【完結】ワールド・トラベラー   作:行方不明

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すみません、かなり遅れました。
あと、第三章の番外編までの加筆修正が終了しました。
誤字脱字や言い回しの変更が主な修正点ですので、大筋はあんまり変わってません。
せいぜい一話あたり平均四百字くらいの加筆です。


第八十六話~世界と真実とその先の罪~

「……ここは?」

 

 風によって吹き飛ばされた旅人たちは、いつの間にか見知らぬ場所に降り立っていた。そこには濃い霧が立ち篭めていて、周囲の風景を見ることはできない。

 

「リュウ、ドル……ここどこか分かる奴いるか?」

 

「いや……いつの間にかここにいたしな……」

 

「だね~。気がついたらって感じだったしね~」

 

「霧が深くて何も見えないな……」

 

 そんなことをぼやく旅人だが、霧によって何も見えないのは、旅人以外の二人も同じだ。

 この霧自体に何か特殊な効果があるのか、人間より遥かに優れた目を持つスレイヤードラモンとドルモンでも、この霧の向こうは見渡せない。

 そんな深い霧のせいで方向感覚が狂い、自分たちの場所も分からないという状況に、旅人たちはだんだんとストレスが溜まり始めていた。

 

「どうする?」

 

「どうしようもないと思うけど……カードは?」

 

「……その手があったか」

 

 ドルモンの言葉にハッとする旅人だが、逆に何で忘れていたのか聞きたいドルモンだ。

 もっとも、直前にあったあんな事のために旅人もまだ混乱していたのかもしれないのだが。

 

「よし、se――」

 

「待って」

 

「tって……ナム?」

 

 その時。

 カードを使おうとした旅人を止めたのは、いつの間にかこの場に立っていたナムだ。

 その突然の登場に旅人だけではなく、その場の全員が驚いている。

 

「私がここに連れてきた。話がある。ついて来て」

 

「……ナムが?っておーい……行っちゃったよ……」

 

「どうする?」

 

「まぁ、話があるらしいし、ついて行こうか」

 

 霧の向こうへと消えていったナムを追って旅人たちは歩き始めるのだが、如何せん旅人たちは霧によって方向感覚が狂っている。

 前も後ろも右も左も真っ白なこの空間で、旅人たちは本当にナムを追うことができているのか、自信なかった。

 

「これ本当に大丈夫~?」

 

「自信ない……」

 

「大丈夫だろ……たぶん。いざという時は旅人のカードもあるしな」

 

 進めど進めど見える景色は変わらない。

 “ひょっとしてさっきのナムは幻だったのでは?”とまで思い始めた旅人たちだ。もうナムを追っている自信どころか、しっかりと前に進んでいる自信すら持てなくなっている。

 だが、その時――。

 

「うげっ!」

 

 旅人が転んだ。それも盛大に。

 油断していたからか、顔面から転んだ旅人は鼻を摩っているが、問題はそこではない。

 問題は――。

 

「何してんだよ」

 

「うるさい……なんだこれ……木の根か?」

 

 問題は、旅人は何もないところで転んだ訳ではないということである。旅人は躓いたのだ。足元にある木の根に。

 触って確かめてみれば、木の根はだんだんと進行方向に向かって伸びていっている。

 そして伸びていく木の根につられるように旅人たちが顔を上げた瞬間――。

 

「なっ……!」

 

「いつの間に……!」

 

 そこには樹があった。

 もちろんただの樹ではない。長さを表す単位がキロに届きそうなほどの巨大な樹。すでに枯れかけている(・・・・・・・)というのに、それでも尚どこか神々しさを感じさせるような樹。

 そんな樹が気づかない間に旅人たちの前にあったのだ。

 

「これ……もしかしてイグドラシルか?」

 

「イグドラシル?……え?これが!?」

 

「玉じゃない!」

 

「何を言ってるんだお前らは……」

 

 旅人やドルモンの上げた驚きの声に呆れたように返すスレイヤードラモンだが、旅人たちにとってイグドラシルとは異世界で見た水晶玉のような形だけである。

 イグドラシルの姿と水晶玉がイコールで結ばれていた旅人たちにとって、その名の通りの樹のような形のイグドラシルの姿は驚愕だったのだ。

 

「でも、枯れてるぞ?」

 

「そりゃ、三大ターミナル閉鎖の時に廃棄されたって話だしな……」

 

「廃棄?そりゃまたなんで?」

 

