【完結】ワールド・トラベラー   作:行方不明

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はい、というわけで前回までで原作世界は終了です。
今回からまた元の世界に戻ります。


第九十八話~トラベラー!原点回帰!懐かしの場所~

 現在。旅人たちは学術院の街にいた。

 

「いや、なんで?」

 

「……。さあ?」

 

 事の発端は数分前。旅人たちは次の世界へと向かうために、あのルーチェモンと激闘を繰り広げた世界からナムの下へと戻った――のだが、そうしたらナムにこの世界に連れて来られたのである。

 

「……あの休みたいっていう言葉をナムが聞いていて、気を利かせてくれたんじゃ?」

 

「まさか。それこそありえないだろ」

 

「……」

 

 ちなみにその時。前を歩いているナムがどこか不機嫌そうな気配を漂わせたのだが、それはほんの余談である。

 とにもかくにも、学術院は何度も訪れ、滞在した街だ。旅人たちは勝手知ったる我が家といった感じで歩いていく。旅人たちにとっては学術院という街は一二を争うほど思い出深い街でもあるのだ。

 

「でも、この世界には七大魔王はもういないって言っていなかったか?」

 

「……確かに……どうなの~?」

 

「ベルゼブモン。今はどの世界にもいない。いるかもしれない時代に狙って行く。不可能」

 

「ナムって一応神様的存在なんだろ?」

 

「今の私にそれほどの力はない」

 

 とどのつまり、ほとんど詰み状態になったわけだ。

 だが、この時点でナムがこの世界に旅人たちを連れてきたということは、何かしらの案があってのことなのだろう。そう思っているからこそ、旅人たちはナムに連れられてここまで来たのだ。

 

「協力者。会う。まずはそこから」

 

「……旅人、気のせいかな?なんか……」

 

「言うな。オレもそんな予感がしてる」

 

 学術院の街。そして協力者。ナムの言った単語を前に、旅人とドルモンの脳裏にはあのデジモンたちの姿があった。

 別に他にも可能性はある。だが、不思議とあのデジモンたちと旅人たちの間には何かしらのものがあるのだ。腐れ縁的な何かが。

 だからこそ、旅人たちはあのデジモンたちの姿を真っ先に思い浮かべたのだ。

 

「……どうする?」

 

「いや、大丈夫だとは思うけど……」

 

「旅人とドルはその協力者が誰かわかったのか?」

 

「……予感がするだけだよ」

 

 そんなこんなで、ナムに先導されて、旅人たちはとある建物の前に来た。そこは旅人たちの予想通りの建物で、さらにはどこかで見たようなポーンチェスモンに睨みつけられながら案内された。

 もっとも、なぜポーンチェスモンに睨みつけられるのか、旅人たちは理解できていなかったが。

 

「連れてきました」

 

「ああ、入っていいぞ」

 

 来客用の部屋のなのだろう。どこか清潔感漂うその扉の向こう側から聞こえてきた声は、やはり旅人たちの予想通りの声で。旅人たちは脱力感を感じられずにはいられなかった。

 

「やぁ、久しぶり……というほどでもないか。また結構派手にやらかしているみたいだな」

 

「……オレたちが何かしているみたいな言い方はやめてくれ。……ウィザーモン」

 

 そう、部屋の中にいたのはウィザーモンだ。

 旅人としては、ウィザーモンとはいつも旅立ってからすぐに再開するということを繰り返すので気恥ずかしいやら、情けないやら、微妙な気分である。一方でウィザーモンはそんな旅人の心情などお構いなしのようだった。

 

「君は一度自分の人生を振り返った方がいい。すべての七大魔王に会うなど……自殺願望ものだぞ?」

 

「……笑えない冗談はやめてくれ。この前死にかけたんだ」

 

「いつもギリギリだな。君たちは……」

 

「そういえば、ウィッチモンは?」

 

「彼女は準備中だ。僕と一緒で駆り出されたからな」

 

 やれやれと首を振ってウィザーモンは疲れた様子を見せる。どうやら、旅人の知らない間にもいろいろとあったらしい。

 

「まあ、世界の危機だ。こちらとしても出し惜しみはしない。この前は遺跡のことでクドクドと言われたしな」

 

