惻隠の情   作:坂口

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艦娘の出番がとても少なく、申し訳ない気持ちでいっぱいです


27話 静かなる敗北

間宮が朝食を準備をしている食堂。厨房から聞こえてくるのは、包丁でまな板を叩く軽快な音。敬愛たる来客に己の手料理を振る舞える事が(こころよ)いのか、時折、鼻歌も聞こえてくる。

食堂で聞こえる音はこれだけでは無い。テーブルの一角に、三人の男。そして、一際(ひときわ)目立つ港湾棲姫が共に座っていた。

 

「…………では、提督になる熱情があると判断して良いのかね?」

 

神妙な顔で対面に座る海兵隊服の男に質疑を繰り返す伊丹。伊丹の横には岩井が座っており、目の前に座っている男と港湾棲姫に対し鋭い視線を向け、無言の圧を掛けていた。

 

「はっ! 不肖、軍人としての矜持(きょうじ)も捨て、世捨てとなった身ではありますが、挽回の機会が得られるのであれば身命(しんめい)(なげう)気概(きがい)で、取り組ませて頂きます」

 

既に、一時間以上が経過していた。

伊丹は様々に問い掛け、そして、男の一挙手一投足(いっきょしゅいちとうそく)精察(せいさつ)し続けた。

しかし、これだけ質疑を繰り返しながらも男に怪しい点は何も無かった。返す言葉に偽りは見られず、意思は一貫し、揺らぎ無い信念の(はし)が男の所作からは感じられていた。

 

「………………」

 

伊丹がチラリと岩井を見ると、岩井も特に危惧すべき点は無いと判断したのか、男に向けていた圧を解き、一息を付いた。

 

「貴様、伊丹元帥の温情によって軍隊へ復帰できるのだ。泥を塗る様な行いは一切許さんぞ!」

「はっ! 心しております!」

「実際の所は本日の会議にて決定するのだが…………まあ、妖精が見えているのであれば話は早い。君の才能に期待しようじゃないか」

 

伊丹が静かに笑い、岩井も頷く。

男は姿勢を崩す事もせず、(くう)を見つめる。横に座っている港湾棲姫は身動きを取らない。ただ俯き、己の存在を消すかのように、只管(ひたすら)に黙すのであった。

 

「…………君に不信感を与えない為に、一つ、話をしよう。本日の会議にて一番の問題……鬼島君の件もあるのだが、港湾棲姫、彼女の待遇がどうなるか私にも読めないのだ」

 

伊丹ポツリと呟いた。

男はその言葉に反応し、膝の上に置いた握り(こぶし)を固くするのだが、テーブルの下にあるそれは誰の目に触れる事も無い。

 

「最悪の事態も覚悟してもらいたい。即ち、…………実験動物。他、殺処分」

 

伊丹の視線が港湾棲姫に向く。しかし彼女は動かない。俯いている為に顔色も分からない。

伊丹は判断に迷っていた。最悪の事態を()えて告げ、反応を見たかったのだ。

しかし、彼女から何も感じる事が出来ない。これは、伊丹や岩井、日本軍の人間に対して敵意がない事の表れなのだろうか。

もしくは、最悪の展開。港湾棲姫にとって人間風情は敵ですらなく、単に皆殺しの機会を伺っているだけなのだろうか…………。

 

「…………深く考えるな。貴様は軍人である。上官の命令には絶対だ」

「……岩井少将の仰る通りでございます」

 

岩井の言葉に、男が頭を下げる。

その行為に繋げる様に、男が静かに立ち上がった。

 

「申し訳ございません。(かわや)へ……」

「おうおう、行ってこい行ってこい」

 

伊丹が返事をする前に、岩井が答えを返す。

男は静かに一礼し、食堂を後にする。港湾棲姫も当然の様に、後に続くのであった。

 

 

 

「………………」

「………………」

 

男は廊下に出る。伊丹と岩井の視線が途切れた事を確認し、一息。

雛鳥の様に付いて来る港湾棲姫の腕を取ると、早足で厠の方へ向かう。

港湾棲姫が驚いた顔をするのだが、男は気にも留めない。スタスタと廊下を歩き、人気(ひとけ)の様子が完全に断たれた事を確認すると、港湾棲姫の肩を引き、内緒話をするかのように互いの顔を近づけた。

