【完結】ワールド・トラベラー   作:行方不明

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GWだというのに書く時間がほとんど取れない……。


第七十一話~新たな旅立ち!そして……~

 あの後。ブレイクドラモンが光となって消えたその瞬間を見届けたドルモンと旅人。二人は未だ佇むウイングドラモンの下へと歩いて行った。二人にとってここに留まる理由はないのだ。

 もっとも、さっさと帰ろうとする辺り、二人は薄情というか、心遣いが足りないというか。結局、無言の中で学術院に戻るべく歩いていくことになったのである。 

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

 耐えられないほどの沈黙を前に、旅人とドルモンの心は一つに重なっていた。

 気まずい。

 二人の心中を占めるのはその一言である。だが、そんな沈黙を破ったのは、意外なことに先ほどまでずっと黙っていたウイングドラモンだ。

 

「……旅人。ドルモン」

 

「何だ?」

 

「ちょっと別行動したい。必ず追いつくから……」

 

「……ウイングドラモン……大丈夫~?」

 

「ドルモン、……俺のことはリュウって呼んでくれて構わないぜ」

 

 それはどんな心境の変化か。この数日、ウイングドラモンはドルモンにどのように呼ばれても気にしなかったというのに。

 或いはドルモンのことを認めたということなのか。それとも別の何かか。

 

「……心配しなくても大丈夫だ」

 

 大丈夫と。そう答えた時のウイングドラモンの顔は、何かを決意したかのような顔だった。とはいっても先ほどまでのように、決死の覚悟というような表情ではない。

 旅人もドルモンもウイングドラモンその顔には、先ほどまでとは違う安心できる何かがあるような気がした。だから、それを信じることにしたのだ。旅人もドルモンも。

 そんな二人の信頼を感じたのか、ウイングドラモンは嬉しそうな顔をする。

 

「じゃ、約束しろ。オレたちがどこにいようと(・・・・・・・)必ずまた戻って来い」

 

「……たくっ……どいつもこいつも約束、約束って……ああ、約束するよ。行ってくる」

 

 それだけを言って、ウイングドラモンは旅人たちと別れて、学術院とは逆の方向へと飛び立って行った。きっとウイングドラモンにとって重要な何かをしに行ったのだろう。

 

「寂しくなるね~」

 

「ドルは寂しいのか?」

 

「そういう旅人は?」

 

「……どうだろうな。案外すぐに戻ってきたりしてな」

 

 学術院までの帰り道でのことだった。

 

 

 

 

 

 学術院へと戻った旅人とドルモンはいの一番にウィザーモンたちの元へと向かった。

 ちなみに思ったよりもブレイクドラモンと戦った場所から学術院までには距離があり、旅人たちが学術院に戻るまでに数日かかったのはほんの余談だ。

 

「ウィザーモンいるかー?」

 

「……だからアポを取れと……はあ。遅かったな。この数日間何してたんだ?」

 

「ちょっと機竜退治に行ってた」

 

「また巻き込まれたのか……」

 

「失礼な。いつも巻き込ま……れてるな。あれ?……」

 

 旅人が深く考えて落ち込む前に、ウィザーモンは先回りして旅人にアナザーと白紙のカードを返す。

 そうすることで面倒くさい雰囲気を旅人が放つのを回避したのだ。そういうことができるようになった辺り、ウィザーモンも旅人たちの扱い方が心得てきたと言える。

 

「……見た感じなんにも変わってないけど」

 

「弄ったのは中だ。少し機能を拡張した。まあ、一度きりだが……使ってからのお楽しみというところだ。フフ……」

 

「絶対……」

 

「あくどい顔してるね」

 

 悪戯に引っかかるのを心待ちにする子供の顔と言えば分かりやすいだろうか。

 マスクで口元はよく見えないが、そんな顔をしていることは旅人やドルモンにもはっきりと分かった。意外とウィザーモンにはお茶目なところがあるのだ。

 

「そういや、ウィッチモンは?仲直りしたみたいだし……」

 

「君は僕とウィッチモンが常に一緒にいると思っていないか?」

 

「え?違うのか?」

 

「別にウィッチモンと一緒に行動しているわけじゃない。だいたい、つきまとっているのは彼女の方だ」

 

