こんばんは
約8年ぶりですが、AIに協力してもらい12話が完了しました。待ってくださってる方いましたら、私大歓喜です。
それでは拙い作品ですが楽しんでいただければと思います。
数日後、俺達はブラドー島に到着していた。
原作の美神さん達のようにコウモリの群れに襲われるようなこともない。むしろ今回は、能力(ひみつ道具)を神父達に見せる絶好のチャンスだ。
そのため、イタリアの空港に一度降り立って正規の入国手続きを済ませた後、そこから[どこでもドア]を使って一気にブラドー島へと移動した。
「……本当に、ブラドー島だ」
ドアを抜けた先で、ピートは一言そう呟いて黙ってしまった。あまりの神速の移動に、驚いて呆然としているのだろう。
「本当に簡単に移動できるのだね。ところで横島くん、その道具の有効範囲はどの程度まで大丈夫なんだい?」
唐巣神父が、興味深そうにドアを撫でながら尋ねてくる。
「詳しくは試していないんですが、日本国内はもちろん、地球上ならどこでも大丈夫なはずですよ」
「そんなに広範囲なのかい!」
「はい。ただ、ダイレクトに海外に行っちゃうと密入出国になっちゃいますからね。今回みたいに一度その国に入国してから、国内の移動手段として使った方が安全です」
「なるほど、実に見事なリスク管理だ……」
神父が感心したように深く頷く。さて、移動は完璧。ここからが本番だ。
「……とりあえず皆が避難している地下へ向かいましょう。先生、横島さん、こちらです」
ピートの背中を追い、薄暗い地下階段を降りていく。
カツン、カツンと響く足音を聞きながら、俺の意識は数日前――ブラドー島へ出発する直前に、鏡の世界でドクター・カオスと共に見た『あの映像』へと引き戻されていた。
「……これが、700年前の真実……」
鏡の世界の一軒家。その応接間で、俺と若返ったドクター・カオスは、机の上に置いた[タイムテレビ]の画面をじっと見つめていた。画面に映し出されていたのは、燃え盛る中世の高貴な屋敷。その中央で、胸をヴァンパイア対策の杭で貫かれ、血を流して倒れている美しい人間の女性だった。ピートのお母さんだ。
『おのれ……人間どもめ……! よくも、よくも余の愛した人を……!!』
彼女を抱きしめ、天を仰いで狂ったように哭いている男がいる。紛れもない、若き日のブラドー伯爵だった。激しい怒りと、それ以上に深い絶望。血の涙を流しながら人間に呪詛を吐く伯爵の姿は、原作のボケた吸血鬼の面影など微塵もない、哀しき魔王そのものだった。
やがて画面の中で、伯爵は虫の息となった妻を抱きかかえ、命からがらブラドー島へと逃げ延びようとする。だが、島に辿り着くよりも前に、彼女は息を引き取り、冷たくなった身体からスーッと魂が抜けていくのが見えた。
その瞬間、伯爵の精神は完全に崩壊したのだ。
『人間など……人間など全て滅ぼしてくれるわあぁぁぁ!!』
画面が暗転し、砂嵐に変わる。俺はきゅっと胸を締め付けられるような痛みを覚えながら、隣に立つカオスを見上げた。ドクターは全盛期の鋭い眼差しのまま、珍しく声音を沈めて呟いた。
「……そうか。わしがブラドーと死闘を繰り広げたのも、ちょうどこの頃のことだ。しかし戦闘の最中、マリア姫に預けておいたバロンの緊急コールサインが鳴り、わしは引き上げざるを得んかった。ブラドーにはそれなりに深手を負わせたが、それ以降は名を聞いた覚えがなくてな。……おそらく、その戦闘の衝撃と、700年というあまりに長い眠りのせいだろう。脳が『最愛の妻を失った悲劇の記憶』に耐えきれず、自ら蓋をしてしまったのだな」
「悲しすぎるから、忘れたんだな……」
