SynCrossnize World   作:獅子の一等星

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毎日更新とかできる人達を本当に尊敬します。
短くて申し訳ないです。


第五話 もう一つの守神町

「なるほど、一之瀬君と三山君達の事情は理解したよ」

「まさか……ほぼ同時期に私以外にもこちら側へ来ているデジモンがいたとは、驚きです」

 

アンティークの高級そうな椅子に座り、紅茶を一口飲んだ後に納得した様子で頷くのは眼鏡をかけた少年、昭二郎だ。

ピヨモンも隣で椅子に腰かけ、目の前にいる彼らの事情を聞くと改めて驚きの表情を浮かべている。

太陽はすっかり天に昇り、守神町を優しい日差しが照らして、時刻はもうすぐ正午となる時間帯である。

 

「それはこっちの台詞だぜ、まさかオレの隣のクラスのお坊ちゃんもデジモン拾ってたなんてな」

「まあ、普通はそう何度も経験するような出来事じゃないだろうしね……」

「本当に、びっくり……」

 

昭二郎の向かい側の席に座るのは武正と広太、それに桃香だ。同じく高そうなアンティークの椅子に座っている。

彼らは、公園での昭二郎の提案を受けて彼の家で、たった今までお互いの事情をお互いに説明し合っていたのだ。

 

「でも、仲間が増えるのは心強いよ! 」

「このままずっと味方なら、な……」

 

武正の背中に負ぶさっているハックモンと、広太の隣の椅子に座りながらも不穏なことを言うベタモン。

先程の戦闘で消耗が大きかった2体も、無事に体力が回復してきたようである。

 

「それに関しては大丈夫だよ、ベタモン。僕達はそのつもりはないし」

「一応休ませてもらってんだから素直に礼言っとけよ、お前……」

 

ベタモンの天邪鬼さを窘める広太だが、ベタモンは我関せずの姿勢で視線を反らす。

 

「でも、さっきの戦いはフィールドのおかげかな? 周りに全然気がつかれなくて助かったよ」

「ブランコが、壊れ、たり……地面が、削れたりしてたけど……被害も、少なかった」

 

 Dチューナーが展開したされるフィールドの機能に感心する武正と桃香を見た昭二郎は、苦笑いを浮かべると……

 

「いや、あれはフィールドを展開したんじゃなくて……言うなれば、もう一つの守神町に僕らは転送されてたのさ」

「え……!? 」

「は……!? 」

 

昭二郎の解説に思わず唖然とするそれぞれのDチューナーの持ち主達。

まるで博物館に飾られた埴輪の如く……しばらくの間2人は固まるのであった。

 

 

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「一之瀬君が持ってるクッキーが守神町、三山君が持っているクッキーがデジタルワールド、そして僕が持つクッキーはもう一つの守神町だとして……」

 

詳しい説明を行うため、3人の手に持たれたクッキーをそれぞれの世界に例えるのは昭二郎。お茶請けを丁度いい教材として選んだようだ。

クッキーを持つ右手と反対側の左手は、まるで教師が生徒へと授業を行うかの如く人差し指で天を指している。

 

「僕達のDチューナーは守神町からもう一つの守神町へと入ることが出来る力があって、言わば現実世界から隔離された空間を生み出せる。 それを物凄く簡単に説明すると、2人の言っていたフィールドを展開できるって表現になるのさ」

「なるほど……さっぱりわからん。でもどっかで覚えがあるような? 」

「頭に使用法とかは書き込まれたけれど……俺達みたいな子供にも分かりやすく説明しようとした結果、ああいう風になったってこと? 」

「おそらくそうだろうね、そして君達2人はその要約の内容の方で使い方を理解していたんだよ」

 

両手を天へと挙げてお手上げポーズの広太と、考え込むポーズの武正だが、目の前にいる教師役の同級生からの詳しい解説には聞き覚えがあった。

覚えはあっても、理解しているかは別であるということなのだろう。少し気恥かしそうに彼らは頬をポリポリと掻いたり、苦笑いを浮かべている。

 

