海のそばで君と見る夢   作:夢の防人

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諸事情で2話から二年時を進めさせていただきます。


第3話 成人

あれから2年。僕らは無事に成人を迎えた。・・・といっても彼女は船の上で、だが。

 

ルーキーイヤーは一軍に呼ばれることはなかったけど、2年目は夏場から一軍に呼ばれて無事に1勝3敗10H 防御率2.25という数字を出すことができた。年俸も大幅アップがうわさされている。・・・使う暇なくてほとんど貯金してあるけど。

 

「よしっ、深海ダウンしとけよー」

 

「お疲れ様ですっ!」

 

コーチと別れてブルペンを後にする。

 

「深海、今日スライダーのキレよかったな。」

 

「神戸さん。そうですね、なんかいつもより指のかかりは悪くなかったと思います。」

 

神戸さんは僕が一軍に上がってからよく面倒を見てくれる先輩捕手だ。歳も近く食事にも連れて行ってもらっている。

 

「で、キャンプ前にアピールか?」

 

「神戸さんと違って僕はまだまだですから。お先です。」

 

寮の部屋で一息つく。

 

実力がないから練習してるのは本当だ。・・・けど、全部がそうじゃない。

 

彼女に会えない寂しさを紛らわしてるだけだ。・・・この2年で彼女とまともにゆっくりできたのはわずか30日程度だった。

 

・・・会いたい。そんな時、彼女からメールが来ているのを見つけた。『今日からしばらく陸にいるの。・・・ご飯どうかな。」すぐに返信。そして外泊許可。

 

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横須賀中央のとある居酒屋の個室。早くつきすぎたかな。

 

彼女はなんとすぐに予約してくれていたらしい。さすが才女。頭の回転が速いこと速いこと。

 

「ごめん、遅くなっちゃった。」

 

個室の扉を開けた先には、少し大人っぽくなった知名もえかが変わらない笑みで僕を見据えていた。

 

「ううん。少し早く着いちゃったから。・・・すごく似合ってる。」

 

「ふふ、少し会わない間にお世辞が言えるようになったんだ。すいません・・・」

 

適当に頼んだ料理とドリンクで話は盛り上がった。お互いの日常だったり船のことだったり。驚いたのはSNSも使って僕の情報を逐一見ていたってことと、一軍初登板の日に海上でテレビごしに応援してくれていたことかな。

 

「あはは、・・・知名さんはほんとにすごいなぁ。」

 

「達也くんこそ、一軍おめでとう。テレビで見ててすごかったよ。三振とった時のガッツポーズ。・・・私の前にいるちょっと頼りない達也くんと同じかなって思っちゃった。」

 

「残念ながら同じだよ?・・・あの場所に入るとスイッチ入っちゃうからかな。」

 

「でもね?」彼女は隣に座りなおして、僕の目をじっと見つめはっきりとこういった。

 

「どんな君でも、私が好きになって現在進行形でもっと愛してるのは、達也くんなんだよ?」

 

・・・ああ、この笑顔。

 

「・・・たぶん、知名・・・ううん、もえかのその顔が見たくて僕はがんばれたんだと思う。君は、僕の光だ。ありがとう。」

 

あれ、今かなり恥ずかしいこといったような。

 

 


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