俺は呟いた。理由を忘れても、「人間を滅ぼさねばならない」という呪いのような衝動だけが、700年経った今も伯爵の魂を縛り付けている。
「頭の悪い、中世で思考停止した吸血鬼だと思ってたけど、ただの悪党じゃない。奥さんのことが、それだけ大切だったんだ……。親子の戦いなんて、絶対にさせない!」
俺の言葉に、ドクターはフッと不敵な笑みを漏らした。
「うははは、言うようになったではないか横島。忘却の彼方に沈んだ記憶の鍵、お主のあの『触れて記憶を読み解く能力』なら、ブラドーの心を救えるやもしれんな」
カオスの言葉が、今も耳の奥に残っている。
(……ああ、絶対にやってやるさ。ひみつ道具も、俺の能力も、使えるものはなんでも使ってやる)
胸の内でそう強く誓い直した、その時だった。
「横島くん? どうかしたかい?」
神父の優しい声で、俺の意識は一気にブラドー島の冷たい空気へと引き戻された。階段の途中で足を止めていた俺を、神父とピートが心配そうに振り返っている。
「あ、すいません、なんでもありません! ちょっと足元が暗かっただけです」
俺は慌てて笑ってみせ、持っていたリュックのベルトをぎゅっと握りしめた。この俺のポケットの中には、彼らの頑なな運命をひっくり返すための道具がある。さらには、神様が「適当に決めておく」と持たせ、ピートと初めて出会って触れた時にようやく理解した、あの『記憶を読み解く能力』も。
(待ってろ、ブラドー伯爵。今からその悲しい呪いを、全部解いてやる!)
俺は親子の仲を取り持てるように全力を尽くすと決め、暗い地下への階段を力強く踏み出した。
地下の最奥に着き、ピートの案内で進んだ先には、たくさんの人達がいた。俺が以前読み取ったピートの記憶によれば、ここにいるのは純粋な吸血鬼かヴァンパイア・ハーフのみのはずだ。見た目大人の男性は皆一様に武装しており、女性や子供達も緊迫した表情で物資の運搬や手当てに追われている。
これから始まる戦いの重苦しい空気が、大部屋全体を支配していた。ピートは周囲の者たちにいくつか指示を飛ばすと、俺達を大部屋の隅にある、少し仕切られた薄暗い別室へと案内してくれた。
「先生、横島さん、ひとまずこちらの部屋をお使いください。私はすぐに状況を確認して戻りますので」
「ありがとう、ピート。すまないね」
ピートが足早に部屋を出ていき、部屋の中に神父と俺の二人だけになる。張り詰めたような沈黙の中、神父は俺の顔を覗き込むと、気遣うように声をかけてくれた。
「横島くん、大丈夫かね? 驚かせてしまったね」
神父に余計な心配をさせてしまったらしい。だが、二人きりになれたこのタイミングこそがチャンスだ。
「大丈夫です、先生。……それより先生、今、少しだけ時間を頂けませんか? ピートが戻る前に、どうしても先生に相談したいことがあるんです」
神父は俺の真剣な目線を受け止め、少し考えたあとで優しく微笑んだ。
「いいですよ。一人で悩んでも事態は好転しません。私で良ければ、いつでも頼りなさい」
「ありがとうございます」
さて、何から話すべきか。神父にはこの能力について「他人の記憶が読める」と簡単には伝えてあるが、今回はより詳しく話す必要がある。
「まずお話ししたいのは、以前先生にもお伝えした、ピートさんと握手した時のことなんですが」
神父は思い出したように、驚いた顔をした。
「おや、あの時のことかい? あれからまだ数日しか経っていないが、何か新しいことが分かったのかい?」
「はい。実はあの力、ただ記憶が見えるだけじゃなくて、いくつかの『ルール』があるんです」
それからはパクノダの能力について、固有名詞は一切出さずに説明した。対象に触れて質問を投げかけることで、相手の記憶や本音を映像として正確に読み取れること。そして、その応用方法について――。
