3月も終わりに近づいたころ。横須賀市内のとある喫茶店。
「・・・変なとこないよね。寝癖とか・・・」
僕、深海達也はここでとある人を待っていた。今年からフィッシャーズの一員としてシーズンを戦っていく中、これからの人生にかかせない大切な人だ。
「・・・時間間違ってないよね。」
さっきから時計をちらちら。遅刻したとかない・・・はずだ。多分・・・
そんなことを考えているとカランと入り口のベルが鳴り、薄茶色の髪をなびかせた女性がこちらに歩いてきた。
「達也くんごめん・・・っ!遅くなっちゃった!」
「ううん。卒業おめでとう知名さん。」
知名もえか。横須賀女子海洋学校を今年卒業し念願だったブルーマーメイドになった僕の恋人だ。
「えっと、アイスコーヒーを。・・・ふふっ、プロはどう?」
「やっぱりすごいところだよ。色んな参考にしたいところがたくさん。」
運ばれてきたアイスコーヒーを飲みながら僕の話を聞いてくれる彼女。その表情はとても穏やかだった。
「それより。」
アイスコーヒーを飲んでいた口元がむっとしてすねたようにつぶやく。
「知名さん、じゃなくてもえかでいいって前からいってるのに。・・・そんなに名前で呼ぶのいやかな。」
・・・いえない。生まれて今年で早18年。今年で19年。誰一人として女性を名前よび、またはあだ名で呼んだことがない。なんでかって恥ずかしいから。なんて絶対いえない・・・っ!
「え、えーっと・・・知名さんって呼ぶとなんか安心するっていうか・・・」
・・・
「・・・嘘。恥ずかしいんでしょ?」
見破られてるなにこの子怖い。
「・・・私は、達也くんが好き。達也くんのためなら何でもできる。だから、達也くんも遠慮なんてしなくていいんだよ?」
「が、がんばってみる。それより、そろそろ行かない?お互い寮の門限がまだあるんだし。」
もえかはいいとして、僕は球団の寮住まいのため門限が設定されている。遅刻したら年俸から少しづつ引かれていく・・・と先輩が話してくれた。あの時の先輩の顔を見ると相当引かれるらしい。
「あっ・・・そうだ、私お買い物したいんだけど付き合ってくれないかな?」
「もちろん。横須賀フロートでいいよね?」
料金を払って近くの連絡船乗り場へ。僕はともかく、彼女はこれからずっとこの海で生きていく人だ。・・・正直、つりあっているとは思えなかった。それでも、彼女は僕が好きだといってくれた。
・・・だから、僕もその期待にこたえないといけない。
ちなみにこの後は普通に買い物してわかれました。べ、別に変なことなんてしてないんだからね!