召喚の口上を述べながら目を開ける。呆然とした。目の前には瓦礫と血にまみれた男が座り込んでいた。かろうじて瓦礫に引っ掛かって座位を保ってはいたが、今にも崩れ落ちてしまいそうだった。
ラインはその男に。白かったのであろう制服は真っ赤に染まり、腹につきたった瓦礫は血の手形にまみれていた。
「マスター!!」
叫んで駆け寄る。虚ろな目がゆっくり閉じた。息は。脈をとる。辛うじて生きている。体の回りに広がる血だまりが出血の量を示している。
失血がひどい。腹の他に怪我は。瓦礫をどうにかしようとしたのか、手のひらがずたずただった。
頭が血まみれだったので、帽子を剥ぎ取って頭部の怪我を探るも見当たらない。返り血?誰の?見渡すも他に人の気配はなかった。喀血が塗り広げられたにしてはおかしいが、怪我がないのなら後回しだ。
胸まわり、奇跡的に異常なし。足。折れているが出血はない。内出血の兆しは見えるが、腹よりはましだ。
やはり、腹。
スキルの医術A+を行使しつつ瓦礫を抜き取る。出血はとまった、止まらせた。多少の骨折もなおっている。だが、それだけだ。顔は青白く、未だに予断を許さない。
でも、生は繋いだ。
マスターをそっと抱き上げる。ふらふらと揺れる足を見る。医術は医術にすぎない。魔術ではない。
つきたった瓦礫の位置が悪すぎた。マスターはもはや、一生歩けぬ定めにあるかもしれない。だが、あるいは。自分より腕のいい医者や、魔術師に出会えれば、といったところか。
なんにせよ、この悪辣な環境にマスターを置いてはいけない。安全な場所を探さなければ。
サンソンはマスターを抱いたまま、ゆっくりと歩み始めた。
□
喋り声が聞こえる。たぶん、女の声。
ゆっくりと目を開く。
「………マスター?」
聞きなれない声がした。
ひどく寒い。霞んだ視界は、何度か瞬きをするとはっきりと辺りをうつしだした。心なしか似たようなことをしたような覚えがある。その時よりかははっきりと辺りが見えている気がする。
「所長!マスターが目を覚ましました!!」
「本当に!?」
視界に顔が2つ飛び込んでくる。一人は所長。説明会で見た。一人は、カルデアに元からいた女の子、だったと思う。目が覚めたのね、よかった、現状唯一のマスターまで死んでしまったら云々。かしましい喋り声に思わずうめき声をあげる。
「お二人とも、失礼します」
その二人をそっと退けて、白髪の男が自分を見下ろしてくる。
恭しく手が持ち上げられて、脈をとられる。
「無事に目が覚めて何よりです、マスター」
「マスター……?」
「ええ、はい。僕はシャルル=アンリ・サンソン。あなたのサーヴァントです」
さんそん。サーヴァント。サーヴァントはわかる。カルデアにきてから小難しく説明されたので、大昔の英雄を使い魔として召喚したものとして噛み砕いて認識した覚えがある。自分が召喚することになるとは思わなかった。
そういえば、気絶する前に見た人影とも特徴が一致する。死ぬ前に召喚したのか。
「おまえが、ぼくの、」
「はい、アサシンのサーヴァントです。……失礼ですが、僕のことはご存じですか?」
サンソンは話すことをやめずにてきぱきと現状を確認していく。生憎と名前から思い浮かぶものはなかった。でも、落ち着いた声だった。安心する。迷いのない手つきもまた、安心して体を委ねられるものだった。
ちらりと腹の方に目をやる。当然のように瓦礫はなかった。
「………医者、?」
「…………ええ、はい、医者もしていました」
「処刑執行人よ、それ」
横たわったまま動けない視界にまた所長が入ってくる。
「フランスの処刑人。ルイ十六世とかマリーアントワネットとか処刑してるわね、ギロチンの使用じゃ世界一なんじゃないかしら」
眉を潜めるサンソンの顔が見えた。
「そんなことより、ジョースター、あなた、意識ははっきりしてる?ここがどこだかわかる?」
「冬木の異常って燃えてることだったっけ?」
「結構。私のことは?」
「カルデアの所長」
「ますます結構。早速だけど現状の通達よ。今現在レイシフトを確認できているのはこの場にいる三人のみ。私、マシュ、そしてジョースター。カルデアとはたまに通信が繋がる程度よ。 現状マスターはあなただけ、そして召喚されたサーヴァントがサンソンと、現在デミサーヴァント化しているマシュ。以上」
この上なく簡潔であっさりした説明だったが、漸く回りだした脳みそにはすとんと落ち着く説明だった。
「カルデアとしてはこの特異点の調査を続行する方向でいます。あなたはかなりの重傷だから、仮拠点としたここで寝ていてもらって、サンソンだけ貸してくれればいいわ。結界ははっていくし、大人しくしていること。定期的に戻ってくるから、せめて意識を保つことね」
「………」
「な、なによその目は」
「……所長、怪我人を一人置いていくのはどうかと」
マシュの言葉に、体の様子を見終わったサンソンが頷いた。
「僕としてもマスターと離れたくはありません。貴女は僕のマスターではない。従う理由もありません」
「あなたのサーヴァントどうにかしなさいよジョースター!!ただでさえこんな状況なのに使えるサーヴァントがアサシン一人とデミサーヴァント一人なのよ!?」
「いや、ぼくも一人にされるのとか嫌だけど。ていうか、さっきからぼくの体のことは説明してくれないよね?
