輿水幸子の同一性   作:maron5650

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10.怪奇現象

「ママ、茶葉ってどこに仕舞っておきましたっけ?」

 

何度も思考を繰り返す。

何度も視認を繰り返す。

何度も何度も繰り返す。

 

「パパ、この人が芳乃さんです! ボクに負けず劣らずカワイイでしょう!」

 

誰一人として存在しない。

何一つとして存在しない。

その場所には誰もいない。

 

「あー、いいですよ、お茶くらいボクが淹れますから!」

 

目の前の齟齬に耐えられなかった。

その矛盾が不快で仕方がなかった。

目に映る光景全てが芳乃を不安定にさせた。

 

「フフン、そうでしょう! もっと褒めても良いんですよ!」

 

当然のように幸子は両親と談笑する。

芳乃が全く認識できない存在と。

たった1人、幸子は一方的に話し続ける。

まるで幸せな家庭に生まれた少女のような笑顔で。

 

「当然です! ボクはカワイイので!」

 

次第に芳乃は分からなくなっていく。

それを認識している幸子が異常なのか。

それを認識できていない自分が異常なのか。

 

「フフーン、悪くない撫で心地です!」

 

段々と芳乃は不安になっていく。

どうして幸子はそんな表情ができるのだ。

まさか、自分がおかしいのか。

それを認識できない自分こそが狂っているのか。

 

「……幸子、殿、」

 

自分の認識と目の前の景色に生じた差異。

それをそのまま放置することなど、できるはずがなかった。

世界が不自然な人工の原色に染まっていた。

視界に映る全てが芳乃を追い立てた。

ギラつく景色の中で通常通りに振舞う彼女の姿が異常だった。

これを異常と感じる自分こそが異常だと、世界の全てが糾弾していた。

 

「はい、どうしました?」

 

不快だ。異常だ。不安だ。異質だ。

この感情が恐怖なのだと、ようやく思い出した。

故に芳乃は震える声を吐く。

言ってはならない言葉だと、分かっていながら口にする。

 

 

 

 

 

「そこに、誰が、居るのですか?」

 

 

 

 

 

見て見ぬフリをできなくさせる。

 

 

 

 

 

「…………何を言ってるんですか?」

 

幸子は笑ってそう返す。

取り繕ってなどいない、心からの平静。

しかし、芳乃は見てしまった。

それを聴いた瞬間の、恐らくは無意識下の表情を。

目の前の人物を敵と見なした、冷酷な目を。

 

「ですから……! そなたは、誰と……!」

 

駄目だ。これ以上は。本当に取り返しがつかなくなる。

理性が必死に自分を止めようとしていた。

その声を理解しながら、感情が止められない。

この恐怖が止められない。

 

「パパとママに決まってるじゃないですか。」

 

おかしなことを言う人だ。

幸子の表情はそう言っている。

何故そこまで平然としていられる。

当然のように現実と反する発言ができる。

 

「……そこには! 誰も居ないではないですか!」

 

怖い。

目の前の少女が怖い。

輿水幸子が、怖い。

故に芳乃は声を荒らげる。

脅威に吠える小型犬のように。

 

「……好い加減、カワイイボクでも怒りますよ?」

 

幸子の目線が鋭く刺さる。

自らの敬愛する両親を貶められた際にするであろう、正常な反応。

そんな動作を取ること自体が、どうしようもなく異常だった。

 

「…………っ!」

 

歯を強く噛み締める。

口から漏れ出そうとした言葉を封じ込める。

駄目だ。これ以上、何を言っても。

幸子は芳乃の話を聞き入れないだろう。

芳乃が幸子の話を聞き入れないのと同じように。

 

「……あの、どうかしたんですか?

今日の芳乃さん、ちょっと、変ですよ?」

 

考えろ。これ以上、事態が悪化しないように。

もう問題は顕在化した。無かったことにはできなくなった。

これを解決するために取れる、残された最善手は何だ。

 

「…………そう、かも、しれませぬー。」

 

撤退。

今この瞬間に介入する手段を模索できるほど、芳乃は冷静ではなかった。

この場を離れ、落ち着いて考える必要がある。

このまま「居る・居ない」の押し問答を繰り返しても、いたずらに幸子との距離が離れるだけだ。

 

「……幸子殿ー、申し訳ありませぬが、本日は御暇させていただきたくー。

此度の非礼につきましては、後日改めてお詫びに伺いましてー。」

 

というのが、理由の1つ。

もう1つは、単にこれ以上、耐えられそうにない。

この状態の輿水幸子を、直視し続けることに。

 

「……分かりました。

力になれることがあったら、言ってくださいね。」

 

幸子は芳乃を心配そうに見つめる。

つい先程両親を侮辱した存在の身を案じている。

突然おかしなことを言い出した友人に対して取られた、親切心に溢れた行動。

今はその優しさすらも、芳乃の背を冷たく撫で上げた。

 

「……ありがとうございますー。」

 

芳乃はゆっくりと玄関へ向かって歩く。

本当は、走り去ってしまいたかった。

少しでもここに居る時間を減らしたかった。

しかし、これ以上自分が異常であるような行動を取ったら。

これ以上、奇怪な行動を重ねてしまったら。

本当に自分が異常になってしまうように思えて。

芳乃は必死に、自身の平常を取り繕った。

 

 

 

 

 

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[Mission] 輿水幸子を救ってください

 

彼女は両親の幻覚を見ていた。

明らかに異常な状態だ。

彼女を助けなければならない。

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■。

 

【error】データの一部が秘匿されています

 

 

〔Mission List〕

 

・幽霊の未練を晴らしてください

・教室の幽霊の真意を探ってください

・白坂小梅を救ってください

・輿水幸子を救ってください

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