「遺跡?ああ、お前らが壊した、あの……」

 

「あの遺跡はどうやら、この世界に来た人間を導くための情報出力施設だったらしくてな。やれあれは傑作だったとか、やれ作り直しだとか、そこにいるナムに怒られたよ」

 

 その言葉に旅人たちは半信半疑の視線をウィザーモンに向ける。ナムはいつも無表情で、カタコト言葉で、淡白な反応をする。そのナムが――怒ることもそうだが――クドクドと何かを言うというのが、旅人たちには信じられなかったのだ。

 

「人間のために作ってあるといっても、その人間が理解できなければ意味はないというのに……」

 

「ウィザーモン。うるさい」

 

「フフ……まあ、ともかくだ。この世界のためにも、さっさと行こうか」

 

 そうして、ウィザーモン先導で旅人たちは部屋を出て、歩き出した――。

 

 

 

 

 

 現在、旅人たちは学術院の街を出てから、このメンバーの中で最も速いスレイヤードラモンに掴まって空を飛んでいた。もっとも、スレイヤードラモンが全速力で飛べば、旅人たちは風圧でミンチになるのでかなりスピードを落としているのだが。

 ちなみに約一名だけは掴まって――ではなく捕まって、と言う方が正しい掴まり方をしている。具体的にそれが誰かというと、このメンバーの中で一番体に毛が多いやつだ。

 

「おい、どこに行くんだ?」

 

「とりあえず、ひたすらに真っ直ぐだ。そこにいるらしい」

 

「らしい?」

 

「情報が少ないんだ。我慢してくれ」

 

「納得いかない~!」

 

 そんなこんなでしばらく空の旅を楽しんだ旅人たちが訪れたのは――懐かしいというべきか、なんというべきか。旅人たちがこの世界に来て最初に訪れた街である隠れ里だった。

 この隠れ里に訪れたのはほんの数ヶ月前のことだ。だというのに、それからの濃い経験のせいで何年も昔のことのように思えてしまう旅人たちだった。

 

「懐かしい~!」

 

「へぇ。旅人やドルはここに来たことがあるのか」

 

「まぁね。でも――」

 

 以前ここに来た時はいろいろとやらかしたせいで、旅人たちはすぐに追い出されたのだ。再びここに訪れても、歓迎してくれるかどうかわからない。いや、歓迎されることなどほとんどないだろう。もしくは忘れられているか、どちらかだ。

 

「わかっている。だから、情報は僕とナムに任せろ。君たちは素知らぬ顔で過ごしていればいい」

 

「は~い!」

 

 そんなこんなで何処かへと消えていったウィザーモンとナムを見送った旅人たちは、以前はできなかったこの街独特の雰囲気を味わうことにしたのだった。

 幸い、旅人たちのことは忘れられているようで、大騒ぎされることはなかった。もっとも、どこかで見たような緑色の鬼に見つけられそうになった時は、急いで隠れる羽目になったのだが。

 

「本当に……懐かしいな。あの頃はいろいろとあったよなぁ」

 

「あの頃っていうか、あの頃より後の方が……」

 

「ドルはあの頃は臆病でな?戦いに参加することは少なかったんだぜ?」

 

「ちょっと旅人!確かに戦いには参加しなかったけど、戦うのが嫌なだけであって臆病だったわけじゃないよ!ってリュウ!その視線は一体何!?」

 

 スレイヤードラモンは何も言っていない。だが、目は口ほどに物を言うとはよく言ったもので、その視線はスレイヤードラモンの言いたいことを端的に表していた。

 すなわち――冗談だろう、と。何が冗談なのかはスレイヤードラモンのみが知る。

 

「まぁ、でも一度戦ったらそれっきり結構な頻度で戦うようになるんだから……よくわからん」

 

「あれじゃね?怖がってたけど、思ったよりも怖くなかったとかじゃね?」

 

「二人して……そんなに僕のこと臆病にしたいの!?」

 

「何を今更」

 

「う……うわぁ~ん!ばか~!」

 

 あの頃のドルモンの心境にどんな変化があったかなど、ドルモンのみが知ることだし、知っていればいいことだ。そんな笑い話しかならない昔のことなど、笑って明後日の方向にポイするくらいの扱いでいいのである。