……どうなってんの?」
一様に、三者が黙った。
なんとなく、わかっている。ひたすら寒くて、たぶん血液が足りない。でも痛みは無くて、腕とか胸とかの感覚はさっきサンソンが様子を見てくれた時にあるのを確認した。腹はあまりみたくないが、布のようなもので覆われているのも見えた。脳みそはたぶんちゃんと回っているし、ろれつもちゃんとしている。
ただ。
「……脊髄が砕けてる」
目をそらして、所長がいった。
「あなたのサーヴァント、医術のスキルがあったのね?私たちと合流するまでに治療してもらえていなかったら死んでいたでしょう。合流してから私も治療魔術を施したけれど、正直こんなところじゃこれ以上の治療は無理だわ。
……たぶん、カルデアに帰るまで、あなたは腰から下が麻痺したままよ。そもそも出血しない程度にしか傷口が塞げてない。出来ればこの場から動かしたくないわね」
「………カルデアに帰るまで?」
「カルデアに帰ったら医療設備もあるし、魔術ももうちょっとましなものをかけられる。爆破されたからどこまで残ってるかわからないけれど、少なくともこんなとこよりは断然ましだと祈りたいところね。
……どこまで治せるかはわからないけど、通信の報告と、この現状を見る限りじゃカルデアで活動出来るマスターはあなたしかいないもの、ええ、手を尽くします」
こんな状況で、下半身が動かなくて。今後も治るかなんてわからなくて、トップの所長は自分を置いていくという。 戻ってくるかもわからないし、頼りのサンソンまで連れていくと。正直、サンソンが残るといってくれなければ、みっともなく泣きわめいて発狂していたかもしれない。でも、そうはならず、所長の真意を聞けた。
「……最初からそういうべきだったかと」
「怪我人に対して端的過ぎます、所長」
「うるさいわね!!!」
寒い。ひどく寒い。万全ではない。でもその寒さが冷静さを呼ぶ。もしかしたら本当は冷静の欠片もないのかもしれないが。
「あーーー……とりあえず、所長、」
「なによ!!」
「サンソンとマシュの出来ることを把握したい。サーヴァントって特殊なことが出来るんだろ?後、何をもって調査を終了するのか、いつカルデアに戻れるかも聞きたいし、ぼくの体をこんな風にしたやつに心当たりがあるのかとかも」
「えっ、ああ?」
「ぼくに情報をくれ。……後、寒い」
えっ、という顔で三人が固まった。
「はぁ!?ちょっ、ちょっと喋り続けなさいよ!?寝るんじゃないわよ!?マシュ!補給物質に毛布なかったかしら!?」
「ええと、もうマスターに使いきってしまってます……。廃教会の中も使えそうな備品はありませんでしたし……」
「……仕方ありません、礼拝堂の装飾の布を剥ぎ取ってきます。非常時ですから神もお許しになるでしょう。マスター、それまではこれを。本来は僕も霊体化していた方がマスターの負担にならないのでしょうけれど」
「維持できてるなら現界させなさい!!!………人手を減らすわけにはいかないわ」
「……正直よくわかんないけど、ぼくもいてくれた方が嬉しい」
「わかりました」
着ていた黒いコートを僕に被せ、サンソンが視界から消えた。
「……所長」
「……なに」
「戦力っていったよな?……敵対行動に出てくるものがいるのか?」
「………」
黙りこんでしまった所長の横で、マシュが頷いた。
「現在竜骨兵等の骸骨型エネミーを確認しています。それから遠目にですが、黒いもやに覆われたサーヴァントらしき姿も」
「骸骨って……なんだ、ホラー映画かなにかか?一人でいるときに襲われなかったのは運が良かったな」
「そうですね」
頷いたマシュの姿を改めてみる。
パーカーとワンピース姿だったのをカルデアで見かけていたが、それとはうってかわっての鎧姿だ。デミサーヴァント。人間と英霊の融合。魔法少女かなにかだろうか、とぼんやり思った。
ふと、気になって疑問を口にする。
「あんたもぼくをマスターと呼ぶのか?」
「……?ええ、現状唯一のマスターはあなたです。所長にはマスター適正がありませんから。意識がありませんでしたので契約はしていませんが、この状況ですから、本来は契約してしかるべきかと」
