【完結】ワールド・トラベラー   作:行方不明

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すみません。新歓コンパなど用事が重なって遅れました。


第七十四話~因縁にして再びの決戦!~

 とある山岳地帯の一角。険しくも勇ましくそびえ立つ山々の姿はすでに見る影もない。なぜならば、凄まじい速さで環境破壊が進行していたからだ。

 数分でその地域一帯の原型がなくなったと言えば、その凄まじさが分かるだろう。

 現在でも、ものの数分で景観が激変している。というか、数千メートル級の山々が見るも無残なことになっている。

 ちなみにその山々に住んでいた者たちは我先にと逃げ出していた。

 

「ハァあああああ!」

 

「おらぁああああ!」

 

 そしてこの状況を引き起こしたのは、とある二体のデジモンが戦っているのが原因である。世界を滅ぼさん勢いで戦っているその二体のデジモンは、アルファモンとドルゴラモンだ。

 ちなみにドルゴラモンがカードの力で進化した後、すぐに戦闘が始まって引き離されたために旅人は傍にいなかったりする。

 そんなデジモンの進化段階の頂点たる究極体の中でも上位に位置する力を誇る二人の激突によって付近はこのようなことになっているのだ。

 

「っふ!はっ!やるじゃないか!不完全な(・・・・)進化のくせして!」

 

「そりゃ!おらっ!必死だからね!うらっ!」

 

 周囲を破壊しながら、アルファモンとドルゴラモンは剣と拳をぶつけ合う。

 戦況は互角に見えて、その実やはりアルファモンが押していた。

 そんな状況であるが故に、アルファモンの意味深な言葉を聞く余裕もなく、ドルゴラモンは必死にアルファモンに食らいついていく。

 

「っく!……舐める……な!……ってぐえ!」

 

 そんなドルゴラモンの頭上に突然落ちてきた人影。

 ドルゴラモンはその人影を見て驚いた。コウモリのような羽。とある女性型魔王に似た服装の――。

 

「旅人!大丈夫!?」

 

 ぶっちゃけるとリリスモンのコスプレをした旅人だった。

 もちろんコスプレではなくアームズデジクロスなのだが、やはり傍から見ているとどうしてもコスプレにしか見えないというのが難点である。

 

「大丈夫……っていうかお前らに巻き込まれかけたんだよ!もっと加減しろ!」

 

「ええ!?そんなこと言われたって……手加減なんかできないって!」

 

 生死を賭けた戦いの最中にそんな軽口的なことを言える二人は精神的にはまだまだ余裕があったりする。だが、戦況的には全く余裕がない状況だ。

 ちなみにいつものように旅人のカードで逃げないのは――。

 

「ふん……相変わらず仲のいいことだ。Set『転送』」

 

 相手側にも同じカードを使うことができる仮面の男がいるからだ。ようするにカードの力で逃げても向こうにも同じカードがあるので無駄なのである。

 だが、旅人たちの事情など仮面の男たちには関係ない。仮面の男が使った『転送』のカードによって、どこからか十数メートルはあろうかという大岩が旅人たち目掛けて落ちてきた。

 

「うげっ!ドル!逃げろ!」

 

「分かってるよ!」

 

 もちろん、そんなものを黙って食らう旅人たちではない。即座に避ける。

 避けた先にいるのは剣を構えたアルファモン。旅人たちがムカつくくらいのチームワークである。

 

「はっ!」

 

「ぬがっ危なっ!」

 

「……避けたか。前もそうだったが……不完全な(・・・・)進化でここまでやるとは……もう一種の才能だな」

 

 アルファモンと並び立つ仮面の男はその手に白く輝く両刃大剣を持っている。

 オメガブレード。旅人のリリスモンのカードと同じような、オメガモンのカードを『武装進化』で変化させた武器だ。

 旅人でさえ、アームズデジクロスをしなければ『武装進化』で変化させた武器をまともに扱えない。しかも、仮面の男は究極体の変化した武器をカードの力なしで振り回している。その姿を前に旅人は頬を引き攣らせることしかできなかった。

 

「相変わらずのとんでも野郎め……」

 

「……ふん。アームズデジクロスで究極体の力を得てもその程度の奴にはそう見えるだろうな」

 

「……アームズデジクロスまで知っているとか……ストーカーか?」

 