「そういう……ことなら、もう一つの守神町で……起こったこと、は。こっちでも、少し影響が出る……ってことなのかも……」

「桃香、どういうことだよ? 」

「さっきの、戦いでは……ブランコ、潰れちゃってた……よね? 」

「ああ、アクィラモンの進化の時に吹き飛ばされたエンジェモンがぶつかって、グシャグシャになってたけど……」

「最後に見た時はそういや、少し歪んでただけだったか? 」

 

桃香の言葉に先程の出来事を思い出す武正と広太は、ここでとある違和感に気が付く。

そう、完膚なきまでに戦いで壊れたはずのブランコは……最後に見た時は少し歪んでいる程度だった。

以上の事実から推測できるのは、もう一つの守神町で起こったことは……そっくりそのまま現実の守神町には適用はされないということだ。

 

「そのまま影響出るような事は無いから、次にああいうことがあっても思いっきり暴れられるってことだな」

「いいえ、むしろ影響が出るからこそ気をつけなければならないのです」

 

周囲への気兼ねをせずに次に戦う機会があれば暴れられるのかと楽観的なベタモンの発言へ、ピヨモンの冷静な声が割り込む。

 

「あっ、そっか! 影響の出方とかがまだ全然わかってないから……」

「ええ……こちらの世界へ影響は確実に出るということと、本当にそれが小さな影響として出るのかわからないので、あの世界では慎重に行動すべきかと」

 

その言葉を聞いて思い至ったハックモンの言葉を引き継ぐように、ピヨモンは殊更にあの場所で行動する際には気をつけるべきだと進言する。

楽天家のベタモンと、慎重派のピヨモン……その両方を兼ね備えたハックモン。バランス良く意見を活発に言い合える、仲がいい関係になれそうだ。

 

「こりゃまた生真面目なことで……」

「楽天的に考え過ぎるよりは、いいのではないかと」

「……んだと? 」

「まあまあ、ピヨモンもベタモンも仲良く仲良く! 」

 

ベタモンの軽口をサラリとかわすピヨモン、カチンと来たのか声を荒げるベタモン、そしてそんな2人を宥めようとするハックモン。

……仲がいい関係になれそうだ。きっと。おそらく。

 

「さて、それで本題はここからなんだけど……」

「そういやぁ、さっきから何か言いたそうだったな? 」

「うん! あのもう一つの守神町を探索する手伝いをしてくれないかい? 」

「私からも、是非……お願いします」

 

Dチューナーの能力の解説に道が反れていたのを、昭二郎がそれを修正しようと、両手をパンと叩いて本題を切り出す。

それは、先程彼らが行っていたもう一つの守神町の共同探索をしたいというものだった。

 

「いいよ! 」

「ちょ、ハックモン!? 勝手に答えるなよ! 」

 

ハックモンの元気がいい即答に、武正は大慌てで両腕をぶんぶんと振って制止の声を上げる。

しかし、その制止を受けた小さな白竜は首を傾げて疑問符を浮かべている。

その表情から伺えるのは、何故いけないのか? その一言だろう。

 

「え?何でいけないの? 」

「いや、危険とかいろいろ……まあいいや」

「……武ちゃん」

 

ハックモンの純粋な疑問に、意見を言おうとするも諦めて首を垂れ、そのまま流されてしまう武正。

それを横目で見つつ静かにため息をつくのは、長い間武正と同じ時を長い間過ごしてきた幼馴染だ。

また無意識の内に何も言えずに、出された意見に流されてしまう方を選んだ彼を心配しているようで、自身の胸元にペンダントのようにかけているお守りをぎゅっと握る。

 

「記憶の手掛かりになりかもしれないし、面白そうだし……俺はいいぜ! 」

「オレはどっちでもいいが、ベタモンがこの調子だ。気が向いたら付き合ってやるよ」

 

