I begin to walk.   作:なしち

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洞窟へ

 

「時間がねぇ。俺はお前さんたちの敵じゃない。だから、お前さんたちが欲しがってそうな情報をやる」

「……わかったわ」

 

どう見ても助からない。霊核に相当する部位がごっそりなくなっていた。それでなくとも、人間ならば死んでいる。この英霊が立って喋っていることがそも異常だった。生き残ることに長けた英霊か。

どっかりと座り込んだ側にオルガマリーが近より、それにあわせてジョニィも近寄ることになった。マシュがそばで対応できるように控え、サンソンは離れたところで警戒をする。

本来はすぐにでもこの場を離れるべきではあるが、それではキャスターが消えてしまう。黙って耳を傾ける。キャスターはとある方向を指差した。

 

「桐生寺の裏に洞窟がある。そこに反転したアーサー王がいて、大聖杯を守ってる。元々聖杯戦争をしてたんだが、アーサー王から異変が始まったんでね、アーサー王を倒せ。

そいつの部下?って言えばいいのかね、反転した英霊のうち、ランサー、ライダー、アサシンは今さっきまとめて倒した。キャスターの俺ももうすぐ消える。バーサーカーもやべぇが、あれは一つ所にとどまって動かねぇんで近づかなきゃいい。残るはセイバーのアーサー王とアーチャーだ。アーチャーは洞窟の入り口で侵入者を阻んでる。そんで、色んな宝具を矢にして撃ってくるし、近接戦闘もそこそこできる。………他、なんかあるか」

「…あなたのマスターは?」

「……知らねぇ、いつの間にか消えてた」

 

ふーー、と息を吐き出したキャスターは、足がほぼ消え去っていた。

 

「まさか()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()とはね……。このままだとアーサー王が勝者になんのかね」

「……特異点の原因が聖杯戦争?の優勝者になるって、それってまずいんじゃないのか」

「まずいな。()()()()()()()()()でももう俺が死ぬことは確定している。………悪いな」

 

さらさらと消えていく。

会話がもたない。

ただ、ラスボスが聖杯戦争の優勝者になるということ以上に、その消滅がなにかとてつもなくヤバイということを直感が告げてくる。たぶん、それはその場の全員が感じている。

 

「所長?なんとかならないか。アサシンの宝具が一回きりっていうのもなんかひっかかったんだけど、なんか、こう、なんかサーヴァントの説明のときにあったような、」

「なんかってなによ!えーっと、えーっと!?なんか!?」

「……ひょっとして、令呪ですか?」

 

マシュがいった。

ジョニィは思う。入れられた変な入れ墨が、そんな名前だった。それは、マスターからのサーヴァントに対する絶対命令権。不可能すら可能にする。そういう、説明だった。

 

「「それだ!!」」

「おいおい、もう消えんのは確定だって言ってんだろ!?」

 

キャスターですら慌てた様子だった。

 

()()()()()()()()()()()()()()あんた、元々死にづらいから今残ってんじゃないのか!?それをもっと強化して、消滅までに特異点を解決する、それしかない!」

「でもそれってジョースターと契約させるってことよね?それは駄目ってさっき散々話したじゃない!!」

「皆わかってるだろ!?このままキャスターが消えることの方がもっとやばいって!!!──告げる!」

「マスター!」

 

マシュの悲鳴がする。でも猶予がない。やるしかない。契約をすると決めた途端、勝手に溢れてくる詠唱をそのままに吐き出す。ぼくを背負った所長は()()()()()()

 

「汝の身は我の下に、我が命運は汝の杖に!聖杯のよるべに従い、この意、この理に従うのなら、我に従え!ならばこの命運、汝が杖に預ける!」

「あーーっ、だぁ、くっそ!!!キャスターの名において、汝の誓いを受けよう!てめぇを我がマスターと認める!!!」

 

何かが繋がる。今までよりも、多く何かが持っていかれる。寒い。元から寒くて、布でましになって、なのに、今。元よりもっと寒くなった。

 

「~~~~っ!」

 

