【完結】ワールド・トラベラー   作:行方不明

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第八話~暴走する竜~

とある瓦礫が積もる荒野の淵。そこでウィザーモンは瓦礫に埋まった状態でなんとか生きていた。

 

「う……ここは……?」

 

体にのしかかる瓦礫をどかしてウィザーモンは起き上がる。だいぶ吹き飛ばされたらしいが、全員は離れていないらしく、旅人とウィッチモンは近くに埋まっていた。

 

「一体何がどうなったんだ……。るしをりたあ『探査』」

 

ウィッチモンと旅人に治癒魔術をかけながら状況を確認する。

遠くで白銀の竜とメディーバルデュークモンが戦っているのが見えた。信じられないことに白銀の竜は英雄とまで呼ばれたメディーバルデュークモンを押している。

 白銀の竜も傷を負っているが、メディーバルデュークモンの荘厳な鎧はそれ以上に傷だらけだ。もはや荘厳という字が付かなくなるほどである。

 

「暴走しているのか……?とにかくこのままではマズイな。二人を起こして……それから……」

 

 “それからどうする?”ウィザーモンは自問する。

 あの二体の間に割って入る。不可能である。数キロ――下手するともっと――離れた場所まで衝撃が届く相手――片方は戦っているのではなく、ただ暴れているというオマケ付き――の中に入るなどただの自殺願望である。

 

「第一……そこまでする義理は……」

 

 ウィザーモンは悩む。入らなくてもいい。そんな義理はないと。

 ウィザーモンは別に自殺願望があるわけではない。しかし、当たり前のことなのに何故か悩むのだ。

 

「あぁ。無いよ」

 

「旅人、ウィッチモンも……起きたのか?」

 

 いつの間にか旅人が起き上がっていた。ウィッチモンの方は起き上がるまで回復していないようだが、ウィザーモンをしっかりと見ている。

 両者は大体のことは悟ったらしく、旅人にいたってはもう行く気満々である。まだ全て戻りきってないカードの中から何枚か選んで取り出している。

 

「ああ。起きた途端にあの馬鹿がああなっているのは驚いたけどな。……はぁ、死ぬかも」

 

「死ぬかもしれないのに行くのか……?」

 

 ウィザーモンは聞くまでもないことを聞く。そんなこともう雰囲気で分かりきっているというのに。

 

「アイツを何とかする手はあるのか?」

 

「あぁ、そういえば……ないな」

 

「……おい」

 

「ま、まぁ、何とかなるさ」

 

 実を言えばウィザーモンには助けられるであろう方法はある。

 しかし……聞きたいことはあと一つ。ウィザーモンは最後の問を旅人に投げかける。

 

「何故行くんだ?」

 

「それこそ聞くなよ。アイツは……オレの相棒だから。見殺しになんてできない。したらオレは生きていけないだろうさ。一人で旅をするのもつまらなそうで嫌だしな。やっぱりアイツがいないと」

 

 旅人がかつてドルモンが言ったことと似たことを言っていることにウィザーモンは“やはり似た者同士なのだな”と、微笑ましい感情を抱く。

 “それじゃあ行くかな”と立ち上がる旅人の横にウィザーモンは並び立つ。

 

「僕も行こう」

 

「マジで……?さっきも言ったけどそんな義理ないだろ?」

 

「そうだな。無いな」

 

「だろ?だったら……」

 

 “行く必要はない”そう続けようとした旅人の言葉に重ねるようにウィザーモンは言う。

 

「君達は僕の理解できないことをよくする。理解できないということは、君達は僕の常識という世界の外にいるということだ。ならば、君達を知るということは……僕の世界を広げるということだ」

 

 “つまり?”と問う旅人にはぁとため息を返すウィザーモン。旅人としては義理もないのに死ぬかもしれないところに行くウィザーモンが理解できないのだ。

 

「ふむ、これでも伝わらないか。これじゃあ本当に教養がないぞ」

 

「喧嘩売ってるのか?」

 

「まさか。それじゃあこう言おう。僕にとって知るということは君にとっての旅と同じ行為だということだ。これではダメか?」

 

「……いや、いい」

 

「それに僕にはドルモンを助ける手段がある。君のような自殺願望者一歩手前の者とは違うのだよ」

 

 自身にとっての旅と同じと言われては旅人も強く言うことができない。その状態で助けられるかもしれない手段があると告げられたのならば、旅人は余計断ることができない。

 

「ウィッチモンはここで待っててくれ」

 

「……うん。いってらっしゃい」

 