ベタモンは面白そうだと笑みを浮かべて承諾し、広太はやれやれと首を振りながら答えを返す。

2人と2匹の答えはこれで決まり、昭二郎とピヨモンはその力を借りられることとなった。

「ありがとう、2人とも。それにハックモンとベタモンも」

「私からもお礼をさせてください。皆様……どうもありがとうございました」

 

ホッとしたように紅茶を一口飲んだ昭二郎は、顔を綻ばせて礼を言う。

ピヨモンもそれに追従する形で丁寧にお辞儀をして礼を告げた。

その態度は、何かを探すにはとにかく人出がいることを、十分理解しているからこそだろう。

 

「別にいいよ、それよりも…… そうなるなら今後の予定はどうするんだよ? 」

「それはオレも気になってた。こっちを誘うからには考えてるんだろ? 」

「今すぐとか? 」

「そういうわけにはいかねーだろ、せっかち過ぎんぞハックモン」

 

わいわいと今後の予定を騒ぎ出す2人と2体。部屋の中が騒がしくなってきた所に……

 

「み、みんなっ……静か、に! 」

「ありがとう、守神さん。 じゃあこれからの予定を決めようか」

 

その騒ぎを落ち着かせようとする桃香に礼をしつつも、高級そうなノートを机の上に取り出して微笑むと……今後の計画を話し出した。

 

 

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「んで、月曜の学校が終わったらでいいんだな? 」

「うん……場所は、守神沼で……」

「何でも、俺とハックモンが出会った場所だから、何か手掛かりがあるかもってことらしいけど…… 」

 

昭二郎の家を後にし、自転車を引きながら雑談して歩くのは武正、桃香、広太の3人。

時間は15時を過ぎた辺りで、どうやら打ち合わせは無事に終わり、家路についているようだ。

予定を再確認しながら3人が歩いていると、前方には交差点が見えてくる。真っ直ぐ進めば守神神社、すなわち武正と桃香の家へ続いている。

 

「おっと! んじゃあ、オレん家こっちだから。また月曜にな」

『そん時に会おうぜ、ハックモンに武正、桃香』

 

広太の家に帰るには、この十字路を左へ曲がる必要があるため、真っ直ぐ進もうとした武正と桃香へと声をかける。

Dチューナーの中にいるベタモンも、週明けに会えることを楽しみにしている様子であった。

 

「ああこの道曲がると三山の家の方向なんだ? うん、それじゃあ月曜日にまた学校で」

「また、ね。今日はありがとう、三山君にベタモン」

『これから仲間として一緒に頑張ろう! 』

 

別れ際にかけられる言葉に、片手を上げることで答えながらも交差点を左に曲がり歩き出す広太。

武正達は挨拶が済むと、そのまま交差点を直進して彼らの家へと向かっていく。

まだ春先で、日が落ちるまでに時間はあるが……もう少しで黄昏時である。

広太が暫く歩みを進めていくと、アパートが立ち並ぶ住宅地へと入っていく。

 

「そういやぁ、お前は裏山に帰んなくて良かったのか? 」

『ああ、お前の家のメシが美味かったからしばらくはこっちに厄介になるぜ! 』

「飯を隠して持ってくの結構苦労するんだがなぁ……」

 

本来の住処である裏山に帰らなくて良かったのかと尋ねる広太に、ベタモンは堂々と飯が食いたいから厄介になると宣言。

三山家は平屋のアパートであるため、隠れる場所が少ない。故に広太の気苦労が伺える反応である。

気まぐれにふと視線を右横へと向けると、農業用水が流れる用水路が走っている。そこまで都会ではない守神町は、守神沼からの良質な水を利用した稲作や畑作も盛んなのだ。

 

「あれ? 」

『いきなりどうしたんだよ? 』

「いや……この季節にしては水路に流れてる水が少ないなって」

 