 

「……身の保証はしないとさ」

 

男の言葉に、港湾棲姫が困った顔をする。

 

「…………身の危険を感じたら、即座に俺を犠牲にしろ。海軍は提督を欲しているようだ。動揺し、隙が生まれるはずだ」

「イ、イヤ! ナ、ナンデ……!!?!」

「――、――――――」

 

男は静かにそう言うと、己の顔を離す。

港湾棲姫は泣きそうな顔をしているのだが、男は笑っていた。

 

「一つ願うとすれば、人質として俺を海まで連れ去ってくれれば最高か。二人で逃げよう」

 

その男の顔は、港湾棲姫にとって見慣れたものであった。

伊丹や岩井、軍隊関係者には決して向けない、港湾棲姫に安らぎを与える、優しい笑顔だった。

男は港湾棲姫の頬を優しく撫でると、静かに廊下を歩きだす。柔らかな足取りは、食堂の方へと進んでいたのだった。

 

 

 

 

マルキュウマルマル。

横須賀鎮守府の正門内、敷地にある駐車区画には、数台もの豪奢で黒塗りな乗用車が並んでいた。

鎮守府の出入り口をくぐり、目の前にある階段を上がり、二階を目指す。

会議室前の廊下には一定間隔に艦娘が直立不動しており、来館された大本営の元帥と将官たちへ、心からの奉迎(ほうげい)と、厳重なる警備を両立させていた。

 

「…………一大事っぽい。残忍な港湾棲姫を()の当たりにした元帥さん達が、泡吹いて倒れちゃうっぽい……」

 

窓際に直立不動の姿勢を取っていた夕立が、(ひと)()ち、青い顔をしながらわなわなと身体を震わせ始めた。

向かいに立っていた青葉には夕立のその言葉が聞こえているのか、相槌を打つように頭を抱えだす。

 

「決定的瞬間は現場に転がっています……! しかし、本日の会議室に突入する事は艦娘の私では越権行為です! ああ、進行役の大和さんに代わって貰えば良かった……!」

 

青葉に大和の代役は実力的に不可能なのだが、それに対するツッコミの言葉は無い。

 

「青葉ちゃん! 港湾棲姫の非道な振る舞いを大本営に報告する為なら手段を選んでる暇は無いっぽい! 大和さんを呼び出して、後ろからドーン!!! …………っぽい!」

 

場を(わきま)えているのか、ひそひそと静かに会話している夕立の発言に、呆れたような顔をする伊勢と日向。

島風は二人に何かを伝えようと必死にウインクをしているのだが、夕立も青葉も脳内の港湾棲姫の事で精一杯だった。

その日は様子が違っていた。事あるごとに妙案を浮かべ、邪な笑みを浮かべる二人に対して折檻(せっかん)を行うのは秘書艦である加賀の仕事である。しかし、今日の加賀は浮かない顔で何かを考えているのか、夕立と青葉の雑談に気付く様子は無かった。

それも当然であった。会議室に続く廊下、護衛としての仕事を遂行している加賀の目の前を、他でもない舞鶴鎮守府所属時代の提督、鬼島稔が通り過ぎたからである。

加賀が鬼島と再会するのは三年ぶりの事であった。しかし、鬼島稔は昔の秘書艦である加賀に目を向ける事も無く、立ち止まる事も無く、静かに会議室へ入室するのであった。

加賀の心には、今でも舞鶴の日々が深く刻まれていた。故に、信じられなかった。信じたくなかった。

そんな加賀の心情は、会議室には伝わらない。届かない。

加賀の思いを嘲笑うかのように、淡々と会議は進行していくのであった。

 

 

 

 

横須賀鎮守府は只管(ひたすら)に、重苦しい雰囲気に包まれていた。

数十人いる大本営の人間が、わざわざ一介の鎮守府に訪れる事は珍しい。重要会議は大本営で行われるからだ。

計、十三人の元帥、大将がこの場に集まっていた。

コの字型に設置されたテーブルに座り、手元の資料に目を向けている。

その速度は人によって様々である。一字一句読み零さぬよう真面目に読み込んでいる者もいれば、パラパラと雑に(めく)り上げ、資料そのものに全く興味を示さない者もいた。

 