 その声は何かを耐えるような声だった。

 内心では自分も行きたいのだろう。好きな人が死地に向かうかもしれないのにおちおち寝てはいられないのだろう。

 しかし、共に行けるような状態ではないのは本人が一番知っている。

 

「あぁ。行ってくる」

 

「いってきます。とよし、set『転移』」

 

 そんなウィッチモンを気づかないフリをしてウィザーモンと二人で返事を返し、ギリギリ戻ってきた『転移』を使い転移する。破壊を撒き散らす竜の上へと。

 

 

 

 

 

 竜と英雄が何度目か分からない激突をする。

 メディーバルデュークモンが繰り出した刺突を避けながら進む白銀の竜に、メディーバルデュークモンは後退しながら槍で薙ぎ払う。同時に使った魔術で風を起し、発生した風で白銀の竜の行く手を阻む。

 対して白銀の竜はただ殴るだけで風を削る、その隙に来る槍の攻撃に対しては怪我に構わず掴んで引き寄せながら攻撃する。白銀の竜の戦いは技術も戦術もない……まさに暴れているだけであった。

 

「っく。完全に進化できていないのにこの威力……末恐ろしいな……!このままでは……む?これは……人間の『転移』か?」

 

 メディーバルデュークモンは()のことを考えるのならば、白銀の竜を殺してはいけないと考えている。

 正直、この状況で旅人達が来たことはメディーバルデュークモンにとってありがたいことだった。

 

「ウィザーモン!頼むぞ!」

 

「やれやれ。れもまをられわよちつ。『アースソフト』」

 

 旅人を担いで柔らかくした土の上に着地する。近づいてくる白銀の竜をメディーバルデュークモンが迎撃する。

 準備に移るウィザーモンを守るように立った旅人はそのままメディーバルデュークモンに宣言するかのように声を張り上げた。

 

「英雄……オレがアイツを何とかする!だから……!」

 

「我は引っ込んでいろ……と?ふん。貴様の問題ならば是非もない。見学といこうか。ただし……失敗したときは……。分かっているな」

 

 最後の言葉には答えずにひたすらに集中する。そんな旅人を見たウィザーモンが最大級の魔術を発動する。ウィザーモンが持つ最狂の……禁忌クラスの魔術を。

 

「できたぞっ!れぐもれぐも……ろこごとひきとごのもなみ!『干渉』」

 

 魔術が発動した瞬間、旅人は地面に倒れ、白銀の竜は動きを止める。

 要するに旅人は白銀の竜の心の中に入ったのだ。

 イメージとしては他人の精神という名の海に潜る感じである。

 

「……」

 

 ちなみに『干渉』という魔術は難易度が高い。特に他の生物の精神に干渉する場合。生物が元々持つ防衛機構が働くのだ。よってここからは針の穴に高速で糸を通すような集中をし続けなければならない。

 そうしなければ術者はすぐに追い出されてしまう。また、意識を失うほど深く干渉すれば、下手すると術者が干渉され返す危険もあるのだ。

 

「ほう!干渉系の魔術……!」

 

「っぐ……やはりきついなっ!早くしてくれよ……旅人っ!」

 

 他者の存在に強引に干渉する……それは禁忌クラスの事象だ。生まれつき能力として持っているものもいるため、かろうじて禁忌にはなっていない。

 しかし、他者を操ることもできるこの系統の魔術は好まれないことも事実である。

 

「……」

 

「しかし……我の主が作ったカードならば……この程度はなんとかなるレベルのはずだが……」

 

 メディーバルデュークモンの呟きは気になるものだが、それに答える余裕はウィザーモンにはない。

 しばらく黙って何かを考えていたメディーバルデュークモンはやがて、何かに行き当たったのか、ため息を吐いた。

 

「はぁ。そういうことか。アイツのことだ。また使い手に不親切なものを……ロマンとかなんとか言って作ったのか。やれやれ。あのアホめ……」

 

 どこか遠い日に思いを馳せたメディーバルデュークモンの懐かしそうな声を聞いた者はいなかった。

 

 

 

 

 

 許すな。壊せ。殺せ。敵を。味方を。全てを。

 白銀の竜の精神に入った旅人が感じたのは負の感情の嵐だった。常人であれば耐えることもできないであろう感情の嵐に耐えていたドルモンに驚く。

 実際旅人でさえも感情に流され、気が狂いそうになっている。旅人が無事なのは単にウィザーモンの魔術の腕がいいからである。

 このような中でドルモンの正常な精神だけを探し出すのは不可能に近い。

 

「出て行け……」

 

 声が聞こえた。

 

