3月28日。今日2軍のシーズンがスタート。ルーキーの僕がいつ出れるかはわからないけれど、いつでも出れるようにするのが必要だってコーチからのアドバイスもありとにかく反復練習を重ねる。
知名さんはもう海の上だろうか。知名さんはなにをしてるだろう。
「お、おい深海!?水こぼれてる!こぼれてるって!?」
おっと、なんてこった。
「おいおい大丈夫かよ・・・」
「ごめんごめん・・・って誰?」
「上条ぅうううう!お前と同期の上条ぅうう!」
そうだった。目の前にいるこの男は上条翔。別名変態。オレと同期の野手で部屋が隣の選手だ。
「で?今日の試合はベンチ入りしてねぇんだろ?」
「まぁね。新人だしすぐに回ってくるとは思ってないけど。それにまだ一軍メンバーの調整だってまだなんだからしばらくはないと思うけど。」
「んじゃ室内練習か。」
とりあえず朝食の後は室内練習場に行くことにして。朝のニュースではブルーマーメイドで朝から持ちきりだった。
やはり新人が入ったとあって広報も忙しいらしい。そこでもやはり知名さんと岬さんに注目が集まる。やはり横須賀女子で成績トップ1と晴風の艦長として注目を集めた二人だ。所属もどうやら横須賀らしいためか街も騒がしい。
うわさじゃ一軍で始球式をやる予定だとか。・・・たぶんそのとき僕はそこにいないだろうけど。
そんなことを考えながら練習。ひたすら投げ込んだり走ったり。いつの間にか頭の中はもえかのことばっかりだった。
いつの間にかシーズン初日は夜になり。フロート内のショッピングモールに来ていた。よくもえかと一緒に来た思い出の場所だ。寮には門限までに帰れば問題はないし、まだ時間もゆっくりある。
「にしても・・・一応プロ野球選手なのに声かけられないって泣ける・・・」
モールにはたくさんの観光客がいるがそれでばれないのはなんでなんだろうか。
『達也くんは影が薄いほうだから・・・』前に知名さんに言われてたのはあながち間違いじゃないんだろうな・・・何か奇抜なやつやってみようか。
・・・なぜだろう、寒気がした。
「知名さん・・・」
ふと彼女の名前を呼んでしまう。君が隣で笑っている姿を追いかけてしまう。君がすきだって、ちゃんともっといえたらよかった。そうしたら、君はここにいてくれたかな。
二人で食べたカレーショップも、ベンチも、目の前の光景も全部・・・
「一人じゃ寂しいだけだよ・・・」
僕のその言葉は、誰にも聞こえないまま海風にさらわれていった。