 もっとも、弄られる方からすればたまったものではないのだろうが。

 

「……それにしても、前は気づかなかったけど、結構いろいろあるんだな」

 

「前は一日もいなかったしね~」

 

「お、あそこのレストランは?」

 

「……ダメだ。焼きキノコの記憶しかない……」

 

「焼きキノコ?」

 

 こうして記憶を掘り起こしてみると、意外にも結構何かしらの思い出があるものである。

 とはいっても、それはかなり限定的な覚えである。いたるところに前には気づかなかった発見があるものだから、旅人たちはお上りさんのようにキョロキョロと彼方此方を見渡しながら歩いていた。

 だからだろう。旅人が目の前にあるものに気づけなかったのは。明後日の方向に視線を飛ばしていた結果である。

 

「イテッ!すまん!」

 

 旅人は目の前にあったサボテンのようなものにぶつかった。刺が体に刺さってとても痛い思いをした旅人だが、それは半ば自業自得である。

 一方でそのサボテンは何事もなかったかのようにそこに佇んでいる。一瞬ただの植物にも見えるが、ちゃんと顔があり、デジモンであることがわかる。

 

「……」

 

「えっと……すみません?」

 

「あぁ……旅人、そいつはトゲモンだ。何もなければ一日中ぼーっとしているようなデジモンだから、気にしなくても――」

 

 いい、とスレイヤードラモンが続けようとしたところで、突如としてトゲモンが豹変する。それまで動かなかったとは思えないほどの俊敏な動きで旅人を捉え、締め付けたのだ。

 突然の事態に反応できなかった旅人はなすすべなく捕まるしかない。

 一方で最初はポカンと口を開けて呆然としていたドルモンたちも、それが攻撃行為だとわかるとすぐに戦闘体勢に移った。

 

「テメェっ!」

 

「旅人を離せ!」

 

「――チガウ!オコラナイデ!ゴメンナサイ……」

 

 カタコトだったが、ゆっくりと話すトゲモンはとても攻撃的には見えない。どうやら、旅人を締め付けたのも攻撃行為ではないらしかった。

 ゆっくりと旅人を離したトゲモンだが、その身に纏っていた刺のせいで旅人は血だらけになっている。その後、旅人は半眼で睨みながら慣れた手つきで自身の血を拭き、トゲモンの話を聞くのだった。

 

「で、どうして旅人を攻撃したの~?」

 

「アエテウレシカッタカラ……ツイ」

 

「ついで攻撃されたらたまったもんじゃないんだけど」

 

「コウゲキジャナイ!ダキシメタダケ!」

 

 必死に弁明するトゲモンを前に一応の警戒心を解くことにするドルモンたちだが、だからといってトゲモンに気を許したわけではない。そもそも、“会えて嬉しかった”という言葉自体不自然だ。旅人たちにここでトゲモンと会った記憶はない。

 

「チガウ!アッタコトアル!タスケラレタ!アタマニモ、ノセテモラッタ!」

 

「頭に乗せた?」

 

「ヤッパリキヅイテモラエナイ。……ウゥ」

 

 静かに泣き始めたトゲモンを前に旅人とドルモンは必死に記憶の網ををたぐり寄せる。

 一方で、トゲモンは“何を考えているかわからないデジモン”という前情報があったスレイヤードラモンからすれば、このようなトゲモンの姿に困惑するしかなかった。

 もっとも、トゲモンという種族は大半がその情報通りにボンヤリしている。このトゲモンも例に漏れずそうである。このトゲモンは久しぶりの旅人たちとの再会に、感情のタガが外れただけなのだ。

 

「ああっ!お前あの時のタネモンか!」

 

「あっ!あの僕の特等席を奪った!」

 

「……その覚え方はどうなんだ?」

 

「ヤット、オモイダシテクレタ」

 

 やっと旅人たちが気づいてくれたことにどこか嬉しそうな顔をするトゲモン。だが、先ほどの泣き顔といい、この嬉しそうな顔といい、かなりシュールな光景であることには間違いないだろう。

 

「進化したのか!」

 