「出て行け。ここから……出て行け!」

 

 全身黒い竜が現れる。この竜だけ感情の感覚が違うためにこれが本体、ドルモンだということに旅人は考え着いた。

 

「そっちから来てくれるとは好都合だな。オレもキツイし。おい、ドル!さっさと正気に戻れ!オレ無事だったから。今なら怒らないから!さっさと戻ってこい!」

 

「旅人……無事……?ああ。良かった……」

 

 “案外簡単に終わりそうだ”そう考えた旅人だったが、黒い竜の様子がおかしい。さっきから震えている……いや、泣いている。まるで怒られるのを嫌がる子供のような雰囲気であった。

 

「おい……?ドル……」

 

「ダメだ……帰れない……()は……負けた……だから……帰れない……」

 

 人の話を聞かずに只管にネガティブスパイラルに陥っていくドルモンに旅人はイラっときた。そのまま声を張り上げるが、ドルモンには届かない。

 

「負けてなんかないだろ!いい加減にしないと明日の御飯はキノコオンリーにするぞ!」

 

「負けた……だからもう旅人の相棒じゃない……行く場所が……ない……」

 

 旅人はその言葉でおおよそのことを察する。要するにドルモンは何時だがの決意を無駄にしたことでここまでに自分を追い込んでいるのだ。

 

「いい加減にしろ!ドルがどうだろうとドルはオレの相棒なんだよ!お前が相棒でいられるようにここまで来てんだろうが!いい加減に正気に戻れ!」

 

()は……」

 

 消えていく。黒い竜の姿も。旅人はすぐに黒い竜が消えているのではなく、自分の意識が消えかけていることに気づく。

 

「くそっ……」

 

 既に旅人は何も見えなくなっていた。さっきまでうるさいぐらいに感じていた感情の嵐も驚く程静かになっていた。ここで終わり。

 全てが黒くなっていく。“こんなところでオレの旅は終わるのか”そう考えて、旅人は懐かしい声を聞いた。

 

「諦めるのか?」

 

「諦めたくはない。でももう終わったんだよ」

 

 声は旅人を宥めるかのように話しかけてくる。

 

「そうだな。終わった。でも終わっただけだ。終わったならまた始めればいい。それだけの話だ」

 

師匠(・・)が言うみたいに、そんな物語みたいに簡単に行くわけ無いだろ!」

 

「そうかなぁ。確かに簡単じゃないかもしれないが……」

 

 何故師匠の声が聞こえるのか。そんな疑問さえ吹き飛んで旅人は姿の見えない師匠に突っかかる。

 対して師匠はどこか飄々とした雰囲気のままだ。しかし、次に出た言葉は旅人が驚くほど冷たく……暖かいものだった。

 

「舐めるなよ?小僧。確かに世界は簡単じゃない。でも……お前が思っているほど難しくもない」

 

 要するに捉え方次第だと。そんなことで悩むのは無駄だと。行動しなければ何も変わらないのだから。

 

「難しくもないって……」

 

「お前は旅をしてきただろう?旅の中で簡単なことがあったか?難しいことがあったか?そんなことを逐一気にしながら旅をしてきたか?違うだろう。何よりお前は……旅をここで終わらせてもいいのか?」

 

 師匠は言う。簡単だからやるのか……難しいからやらないのか……違うだろうと。本当に願ったなら、そんなことは気にしないだろうと。

 

「いいわけがない。諦められない。何より……オレはまだ……アイツと旅を続けたい……そう思う」

 

「ああ。なら……今回に限り手を貸してやる」

 

「え?」

 

 旅人は姿が見えない師匠がどこかでイタズラが成功したような顔をしているのを幻視した。

 まったく見えてはいないが、あながち間違いではないだろうと旅人は感じている。

 

「くく。だから言ったろ?世界ってのは思ったより簡単なんだって」

 

 旅人が言葉を発するより前に急激に光があたりを照らす。光があたりを覆い尽くす前に……師匠の声が聞こえた。

 

「ああ、最後に一つ。お前に一枚新しいカードをやる。いつか……いや、使う時が来ないといいな」

 

 旅人の視界が戻ると目の前に黒い竜がいた。そして横にはドルモン……。

 

「え?」

 

 二人の声が重なる。旅人としては“これからドルを黒い竜から引きずり出してやる!”と意気込んでいた為にこの状況は肩透かしでしかない。

 対して、ドルモンはあれだけ引きこもり宣言していたのにいつの間にか一番会いたくない相手の前にいることで落ち着きがない。

 

「え?えーと……旅人?あの……」

 