議長席には三人の元帥が並んで座っており、背後には、大淀、大和、北上が控えている。

伊丹は議長席から見て左手側のテーブルに座っている。

その顔は険しく、これから始まる会議にて何が起ころうとも動じるまいと、一人、心の準備をしているようであった。

 

議長席正面、壁側に起立しているのは四人の提督と、海兵隊服の男。

常に後ろに控えている秘書艦の姿は、この場にない。だが、港湾棲姫が一人、静かに直立の姿勢で立っていた。

港湾棲姫は顔を俯かせ、床に視線を落としている。

そんな港湾棲姫の様子を気にしているのか、着席している元帥、大将の視線が彼女に向かう事は、一度や二度では済まなかった。

 

「定刻故、会議を始める。本日の議長はこの私、二階堂が務めさせて頂く。大元帥殿から書状を預かっている。静粛に」

 

場の空気が一変する。誰も物音など立てない。空気は緊張し、身動きをとれば、その空気に肉体が刻まれかねない。

(おごそ)かな声が室内に響く。時節の挨拶から始まり、主君である大元帥からの有難い(みことのり)。そして、日頃の任を(ねぎら)い、これからの精進への期待。

この(げん)を聞き入れた者は、重々とした面持ちでその響きを胸に刻み入れ、即日、彼らが信奉する大元帥、天皇陛下に更なる忠義を深めるのであった。

 

「……面を上げよ。では、本題に臨ませてもらう。伊丹君」

 

伊丹が静かに起立し、一礼。

 

此度(このたび)、横須賀にて一人の提督候補生を発見致しました。彼は三年前の戦乱にて行方不明になっていた一人であり…………」

 

伊丹の説明が粛々(しゅくしゅく)と続く。手元の資料には当時提出されていた身分が記載されていたが、詳細な情報は騒動の折に消滅し、彼がどのような人格で、どのような成績を残していたのかは一切不明になっていた。

 

「…………この三年間、何を?」

 

議長席、二階堂から質問が飛ぶ。

海兵隊服の男は答える。日々の暮らしと、鬱屈(うっくつ)していた精神状態を。

会議室内の人間は、皆、男の方を見つめている。男の身体を貫き、港湾棲姫の姿を凝視していた。

 

男の自己紹介が終わり、続いて愛国の心を説き始める。

己の慚愧(ざんき)の念や、大元帥への忠誠の証。そして、軍人としての名誉を挽回させてほしいという、必死の懇願であった。

男の言葉を聞き入れる皆の顔は、非常に穏やかであった。

愛国は当然である、己の命を捨てる覚悟で忠義を担うというのは、当然の意志である。三年前の横須賀大乱を境に、そのような気概のある人間が一様に数を減らしていた為、彼のような精神性を持つ人間に軍関係者は渇望していたのだった。

そして、男の経歴には傷あった。三年間の逃亡生活である。この鎖は一生消える事は無い。故に、扱いやすい、と言うのがこの場に座っている人間の共通認識であった。

 

穏やかな表情に囲まれている男に唯一、(しか)めた顔を向けるのは、伊丹であった。

伊丹から見た男の本質は、裏表のない正直な人間性であった。男は正直すぎた。そして軍部を疑う気配も無い。

今までの腐りきっている大本営の姿を知っている伊丹には、男が獰猛(どうもう)なる肉食獣の檻の中に、何の迷いも無く入って行く小型の草食動物にしか見えなかった。

 

「私は、彼の信念を信じてみたい。提督の素質があるのも、素晴らしい」

「同意である。彼の加入により国防が望めるのであれば、それは喜ばしい事であろう」

 

賛成多数。肯定的な言葉が広がり、彼の復権は確実となっていた。

 

「…………伊丹君の言を素直に信じるのもどうであろう。提督としての素質は確かなのか? この場の妖精は見えているのか?」

 