(もちろん、パクノダとかHUNTER×HUNTERなんて漫画はこの世界には存在しないからな、心の中だけの秘密だ)
特に、自分の記憶や見た映像を弾丸にして相手の脳内へと直接撃ち込む『記憶の弾(メモリーボム)』の説明には、神父も目を見開いて驚いていた。
さらに俺は、過去や未来を映し出せる特殊な道具の力で、ブラドー伯爵の『700年前の過去』を調べたのだと説明を続けた。
画面に映っていた伯爵の悲しい過去。そして、俺とドクター・カオスが導き出した「伯爵は悲しみと戦闘の衝撃で、最愛の妻を失った記憶に蓋をして忘れているのではないか」という推論。俺の話を静かに聞いていた神父は、深く沈痛な面持ちで同意してくれた。
「……確かに、ヴァンパイアほどの高位の魔族であっても、精神の崩壊と長きにわたる眠りは脳に深刻な影響を及ぼす。横島くんとドクターカオスの推論は、非常に理にかなっていると思うよ。……だが、それを今のピートくんにそのまま話すのは、酷であり難しいだろうね」
神父の言葉に、俺は無言で頷いた。正直、それは俺も薄々思っていたことだった。今のピートにとって、父親であるブラドー伯爵は「人間を滅ぼそうとする、中世の思想に囚われた冷酷な吸血鬼」そのものだ。
いくら俺が『過去をのぞき見た』と言ったところで、今のピートがその真実をストレートに受け入れるのは、あまりにも心理的なハードルが高すぎる。
(……いや、待てよ? 言葉で説明するのが無理なら、直接『見せれば』いいんじゃないか?)
脳裏に、パクノダの最期のシーンが浮かび上がる。彼女が遺したあの『記憶の弾(メモリーボム)』。あれは、一度に複数人に撃ち込むことができたはずだ。
「……先生。だったら、言葉で説明するのはやめましょう」
「え? どういうことだい、横島くん」
怪訝そうな顔をする神父を見つめ、俺は真剣な笑みを浮かべてみせた。
「俺の能力の『記憶の弾(メモリーボム)』は、同時に何人にも撃ち込めるんです。だから、伯爵とピートさんが同じ部屋にいる時に、その場で『伯爵の失われた過去の記憶』を弾丸にして、二人に同時にぶち込みます!」
「な……二人同時に、脳内に直接真実を見せるというのかい!?」
神父が絶句する。常識外れの霊能力(と神父は思っている)の仕様に驚愕しているのだろう。
「はい。頭の中に直接、あの700年前の真実の映像と、伯爵が抱えていた絶望の感情が流れ込んでくれば、ピートさんだって納得せざるを得ません。ただの討伐じゃない、親子を呪いから救うハッピーエンドにするには、これしかないんです」
神父は大きく目を見開いたまま俺を見つめていたが、やがてその優しく厳かな瞳に、深い信頼の光が宿った。
「……はは、実に見事な救済の手だてだ。さすがは私の弟子だね、横島くん」
神父は優しく俺の肩に手を置いた。
「よし、了解した。君とピートくんが伯爵と三人になり、その『弾丸』を撃ち込むその瞬間まで――私が全力で盾になろう。洗脳された軍勢は、この私がすべて食い止めてみせるよ」
「ありがとうございます、先生!」
作戦は決まった。
ポケットの中の[ひみつ道具]、そして神様がくれたこの能力があれば、どんなに頑なな運命だってひっくり返せる。
(親子での戦いなんて、絶対にさせない。二人まとめて救い出してやる!)
俺はリュックのベルトを強く握り直すと、ピート達の待つ大部屋へと戻るため、別室のドアノブへと力強く手をかけた。
今までと違うかもしれませんが、そこは8年ということでお許しください。
このあともなるべく早めに更新できるように努力します。それでは失礼します。