「だってあの悲劇を起こしたのがイグドラシルって話だぜ?」

 

「へぇー?」

 

 ともかくとして、イグドラシルが目の前に有ろうと無かろうと、旅人たちの今には関係ない。旅人たちは今現在ナムを追っているのだ。

 とはいえ、すでにナムの姿を見失った旅人たちである。今更どう足掻いてもナムの元に行くことはできないだろう。

 だが、その時――。

 

「遅い」

 

「ナム……もしかしなくても怒ってるか?」

 

「はやくしろ」

 

 いつの間にかナムが旅人たちの元に戻って来ていた。

 なかなか来ない旅人たちに苛立っているのか、ナムは無表情ながらも心なしか怒っているように見える。

 

「……ならもう少し丁寧な案内をしろよ」

 

「……」

 

 苦言を呈する旅人を無視してナムは進む。

 もっともナムに振り回されるのはいつものことなので、溜め息を吐きながら疲れた体を引きずってそれについて行く旅人たち。

 そんな中で、歩いているうちに何かに気がついたのかドルモンとスレイヤードラモンは驚いたような声を上げた。

 

「旅人!旅人!」

 

「……なんだよ?」

 

「周り!周り見ろ!卵があるぞ!」

 

「卵……?」

 

 動揺を隠そうともしない二人に従って旅人が周囲を見渡すと、そこには卵があった。

 それも一つや二つではない。人間の世界では見ないようなほどの巨大な卵がいくつもあったのだ。

 もちろん旅人もその卵に見覚えがあった。かつて自分も持っていた卵。デジモンの卵だ。

 だが、この世界においてデジモンの卵は特別な場所にしかないと言われている。それがここにあるということは、ここは――。

 

あの(・・)湖か?」

 

「え?あの(・・)!?

 

あの(・・)……?」

 

 そう、スレイヤードラモンは知らないことだが、旅人たちはここの情報と合致する場所に覚えがある。

 数ヶ月前。旅人たちがこの世界に来て数週間経った頃に訪れた街の傍にあった巨大な湖。そこの中心にあるといわれるすべてのデジモンの始まりと終わりの地にして伝説の地。

 普通の方法ではここに入ることはできなかったはずなのだが――。

 

「いいから急ぐ」

 

「そんなこと言われたって……」

 

「はぁ。私が導いた。だから」

 

「ナムが導いたからここに来れた?ナムって本当に何者だよ」

 

「もう分かる」

 

 それだけを言うとナムはまた黙って只管に進み続ける。

 とりあえず説明する気はあるようなので旅人たちも黙ってついて行くことにしたのだった。のだが、それはあくまで旅人とスレイヤードラモンだけの話である。

 

「旅人!旅人~!見て見て~!赤ちゃん~!」

 

 唯一黙っていないドルモンが持ってきたのは、黒い産毛がびっしりと生えているスライム状の丸いデジモンだ。

 一方で、その黒いデジモンはドルモンにがっしりと掴まれてどこか不機嫌そうである。だが、まだ話すことができないほど幼いのだろう。そのデジモンは嫌そうに体を捩るだけだった。

 

「幼年期デジモン?にしては小さいような……」

 

「あれ?旅人知らねぇのか?幼年期は二段階あるんだぞ?」

 

「……そうだっけ?」

 

 だが、その時。

 旅人たちがそうやって話しているうちにその黒いデジモンが――。

 

「あれ?消えちゃった……」

 

「あれだろ。外の世界に行ったんだろ」

 

「そういえば、そんなことを誰か言っていたような……」

 

 なにはともあれ。そんなこんなで談笑しながら進む旅人たちに、先ほどまでの緊張感は毛ほどもない。目的地に着くのはもう少し先になりそうだ。

 

 

 

 

 

 ナムに案内されること数分。

 旅人たちは巨大な広間のような場所に案内されていた。とはいっても場所的には先ほどの樹の地下である。

 まさか巨大な樹の地下がこのような広大な空間になっていたことに、旅人たちは驚いていた。

 

「すごい……」

 

「間に合った。もうすぐ来る。待ってて」

 

「来る?……誰が?」

 

 誰が来るのか、旅人たちがいくら聞いてもナムは答えない。

 もっとも旅人たちはそのもうすぐ来る誰かを知らないために、聞いても意味がないのだが。

 

「じゃあ、ここで何をするんだ?」

 

「真実を聞かせる」

 

「真実?」

 

