【完結】ワールド・トラベラー   作:行方不明

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第九十一話~ネクスト!強欲に天界を探し出せ!~

 新たな世界にたどり着いて数時間。

 現在旅人たちの七大魔王探しに対するモチベーションは下がっていた。初めのベルフェモン発見から、一回も七大魔王に関する情報を見つけられていないのだ。影も形も見当たらない七大魔王探して行ったり来たりして――ようするに飽きたのである。

 

「僕、腹減ったよ~……」

 

「食料が尽きかけているんだ……諦めろ……」

 

「そんなこと言うならドルがあのキノコを食えばよかったじゃねぇか」

 

「リュウ……分かって言ってるよね!?」

 

「つーか……お前らいつの間にか仲良くなってるな。まぁ、いいけどさ……」

 

 いつの間にかドルモンのことをニックネームで読んでいるスレイヤードラモンやデフォルトの一人称がオレから僕に変わったドルモンに疑問を覚えながらも、旅人は深く突っ込むことはしなかった。腹が減っていてあまり体力を消費したくないのである。

 そんな時、スレイヤードラモンが事態を打開するソレを発見する。

 

「ん?おぉ……旅人!あそこにあるあれって街じゃないのか?」

 

 遠くに見えるその街は、今の旅人たちにとってはサバンナのオアシスに等しいものだ。

 

「お?本当だ。よし!あの街で――」

 

「食料調達だ~!」

 

 そして、その言葉を聞いた瞬間に一目散に街へと走っていく旅人とドルモンの姿にスレイヤードラモンは呆気にとられるしかない。いっそ清々しさを感じさせる旅人たちの後ろ姿。

 そこには先ほどまで空腹で死にそうだった姿はどこにもない。

 そして七大魔王探しよりも食料調達を優先しようとしている旅人とドルモンに、スレイヤードラモンは目を点にすることしかできなかった。

 

「へ?七大魔王探しは!?おい!旅人!ドル!」

 

「まずは飯だ。さっさと行くべ!置いてくぞー!」

 

「おぉおおおおお!」

 

 だが、なんだかんだ言ってスレイヤードラモンも空腹であることには変わりないらしい。余裕のつもりか、後ろ向きで走って自分たちを追い抜いたスレイヤードラモンに軽い殺意が湧いた二人だ。

 もっとも、どのみち究極体であるスレイヤードラモンに速さで叶うはずもないのだが。

 ちなみに別にかけっこしていた訳ではなかったのだが、一番に着いたのはやはりスレイヤードラモンだった。次いで到着したのは旅人。ドべは途中ですっ転んだために出遅れたドルモンだ。

 

「ははっ!俺の勝ち!とうちゃー……く……?あれ?」

 

「ここは……」

 

「どうしたの~?これって!」

 

 旅人たちがたどり着いた街。そこは廃墟だった。いや、かろうじてデジモンたちがいるところを見ると一応まだ街ではあるのだろう。だが、そこは爆撃でもあったかのようにボロボロだ。

 辺りにいる成長期くらいであろうデジモンたちも傷だらけで明らかに何かあったということを悟らさせる。

 

「これじゃあ食料を貰える訳はないよな……なぁ、何かあったのか?」

 

「え?だれですか……?」

 

「う?あー……まぁ、旅人だよ。それで――」

 

 そこら辺にいた耳の長いオレンジ色のヘンテコなデジモンに話を聞こうとした瞬間に――。

 

「オラァオラァ!どけどけどけぇっ!」

 

「ひっ……わぁ~ん!」

 

「あ、おい!」

 

 武装して、ナイフを持ったデジモンが街へと入ってきたのだ。しかも、明らかに友好的な雰囲気ではない。その後ろに手下なのか、アサルトライフルを構えた歩兵のような迷彩服のデジモンを幾体も連れている。

 

「はん!暗殺任務でもない!クソつまらねぇ殲滅任務なんだ。手間かけさせずに少しは良い声で鳴けってもんだ!」

 

「……旅人……どうする?」

 

「どうって言ってもなぁ……」

 

「あんだ?てめえらのその目は?まさかオレ様たちと……“バルバモン様”に逆らおうってのかぁ?」

 

「ッ!これは……思いがけない情報ゲットだな」

 

 リーダー格らしきデジモンの言ったバルバモンという名。旅人たちはその名を知っている。自分たちが探してやまない七大魔王の一角に座するデジモンの名だ。

 思いがけない事態の進行に旅人たちは内心で喜びを隠せない。

 一方でそんな旅人たちの内心を知るでもないその襲撃者たちは旅人たちを品定めするように見つめている。

 