猶予はない。キャスターが消える。腹に力を込めるとひきつれたような痛みが走る。ああ、痛い。大丈夫、まだ生きてる。

 

「令、呪をもってっ……命ずる……!消えるな、キャスター…!」

 

消滅が止まる。でも駄目だ、まだ足りない。

 

「重ねて、命ずる…!消えるな、ぼくが敵をぶち殺すまで、持ちこたえろ、キャスター…っ!」

 

令呪二画の消費。薄く透けた状態でキャスターの輪郭が戻る。

 

「無茶しやがる…!だが、助かった、まだもう少しはもつ!」

「………っ、」

 

戦闘続行(往生際の悪さ)Aの力を、A++(その三倍)へ。スキルランクの一時的な上昇で、無理矢理に現界を維持する。

寒い。寒い。でも、まだ。意識がある。まだやれる。

 

「……霊体化させてもらう。ついてはいく。だが、戦闘能力に期待すんな。会話もなしだ。維持に全力を注ぐ。マジで消えそうになったら伝える。

……気張れよ、マスター」

 

ヒュー、ヒュー、と喘鳴が聞こえる。やけに近いな、と思って、それが自分の口から漏れている音だと遅れて気づいた。近寄ってきたキャスターの手がふわりと頭を撫でたような感触があって、そのままスッと消えた。ほんの少しだけ楽になる。

 

「何て馬鹿なことを!!!!」

 

サンソンの怒鳴り声がする。でも、なんでだろう。少し遠い。いや、でも、聞こえているから。だから、大丈夫。

 

「大丈、夫………それより、移動を。残りは、アーチャー………」

「ええそうですね!!そうですとも!!

……っ、所長さん、マスターをお借りします。マシュは所長さんを抱えて!サーヴァントの速度で移動します!!目標は寺!!」

 

所長の背からサンソンの腕にうつる。目だけは閉じてなるものか。耳も閉ざしてなるものか。痛みを頼りに現実にすがり付く。

 

「移動します!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『………はい、レイシフトでの帰還は出来るだけ早めに間に合わせます。恐らく後三時間……いえ、二時間でなんとかしましょう』

「そうしてちょうだい。………もう一度聞くけど、彼以外のマスターは、」

『……コフィンに乗っていたマスターは全員危篤状態にありましたから、冷凍睡眠にかけたところまでは所長の指示ですからご存知ですよね。続報として、爆破の衝撃でコフィンから弾き飛ばされたマスターが少数いましたが、全て死亡を確認しています。状況から見て即死でしょう。たぶん、ジョニィくんは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだと思います。外部と連絡が取れてませんから、救援が望めるまで、冷凍保存状態のマスターの復帰は無理です』

「……そう、それならやはり、コフィンに乗っていなかった私とマシュとジョースターがレイシフトした、そういうことなのね。そして、今回の特異点の解決は、キャスターの消滅までという制限時間がある以上、追加の人員は間に合わない」

『……そういうことになります。キャスターの消滅を留めたのは、聖杯戦争の優勝者には何でも願いを叶えるだけの力が与えられる以上、英断だったとは思いますが、ジョニィくんの制限時間も短い。なんにせよ、時間との勝負ですね』

「わかってる、わかってるわ……レフ、………。……そうよね、もういないんだから助けてくれないわよね、私が所長で、マスターはこうなんだから、私がなんとかしなきゃいけないのよね、ああ………」

『……所長 、』

「………ええ、わかってる。通信切断の時間も迫ってるのね?今から二時間後、レイシフト後に会いましょう」

『はい。…………どうかご武運を』

 

夢うつつのような状態でぼんやりと通信を聞いていた。どうも、また意識がとんでいたらしい。やはり寒いのは変わっていなかった。

「………目が覚めましたか」

「………サン、ソン、」

 

意識だけは、と思ってたんだけどなぁ、と呻く。猛烈に寒かった。視界の半分を張り出した屋根が覆っている。たぶん、寺の軒下辺りを借りたのだろう。

 

視線を巡らせて、ひどい顔のサンソンと目があった。

 