誰かの何気ない一言が、二階堂の耳に入る。

鋭い視線を男に向けると、男は即座に室内に視線を這わし、(よど)みなく答えを返す。

 

「はっ! 四名ほどおります!」

「…………岩井厳双。見えているか?」

「はっ、四匹であります」

「吉田雪」

「はい、四人だと思います」

「鳴本雷太」

「…………五人います」

 

鳴本雷太の答えに(ざわ)めきが起きる会議室。岩井は疑念の視線を鳴本に投げかけ、吉田は困った顔で鳴本を見つめていた。

 

「まず、大和さんの首元に一人」

「申し訳ございません! 私の位置からでは彼女の右肩の確認は困難でした。訂正、五名とさせて頂きます!」

 

男の言葉に、より、騒めきが大きくなる。

鳴本雷太と海兵隊服の男。提督の資質を持つ人間が二人、五人の妖精を認識していた。

岩井と吉田は慌てた様に周囲を確認する。しかし、どこにもいない。気配が無い。岩井は苛立たし気に頭を掻きむしり、吉田の表情には悲壮感が漂っていた。

 

「き、鬼島君! 君はどう答える! この会議室に何匹の妖精がいるのだ…………!」

 

興奮した様子で立ち上がった一人の大将が、鬼気迫る勢いで鬼島に問い掛ける。

その疑問に大した興味を持ち得なかったのか、鬼島が淡々と己の答えを口にした。

 

「答えかねます」

 

淡々とした鬼島の言葉に、視線が集まる。

 

「私に妖精の姿は認識不可だ。私には提督としての資質が、もう無いのだろうな」

「いつからだああああああああああああああああ!!」

「三年前、大乱の時かと。あの騒動を目にした私の心に、一つの怯えが生まれたのかもしれないな。本来ならば即座に報告すべき問題だと把握しておりましたが、度重なる問題の対処に追われる大本営の皆様、横須賀鎮守府の復興に力を注ぐ皆様に、このような水を差す報告など、どうにも戸惑ってしまい」

 

鬼島稔は嘘をついた。

否、既に妖精が見えていないのは本当の事である。しかし、鬼島は深海棲艦に怯えない。

 

鬼島の告白に言葉を抑えきれない会議室。

岩井も吉田も鳴本も、皆、鬼島に視線を集める。

しかし、鬼島は静かに目を(つむ)り、耳障りな喧噪に不快そうな顔をするだけであった。

 

「…………静粛に。鬼島稔の資質については後に。次いで、鬼島稔の処罰について」

 

唯一、場の空気に流されていない二階堂が静かに手元の資料に目を通す。

 

「……それで、鬼島稔の罪とは何であろうか。伊丹元帥」

 

思い掛けない言葉に、伊丹の身体が硬直した。配布してある資料に、舞鶴鎮守府にて確認した内容は明記されている。目を通せば、伊丹の伝えたい事は一目瞭然であろう。

押し黙る伊丹に目を向けた二階堂は、淡々と言葉を告げる。

 

「主観で申し訳ないが、鬼島稔の舞鶴での功績は、素晴らしいの一言に尽きる。現状維持が精々の他、鎮守府に比べ、舞鶴鎮守府のみ防衛海域を拡大させている」

 

二階堂の言葉に、伊丹は頷くしかない。

 

「君が問題としている艦娘の疲弊。…………君が彼女達の権利を守る運動をしている事は知っている。それ自体は褒められた行為である。しかし、それも時と場合であろう。鬼島稔は我が日本国の為に、防衛海域の拡大を優先させた。それだけの話である。仮に、鬼島稔が艦娘の保護を優先とした行動をとった場合、我が日本国の領海は現在より悲惨な事になっていたのは間違いないであろう」

 

二階堂の言葉に、伊丹は反論する事が出来ない。

仮に、伊丹が何か発言をしたとしても、会議室の空気が変わる事は無い。この会議室には鬼島派の人間もおり、易々と伊丹の反論は封じられてしまうだろう。

 

「……だが、これは私の主観でしかない。故に、挙手制にて決を採る。鬼島稔に処罰が必要だと考える者は、挙手を」

 

