あと分割したので少し短いです。
時は少し戻って。
「……これからは四大竜の試練とは関係ない。個人的にお前に渡すプレゼントだ」
「……?どういう意味だ?お前はただの進行役じゃ……?」
「はは……ま、そうなんだが……受け取るか?受け取らないか?」
「……ま、もらえるものは貰っとくよ」
「よし。ならもう少し進んでくれ……そこで待ってる」
声の主に導かれて、四大竜の試練を乗り越えたウイングドラモンはさらに奥へと進んで行く。
暗闇の中に見える一筋の光。まるで導くかのように輝くその光を頼りにウイングドラモンは暗闇を飛び続ける。
「……!ここは?」
やがて一際眩い光が光った瞬間、ウイングドラモンはどこかの別の空間にいた。
空間といっても四大竜の試練を受けた場所のような暗闇の中という訳ではない。
巨大な大広間のような大部屋で、そしてその中心には石で作られた台座に一本の剣が刺さっているという、どこかの遺跡のような空間だ。
「なあ、お前って勇者に憧れるタイプか?」
「……何言ってんだ?」
「……そんなに呆れなくてもいいだろ」
先ほどと同じように響き渡る声。どうやらここでも声の主は声しか出せないようだった。
いきなりアホなことを抜かす声の主に、ウイングドラモンは自然とアホを見るかのような目になり、声の主を見つめる。
もっとも相手は声だけなので、見ているのは虚空だが。
「まあ、いいや。あの四大竜の試練はな。生きていた頃の俺が作ったんだよ」
「なんだと!?ってことは、お前って――!」
「ああ、勘違いすんな。俺は四大竜じゃない」
「じゃあお前は誰なんだよ?」
盛大に勘違いするかのようなことを言い出す声の主にウイングドラモンはイライラし始める。誰だってこのようなことを言われれば、勘違いの一つや二つするだろう。
“勿体つけてないで教えろ”と急かすウイングドラモン。そのウイングドラモンに声の主は苦笑したかのような声色でようやく己の正体を告げるのだった。
「俺はかつて四大竜の試練を受けた者……の人格データだ」
「何だって?」
「だから、俺の元になった奴が受けたんだよ。四大竜の試練を。そして、とある理由からこのレプリカの四大竜の試練を作った」
「何だって……また?」
自身が乗り越えた試練を態々もう一度作るためのそのとある理由。そして過去にあの試練を乗り越えたというこの声の主の元となった存在。
あの四大竜の試練を受けた者としてその二つが気になるのは当然とも言えることだろう。
「……。俺はな、四大竜が健在だった頃に四大竜から言われてこの試練を受けた。そしてその後に俺は竜の勇者と言われる所まで辿りついた」
「……!」
声の主の元となった者。それは伝説で語られたあの竜の勇者。
思わぬビックネームの登場に、ウイングドラモンは思わず息を呑む。
「そして、思うままの強さを手に入れた俺はな。その当時に世界を揺るがしていた七大魔王の一角と戦った」
「勝ったのか!?七大魔王に!?」
「ま、俺ひとりじゃ勝てなかったけどな。あの時ほど仲間がいて良かったと思った時はなかったよ」
「……やっぱり……そうなのか……」
竜の勇者と言われるほどの者でも、強大な力を持つものの前には一人では勝てない。
己を遥かに越えるであろう力を持つ経験者からの経験談に、ウイングドラモンは自分のことを重ねながら自身のことを振り返る。
もっとも竜の勇者と言われる者はウイングドラモンとは比べ物にならないほどの経験をしているはずであり、重ねることは若干失礼に値することではあるのだが。
「そんなある日のことだ。とある伝説と噂、それからある英雄とある方にあることを聞いてな。……ちょいとマズイことになった訳だ」
「……マズイこと?……英雄?」
「ああ。世界が滅びるかどうかっていうくらいのな。んで、俺がそのマズイことの原因の一端は俺にあって……。まあ、俺がなんとかしたかったんだ」
「じゃあ、しろよ」
「さすがに無理だったんだよ。事が数千年後と言われたら……なあ?」
「……まあな」
数千年後と言えば、余程の者でない限り寿命が訪れているだろう。
もっとも自分が原因の一端を担ったからといって、数千年後の未来の事件を解決しようと奔走する竜の勇者の性根は色々な意味で凄まじいの一言だ。