「サーヴァントとして、一言だけ。あなたのしたことは間違っていなかった。時間がなかったこともわかっています。でも、………二度としないで下さい。肝が冷えます」

「………………謝んない、よ、」

「僕はあなたの刃です。あなたが望む通りに敵の首を落としましょう。でもね、マスター。あなたがいなければそれすらもできない。………どうか忘れないで 」

「…………うん」

 

誇張抜きに死にかけたのだと思う。腹を見下ろせば傷口を縛る布が変わっていた。冬木にきてからもう二度も死にかけている。あー、あー、と声を出してみて、どうにか詰まらずに喋れるように、声帯を動かす。

 

「………起きたのね」

「うん」

 

所長も覗き込んできた。マシュも近寄ってくる。

 

「言うべきことはたくさんあるけれど、飲み込みます。マシュ、あなたもよ。ええ、時間がありません。通信が切れた時点で目覚めたのは運がよかったわね。

後二時間で、私たちはレイシフトでの帰還を強行します。それまでにこの特異点を解決する。いいですね?」

「うん」

 

納得のいかない、という顔を三人ともしていて、でも切り替える、と言葉を飲み込んだ。帰還に関しても、キャスターの消滅に関しても、ジョニィに関しても、時間が足りない。

 

では報告を、とサンソンが手をあげた。

 

「先程、気配遮断を行った上で洞窟の探索をして来ました。確かに入り口にアーチャーが陣取っています。朗報として、隙さえあれば即座に僕の宝具で首を落とせそうだということを報告しておきます」

「情報通りね。倒せると、そう判断したのはどうして?」

「僕の宝具は生前処刑された英霊に対して有利に働きます。……恐らくあの英霊、生前処刑されてますね」

「なるほど、そういう……」

「待ってください、それでは、あの、アーサー王を倒すのは難しいのでは?」

 

所長の命にしたがって、ジョニィに対して言いたいことを飲み込んだのであろうマシュが、それには口を挟んでくる。

 

「アーサー王は処刑されていません。それどころか復活すら予言された英霊です。サンソンさん、あなたが処刑人であることから、処刑と関連がある宝具だというのはなんとなく察しがつきますが……」

「ええ、お見事です。僕の宝具は処刑台だ。いずれ死ぬという宿命に耐えられるかどうかで判定が決まる。それ故に、処刑された英霊には特に効果がある。ですが、それとは別に僕にはスキルがある」

 

処刑人。悪人、及び悪を行うものへの特攻。それをA++という高いランクで所持している。

 

「戦争を行い、街を滅ぼしたことは悪であり罪です。悪への特攻をもって宝具の威力をあげます。明確な罪があるのに、断罪しないのは処刑人として()()()()()。ええ、綺麗に首を落としてみせましょう」

「じゃあ、つまり、二回の宝具展開が必要ってことよね?」

 

所長の話に言葉が止まる。宝具一回というのは、キャスターと契約する以前の話だ。 それでも、一回きり。

 

「………令呪が一つ、残ってる。それでアーチャーを倒す。もう一発は、うん、頑張る……」

「そうするしかないわよね……。それで特異点が解決するならギリギリでしょう」

 

また、マシュが何か言いたそうな顔をしてやめた。

 

「そうしたら、えーっと……行こうか。連れてってくれ」

「戦う以上、サーヴァントの性能にマスターとの距離が直結するもの。連れてくしかないのよね……マシュ、気持ちはものすごくわかるけど、帰ってからにしましょう」

「………わかりました」

 

手当てをし直したから、布の残りが少なくなっていた。固定はそのまま、本当は所長にくくりつけたいところだったが、布が足りないので諦めて背負われる。力が入らないのでぶらぶらと手足が揺れる。指だけ、何度か辛うじて折り曲げることは出来た。

 

 

サンソンが霊体化して、再び先行する。その後を追って、しばらく山道を走る。やがて、サンソンは完全に気配を消して、残りの三人が、マシュを先頭に洞窟の入り口まで到達した。

 

「………ほう、殺す前から死にかけとはな。人類最後のマスターは穏やかに死ぬのでなく、女に背負われて無様にとどめを刺されるのがお望みか?」

 

