。

 その場に崩れ落ちるコアドラモンを慰めながら、旅人たちは帰路につくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちなみに……ドル?結果は?」

 

 “結果は?”という部分をやけに強調させて、旅人はドルモンに尋ねる。

 一方でドルモンもコアドラモンにとっては追い打ちともとれるその事実を、もはや言うまでもない結果を、はっきりと口にして言うのだった。

 

「もちろん!……ダメだった」

 

 もはや聞くまでもない。

 ドルモンも四大竜の試練すべてを乗り越えることは出来なかったのである。

 




というわけで四大竜の試練編は一旦ここでおしまいです。あくまで一旦……ですよ?
次回内容は……未定です。たぶん。

それから、おそらくですがこれから週二投稿の場合は、水曜と土曜に投稿するようになると思います。


忘れていたので追加。カード説明

『回復』――白紙のカードの変化。傷を治す。それだけ。ただ疲れはとれない。

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