「はぁ。もういいよ」

 

「え?」

 

「お前がお前に負けた程度じゃ、それは変わらないよ」

 

「それって……」

 

 明らかに言葉が足りていない言葉にドルモンが聞き返そうとする。しかし、その言葉を遮ったのは目の前にいる黒い竜だった。

 

「ハハハ……ムダダ。コワス。コロス。スベテヲ……」

 

「随分とまぁ、うるさいやつだな。もしコイツがお前の言う本能なら、コイツ倒せば万事解決じゃね?」

 

「えっ……いや、そんなことは……あれ?どうだろ」

 

 黒い竜はその後も似たような言葉を吐く。黒い竜が吐き出す言葉はまるで呪詛のようで、聞いていると、関係のない旅人まで狂いそうになる。

 “こいつのせいでドルがネガティブになるんじゃないんだろうな”旅人はある意味正解に近い考えを思い浮かべる。

 

「まぁ、どのみち戦わんといかんか。成熟期じゃ多分きついな。……今度は勝てよ?Set『進化』『二重』」

 

「ドルモン!ダブル進化――!ドルグレモン!……うん。勝つよ」

 

 ドルモンの姿が四枚の悪魔のような羽を持ち、尻尾に金色の槍を持つ赤い竜――ドルグレモン――へと変化する。

 二枚のカードを使い、本来の成長段階を超えて、成長期(ドルモン)から完全体(ドルグレモン)へと進化する。

 

「うぉおおおおお!」

 

「グァアアアアア!」

 

 赤い竜が咆哮する。ドルグレモンの戦意に当てられたのか、黒い竜は咆哮をあげて動き出す。ドルグレモンも同時に動き出し激突する。頭突きに体当たり、引掻き。

 技術も何もない単純な喧嘩のようではあったが、単純それだけにどこか力強さがあった。

 

「あ、アアアアア!」

 

 叫びながら交差する黒と赤。尾の攻撃を前足で押さえつけ、上からの突撃を後退して避ける。再び上へと飛ぶ黒い竜。両者は互角であり、そんな攻防がずっと続くかのように思われた。

 旅人は今回は手を出さないと決めたらしく、リラックスした状態で傍観を貫いている。

 

「『ブラッディタワー』」

 

 再び上から突撃してくる黒い竜に合わせてドルグレモンが尻尾についた槍を突き刺す。串刺しにした黒い竜を回転しながら勢いを付け上へと吹き飛ばした。

 

「まだまだ!これで!終わりだァ!『メタルメテオ』」

 

「っげ!待て待て!それはマズイって!set『防壁』」

 

 ドルグレモンが放った数十メートルの鉄球が超高速で落ちてくる。その攻撃によって発生する衝撃は語るまでもないことである。

 焦ったように旅人は『防壁』を展開する。

 かなりのダメージを受け、上へと吹き飛ばされていた途中の黒い竜にそれを避けることができるはずもなく、直撃。そのまま押しつぶした。

 

「はぁはぁ。勝っ……た……?」

 

「勝った?じゃないだろ!」

 

 ドルモンに戻ったところを衝撃波で吹っ飛ばされた旅人が詰め寄る。最後の一撃の余波は『防壁』を簡単に壊し、旅人を吹っ飛ばしたのだ。その様子は某バイキンの人がパンチで吹き飛ばされていく様子に似ていた。

 

「オマエ何?いきなり吹っ飛ばすって?あの技使わなくても勝てそうだったじゃん?もう少し環境に優しい戦い方を覚えろ!」

 

「え?そんなこと言われたって~!どうしようもないでしょ!っていうか旅人には言われたくないんだけど!?」

 

 もう終わったとばかりに口喧嘩を始める二人。

 しかし、そんな二人を嘲笑うかのように再び黒い竜が二人の前に現れたのだ。

 

「何っ……?」

 

「ムダダ……リュウトハチカラノオウ……ショセンイツカ……オマエハ……オマエノテデモッテ……オマエノタイセツナモノヲニギリツブス……」

 

「う……」

 

「オボエテオケ……」

 

 それきり何もなかったかのように黒い竜は消えた。

 どうしようもなかったことだが、おそらくはまだあの竜はドルモンの中で生きているのだろう。不吉な予言と共に、おそらくはずっと。

 

()は……」

 

「はぁ……もういいだろ。別にオレは気にしてないから」

 

「そう言ったって……。いてっ」

 

 “やっぱり気にするよ”そう言おうとしたドルモンは旅人によって小突かれた。

 大した痛みではなかったが、それでもドルモンは抗議の視線を旅人に送る。しかし、旅人の方はその抗議の視線を黙殺する。

 