 ちなみにウィッチモンの機嫌がいいということは旅人たちには歓迎するべきことである。

 ウィッチモンは機嫌のいい時と悪い時の差が激しい。

 更に機嫌が悪いと視野が狭くなる。この前のようにドアに即死級の魔術を仕掛けるなどだ。もう遅いことだが、ウィザーモン以外がかかったらどうするつもりだったのだろうか。

 

「ちなみに彼女は彼女で研究中だ。本来僕らはライバルとでも言うべき関係なのだからな」

 

「……まぁ、いいけどね。あぁ、そういや、ドルと話し合って決めたんだけど……」

 

「ん?何だ?」

 

「そろそろこの街から出ていこうと思って」

 

 そう、それは旅人とドルモンが学術院までの帰り道に決めたことだ。

 旅人たちは別にこの街に永住するつもりはない。数日間はいろいろな準備で使うつもりだが、近いうちにこの街から出ていくということは二人の間でほぼ決定事項だ。

 ちなみにウイングドラモンのことは言質もとってあるため、文句は言わせないつもりである。

 元々この街に来たのは、ウィザーモンたちとの再開の約束があったから。その約束も果たし、旅人たちがいざ旅立とうと思い至ったところで、ウィザーモンたちはどうするのか気になったのだ。

 

「ふむ……それなら、僕はここに残ろうと思う。この街の情報はやはり価値があるものだ」

 

「そっか。んじゃ、元気でな。まぁ、行く前にもう一度会いには来るけど……」

 

「……随分と軽いな」

 

 あっさりと別れを頷いた旅人に、ウィザーモンは少し呆れる。

 ウィザーモンとしても旅人やドルモンがそのような返答をするであろうことは予想していたが、実際に言われるとやはり呆れてしまうものだ。

 

「ま、元々目的が違うんだしな」

 

「だったら、いつかはこうなるよね~」

 

「はは……そうか。ウィッチモンもおそらく残るだろう。最近は僕を追い越すために躍起になって行っている実験がうまくいっているみたいだからな」

 

 名残惜しい気持ちはある。とはいえ、これが今生の別れというわけでもない。旅人には一瞬で自由な距離を移動できる『転移』のカードがあることだし、会おうと思えばいつでも会えるのだ。

 そのこともあって、お互いの雰囲気は軽かった。

 もっともウィザーモンにはあるもう一つの理由もあったりするのだが。

 

「まぁ、報告はそれくらいだな」

 

「そうか。出るときはまた教えてくれ。見送りくらいはする」

 

「了解。んじゃ、数日後な」

 

「またね~」

 

 ドルモンを伴って建物から出た旅人はそのままデータベースがある塔へと向かう。この街を出る前に、今一度少し調べ物をしてから出ようと思ったのだ。

 そんなこんなで数日。食料調達やアグモン博士への別れなどを済ませるうちにあっという間に時間は過ぎていったのであった。

 

 

 

 

 

 数日前。旅人たちが学術院に戻る少し前の頃。

 ウイングドラモンは自身の持てる最高速度で飛び続けていた。

 目指す場所は己の故郷。もう壊滅状態で跡地が残るのみであるその場所を目指してウイングドラモンは飛んでいるのだ。

 

「……そろそろか」

 

 やがて見えてくる広大な森。数十メートルから下手すると百メートルを超えるかのような木々が生い茂る古代の森。そんな森の中で木々がなくポッカリと空いた場所。そこがウイングドラモンの故郷があった場所だった。

 直径数十キロメートルもある広大なその故郷の跡地にウイングドラモンは着陸する。

 実に数ヶ月ぶりの帰省。

 だが、ウイングドラモンは自身の姿が変化していることもあり、それ以上の年月をここに訪れていないように感じていた。

 

「……ひでえありさまだな……」

 

 地面は引き裂かれ地割れができており、住処であったであろう木々の材質はそのほとんどが元の形が分からないほどに破壊されている。

 はっきり言って故郷のこの字も見ることもできない。

 原型の留めていないこの荒地を見て、ここが元々生物の住んでいた場所だとは誰も思えないだろう。

 それでも――。

 

「やっぱりここが俺の故郷なんだよな……」

 