アーチャーが立っていた。全身が黒く染まっている。とっくの昔にぼくらの接近には気づいていただろうに、それでも律儀に入り口で立っていたくせに、口を開けば皮肉だった。

 

「うるさい、あんたをぶち殺してぼくは(未来)にいく」

「口だけはよくまわる……いや、口しか回せないのかね」

「マスターは、私が守ります…!」

 

アーチャーが無造作に構え、マシュが射線を遮って立つ。

 

「スキル、展開──

──“奮□□つ決□の盾”!」

 

本来扱えるはずではあるが、未熟故に未だ扱えないそのスキルを、マシュは気力で展開した。

その瞬間、健気にマスターを守って、震える足で敵を見据える姿に、誰もが、何故だか目が離せなくなる。

 

「だから、なんだと──!」

 

吸い寄せられた視線の通りに、アーチャーが矢を放つ。その攻撃後の一瞬の硬直の間に勝負はついていた。

 

「───刑を執行する。

“死は明日への希望なり”(ラモール・エスポワール)

 

真名解放とともに処刑台が顕れる。黒い手がアーチャーを引きずり込んで処刑台に固定し、抵抗の間もなく刑が執行された。ポカン、と口を開いたまま、その首が落ちて消える。少し間を置いて、完全に消滅したことを確認した。

 

「……とりあえず、令呪で先行して命令しといたのはよかったな」

 

ぽつりと呟くと、所長が大きく息を吐き出した。

 

「戦闘に入ったら、言葉も魔術も挟む暇がなかったわ……。早い、わね。それに、マシュ、あなたのそれは……」

「……本来は使えて然るべきのスキル、だと思います……。今の私には、攻撃一回分、一瞬きりの使用しかできませんでした……」

「いえ、充分でした。攻撃も充分に防げていましたし、それが出来るのなら、きっと宝具も偽装展開が可能でしょう」

「うん。サンソンもだけど、マシュも……、ありがとう。なんとかなったのは、君が頑張ってくれたからだ」

「……っ、はい、はい……!マスターも、頑張ってます。どうして、と思うときもありますけど、頑張ってるんです、私も頑張ります…!」

「……うん」

 

ふーー、と息を吐く。いよいよ寒くて、指先の感覚がなかった。

 

「今回のでなんとかなったってことは、つまり、相手に宝具もスキルも使わせてはいけないってことだ。使えたこっちが勝てたんだから……、今みたく、速攻できめる」

「はい。……マスター、大丈夫ですか」

「……寒いよ」

 

サンソンの心配に、それしか言えない。元より死に体、手足も体もろくに動かせない。華奢な女性に背負ってもらって動いている有り様だ。だから、口出しだけは、せめてやめない。

 

「でも、大丈夫、大丈夫だから……、早く終わらせて、皆で()()()()()

「……ええ、そうね。皆でカルデアに戻りましょう」

「………ええと、その場合、僕もカルデアにお邪魔することになるんですか?」

「あー……、そうなるでしょうね」

「ということは、サーヴァントの先輩が増えるのですね!お話するのが楽しみです!」

 

ジョニィが、もうどこに帰るのかも明確に言えないほどに朦朧していることに気づきながら。それでも、四人は洞窟の奥へと歩き出した。

 

 

 

 





気絶芸連発しすぎでは?でもマジで死にかけてるから仕方無いね。
カルデア式の令呪に絶対命令権とかないそうですけども……なかったらこの先積むんでステイナイト聖杯戦争形式です。
弁慶の宝具は五百羅漢補陀落渡海。ランクEXの対軍宝具。お坊さんの行列が対象を押し流し、抵抗判定に失敗するたびに強制的に移動させられ、最終的には強制的に成仏させられるというもの。クーフーリンが抵抗してる間に上空から高速ベルレフォーンが突貫、すれ違い様にザバーニーヤが心臓をぶち抜いてった。なんとか初手抵抗判定成功しても脱出してからペルレフォーン対応できないと無理なコンボ。
尚、アニキは心臓ぶち抜かれた状態で三人とも倒しきっている。
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