「ははぁ!いいねぇ!殲滅任務なんてクソつまらねぇと思ってたが……てめえらみたいなのをぶっ潰せるならこういうのもいいかもしれねぇな!」

 

「さて、怪我しないことと情報を得ることを最優先で」

 

「了解~旅人~進化は~?」

 

「いらんだろ」

 

「ハッ!このシールズドラモン様とこの百体のコマンドラモンの削除部隊に蹂躙されちまいなぁ!」

 

 シールズドラモンたちと旅人たちの間に少し温度差と認識の違いがあるようだ。だが、だからといって止まることなどない。

 そうして旅人たち三人による(・・・)蹂躙が始まった――。

 

 

 

 

 

 数分後。シールズドラモンたちは全員が地面に倒れ伏していた。しかも、それでいて全員が死んでいないのだから驚きである。

 ちなみにコマンドラモン百体は数秒もかからずにスレイヤードラモンに殲滅された。スレイヤードラモンが行ったことは至極単純で、愛剣フラガラッハを伸ばして、コマンドラモンたちがその手のアサルトライフルを撃ち始める前に纏めて薙ぎ払ったのだ。

 シールズドラモンの方はその光景に呆気に取られている瞬間にドルモンの全力の鉄球十連打を食らって沈んだ。

 そんな光景を前に、取り出したカードの行き場をなくして苦笑いと愛想笑いを同時に浮かべることしかできなかった旅人である。

 

「あれ、旅人。カード取り出してどうかしたの?」

 

「いや!なんでもないぞ!」

 

「つーか旅人何もしてなくね」

 

「は?いや!してたよ!うん!」

 

「いやいや、全部俺とドルで片付けただろ。見てたよ」

 

「分かってて言ってたのかよ!嫌がらせか!っく……どーせオレは役立たずだよ……いつの間にかドルと立ち位置が変わってるよ……」

 

 旅人に止めをさしてしまったスレイヤードラモンは内心で“しまった”と呟くが、それで時が帰る訳ではない。開き直って放っておくことにしたのだった。

 ちなみに言外に昔は役立たずだったと旅人に言われていることに気づいてなかったりするドルモンはかなり鈍いというしかない。

 

「はあ……旅人は放っておいて……バルバモンの情報を得るぞ」

 

「お~!」

 

 そしてそんな旅人を放っておくドルモンは鈍い上に薄情が追加されるだろう。

 そんなドルモンとスレイヤードラモンはバルバモンの情報を得ようと、気絶させたコマンドラモンやシールズドラモンから聞き込みをするが、結果はあまり芳しくなかった。 

 さすがに訓練されたデジモンたちだけあって、そう簡単に情報を吐かない。拷問や尋問でもできるのならば話は別だろうが、旅人を含めドルモンたちはそういった技能を持ち合わせてはいないのだ。

 結果として得られた情報はバルバモンという七大魔王の一角の存在がこの世界にいるということと、バルバモンはこの世界のどこかにある天界と呼ばれる城にいる“らしい”ということだけだった。

 

「……ほとんど変わらないね」

 

「まあ、いるって確証が得られただけでもいいんじゃねぇか?」

 

「そうだけど……ん?」

 

 その時、ドルモンたちの前に現れたのは先ほど逃げていったこの街のデジモンたちだ。どうやら、破壊音が聞こえないことによって様子見に戻ってきたらしい。

 

「あの……貴方がたが助けてくれたのですか!?」

 

「助けた?まあ、結果的にはそうなるか……」

 

「ありがとうございます!救世主様!」

 

「き、救世主?」

 

 いつの間にかどこにいたのかも分からないほどの大勢のデジモンたちに囲まれているスレイヤードラモンとドルモンはそのテンションについていけずに困惑するしかない。

 

「ぜひお礼がしたいです!歓迎です!」

 

「あ、ああ……それじゃ……」

 

「はい!こちらです!」

 

 デジモンたちに歓迎の会へと招待されるスレイヤードラモンとドルモン。

 ちなみにその時、哀れにも旅人はその場の全員から忘れられていたりするのだが、それはまた別の話だ。

 その時、ついでとばかりに気絶したコマンドラモンとシールズドラモンは街のデジモンたちによって捕まえられ、可哀想になるほどのすし詰め状態で檻に入れられることになるのだが、それはさらにまた別の話である。