「で、しょうがないから。俺が受けたこの試練を形として後世に残したんだ」
「いや、前後のつながりがまるで分かんねえんだけど!?」
「つまり後継者探しってわけだ。試練を乗り越えた俺のように、あの試練を乗り越えた者に俺の残した力を授けようと思ってな」
「ようするに人任せじゃねえか!?」
思わず突っ込んだウイングドラモンだったが、冷静に考えればそれも一つの選択肢としてはありだろう。
人任せそのものな選択ではあるが、どうなっているかも分からない数千年後の未来のために解決策の一部を残すというのはそれなりにマシな選択だろう。
そもそもとして、未来は未来に生きる者が作るものであるのだから。
「ああ、あと一つ忠告だ。お前のパートナー。アレは間違いなく巻き込まれるから。というか、あいつらはそのためにいるようなもんかな」
「何っ!?」
「ま、そんな訳でな。この剣に俺が残した力が詰まってる。パワーアップはできる時にしたほうがいいぞ」
ウイングドラモンとしては、もちろん誰かから貰った力など願い下げだ。自分で掴み取った強さこそ意味があると思っているから。
だが――。
「……俺に何をさせようってんだ?」
「別に畏まらなくてもいいって。もうすぐ来るその時に俺の力を受け継いで戦ってくれればと思ってな。ま、選ぶ権利はそっちにあるけどな」
「……俺は――」
いろいろとグダグダと考えているが、ウイングドラモンの選択など初めから決まっている。ここへ来てグダグダと悩むようなら、ウイングドラモンは四大竜の試練をクリアすることなどできていないだろう。
「受け継がねえよ」
「……へえ?」
「一個目の試練の時に言っただろ。楽して得られる力なんざお呼びじゃねえ。俺は誇れる強さを手に入れたいんだ。だからこそ、自分の力で強さを手に入れる。お前の力はお呼びじゃない!」
言い切ったのと同時に横凪に振り切った
直後、閉じた世界が開けて光となって消えて行く。その光に包まれていく中で、薄れいくような声の主の声が聞こえた。
――まさかあのレプリカの四大竜の試練で、しかも俺の力なしに俺と同じ姿に辿り着くとはね……。これも奇縁か――
「……?」
――ま、俺はここで終わりだな。すまんがあとは頼んだ。あ、ついでにその剣は選別にくれてやる――
「え?」
消えて行く世界を超えた先、どこかの世界で白い鎧の竜騎士が泣きそうな顔で笑っていたような気がした――。
時は進んで、旅人とドルゴラモンは新たな参入者に驚いていた。
なぜなら、ドルゴラモンを庇った漆黒の騎士は目の前にいる敵と同じアルファモンだからだ。
アルファモンという超弩級の存在がそこら辺にゴロゴロといるはずもない。だからこそ、旅人とドルゴラモンは驚いているのだ。
「久しぶりだな!旅人!」
「……えっ……と……どちらさん?」
「……分かんないか?」
「いや、悲しそうにされても……」
まるで既知の間柄であるかのように親しげに話しかけるアルファモンに、旅人は思わず反射的に返してしまった。
「……ん?待てよ?お前もしかして……!」
だが、旅人の返答に残念そうな表情をしたアルファモン。その表情に感じた面影を前に、記憶の片隅に引っかかるものを感じた旅人はすぐにハッとして思い出した。
こことは別の世界で出会ったアルファモンへと進化した一匹のドルモンのことを。
「しかし……世界の違いってすごいな。旅人がすごい小さい!」
「……その言い方……やっぱりか。なんでこの世界に……っていうか進化するのが早い!」
「……まあ、オレは旅人と別れてから数百年経ってるしな」
自分が誰か分かってくれた旅人に嬉しそうに告げるアルファモン。そんなアルファモンに旅人は“また”あの数ヶ月前に別れたドルモンの面影を見た。
ここまでくれば、やはりそういうことなのだろう。
アルファモンの言う数百年云々は分からなかったが、それでもアルファモンとの再会は旅人にとって嬉しいものだった。例えこのような状況だったとしてもだ。
そんな時、それまでずっと無視されていた白き竜騎士が声を上げる。
「おい!俺は無視か!?」
「……どちらさん?」
「俺だ俺!旅人分かってて態と言ってんだろ!?」
「はは……冗談だよ。……っていうか、リュウ……また進化したのか」
「ああ!完全体のウイングドラモンから進化して究極体のスレイヤードラモンになったんだ!」