 ウイングドラモンは不思議と懐かしい気持ちになっていた。

 原型すら残っていないこの惨状を見ても尚、ウイングドラモンは湧き上がる郷愁の念を抑えることができない。

 それほど、ウイングドラモンはこの地を大切に思っていたということだろう。

 そんな折にウイングドラモンの足元に何かが当たった。

 

「ん?これは……っ!ははっ……懐かしいな」

 

 拾い上げたそれにウイングドラモンは思わず笑みをこぼす。

 ウイングドラモンはそれに覚えがあった。それは宝石だ。

 かつてあの友と共に近くの採石場から発掘し、盗み出した宝石。いざという時の食料として、またその綺麗な輝きが気に入ったために修行の時間を削ってまであの友と共に率先して集めた宝石たち。

 そのほとんどはおそらくはこの荒地の下に埋まっているのだろうが、このように奇跡的に無事な物もあるのだろう。

 その宝石の輝きが、かつての日々の輝きを物語っているようで、ウイングドラモンは自然と昔を懐かしむ。

 

「……でも、あいつは……」

 

 だが、昔を懐かしむということは必然的に今を見つめることにも繋がるわけで。

 あの友がどういう結末を迎えたのか思い出したウイングドラモンは微妙そうな顔をする。

 思い出は綺麗なままがいいと、ウイングドラモンはその手に持った宝石を口の中に放り込む。綺麗なその宝石は味がしなかった。

 

「……行くか」

 

 故郷を一通り見て回ったウイングドラモンは飛び立つ。

 何をしに戻って来たのか。ここに来るまでウイングドラモン自身も理解してはいなかった。ここに来れば分かるだろうと思っていたのだ。

 すべてが終わったことに関する報告か。

 何も分からず逝った者たちに対するせめてもの弔いか。

 それとも。あの懐かしき日々に未練でもあるのか。

 だが結局、最後までウイングドラモンは答えを出せなかった。

 

「……ああーもう!めんどくせえ!次だ次!」

 

 飛び立つウイングドラモンは自身の疑問を振り払うかのように最高速で飛ぶ。

 ウイングドラモンが旅人たちと別れて向かいたかった場所はあと一つ。つい数日前に訪れたその場所にウイングドラモンは向かって行く。

 すなわち――。

 

「見えた!」

 

 四大竜の試練を行うことができる場所。

 ちなみに元々ウイングドラモンが四大竜の試練について知っていたのは、強くなるために調べた中にあった伝説の一つにこのような一文がある伝説があったからだ。

 

――其の者。四大竜より賜りし試練を乗り越え、竜の勇者とならん。其の身の鎧鱗はありとあらゆる厄災を防ぎ、其の手の大剣はありとあらゆる厄災を切り払わん――

 

 そんな一文を知った当時のウイングドラモンはそのことについて調べた。

 その結果。この世界のいくつかの場所で受けられるという四大竜の試練について知ったのだ。ちなみにその一番近い場所が、ウイングドラモンが先日旅人たちと行った場所である。

 数日前に訪れた木造の遺跡のような建物の前にウイングドラモンは着陸する。

 

「……着いた」

 

 前回訪れた時には今よりも一回り以上小さいコアドラモンの時だった。

 進化して大きくなったウイングドラモンが入って、窮屈な気にならないほど、その建物は大きい。

 それだけ、竜系のデジモンには体が大きい種が多いということであろう。

 数日では変わりようのないことだが、建物の中は以前と変わらずに四大竜の像が配置されていた。

 たった数日前のことなのに、それがひどく懐かしく感じられたのは、ウイングドラモンの気のせいだろうか。

 とはいえ、ウイングドラモンとて物見遊山できたわけではない。今回は真面目に――一応は前回もそうだったのだが――四大竜の試練を受けに来たのだ。

 

「もう一度……四大竜の試練を受けに来た!」

 

 見るものを圧倒する四大竜のその像にウイングドラモンは勢いよく怒鳴る。

 直後、前回と同じように光が世界を満たす。

 その光が収まったその時。ウイングドラモンは部屋から消えていた――。

 

 

 

 

 