 

 

 

 

 

 次の日。旅人たちは街を出て空を飛んでいた。街にいた成長期デジモンたちからもバルバモンの情報をいくつか得ることができたのだ。

 その情報の中にはバルバモンは天界のイグドラシルを乗っ取ったとか、新たな未来を作り出そうとしているとか、眉唾なものもいくつかあった。

 だが、現段階でその中の一番有用そうな情報といえば、その名の通りに天界は天にあるということだった。そんな訳で、旅人たちは空を飛んでいるのである。

 もっとも、飛んでいるのは進化したドルグレモンとスレイヤードラモンだけであり、旅人はその背に乗って寛いでいる。

 

「リュウ~後二分で交代だよ~」

 

「了解……それにしても見つかんないな……」

 

「旅人もしっかりと探してよ?そのために僕らが背負ってるんだから」

 

「……んあ?あぁ……ちゃんと探してるよ」

 

「……まぁ、いいけどね……」

 

 どこかボーッとしていた雰囲気を見せる旅人をジト目で見ながらも、ドルグレモンは空を飛び続ける。

 探し始めて数時間。途中で休憩をはさみながら捜索をしているが、依然として見つかる気配はない。

 

「っていうか、この世界のどこかってところがなぁ……」

 

「まあ……ね……」

 

 時刻はもうそろそろ夜になろうとしている時間帯だ。日は沈み、夜の帳が下り、夜空には日と間違うほどの第二の光が――。

 

「ん?」

 

 そこで旅人たちは“ちょっと待てよ”と一旦目を閉じてからもう一度ジッと空を見る。

 すでに日は沈んで、夜空には幾つもの星々が光り輝く。そして、それらの星々をかき消すかのような太陽の如き炎の星が空に一つ。

 

「……」

 

「……」

 

「……見間違いじゃなかったな……」

 

「何だ、あれ……」

 

 近づいていくほどに顕になる灼熱の炎の球とその中にうっすらと見える城のようなもの。

 空に浮かぶ城。そして守るかのように炎がその城を取り巻いている。

 

「……もしかしてあれが……天界?」

 

「……あぁ、そうか。見た目のインパクトの強さで忘れていたな」

 

「でも、どうする?あの炎に突っ込むのは多分無謀だぜ?斬れるかもどうかも怪しいしな」

 

「こうなったらデクスで……」

 

「それじゃお前は無事でもオレたちが死ぬわ」

 

 城の周りまで着いた旅人たちは城を旋回するように飛んで、中を覗う。だが、炎は盛んに燃えていて、まるで隙がない。やろうとすれば力ずくでも行けるのかもしれないが、それをすれば確実にバルバモンの軍と戦闘になる。

 だが、このままでは永久にグルグルと城の周りを回り続けることしかできないし、このままではいずれ見つかってしまい、戦闘になってしまう。

 現在進行形で世界を危機に陥れているバルバモンの軍だ。究極体やそれに匹敵するような猛者も何人かいることだろう。

 旅人たちとしては出来る限りの極限戦闘は御免被りたい。それはスレイヤードラモンを含めた旅人たちの総意である。なぜなら、旅人たちが命を賭けなければならないのはここではないのだから。

 もっとも、七大魔王全員と会わなければいけない時点でだいぶ命を賭けていることにはなるのだが――。

 

「それじゃ、どうするの~?」

 

「……先のこと考えるとあんまりやりたくないけど……カードでこじ開けるしかないな」

 

「それしかないよな……どうする?」

 

 スレイヤードラモンの聞いている“どうする?”とは突入してからのことだ。

 この城の中に、本当にバルバモンとその軍が存在するならば、おそらく突入後はすぐに戦闘になるだろう。そこでグダグダとしていては体力と気力の無駄な消費だ。

 だからこそ、ある程度のことはここで決めておこうとスレイヤードラモンは言っているのである。

 

「……そうだな。固まって行動する。無駄に別れてたら危ないしな……。バルバモンの力をコピーしたらすぐに離脱だ」

 

「……」

 

「……リュウ、なんだよ?」

 

「いや……そこまでうまいこといかないと思うけどな」

 

「……その時はその時だ。臨機応変、その場その場で対応する」

 

「……。ここで作戦を決めた意味ねぇ……」

 

 疲れたようにスレイヤードラモンが呟くが、これがいつもの旅人たちである。スレイヤードラモンもそれが分かっているし、そも自身もそういうタイプであるからして特に反対はしなかった。

 