そう、この季節ならば田植えや種蒔きに向けて水路には多くの水が流れているのが自然だが、視線の先の水路には底を覆うばかりの僅かな量の水しか流れていない。

ちょっとしたことだが、普段から見慣れている光景と違うものが見えれば気になってしまうのが人間というものだろう。いや、この場合は広太が案外細かい所も見ていると言うべきか……

 

『気のせいじゃねぇか? 』

「う~ん、何だか気になって背中がムズムズすんなぁ……」

 

ベタモンの言葉に首を捻りながらも歩みを進めていくと、築年数そこそこのアパートが密集する賃貸住宅地帯が目前に迫る。その中の一軒が広太の家だ。

自宅の前へと辿り着いた彼は、引いていた自転車を駐輪して施錠。そしてポケットから銀色の鍵を取り出すと玄関の鍵穴へと差し込んで捻る。

閉ざされていた扉はガチャリという音と共に解錠された。

 

「ただいまっと……家ん中では大きな声出すなよ、ベタモン」

『わーってる、安心しろ』

 

玄関でベタモンへと注意を促し、念のために扉を再度施錠をしてから靴を脱いで家へと上がっていく。

居間へと通じる廊下の途中にある最初の扉を開ければ、襖で仕切られた小さな部屋の一つがある。

この部屋こそが広太の自室であり、床には布団が畳まれた状態で置かれ、窓からは夕日が射し込んできていた。

 

『あれ? お前の母親と姉貴ってのはどうしたんだ? 』

「お袋は今日夜勤、姉貴は高校終わってからバイトだよ」

 

リュックサックを壁際に置くと、ベタモンからの声に答えを返しつつ襖をあけて居間へと歩き出す。

母子家庭である三山家では、米を研いで炊くのが帰宅後の広太の仕事の1つだ。

干してあった釜へ、米櫃から米を計量カップで掬い上げる。ベタモンの事を考え、普段よりも少し多めの量である。

 

「あんまり急に米の量増やすと、お袋や姉貴に感づかれそうだからなぁ……」

 

流しの蛇口を開いて水道水を釜へと注ぎ、台所には広太が規則的に米を研ぐ音が響く。

あまり極端に米の量を増やし過ぎると、家族はそれに気が付き……ベタモンのことに気が付いてしまうかもしれない。

その可能性を考えて思わず口からぼやきが出てしまう。米の量を徐々に増やしていき違和感を無くしていくべきなのだろうか? そんな案が脳裏に過る。

 

『まあ安心しろって、食溜めはさっきしてきたからな! 』

 

広太のぼやきに対してベタモンは絶対の自信を持った言葉である。確かに浅葱家の茶会で、ベタモンはまるで掃除機のように菓子の類を胃袋へと収めていた。

その小さい肉体にどれだけ収まるのかというレベルで食べ続けた結果、まだそこまでの食事量は必要ないということだろう。

 

「今日は大丈夫でもその先はどうすんだ? 」

『それはそん時に考える。考え過ぎてもドツボにハマっちまうぞ? 』

「出たとこ勝負、か……場合によっちゃ裏山に戻った方がいいかもな? 」

『ははは! まあとっておきの餌場はあるから何とかなるって』

 

話している内に、研ぎ終わった釜を炊飯器へとセットし、タイマーを入れる。

 

「さーて、拾ってきた生物を隠し通すの頑張ってみっか……」

 

一仕事終えて両腕で伸びをする広太は、太陽が沈んでいくのを見ながらポツリと呟くのであった。

 

 

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「最後に、軍需産業部門と電子戦略部門との合同での報告です」

「――以前この会議で報告させていただいた、もう一つの世界“デジタルワールド”への干渉の状況について……お話させていただきます」

 