「……」

 

 戦闘が再開する。

 とはいえ、旅人たちは地力で劣る。どうしようもないこの状況で、旅人たちは必死になって食らいついている。

 

「……っち。Set『武装』!」

 

「そんなガラクタ剣では、この剣を防げんぞ!」

 

「分かってるよ!」

 

 同じカードを持っている以上、カードは無駄に使えば使うほど不利になる。

 それだけ、仮面の男は旅人以上にカードの扱い方が上手かった。実際、戦闘が始まってから仮面の男より旅人の方がカードを消費していたりする。

 

「ぬがぁあああああああ!めんどいことばっかしやがって!」

 

「命を狙っているのだから何を当然なことを!」

 

「はっ!ふっ!」

 

「おりゃあ!」

 

 旅人対仮面の男。ドルゴラモン対アルファモン。いつの間にかこの構図が出来上がっていた。数ヶ月前のかつてを彷彿とさせる、ある意味で因縁の戦いとも言えるだろう。

 

「……ふん。やはりなかなかやるようだが……では……これはどうする?」

 

「……ッ!」

 

 アルファモンの言葉を聞いた瞬間、ドルゴラモンは悪寒がした。

 アルファモンの雰囲気に、ドルゴラモンは思い出す。あの時、以前アルファモンと戦った時の正体不明の一撃のことを。

 結局、旅人もドルゴラモンもその一撃についてのことは分からなかった。その対策すらも。

 故にドルゴラモンがとった戦法はただ一つ。すなわち――。

 

「させるか!」

 

 先手必勝。技を発動させる前にこちらの技を叩き込むという単純な戦法。

 だが、アルファモンはドルゴラモンの行動を読んでいた。突っ込んできたドルゴラモンをその手に持った剣でいなして、瞬間――。

 

「アルファ・イン・フォース!」

 

「しまっ……」

 

 アルファモンの必殺の能力が発動する。直後、閃光が辺りを覆う。

 光が収まった時。そこには――。

 

「……何?」

 

「……あれ?」

 

 先ほどと変わりない剣を構えた状態のアルファモンと無傷の(・・・)ドルゴラモンがいた。

 何かしらの変化があるとばかり思っていたドルゴラモンはその状況に唖然とする。

 一方で能力を使ったはずであるアルファモンもドルゴラモンとは違う意味で唖然としていた。自身の能力が打ち破られた(・・・・・・)のだ。アルファモンにとって自身の能力が打ち破られたことなど、無いに等しい。

 

「……ッ!そうか。……お前か!」

 

 ハッとして何かに気づいたかのような声を上げたアルファモンはすぐに遠くで唖然としている旅人を見た。そんな中でもドルゴラモンを気にして剣を構えているのは流石と言えるのだが。

 

「……アナザーが……!」

 

 一方で旅人も仮面の男も唖然としていた。

 旅人は自分の持っているアナザーがいきなり光り輝いたことに、仮面の男はアルファモンの力が破られたことに、それぞれ唖然としているのだ。

 

「……ん?」

 

 直後、この命のやりとりに相応しくない気の抜けるような安っぽい音が辺りに響く。そしてそれは旅人の手にあるアナザーから鳴り響いていた。

 

「……」

 

 とりあえず、この上なく場違いな現象であることには違いないのだが、今は戦いの最中だ。敵を放っておいてアナザーを弄くることなどできない。

 だが、直後にアナザーの画面からウィザーモンの声が響く。旅人が何もしていないのにも関わらず。

 

――おお!やっと発動したか!驚いたか!?――

 

「せめてもう少し空気読んで欲しかったなと思ってね」

 

――ちなみにこれは録音だ。君が何を言ったところでこちらには届かないから、そのつもりでな――

 

「……」

 

 勝手に要件を済ませるとばかりに言いたいことだけを言っていくウィザーモンに、旅人は“なぜこのタイミングなんだ……”と唸ることしかできない。

 なぜか仮面の男たちは仕掛けてこないが、もし戦闘の最中だったのなら旅人は死んでいただろう。

 

――僕は特定現象に君が出会った時。発動する仕掛けをアナザーに仕掛けていた――

 

「……いつのま……あの時か!」

 