 ウイングドラモンが四大竜の試練を受けに行った日から数日後。

 旅人たちは学術院から出発していた。

 ちなみに出発の挨拶をした時、ウィザーモンとウィッチモンの妙に哀れむかのような表情が気になった旅人とドルモンだ。だが、二人の表情の意味は気になったが、考えても分からないことなので放っておくことにした二人である。

 

「さて……どうしようか」

 

「近くの村々については調べたけど……とりわけて行き先決めてなかったね……」

 

「まぁ、山越えしないことには始まらないんだけどな……」

 

 学術院は山々の地下にある地下都市。その出口はその山脈のど真ん中である。

 ようするに、旅人とドルモンはこれから幾つかの山越えをしないといけないのだ。

 “いっそのこと空飛んで強行突破しようか”とは旅人もドルモンも考えたことではあるが、せっかく空が晴れ渡っていたので山道を楽しむことにした二人だった。

 数千メートル級の山々が続く山岳地帯の道なき道を山道と言っていいのかは分からないが。

 

「いや~でも、思い出すよね~!」

 

「何を?」

 

「前にウィザーモンたちと別れた時は……」

 

 ドルモンの言わんとしていることは旅人も分かる。

 前にウィザーモンたちと別れて旅立った時。それは厄介事の始まりだった時だ。

 あまりいい思い出ではない。

 そんな思い出でもテンション高めに話すドルモンは、やはり新しい旅というものに浮かれているのだろう。

 もっともそれは旅人も同じなのだが。

 

「あの時は大変だったよな……」

 

「数ヶ月前のことなのに随分と昔のことに思えるよね」

 

 とはいえ、特に目的のない旅ばかり続けていた旅人が初めて目的のある旅をすることになったきっかけでもあった時だ。

 あの頃のことはきっと何年経っても忘れないだろうと旅人はぼんやりと思う。

 それだけ、数ヶ月前の日々は旅人にとっていい体験だったのだ。もう一度したいとは絶対に思わないだろうが。

 旅人にとっては目的のある旅より、特に目的もなくぶらぶら彷徨うかのような旅の方が性にあっているのである。

 

「そういえば、アイツ等って結局何だったんだろ?」

 

「さぁ、なぁ?……そういえば忘れてたな」

 

 目下一番の問題を忘れていたという事態に旅人は冷や汗をかき始める。だが、ことを忘れていてはどうしようもない。

 結局、“まぁ、どうにかなるか”と旅人は楽観的に考え始めた。だが――。

 

「……旅人。オレ嫌な予感が……」

 

「言うなよ。……もしそうだったら欝になりそうだ」

 

 数ヶ月前の思い出話に花を咲かせていた二人は、今の状況がその時と酷似していることに気がつき、嫌な予感に襲われる。

 ウィザーモンたちと別れて旅立った直後。さらに昼寝したくなるような晴れ渡った空。さまざまな状況があの時を彷彿とさせ、ついでに学術院の街を出る時のウィザーモンたちの哀れむかのような表情がその予感に拍車をかける。

 そしてその二人の予感は、今この時だけある意味未来予知にも等しい予感だった。

 

「だったら欝になればいいだろう?引導は渡してやる」

 

「……ほら見ろ」

 

 直後に聞こえた声に旅人とドルモンは頬を引き攣らせる。

 やがて空の上から現れる漆黒の騎士と仮面の男。いつかの焼き回しのようだった。

 そのいつかと違うのは、カードの力を封じる結界がないということぐらいだろう。

 

「……はぁ。いい加減にしてくれ」

 

「フッ……心配せずともこれで最後だ。それに今回は前回のようなことはない。その力のすべてを持ってどちらかを決める」

 

「……前もそうだったけどさ。何言ってんだ?意味分かんないぞ」

 

「分からなくてもいい。だが、生き残った方が役割を担う。この世界の未来のための……な……」

 

 現れた漆黒の騎士アルファモンと仮面の男を前に、旅人とドルモンの再びの戦いが始まった――。

 




はい。というわけで第四章ラスボス、アルファモンと仮面の男の登場です。
旅人とドルモンはどう戦うのか。
そしてウイングドラモンは何を考えているのか。
というわけで次回は時間を戻して四大竜の試練再び編です。
あっちこっちに時間がいって申し訳ありません。

あと、前書きで書いたようにGWは忙しいのでもしかしたら来週は週一投稿になってしまうかもしれません。

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