 ナムの言う意味深な単語に首を捻りながらも、さらなる情報を聞き出そうと旅人が質問を重ねようとしたその時――。

 

――すみません。遅れましたね――

 

 この空間に声が響く。

 まるで地の底から響いているかのような、重く響く声。だというのにどこか紳士的な口調で、聞くものすべてにその声だけでカリスマらしきものを感じさせる。

 思わず従いたくなるようなその声だが、声の主はどこにも見当たらない。どうやら、声だけのようだった。

 

――失礼とは思いますが……すみませんね。私の目と声には強力な魅了の力が備わっているものでして、おいそれと姿を見せるわけにはいかないんですよ――

 

「魅了……?」

 

「昔。攻めてきた数十の天使デジモンを堕天させた」

 

「まじで!?」

 

――あれはあちらが悪いとは思いますが……まあ、いいでしょう。改めまして、私の名はグランドラクモンと申します――

 

 グランドラクモン。彼こそが最後のピース。旅人たちがこの一連すべての真実を知るためのラストピースだ。

 

――では。話しましょうか。この世界について。あの罪について……ナム――

 

「説明。任せる」

 

――……ま、いいですけどね。事の始まりは……世界が造られた時に始まります――

 

「世界!?」

 

 いきなりのトンデモワードに旅人たちが全員驚いている。

 世界創造などほとんど神話の域だ。そんな時代に事が始まることなど旅人たちには理解の範疇を超えている。

 

――その前に貴方たちはどこまで知っていますか?この世界について――

 

「……うーん……ほとんど理解してないと思っていいと思う……思いますよ?」

 

――では、初めから話した方がいいですね。それと、敬語はいいですよ。敬われるような者ではないので――

 

 だが、グランドラクモンが話を始めようとしたその瞬間。その話の邪魔をするかのように旅人の服を引っ張る者がいた。

 ナムだ。

 

「じゃあ、よろしく頼む……どうした、ナム?」

 

「旅人。私。敬語使われたことない」

 

「いや、使うような奴に見えないし」

 

「……」

 

――あの、初めていいですか?――

 

 旅人の戯けた返答によってナムが不機嫌になりかけた、その時。

 旅人とナムによってズレかけた話の軌道がどこか呆れたようなグランドラクモンの声によって修正された。

 ちなみにグランドラクモンが呆れていたのは、珍しく旅人ではなくナムにである。

 

――では、まずこの世界から。この世界は人間の世界から電子機器を介して垣間見ることができる世界。在り方的には人間の世界のネットワークと言われるものに非常に近いでしょう。一部の人間はネットワーク上の擬似電脳空間と思っているようですが……――

 

 グランドラクモンの言うことはいつかウィザーモンが言っていた言葉に近かった。

 それは、ウィザーモンがいつかあの場でしていた仮説が概ね正しいことを示している。

 

――まあ、いいでしょう。そんなこの世界の誕生と共に幾人かのある存在が生まれました。世界の写し鏡とでも言うべきその存在――

 

「存在?」

 

――それは私だったり、イグドラシル……そこにいるナムという存在であったり、ホメオスタシスという存在であったり……俗に言うのなら神という存在でしょうか――

 

 グランドラクモンの言う神とは文字通りの存在なのだろう。

 決して神に近いとか、神のようなとか、そんな存在ではなく、紛れもない神という存在そのもののことだ。

 いや、それよりも旅人にはさらに驚くことがあった。先ほどグランドラクモンはナムのことをイグドラシルと言った。

 

「え?ナムがイグドラシル!?」

 

 それは、ナムという存在が旅人たちの理解を超えた存在であるという驚愕の真実。そして否定する証拠がないこと、当人が否定しないことがそのままその真実の証明だ。

 

「でもでも!上の樹もイグドラシルで、ナムもイグドラシルで……?」

 

――言うなれば上の樹が体で、ナムは人格というところでしょうか?――

 

「その認識でいい」

 

――まあ、我々は神という存在そのものではなく、デジモンや人間へとその存在を当て嵌められた存在なのですが……細かいことはいいでしょう――

 

「うん。あんまり細かいこと言われると理解できないしね~」

 

――……大丈夫なのでしょうか――

 

「大丈夫じゃないか?オレたちはいつもこんなんだし」

 

 スレイヤードラモンのフォローも届かず、今更ながらに旅人たちに不安を感じ始めているグランドラクモンの声。そのここにはいない彼の本体の表情はすごく引き攣っていることだろう。