 ウィザーモンの言葉に一瞬怪訝な顔をする旅人だが、すぐに数日前にアナザーをウィザーモンへと貸出したことを思い出した。

 おそらくその仕掛けとやらはその時に仕掛けられたのだろう。

 

――アルファ・イン・フォース。アルファモンの能力が君の一定範囲内で行われた場合。その能力を封じる仕掛けだ――

 

「アルファ・イン・フォース?」

 

――詳しいことはアルファモンに聞け。“旋風将”からもたらされた情報とウィッチモンの能力無効化の魔術で完成させた――

 

「……あれか」

 

 思い出すのは、ウェンディモンとゴクウモンのことだ。あの二人はウィッチモンのその魔術によって自身の力に何らかの不備を負った。

 ウィザーモンはその魔術のことを言っているのだろう。だが、アルファモンの能力を抑えられるほどに強力なものだったとは、驚きである。

 もしくは、アルファモンの能力を抑えられるほどの情報を、“旋風将”からもたらされたのか。

 

――言いたいことはそれだけだ。あとは君次第だな。そうそう、ついでに通信機能も付けておいたから、ことが終わったら連絡してくれ。……“旋風将”の使者からいろいろと聞いたが……まあ、頑張れ――

 

「最後のどういう意味だ!?」

 

 本当に言いたいことだけを言って、録音を切ったウィザーモンに旅人は思わず叫んでしまうのも無理はないだろう。

 思わず録音に聞き入ってしまった旅人だったが、今がどういう状況だったのかを思い出して思わずハッとする。

 だが、仮面の男は依然として先ほどの位置から動いておらず、アルファモンは旅人を親の敵のように睨んでいた。

 自身の能力を抑えられたことがよほど堪えたらしかった。

 

「……不意打ちしなかったな」

 

「ふん。そういうセリフは不意打ちされるようなほどの存在が言うものだぞ?それに……言っただろう?これはこの世界の未来を決める戦いだ。そのようなことをしても意味がない」

 

「……なるほどね」

 

「……それと興味があったからな。アルファモンのアルファ・イン・フォースを封じたその手に。まぁ、あいつらとあの英雄が関わっていたというのなら納得だ」

 

「……?」

 

 仮面の男の言葉に覚えた奇妙な違和感。それに気づいた旅人だったが、どこに違和感を覚えたのか分からず、聞き返すことができない。

 だが、仮面の男の“英雄”と言ったその言葉に、旅人はおそらく“旋風将”とはあの英雄の別名であることを悟ることはできた。

 

「……ふん……まさかオレのアルファ・イン・フォースが破られるとはな」

 

「過ぎ去った時を瞬間的に取り戻す力。簡単に言えば擬似的な時間停止。それがなければ勝てないか?アルファモン」

 

 未だ旅人を睨みつけているアルファモンに仮面の男は挑発するように言う。

 そして仮面の男が言ったアルファ・イン・フォースのその能力。果たしてそれが本当にアルファモンの力だというのかは旅人には分からない。

 だが、本当にそうだとしたら。確かにあのデータベースにあった伝説通りのことが行えるだろう。つまりアルファモンが速いのではなく、アルファモン以外が動けなかったということだ。

 

「まさか。確かに業腹だが……オレがそのだけの存在だと思われているのならば、愚かの一言だ」

 

 仮面の男が能力についてバラしたのも、普通(・・)ならば擬似的な時間停止という力に対応する術などないからであろう。

 対策としては今回のように発動前にどうにかするしかない。だが、アルファモン自身の強さも相まってどうにかできる者がこの世に何人いるのか。

 

「……見せてやろう!今は無きロイヤルナイツの十三番目にして抑止の役を担うこのアルファモンの力を!」

 

 瞬間、剣を構えたアルファモンはドルゴラモンに突進する。それを持って戦闘が再開された。

 

「ぐっ!はやっ……」

 

「はっ!ふっ!はぁっ!」

 

 先ほどまでよりもずっと果敢に攻め立てるアルファモンの剣戟に、ドルゴラモンは防戦一方だ。

 能力が封じられて尚、健在なその実力にアルファモンという存在は能力だけではないということが理解できる。

 

「どうした!その程度か!」

 

「なんか……すごい殺気立った目~!」

 

 ドルゴラモンの言うとおり、先ほどまでよりアルファモンは殺気立っている。

 やはり口ではなんといっても、自身の誇りたる能力が封じられたというのは大きいのだろう。

 