「別にいいんだよ。行き当たりばったりなんていつものことだ。もし、あの黒い竜の言うとおり、何かあったなら……そんときに考えればいい。その……いいんだよ。一緒にいても。だから、今回のことは気にするな」

 

 清々しいまでの楽観主義である。

 しかし、そのようなある意味いつも通りといえる旅人の姿は今のドルモンにとっては安心できるものだった。

 背中を向けて帰る姿勢を見せる旅人は知らないがドルモンの頬は緩んでいた。

 

「そんな簡単に……立ち直れるようなことじゃ……ないんだけどな……旅人じゃないし」

 

「あ?今なんて言った?」

 

「あははっ!さぁね~!」

 

 光が辺りを照らす。それが目覚めの合図とばかりに旅人の姿も、ドルモンの姿も消え、現実へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

「起きたか……?」

 

 旅人が目を覚ますと目の前がウィザーモンだった。否、目の前にウィザーモンがいた。

 

「あぁ。たぶん、もう大丈夫だ」

 

 旅人は視線を横へとずらすと白銀の竜が光となって崩れ始めていたところだった。光が収まるとそこには獣のような竜――ドルモン――がいた。

 

「……ただいま」

 

「ああ。おかえり」

 

「ふむ。まさかアレを止めるか。まぁいい。……我はもう行く」

 

 ドルモンが帰ってきたのを見届けるとメディーバルデュークモンはマントを翻して旅人たちに背を向ける。

 

「人間。貴様に言っておく。貴様がどう思おうと、何をしようと……宿命は変えられぬ」

 

 それだけを言うとメディーバルデュークモンの姿は揺らぎ、風となって消えた。

 

「……最後まで訳の分からんやつ。まぁ、英雄様のことなんて一般人には分からんか」

 

「訳が分からない……というのは君も同じだと思うがね?旅人」

 

「うんうん」

 

「……泣いていいか?もういいからさっさとウィッチモンを拾って……」

 

「おーい!」

 

 言いかけた時、ウィッチモンの声が聞こえた。全員が声の方――空――を見上げると空中にある線路を走る列車――トレイルモン――がいた。

 トレイルモンはそのまま旅人たちの前まで来るとまるで旅人たちを迎えにきたかの如く、停止した。

 

「空を走るって……何でもありか……」

 

「ウィッチモン!どうしてトレイルモンと来たの~?」

 

「ドルモン!元に戻ったんだ!さっきの場所で寝ていたらトレイルモンが迎えに来てくれたの」

 

「トレイルモンが……?なぜ?」

 

 疑問に思う全員に先頭のトレイルモンは声を張り上げる。よく聞こえるようにとの配慮なのか、それとも元々か。

 うるさいというかなんというか……耳を塞ぐほどの大音量ではあったが。

 

「なんでぇ!一度乗せた客を途中で下ろぉしたぁとあっちゃァ、トォレェイィルゥモォンの名折れだろうがァ!だからァ!」

 

「分かった!分かった!だから乗るから!少し黙ってくれ!」

 

 あまりの大音量に珍しくウィザーモンが大声を張り上げる。

 その後全員乗ったことを確認すると、気を良くしたのか勢いよく動き出した。

 “さっきまでのトレイルモンとは別のやつなんじゃないだろうか”そんなことを全員が思いながら、列車のシートにしがみつくところから旅の続きは始まった。

 

 

 

 

 

 遠くの丘の上で二つの影がある。

 

「さて……今回は助けたが……次はないぞ?」

 

「ここまでする必要はなかったんじゃないか?」

 

「まぁ。たぶんオレがいなくても何とかなったであろうしな。ただ、まぁ……保険は……いるだろう?」

 

「ふん……。まあな」

 

 二つの影は会話を続ける。遠くに離れていくトレイルモンの姿を眺めながら。

 

「さて、どうなるかな……。せいぜい正史通りの行動をしてくれよ?」

 

 不穏な雰囲気で呟く言葉を風に乗せて……二つの影は消えた。

 この影たちとの邂逅の時はもう少し先の話である。

 




最近モンハン4のネットがやっと繋がるようになったせいでますます小説に使う時間が減っている……。
あと今週は忙しいのでもしかしたら二回目が投稿できないかもしれません。

追記として今回出た白銀の竜はドルゴラモンではありません。ドルゴラモンモドキです。

カード説明

『二重』―先に発動したカードの力を重複させるカード。扱いようによってはかなり強力だが、扱いようによっては意味がない場合もある。
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