「その方がいいでしょうね。デミとはいえマスターはいなくてはならない。ただ、貴方がその負担に耐えられるかってところだけど。もう一度確認するけど、現状どうなの?」
「……よくわからない。寒いんだ、すごく。寒いだけでもあるけど。痛みはない」
「「…………」」
黙って二人が顔を見合わせた。
「……やめておきましょう、カルデアにかえって、容体が落ち着いたら契約にしましょう、ね?」
「私もその方がいいと思います……。宝具を使わない通常戦闘であれば現在支障はありません。元々宝具は使えませんし」
「そう、そうなの………それなら……え?」
ああ、うん。やっぱり、マジやっベーー、ってことだろう。沈黙の意味を察せないほどは朦朧としていない。
ぼんやりと目を開いた状態を保つ。横に寝かせられている以上、見えるのは頭上の木の枝だけだった。視線を動かせば近くに誰がいるかはわかる程度の視界の狭さ。
人に目線を合わせるのが疲れて、大人しく上を見上げる。焦げた枝がまばらに夜空を遮っている。薄暗いが、ほのかに赤く辺りが照らされていて、全く周囲が見えないというわけでもなかった。さっきの言葉からするに、近くに廃教会があるが、拠点にするにはあまりにもボロボロだったので、せめて建物の近くの木陰に身を寄せた、といったところだろうか。
「待ちなさい、待ってよ、マシュ?あなた宝具が使えないの?」
所長の声が今までより悲痛に聞こえて、視線をそちらに戻す。顔が真っ青で、向き合うマシュの顔色もよくはない。
「………すいません、私、私に力を託してくれた英霊の真名すらわからないんです。宝具も全然……」
「ああ……うん、そうね。そう言ってたものね、そう、……どうしましょう」
「それってヤバいの?」
「あなたね……」
はぁー、と深くため息をついた所長が近くによってくる。
「サーヴァントについての説明で一緒に学ばせたはずでしょう?そもそもね、私あなたの上司よ?上司。しょ・ちょ・う!!敬語くらいどうにかしなさいよ」
「えー……今よくわかんないし…喋りづらい………」
「んんっ……それなら………いえ結構しっかり喋ってるわよね、敬語くらいできるわよね!?」
「それより宝具、使えないと何がヤバいの?」
「切り札がない、ということになりますね」
答えは離れたところから聞こえてきた。サンソンが戻ってきたのだ、と、そちらに目線を向ける。腕に一杯の布を抱えているのが見えた。視界の端で所長が頭をかきむしっているが、まぁ、いいか。
「本当は火がおこせればいいのですが、さすがにこの場では……。ある程度の汚れは落としてきました」
埃っぽくて所々焦げていたが、装飾用とあってそれなりに厚い布だった。赤ん坊のようにぐるぐる巻きにされる。コートを返そうとしたが、断られた。
「着ていて下さい、僕の宝具はそれではありませんから、あなたに着せていても問題はありません」
「……ありがとう」
大人しくコートごとぐるぐる巻きにされて元の位置に戻された。
では、解説しましょう、とサンソンが隣に座った。
「さて、宝具、ですが。簡単に言うのであれば、生前の伝承が具現化したものと思ってください。剣であるときもあれば、彼女の様に盾である場合もある。僕のように逸話が具現化したものであることも。早い話が必殺技ですね」
「つまり、こっちのHPゲージがぎりっぎりで、相手のHPゲージが満タンでも、宝具さえ使えれば相手を倒せることもあるってこと?」
「……えーっと、ゲームとかの例えですか?はい、知識のダウンロードが間違っていなければ、その通りの認識であっています。その英霊の特性を最も示すものであり、効果は様々ですが、あるとないとでは大きく違うでしょう。真価を発揮するには真名解放を伴うものが多いので、宝具を使用するとそれなりに魔力を消費するとか、サーヴァントの名前がわかってしまう可能性があるとかの難点もありますが」
「なるほど………」
そこまで言って、サンソンはちらりとどこかに目線をやった。その先に、たぶん、盾とやらがあるのだろう。
「先程も言いましたが、彼女の宝具はおそらくその盾でしょうね。真名解放を伴うものではないかと」