「……ドル、進化するぞ。出し惜しみナシだ。set『進化』!」

 

「オッケ~!ドルグレモン!進化――!ドルゴラモン!」

 

 ドルグレモンがドルゴラモンに進化したのを確認して、旅人は白紙のカードを取り出した。そしてその力で炎の壁を切り開こうとして――。

 

「あれは――」

 

 どこかシャイングレイモンに似ている半機半竜のデジモンとプロレスラーのようなイメージの狼のようなデジモン。そしてその二体のデジモンに乗る二人の人間(・・)の少年が炎の壁へと向かって行く姿を目撃した。

 

「おぉおおおおお!クラックブレット!」

 

 そして半機半竜デジモンの右腕の銃身から放たれた炎の鍵が、炎の壁をこじ開ける。

 その光景は、今まさに決死の覚悟で突入しようとしていた旅人たちに大きな虚脱感をもたらした。

 ここでグダグダと作戦会議していた自分たちは何だったのかと。

 状況だけ見ればラッキーと言ってもいいほどなのだが、旅人たちはどこか釈然としなかったのである。

 

「……行こうか」

 

「そだね」

 

「おう……」

 

 先ほどの少年たちの後を追って炎の壁の内側へと入る。そこではすでに戦闘が行われているらしく、彼方此方で爆発音が響いていた。

 

「さて……まずはッ!」

 

「旅人!上だっ!」

 

 城の外観を見て突入できそうなところを探していた旅人たちに突如として炎が襲いかかる。完全な不意打ちだった。その炎を間一髪で避けた旅人たちは、すぐさま襲撃者がいるであろう方向を睨みつけた。

 そこにいたのは――青い体の、鳥のような顔の装飾の鎧を着た赤い翼の魔王だった。

 

「……まだ報告にないテイマーがいたとはな……。先ほどから城の外でなにやら悪巧みをしていたようだが……」

 

「おぅ……バレてた……っていうか、いきなり見つかったな……」

 

「ま、敵地だしな」

 

「他の将たちはまだあの少年たちと戦っている、か……」

 

「……旅人!」

 

 油断なくその魔王を見据えるドルゴラモンが旅人の名を呼ぶ。その声にはどこか決意のこもったような響きがあった。

 それが分かったからこそ、旅人もその魔王を睨みつけたままでその声に反応する。

 

「……何だ?」

 

「ここは任せて!」

 

「馬鹿か。バルバモンじゃないからって油断できる相手じゃないんだぞ」

 

「だからこそだよ。旅人とリュウならエグザモンになれるし、僕はいざとなればデクスがあッ!」

 

 その瞬間に、旅人たちの間に再び魔王の炎が踊る。なんとか間一髪で避けることができたものの、直撃していれば間違いなく地獄行きになるだろう威力だった。

 

「……避けたか。まぁ、いい……無慈悲な人間よ……我が同胞たちの味わった苦しみ、悲しみを私が直接味あわせてやろう!バルバモン様の下には行かせん!」

 

「意地でも行かせる……よっ!」

 

「おいっ!ドル!」

 

 無視して戦い始めたドルゴラモンに言いたいことはあった。だが、ドルゴラモンのせっかくの思いを無駄にするわけにもいかない。

 

「っち!さっさと倒してこいよ!ドル!」

 

 激励を飛ばして旅人はスレイヤードラモンと共に城へと突撃する。

 遠慮はない。時間がないことを考慮して城をの壁を破壊しながら突き進んでいくことにしたのだ。

 そしてそんな旅人たちを見送ったドルゴラモンは頷いて、魔王に向き合った。

 

「さて……旅人にも言われたしな。さっさと倒させてもらうよ!」

 

「……やはり人間は卑しいな。我が身可愛さに仲間を犠牲にするとは」

 

「……違う。オレ(・・)は犠牲になるために残ったわけじゃない!」

 

「……私を、このムルムクスモンを倒すつもりか。愚かな……ここでお前は無駄な死を遂げることになるだけだというのに」

 

「そこら辺は大丈夫だっ!」

 

 そうして破壊竜ドルゴラモンと魔王ムルムクスモンの戦闘が始まった――。

 




はい。というわけでデジモンネクスト第四巻に相当する話です。
前回のあとがきでのんびりほのぼの言ってた割にまた戦闘です。はい。
そして何気にあるドルモンの変化。ちょっとある意味で素直になりました。まあ、たいした変化ではないですけどね。

ではまた次回もよろしくお願いします。
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