 

――我々には役割があります。イグドラシルの役割はすべて(・・・)の情報の管理。ホメオスタシスの役割は世界の安定。もっともそこのイグドラシルのように暴走した挙句、破壊される者もいますが――

 

「……」

 

――だからこそ、そこのナムはあの世界で己の情報にないタクティモンに驚いたのでしょうね――

 

「……なるほど」

 

 いつかの世界で珍しく並々ならない感情を剥き出しにしたナムを見た旅人とドルモンの疑問が氷解する。

 あれはすべてを知っている存在がゆえの、知らない存在に対する己のアイデンティティの喪失を賭けた感情の昂ぶりだったのだろう。

 

「うるさい」

 

「……。じ、じゃあ、グランドラクモンの役割は?」

 

――私の役割は……とある存在の監視です――

 

 とある存在。それが何なのか旅人たち全員が理解した。そしてこれからが本題なのだとも。

 

――ダークエリア――

 

「ダークエリア?そういや、あいつもそう言ってたな……」

 

――ダークエリアとは、この世界の負の感情、情報の溜まり場で……平たく言えば地獄ですね。まあ、もう少しいろいろとあるのですが……――

 

 地獄。

 あの世とも呼ばれるその存在が実際にあると聞かされれば、旅人としても驚くしかない。

 もっともスレイヤードラモンはその存在を知っていたし、ドルモンも知識だけはあった。知らなかったのは旅人だけである。

 ちなみにそんな場所の存在を知って、ちょっと行ってみたくなる旅人も相変わらずである。

 

――ダークエリア自体、この世界誕生時には存在しませんでした――

 

「え?だってそういうものって――」

 

――言いたいことも分かります。ですが、ダークエリアは元々ある存在を封じるために作られたのです――

 

「ある存在?」

 

――それこそが罪。我々と似たような存在でありながら一線を画する存在。貴方がたが先ほど出会ったアレです――

 

 旅人たちが先ほど出会ったアレ。

 あの世界を滅ぼす存在であるアレこそが、ダークエリア誕生に関わっていたのだ。

 だが、旅人たちはそこでいくつかの疑問を覚える。

 なぜ、アレを封じるために作り出したのが地獄のような陰惨な場所でなければならなかったのか。そしてナムやグランドラクモンという同格存在が複数いるのならば、なぜ倒さなかったのかと。

 

――貴方がたの言いたいことも分かります。ですが事はそう単純ではないのです――

 

「……?」

 

――それはともかく。アレの本質は我々と違って感情や思考とは無縁の存在。そして我々のような存在が辺り構わず暴れればどうなるか……わかるでしょう?――

 

「そりゃあ……まぁ……」

 

 旅人とてグランドラクモンの言いたいことはよく分かる。

 かつて異世界にてデジモンという存在を滅ぼしかけたイグドラシル。そしてあの欠片だけで世界をどうこうできると思わせるようなその罪とやら。

 そんな存在が辺り構わず暴れまくれば、世界の一つや二つ軽く壊れるだろう。

 

――とりあえず、封じたのはいいのですが、その後が問題でしてね――

 

「どういう意味だ?」

 

――解き放たれようと暴れるのですよ。あの罪はね。だから我々はあの罪の力を削ぐためにダークエリアを造ったのですよ――

 

「なるほどね……それでグランドラクモンはその罪とやらの監視となったわけだ」

 

――えぇ。ダークエリアの奥深くに城を構えましてね。豪勢ですよ?――

 

 ダークエリアの奥深くの豪勢な城。

 その言葉に旅人が話を忘れて行ってみたいと思ってしまうのも無理はないだろう。

 もっともそんな機会があるのかは分からないのだが。

 

――ダークエリアが負の情報や感情の溜まり場となっているのもそれが理由です。世界に蔓延る罪の元を拡散させることで、あの罪の力を弱めるのが目的。その最たるものが七大魔王でしょう――

 

「……!」

 

――彼らを置くことで封印をより強固なものとしたのです。もっとも苦渋の決断でしたがね――

 

 まさか、世界を滅ぼすような強大な力を持った魔王たちでさえ、さらに大きな力を持つ存在の封印の一部でしかなかったという壮大なスケールの話に旅人たちは茫然自失で口を開けることができない。

 

――もっとも魔王たちはその力に溺れ、その全員が長い歴史の中で世界の安定ために討ち滅ぼされました。その結果――

 