盾の真名解放って、盾の特性を解放するということは、単純に考えるなら、ものすごく強い防御が手に入ることになる。………今、めちゃくちゃ欲しい。
視界をさ迷わせる。どうもギリギリ見えない位置にいるらしい。気づいたサンソンがマシュを招き寄せてくれた。視界にマシュが入る。
「契約、しよう」
「!?でも、マスター、そのお体では、」
「もしかしたら契約していないせいで宝具が使えないのかもしれないし、やってみた方がいい。
瓦礫がたくさんで、炎が燃えてて、そして、夜なのに真っ暗だ。つまり、町が滅びてるんだろ?それで、敵もいる。まだ町を滅ぼしたやつがいるかもしれないところで調査するっていってるんだ、切り札は一つでも多くほしい。君のためにも。
…どうせぼくは横たわってるくらいしかできないんだ、マジやっベー状態なんだろ?それならこれ以上マジやっベー状態になっても変わんないだろ。死ななきゃいいんだ」
「………わかりました」
「所長!?」
「ただし!!」
視界に所長も入ってくる。
「死なないこと。そして意識も飛ばさないこと。意識がなくて死にかけでもサーヴァントを維持できてはいたのだから、追加の魔力負担もなんとかなるでしょう。………なんとかしなさい。言っておくけれど、私個人は反対よ。所長としてはやらせるわ」
「……うん」
「でっでも、マスターは、マスターはこんな状態なんですよ!?だって、さっきから、
「でも、使えないんだろ?万が一の時に切り札がなかったら、あんたも危ない。だって戦ってくれてるのはあんただ」
マシュが言葉につまった、という顔をした。思いっきりくしゃくしゃな顔をしてうつむく。たぶん、ぼくにすがりつこうとして、思い止まるような仕草さえ見せた。 長い沈黙のすえ、でも、と吐き出すようにいう。
「でも、……………ええ、でも。契約したところで使えないかもしれません。契約しなくても使えるかもしれません。一緒です。
………お願いです、マスター。私、怖いです。戦うのも怖いですけれど、そうして私のことを心配してくれるマスターを死なせることの方がもっと怖いです。だって今にも死にそうなのに…!
悲痛な声を絞り出して、マシュは顔を覆った。
「………そんなヤバい?」
「……戦わせなければいけない立場としてはくくりつけてでも連れていって戦わせなきゃいけないわ。
でも、それを躊躇って置いていきたくなるし、二人目の契約も躊躇うくらいには、ね。あなたを死なせるわけにはいかない。だからこそマシュと契約して戦力の底上げをして、とっととこの状況を解決するか、それとも現状維持を徹底して解決するかってことなんだけど。………サンソンの宝具はどうなの?」
それを受けたサンソンが悩んだ顔をした。
「………それなりにコストはかかりますが、悪人、罪を行うものであれば確実に処刑が可能な宝具です。が、今の供給量を見るに、一回が限度でしょう。それ以上は今の小康状態が崩れます」
事実上、二人目を迎えるのは難しいと口にした。言いながら眉をひそめたサンソンの表情が気にかかる。その奥に、私は嫌です、と首をふるマシュが見える。所長も首をふりたそうな顔をしていた。
ヤバいのはわかっているが、そうか、そんなにやばいのか。痛みがないせいで現実感がない。寒くなければヤバイことすらわからないところだった。マシュの言うとおり、感覚はあれど上半身は動かず、下半身は言わずもがな。口だけどうにか回しているような状態だ。
「あー、うん……わかった、契約はカルデアに帰ってからにしよう。しなくても守ってくれるし、宝具も使えるようになってくれるんだろ?たのもしいじゃん」
「あなたねぇ……、」
「…っ、はいっ!」
所長がため息をつく。
対照的にマシュは嬉しそうに頷いた。
「そんでサンソンの宝具は一回か……他なんかないのかな……ねぇ所長、この調査の目的はなに?」
もう一度、所長が盛大にため息をついた。
「……特異点の正常化よ」
「……ええー……」
「たぶんしなきゃ帰れないわよ、通信も不安定でろくに情報交換できていないのに、レイシフトでの帰還なんか出来るわけないじゃない!そもそもレイシフトの機械も直ってないでしょうし!