巨大複合企業、元橋コーポレーションの都心の一等地に建つ本社ビル。その最上階にある限られた重役のみが入室できる会議室でその言葉は発せられた。

高級そうな机や椅子が並び、そこに仕立てのいいスーツを着た男女が座っている中でその2人は起立してプレゼンテーションソフトを起動。

1人は暗い部屋の中でサングラスをかけた中肉中背の男。もう1人は高い鼻が特徴の体格がいい男だ。

前者は元橋コーポレーション電子戦略部門の部長――久々津で、後者は軍需産業部門で部長をしている阿原木という名前の男である。

 

「現在、守神町において2つのデジタルワールドへの内“カノン”へは安定したゲートを開くことに成功。解析と掌握を開始しております」

「電子戦略部門の尽力によってカノンの掌握率は76%と完全な掌握へは時間の問題。デジタルモンスターの解析も順調に進んでおり、我が社で開発した試作兵装のテストを開始しました」

「一方の“イリアス”の方ですが……ゲートの開門成功確率は15.593%で、前回の実験より4.26%の上昇が確認できました」

 

2人の部長から報告を聞く他の重役達は、先月よりも事態が進展していることに満足そうな顔を浮かべている者が多い。

初めに報告を受けた時はにわかに信じ難い話であったが、目の前に証拠となる映像とデータがある以上これは現実の出来事なのだと理解できる頭は彼らにもある。

そして、事実であると分かったら考えるべきことは、これをどう生かせば自分の部門はより利益を上げられるか……だろう。

 

「“イリアス”の掌握と解析はまだ十分ではないと? 」

「世界の構造が“カノン”と比較して複雑な為に時間がかかっている状況です。今年度更なる予算を頂けるのであれば……」

「ふむ、一定の成果は出せているということか。ならば今後入手したデータはSランクの機密事項とし、速やかに私の元へと報告したまえ。私が直々に各部門へと分配する」

若造の成果を面白く思わない恰幅がいい重役からのチクリとした嫌味を、久々津は華麗に回避した後に……より多くの予算を自分達の部門へと配分することを周囲へと求める。

その堂々とした口調は失敗することなどあり得ないという確信があるからなのだろうか? サングラスの中の瞳は部屋の暗さもあってしっかり伺えない。

更に上座に座る顎髭を生やした60代の男、元橋コーポレーション社長の元橋が自らこの件に関わることを告げたということが意味するのは……

 

「では社長? 」

「予算の増額を認めよう。3日以内に追加予算案を提出するように」

「聡明な判断、ありがとうございます。 早急に戻り作成の後に送信いたしますので、本日はここで失礼させていただきます」

 

元橋から承認の言葉を受け、サングラスの位置を人差し指で直しながら扉へと歩き出す久々津とそれに続く阿原木。

会議室を出る部長2人の口元は邪悪な笑みが浮かび、彼らの背を見る元橋の口元にも……邪悪さを感じさせる笑みが浮かんでいた。

 

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「あー、今日は疲れたぁ……」

『色々あったもんね、今日は! 』

 

桃香と一緒に帰宅した後、夕飯と入浴を終えた武正とハックモンはすっかりリラックスモードへと突入していた。

布団の上に武正は大の字で寝転がり、Dチューナーは丁度武正の顔の横に置かれ、画面の中ではハックモンもひっくり返って大の字で寝転んでいる。

後はもう布団を被って眠りの世界へ入るだけの彼らは、その前にカーテンを少し開いて窓から覗く星空を見ながら雑談をしているようだ。

 

「仲間は増えて、少しずつ進めてる……のか? 」

『みんなで力を合わせたら、きっと大丈夫だよ。武正! 』

「……それも、師匠の言ってたこと? 」

 

あまりにも今後へポジティブなハックモンへと、武正はつい意地悪い質問をしてしまう。

 

『いいや、これは俺が今思ってるホントの気持ち』

「……ハックモンは、凄いな」

『え? 』

「俺がハックモンの立場だったら、今不安で仕方がないと思う。いきなり知らない世界へ飛ばされて師匠達とは離れ離れでさ? 自分で全部判断して動かないといけないじゃん」

 