「あの罪の封印が緩んだ?」

 

――えぇ。まぁ、他にもあるのですけどね。貴方たちのせいとかも――

 

「え?オレ!?」

 

 そう言って声の主に変わってナムが差したのはドルモンだ。当然、何の事かも分からないドルモンは目を白黒させて驚いている。

 

――貴方のデクスリューション……死の進化。我々はそれをあの罪と同じくらい危険なものとして封じてきました。かつての時も。ですが、貴方は真の死の進化に辿りついた――

 

「真?どう言う意味~?」

 

――死の進化とは死を乗り越えるという目的の元に行われる禁忌の進化。ですが死の進化をした者は体の維持に膨大な力を奪われ続け、そしてやがて活動を終えます。それを逃れるために彼らは命を喰らい続けるのです。そんな不完全な進化に我々はした(・・)――

 

「……!」

 

――ですが、貴方は辿り着くべき進化をするどころか、別世界のドルモンの命を受け継ぐことで真なる死の進化を可能にしました――

 

 それが真実。

 ドルモンのするデクスリューションという死の進化についての。

 グランドラクモンやナムによって死の進化は不完全な進化となった。だが、ドルモンは完全な死の進化を、行うことができる。

 それはつまり、二重の意味で世界の法則に真っ向から逆らうということであり――

 

――その結果この世界の安定が崩れました――

 

「その結果。この世界に進化が戻った。我々が封じていたはずの」

 

――進化は元々未来への可能性の具現です。今のように簡単に行えるものではない――

 

「進化は時として神へと届きうる可能性を導く」

 

――進化というものに測り知れないものを感じた我々はそれを封じました。進化とは諸刃の剣。進化によってあの罪が目覚めるのを恐れたのです――

 

 だが、それも無駄だった。

 ドルモンが真なる死の進化に辿り着くことで世界のバランスが崩れ、この世界に進化が戻り、封じる前を超えて異常と言えるまでに進化が溢れかえったのだ。

 つまり、あの罪が解き放たれる原因の一端を担ったのはドルモンということでもある。

 

――ともかく。あの罪のために我々も手を尽くしました。それが貴方です――

 

「オレ?」

 

「旅人が?」

 

――我々はかつてあの英雄の主に接触し、その鍵となるモノを作らせました。とはいえあの英雄も独自に動いていたみたいですがね――

 

 その言葉を聞いて旅人はハッとなる。その鍵というものに心当たりがあったのだ。

 自分の切り札とも言えるソレ。いつも力を借り続けた旅人にとっては、ソレはなくてはならないモノだ。

 

――そうです。そのカードこそが鍵。この世界を救うための鍵なのです――

 

「……!」

 

――ですから……この世界を救うために力を貸してくれませんか?――

 

「……オレは――」

 

 グランドラクモンにそう言われて旅人は考え込む。

 もちろん旅人はそんな面倒そうなことはやりたくはない。だが、やれるのは自分しかいないのだ。世界がどうこうという時には、さすがの旅人とて逃げ出すことはしない。

 というよりも逃げ出しても世界が滅びては意味がない。

 そしてそんな時に旅人の脳裏に思い浮かぶのは、少し前に消えていったあのデジモンたちの姿だ。

 彼らの姿が頭に思い浮かんだ時点で、答えは決まったようなものである。

 

「……。本当に……頼むとか、頑張れとか、任せたとか……」

 

「旅人……」

 

「みんな勝手すぎるだろ」

 

――……――

 

「しょうがないなぁ……まったく。……まったくしょうがない。だから――どうすればいい?」

 

――えぇ。まずは……――

 

 そうして、世界を救うための()が始まる――

 




というわけでオリジナル設定満載の一挙ネタバレ回。
次回は今回のこれがホンの少し続いてから、ついに最終章の肝へと入ります。

ちなみにナムの名前の由来は、
イグドラシル→イグドラシル_7D6→76→ナムです。
単純なので気づいた人いるかもしれませんね。

業務連絡。
それで、ここまで投稿が遅れた理由は、第三章の加筆修正に思ったよりも時間が取られたことと、大学が学期末に入りかけていることによって思ったよりも忙しくなっているからです。
ですので、申し訳ありませんが、今週はこれ以上投稿できそうにありません。
あと、その関係で生活が不安定になり、うまく執筆時間が確保できていないので、これからは週一投稿、余裕があったら週ニ投稿という形を取らせていただきます。

というわけでよろしくお願いします。
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