…修理を待つまでに、異変の元がどこだかわかればいいんだけど、っ!?」
どん、と。唐突な爆破音。大きい。地面が揺れた。咄嗟にサンソンがぼくに覆い被さってくる。マシュが所長を引き寄せた。
「なに、なに、なんなの!?」
「あちらです!!あれは……炎の巨人!?」
顔だけあげて状況を確認したサンソンの横顔が真っ赤に染まっている。炎の照り返しか。
「サンソン、ぼくにも見せて」
「…はい」
固定された腰を支えながら、ゆっくり抱きおこしてそちらに顔を向けてくれる。
「……なんだあれ、巨人が燃えてる?それが……なにかに攻撃してるのか?」
真っ赤に燃えた巨人が突っ立っていた。炎の中に透けるシルエットが藁人形のようにもみえる。そんなシルエットが動いている。豪快に腕をふるうたびに地面が揺れる。何かを執拗に叩き潰すように腕を動かす。一瞬なにかが輝いて、――白い羽の、馬?それすらも巨人の腰の辺りまで飛び上がったところで何かの攻撃を受けて止まり、叩き落とされた。また爆破音。いや、破砕音?
「宝具か?」
「おそらくは」
「白い羽の生えた馬がいたけどそれも落とされたよな?あれも?」
「ええ。宝具でしょう」
「…ってことは、サーヴァントが少なくともあそこに二騎はいる。仲間割れしてるってことは、」
「………どちらか味方になってくれるかもしれない?」
それを聞いて破砕音のたびに悲鳴をあげていた所長が止まった。涙目の眦を釣り上げて、唇を引き結んで、立ち上がる。
「決着がつく前にあそこにいくわ!両方とも敵になるかもしれないけど!!情報が欲しい!!」
言い切った所長の体はみっともないくらいに震えていた。それでも言い切った。応えたマシュも力強く頷いた。
「了解です!!」
「ジョースター、今すぐ結界をはってあなたを隠すから、」
「いや、ぼくも連れてってくれ!」
マシュとの契約は譲ったが、それだけは譲れない。
「敵がいるんだろ!?おいていかれた方が死ぬに決まってる!!最悪そっちが決戦中にぼくが殺されてサーヴァントが消えるぞ!」
「~~~~っ、」
所長が絶句すると同時にサンソンがぼくを抱えあげた。盾を掴んだマシュが駆け寄ってくるのも見える。
「腰部の固定を強化します、マスター、失礼を」
「私が担ぎますか!?」
「いや、僕がかついでいく。君は前に出て警戒を。その絶句してる所長さんは真ん中で、しんがりは僕だ」
「~~~~っ!!!ああもうわかった、わかったわよ!!!勝手に動かないでほしいのに!つれてくわ、私が担ぎます!サーヴァントは手をあけて、警戒を怠らないで!」
二人が頷いて、傷の固定が終わったぼくを所長に背負わせた。なにか言いたそうだったが、首をふるとぶつぶつとなにかを唱え出す。
「所長!いけますか!?」
「重量軽減、筋力強化はした……、攻撃魔法もセットできた………オッケーよ!」
「では進軍を。マシュ、先導をお願いします。何かあったら盾を構えられるように。でも、視界はちゃんと確保して。所長がついてこられる速度で移動すること」
「はい!マシュ・キリエライト、進軍します!!!」
□
嫌な予感はしていた。
向かっている途中で炎の巨人が倒れこむように崩れ落ちて、今までで一番大きな爆発音がした。
隠れながら、瓦礫を迂回しながら急いで、急いで、その先に。
「………なんだぁ、ちぃっとばかりくるのが遅かったな」
杖を持った青いローブの男が血まみれで、背を向けて立っていた。
その前で、焦げに焦げて原形をとどめていない塊が3つ、ゆっくりと消え去ろうとしている。
「……お前は、」
ジョニィの声に応えて、青いローブの男―キャスター―が振り返る。
ひっ、と所長とマシュの悲鳴が聞こえた。
「キャスターだ。まぁ、もう死ぬがな」
それでも、理性のともった目で。血まみれで吐血しながら。
その男はニヤリ、と笑った。
ランサーが死んだ!(一応まだ死んでない)
自分よりひどい状態の怪我人(唯一の希望)を見て私がしっかりしなきゃと本来の原作より落ち着いてる所長。ジョニィが何言っても重傷者のいうことだし。
まだ希望があるので自棄になってないジョニィ(殺意がないとはいってない)。腹に穴があいてるので叫び芸は封印。
目覚めた時に所長がいて、命令を受け、所長を守りながら戦ってきたので表面上は戦えていたマシュ。マスターが重傷なので庇護欲も追加。尚下半身事故は起きず、英霊はただ世界のためにと彼女を送り出した。
藤丸立香の存在しないどこかの世界。
導きの賢者もいなくなる。