十三人の上役と、四人の提督。計十七名の内、手を挙げたのは岩井と鳴本の二人だけであった。

伊丹は打ちひしがれていた。救えなかった舞鶴鎮守府の艦娘に対し、心の中で謝罪を繰り返す事しか出来なかった。

 

「……………………ク」

 

鬼島が俯き、静かに声を上げた。

その身体は震えており、口元からは、ク、ク、クと声が漏れる。

鬼島稔は笑っていた。己の勝利を確信するかのように、静寂に包まれた会議室内にて、一人、声を上げるのであった。

 

「鬼島君、私は信じていたよ。だが、妖精が見えないのは問題だ。大本営に来い」

「そうだ。君の才能は、大本営で生かすべきだ。大元帥に進言しようではないか」

「どこかの馬鹿が舞鶴なんぞに鬼島君を閉じ込めたのが悪いのであろう。彼は被害者だ。それ以上でも以下でもない」

 

一人が立ち上がり、鬼島に声を掛ける。二人、三人と徐々に席を立ち、思い思いに鬼島を(ねぎら)っていた。

岩井派、鳴本派、吉田派の人間はそれを忌々しそうな目で睨み付ける。しかし、議長である二階堂の言葉に異議を唱える者は誰もいなかった。

 

「…………議題は済んだな。よって、本日の会議はこれにて閉幕する。……礼」

 

二階堂の言葉に合わせるよう、一糸乱れの無い一礼が、会議室にて行われた。

伊丹の顔には悔しさがにじみ、岩井、鳴本は不満の色を隠す事が出来ていなかった。

 

「諸君らに告ぐ。鬼島稔の大本営預かりは本日より行う。事後については将官会議によって決定される。……そして、港湾棲姫の処遇についても同じである。港湾棲姫は横須賀鎮守府に待機の上、決定事項については速やかに従う様に。異議、不服は受け付けない。以上だ」

 

閉幕に伴い、二階堂から最後の言葉が告げられた。

鬼島は静かに溜息を付き、元帥、大将と共に会議室を退室していく。

その顔には笑みが浮かんでおり、傍から見れば勝ち誇っているようにしか見えなかった。

 

一方、港湾棲姫と海兵隊服の男はその場に佇んでいた。

共に何も言う事も無く、静かに人の流れを見つめていた。

 

伊丹は憔悴しきった顔で岩井に声を掛けている。

鳴本、吉田、秘書艦の大和が心配そうに見つめるが、伊丹に対する言葉は何も生まれなかった。

 

 

 

 

既に全員が退出し、静かになった会議室には鳴本の姿だけがあった。

次々と発車していく豪奢な乗用車を窓から見送りながら、鬼島の小さな背中を鳴本は見つめていた。

 

「―――、―――」

 

鬼島と誰かが、言葉を交わしていた。

元帥なのか、大将なのか、遠目からでは判断が付かなかった。

鬼島稔が乗り込んだ乗用車は、一番最後に横須賀鎮守府から出て行く。

そして、全ての戒めを振り払うかのように、徐々にその黒点を小さくさせ、鳴本雷太の両目の届かない場所に消えていくのであった。

 

―――――――――

 

――――――

 

―――

 

会議から数時間後、岩井と吉田は客間で休んでおり、伊丹も大本営に戻っていた。

鳴本は一人、執務室にて仕事をしていたのだが、その時、執務机の上の無線電信が鳴った。

 

「はい、横須賀鎮守府、鳴本……。ええ、………。はい? ……ええ、急ぎ探索を…………」

 

無線の相手は伊丹であった。伊丹からの急信を受けた鳴本は、即座に動く。

連絡網を利用し、鎮守府最速の艦娘、島風に出撃の令を出す。

 

鳴本雷太が伊丹から伝えられた電信内容はこうであった。

 

 

―――鬼島稔を乗せた乗用車が炎上した

――――――海上へ逃亡の疑いあり、迅速に捕らえよ

 




残り一、二話ほどで二章は終わる予定です。
あらすじ詐欺なる現状、ようやく三章にて本題に入れそうです。
このような拙作を読了して頂いている皆さまには、感謝の言葉しかございません。
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