「……どんどん進化して……忙しい奴だな」
己とは関係ないところで次々と成長していくスレイヤードラモンとアルファモンを前に、旅人は少し寂しい気持ちになる。
例えるならば、自分がいなくても勝手に成長していく子を見る親の気持ちに近いだろうか。
もっともそんな気分に浸ってる旅人だが、旅人自身がそういう立場だったかというとそんな訳はない。
自分のことで手一杯になりやすい旅人は、何かで頼られてもどうすることもできない上、適当なアドバイスをして放り投げることくらいしかできないからだ。
それこそいつかのドルモンの時のように。
それでも旅人と関わったスレイヤードラモンやアルファモンは結果的には成長しているので、まったくの無意味な存在であるかというと悩むところである。
「そんなことねえよ。これくらいしないと――」
「しないと?」
「……何でもねえ!」
なんにせよ、成長の一因になっているのは間違いなさそうだが。
「……変な奴だな。っていうかなんで二人ともここにいるんだよ」
「ある人に呼ばれてな」
アルファモンの言う“ある人”。それが誰か分からなかった旅人だったが、オウリュウモンはそれが誰か分かったようだった。少し驚いた顔をしている。
緩んだ雰囲気に旅人はつい今がどういう時か忘れそうになるが、そもそもとして今は戦闘中である。気を抜いていい場面ではない。
ドルゴラモン目掛けて剣を構えて突進する敵のアルファモン。だが、アルファモンの振り上げた剣をアルファモンが防いだ。
同じアルファモンだけあってやはり総合的なスペックは同じなのだろう。軽々と防がれたその一撃に舌打ちしたアルファモンはすぐにオウリュウモンの下まで後退する。
「感動の再会中に無粋だな?」
「ふん。今は戦闘中だ。そんな時に気を抜く方が悪い」
「まあ、確かにな……旅人!敵のアルファモンとはオレがやる!」
アルファモンの相手をするというアルファモンに、任せるとばかりに旅人は頷いた。
とはいえ、今来たアルファモンとスレイヤードラモンはともかくとして、旅人が見たところドルゴラモンは限界に近い。肩で息をしている。
そんなドルゴラモンにオウリュウモンの相手は厳しいだろう。
溜め息一つ。旅人は白紙のカードを取り出した。ここで回復しようという腹積もりだ。
だが――。
「ふっ!set『捕縛』ついでに『加速』!」
「ッ!旅人!」
旅人がカードを使おうとしたその瞬間。それまで動きがなかった仮面の男が動いた。
『捕縛』の鎖で雁字搦めにした旅人を引きずって仮面の男はそのまま遠くへと向かって走っていく。
目の前にいたアルファモンとオウリュウモンに気を取られていたデジモン組はその仮面の男の思わぬ早業に一瞬呆然としてしまった。
「のわー……っぐ……いてっ……」
「ふっ!」
その一瞬の間を利用して仮面の男は旅人を連れてこの場からの距離を離す。
旅人たち側の者が、目の前にいるアルファモンとオウリュウモンに気を取られていたことを察した仮面の男の作戦勝ちだった。
「ッ!惚けてる場合じゃねえ!旅人は俺が追う!ドルゴラモンとアルファモンはこいつら頼む!」
「分かった!」
もっとも早く立ち直ったスレイヤードラモンが旅人と仮面の男を追う。
すぐさまそれを邪魔するべく動いたアルファモンとオウリュウモンをドルゴラモンとアルファモンが阻止した。
そんな二人の助力もあって無事この場を離れることができたスレイヤードラモンは、持ち前の疾さを持って、あっという間に見えなくなった。
「……アルファモン」
「なんだ?」
「っていうかさ……助けてくれたのはいいけど、さっきの剣もう少しで突き刺さるところだったんだけど!?」
「助かったんだからいいだろ?ほら、向こうも待ちくたびれてるぞ」
「……なんか扱いに納得いかない……!」
そうして、それぞれの者たちのそれぞれの戦いが始まった――。
というわけで助っ人は進化したスレイヤードラモンとアルファモンでした。
あのアルファモンは第二章のドルモンで、第四十四話のあのアルファモンです。
というか、どんどん話数が伸びていく……。
本当は三話でこの戦闘は終わる予定だったのに……。
……。ま、まあ、あと一、二話くらいで第四章は終わるはず……です。
では次回もよろしくお願いします。