「ウン。モウ、タビトノアタマニ……ノレナイ。……イヤ、モシカシタラ」

 

「乗るつもりか!?そのサイズで乗られると死ぬからやめてくれ!」

 

 歩きながら、旅人たちがいなくなった後の話をトゲモンは語る。それはもう嬉しそうに。

 よほど会話に飢えているのか、それとも旅人たちとの再会が嬉しかったのか。トゲモンは初め会った時の感じはどこへやら、急に饒舌になっていた。

 

「シンカシテ、コウナッテ。カラダモ……ココロモヘンニナッテ」

 

「……」

 

「デモ、タビトタチニアエテ――」

 

 そこまで言って、トゲモンの雰囲気が変わった。どこか暗く沈んだ雰囲気から、清々しさのようなものがある明るい雰囲気に。

 

「ワタシはマダ、私ダッテ安心できた。ありがと~」

 

「……え?」

 

「ドウカシタ?」

 

 その一瞬。ほんの一瞬だったが――その瞬間だけ、旅人たちにはそのトゲモンが大人びたタネモンに見えた。思わず二度見するが、そこにいたのは先ほどまでと変わらないただのトゲモンだった。

 

「いや、……?」

 

「シンカシテ、イロイロアッタケド。モウスコシガンバッテミル」

 

 それきり、トゲモンは走り去っていった。

 きっとトゲモンと似たようなデジモンはまだまだいるのだろう。トゲモンやスレイヤードラモンのあの友のように、急激な進化についていけずにいる者たちが。

 改めて不要に氾濫した進化がもたらした闇の部分について垣間見た気がした旅人たちだった。

 

「……ちょっと雰囲気が重くなったな。飯でも行かねぇ?」

 

「そうだな。なにか食べに行くか」

 

 とは言ったものの、ここの料理は食べた気がしない虫系料理だということは旅人は黙っておいた。スレイヤードラモンは虫を食えるのか、食えないのかは別として、そこら辺の期待を壊すまいと思ったのだ。

 もっとも――。

 

「さて、それじゃあ、ピヨモンに会うついでにあのレストランに――」

 

「おーい!旅人ー!目撃証言があった。次の場所へと行くぞ!」

 

「……。飯はまた今度だな」

 

「……そうだね」

 

 その予定も、タイミングを見計らったかのように訪れたナムとウィザーモンによって潰されたのだが。

 このタイミングで来なくても。全員がそんな眼差しをウィザーモンたちに向けるが、現在の状況を改めて考えて、仕方なく移動を開始するのだった。

 そうしてたどり着いたのは、また懐かしい場所だった。あのスカルグレイモンと激闘を繰り広げたあの荒野である。

 

「……ここも懐かしいな」

 

「そうだね……」

 

「さっきに比べて声が死んでる……いや、無理に思い出さなくてもいいんじゃねぇ?」

 

「さっさと探そう。情報ではここにいるはずだ」

 

「……さっきから何を探してるんだ?」

 

 旅人たちは何も知らされていないのだ。思わずそう聞いた旅人は悪くないだろう。一応、現状からしてベルゼブモンに関係する何かだとは思うのだが――。

 そんな旅人たちにウィザーモンはハッとなって説明する。どうやら、焦るあまりウィザーモンも説明を半ば忘れていたようだった。そしてそんなウィザーモンを旅人たちは呆れた目で見ている。

 

「何……ではなく誰、だな。転生体、同位体……ベルゼブモンを継ぐ者……。いろいろと言い方はあるが……まぁ、この状況を打破するデジモンだよ。素直な者だといいが……」

 

「あ、それは無理だな」

 

「無理だね」

 

「無理っぽいなぁ……」

 

「無理」

 

 ウィザーモンの楽観的な希望に全員が反応する。やはり、実際の七大魔王を知る者たちとして、そこら辺の期待はもうできないのである。

 そうして、そのキーマンを探して――旅人たちは荒野を行くのだった。

 




ちょっと展開が早すぎたかも……いつものことか。もっとゆっくりできないものか……。まあ、それはともかく。

ウィザーモンの言うデジモン。そのキーマンとは一体誰でしょうか!答えは次回に。
次回もよろしくお願いします。
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