Befehl C   作:如月鏡月

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幕間です


Interlude

――冬木市郊外

深夜の森の中に一軒の空き家になった洋館が静かに建っている。無人のはずのその洋館の一室の窓から突然強烈な閃光が漏れる。この冬木にて行われる聖杯戦争において最も重要といっても過言ではない儀式、英霊召喚によってもたらされた光だった。その洋館の中で、女は先ほどまでいなかった男と対峙する

「サーヴァントキャスター、召喚に応じ参上した。

へえ、あんたが俺のマスターかい?嬢ちゃん」

魔術師として召喚されたアルスターの光の御子は、自身の主人に向けて早々に軽口を叩く

「はい。ですが私は嬢ちゃんと呼ばれるような年齢ではありません。呼び方はマスターで結構です。」

「はいはいわかったよ、マスター。だが、名前ぐらいは聞いても構わねえだろう?」

「そうですね。私はバゼット・フラガ・マクレミッツ、魔術協会所属の魔術師です」

「どっかで聞いたことがあるような名前だな。お前さんどっかで会ったか?」

「さあ?少なくとも私はあなたとは初対面です」

「そうかい。ま、それならそれでいいんだがな」

「そうですか。ではキャスター早速出撃しますよ」

「お、いいねマスター。血の気が多いやつは嫌いじゃないぜ」

「いいから行きますよ」

「あいよ」

 

約一時間後

 

深夜、冬木市新都の高層ビル群にあるビルの一つ、その屋上に二つの人影があった

「ここなら街が一望できるはずです」

「へえ、マスターはてっきりこの国の出身じゃないと思っていたんだが、意外にそうでもないのか?土地勘もあるようだしな」

「いいえ、この冬木市に来るのは初めてです。ただ、この街の探索はすでに終わっています

地形くらいならば把握済みと言うだけのこと」

「ほお、やるなマスター」

キャスターには反応をせず、女は歩き始める

「次に行きますよ、キャスター」

「了解」

ビルの屋上から降りると、女は自身の従者を伴って新都の端の方に位置する路地裏に入る

「なあ、こんなところに何かあるのかマスター?」

実際に路地裏には何もない。そこを溜まり場としているであろう不良の捨てていったゴミが落ちているだけであった

「ええ、ここで大丈夫です」

「何か考えでもあるのか?」

「ええ、まあ」

「へえ、そりゃどんな?」

「これです」

女は自身の左手をかざし、そこにある刻印を介して自身の従者に命じる

「令呪をもって命じる」

「おっと、そう来たか」

少し警戒しつつ、従者は続く言葉によって発生する強力な三回限りの命令を待つ

「自害しなさい、キャスター」

「ッ貴様!!」

自身の目の前に居るものを主人から敵へと認識を変えた元従者の魔術師は自身の出せる最高速でルーン魔術を行使した

ansuz(アンサズ)!!」

確実に目前の敵を仕留めうる筈であった攻撃、しかしそれを彼は自身の身で受ける事になった。

「ッグ、てめえなんのつもりだ!」

「あなたは我々の計画のための供物です、キャスター」

「なんだと!?そりゃはどういう…」

その後に言葉を続けることはできなかった。元従者はトドメの一撃として自身の胸に杖を突き立てさせられた

(やれやれ、元々マスターの引きは悪い方だが、今回は輪をかけて酷いなこりゃ)

聖杯戦争開始から一時間二十六分、おそらく聖杯戦争史上最速のサーヴァントの退場であった

 

 

深夜の新都、その不夜の町のビル群、その間に存在する路地裏に二つの人影があった。

「命令は一つ、シュリフトシュテラを撃破しこれを回収しろ。」

目の下に隈のある男はもう片方の人影に話しかける。

「お前の戦闘能力は高いと見ている。加えてお前にした加工はそれを最大限活かせるはずだ。我らは失敗するわけにはいかない。分かっているな?」

「Yes, my master.」

命じられた女は一切の躊躇なく即答する。

「奴は今教会に向かっている。戦闘についてはお前に任せるが、あれだけは破壊するな。奴の能力は未知数だ。おそらく奴は自身のプライド、サーヴァントの消費魔力量の面からサーヴァントではなく最初からマスター本人が相手をしてくるはずだ。手こずる様ならば、例ものもを使っても構わない。迅速に対処しろ。」

命令を受けた女は情報通りに教会へと向かう。夜の街を駆ける女の姿はまさに獣の様であった。否、己の意思などとうにない彼女はむしろ傀儡と呼ぶにふさわしい存在であった。

「あれらさえ手に入れば、あとはどうとでもなる。急ぐぞ」

男は背後に現れた従者と思しき二人を引き連れ、夜の闇に溶けていった。

 

—————————————————————――

 

「こんな時間に拝礼ですか?」

教会の神父は来訪者に問う。

「いえ、私は聖杯戦争の参加者、キャスターのマスターです。しかし、先ほどサーヴァントを失ってしまいましたので保護をしていただきたいのです」

紫髪の女は神父に答える。

「おや、そちらの方でしたか。これは失礼しました。では、規定に則り我々はあなたの身の安全を保障します。さあ、中へどうぞ」

その呼びかけに応じ、女は教会の中に入って行く。

「なにせ古い教会故、何もありませんがどうぞお掛けください。私は聖堂教会に脱落者が出たことを連絡させていただきます。少々お待ちください」

薄暗いながらも蝋燭の灯った礼拝堂にある椅子の一つを指し、神父は着席を勧める。

「その必要はありません」

窓の締め切られた室内に一陣の風が吹いた

 

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