質問に返されたハックモンの答えは、どこまでも真っ直ぐで……意地悪な質問をした武正は自分が恥ずかしくなってきてしまい、思わずDチューナーから視線を反らす。

素直な賞賛の言葉と共に、自身がハックモンの立場だったらとてもそんな風にはいられないとポツリと呟いた。

 

『最初は不安だったけど、武正が助けてくれたじゃないか! そして桃香や他の皆とも出会えたし 』

「単なる偶然の結果、じゃない? 」

『師匠にね……“出会いは偶然かもしれないが、そこから先の繋がりは必然だ”って教えてもらったことがあるんだ』

「出会いは偶然、その先の繋がりは必然……」

『うん! 聞いた時はピンと来なかったけど、今なら分かる。武正は俺と出会った時に囮にして逃げることもできたけど、逃げなかったし……むしろ俺を助けてくれただろ? 』

「確かに、そうだな」

 

ハックモンが師匠であるガンクゥモンより教わった言葉、確かに出会いは偶然な場合もあるけれど……そこから繋がりを作っていくのは本人達にその意思が無いと不可能であり、それは必然となる。

そういった意味で弟子へと伝えられた言葉を、武正は瞳を閉じて聴覚へ全ての意識を向け、頭の中で反芻しながらも受け止める。

 

『だから、武正や皆も凄いってことだよ! 』

「俺はともかく、他の皆はそうだったらいいな……」

 

反らしていた視線をDチューナーに戻した武正はハックモンから返って来た賞賛の言葉に擽ったそうな微笑を浮かべる。

そのまま延長した蛍光灯のスイッチを引くと、点いていた豆電球が消灯。武正の部屋はカーテンの隙間から見える星灯り以外は見えない暗闇に包まれた。

 

「じゃあ、そろそろ寝ようか。明日は朝から手伝いあるからあんまり騒がないでくれよ? 」

『頑張るよ! それじゃあお休み、武正』

「ああ、お休みハックモン」

 

1人と1体はそのまま眼をつぶり、それぞれの寝床で眠りの世界へと入っていく。

目まぐるしい1日を経験した彼らの寝顔は、その1日が楽しかったことを証明するかのような穏やかな笑顔であった。




#デジモン図鑑5

名前 :アポロモン
レベル:究極体
タイプ:神人型
種別 :ワクチン
・解説
デジタルワールド・イリアスを治めるオリンポス十二神族の1体で、太陽級の火炎エネルギーを秘めた神人型デジモン。
あらゆる物質を溶かし浄化してしまう恐るべき力を持ち、アポロの名を持つにふさわしい実力を有している。
必殺技は背中の火炎球より灼熱の太陽球を発生させ攻撃する『ソルブラスター』と、自身の熱き力を注ぎ込んだ一撃必殺の拳『フォイボス・ブロウ』
速射性に優れた両手の光玉から灼熱の矢『アロー・オブ・アポロ』も強力な技だ。


名前 :ミネルヴァモン
レベル:究極体
タイプ:神人型
種別 :ウィルス
・解説
アポロモンと同じくデジタルワールド・イリアスを治めるオリンポス十二神族の1体で、幼い少女の姿を持つ神人型デジモン。
非常に小柄な体格だが、身の丈ほどの大きさの大剣を自由自在に扱うことが出来る怪力の持ち主だ。
その体格に見合っているのか感情の起伏が激しいが、デジタルワールドを治める責任感はある。
現在のイリアスでは、オリンポス十二神族筆頭であるユピテルモンの不在なため、筆頭代理として世界のトップに立っている。
必殺技は大剣「オリンピア」から繰り出される強力な回転しながらの縦斬り『ストライクロール』と、速度を重視した横回転斬りの『マッドネスメリーゴーランド』だ。
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