「……っく!」

 

 そんなアルファモンにドルゴラモンは押されている。

 そもそも剣を使っている時点でリーチが違う。剣の腹を殴って、体を軽やかに動かして。必死にアルファモンの剣戟を躱している。

 だが、それでも完全に防ぐことができていない。ドルゴラモンはアルファモンの攻撃で少なくない傷を負っている。

 一方でアルファモンもドルゴラモンの攻撃によって傷を負っているが、それでも尚、ドルゴラモンの負っている傷のほうが多い。

 もっともどちらも傷はかすり傷程度で、致命傷に繋がりかねない傷は負っていない。

 

「……このままじゃ……!」

 

 とはいえ、このままではドルゴラモンの敗北は濃厚だろう。

 いかに致命傷に繋がりかねない傷は負っていないとはいえ、相手より多くの傷を負っているという事実はそのままドルゴラモンの不利であることの証明だ。

 アルファモンの一瞬の隙に、場の仕切り直しを狙ってドルゴラモンは距離を離す。

 だが、そんなチャンスともとれる隙に、アルファモンは追撃するということをしなかった。

 

「……ッ!」

 

「はぁあああああ!」

 

 それは溜め。その一瞬の隙に溜めた力で一撃一撃の速さ重視の連撃からたった一撃の重さ重視の攻撃に変えるための溜めだ。

 腰を低くして剣を水平に構えたアルファモンは一瞬でドルゴラモンへと接近する。

 明らかに先ほどまでよりも力強い一撃。

 おそらく受けるのも、受け流すのも無謀。であるのならば、迎え撃つしかない。そう考えたドルゴラモンは拳を構えてそれを迎え撃つ。

 

「少し溜めが少ないけどしょうがない!おぉおおおお!『ブレイブメタル』!」

 

 全身全霊をかけたドルゴラモンの突撃。

 助走距離が少なかったことによって本来の威力は出なかったが、それでも尚、並大抵のデジモンならば消し飛ぶであろう威力がその突撃にはあった。

 だが――。

 

「何っ!」

 

 その突撃とともに振りかぶった拳。その勢いがアルファモンに届く前で一瞬減退した。突然の事態に驚くドルゴラモン。だが、すぐに思い出す。アルファモンにはこれがあったのだと。

 そう、剣しか使ってなかったためにドルゴラモンは忘れていたが、アルファモンは魔術を使うことができるのだ。

 アルファモンが発動した防御用魔術の魔法盾。それにドルゴラモンはぶち当たったのだ。

 ドルゴラモンに見えないように薄く展開されたアルファモンのその魔法盾はその薄さゆえに一瞬で破壊される。

 だが、アルファモンの目的はその一瞬を稼ぐことにある。

 

「しまっ……!」

 

「はァっ!」

 

 そのたった一瞬の隙にアルファモンはドルゴラモンの横を通り過ぎながらその手の中の剣を一閃する――。

 

「がぁっ!」

 

「……ふん。終わりだな」

 

 倒れ伏したドルゴラモンにトドメを刺そうとアルファモンはゆっくりと近づいて行く。

 だが、不意に。そう不意にアルファモンは思い出した。それは直感とでも言うべきものか。とにかく、アルファモンは思い出したのだ。かつてアルファモンがドルゴラモンと戦った時。勝利を確信したその時にあの現象(・・・・)が起こったことを――。

 その直後に、アルファモンは蠢く暗闇に殴り飛ばされた。

 

「ガッ!そうか!死ぬことがトリガーか!」

 

「……」

 

 体勢を立て直しながら、何かに気づいたかのような声を上げるアルファモンの前でゆらりと蠢く暗闇と共に構える死の化身(デクスドルゴラモン)

 つまり。ドルゴラモンはデクスドルゴラモンとなって、三度戦いは再開される――。

 

「ァァアアアアアアアアア!マケ……るかぁあああああああ!」

 




というわけで第四章ラストバトル開始です。

アルファモンのアルファ・イン・フォースをどうするか結構悩みました。
あと初めから皆さんお気づきだと思いますが、ドルモンのデクス系への長時間進化は直前に一度死ぬことが条件です。

では、来週もいろいろと忙しくて更新が不定期になりそうですが、また次回に。
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