いつもお読みいただきありがとうございます。
極楽愚連…隊?西へ!編に入って今回で3話目なので、あらすじを書きます。
ピートとの出会いで4つ目の能力への気づき、そして700年前のブラドー伯爵の真実をタイムテレビで知り、親子の和解を目指すまでが前回までです。
今回のお話、良ければ楽しんでいただければ嬉しいです。
それではどうぞ!
神父と俺での作戦会議が終わり、大部屋に入る。すると、出入り口の扉が勢いよく開き、外の警戒をしていただろう武装した男性が慌てた様子で飛び込んできた。
「大変だ! 伯爵側ではないんだが、港からの連絡で、不審な船から二人組が上陸してきたらしい!」
その情報に、大部屋は一気に騒ぎ出した。緊迫した状況だ、島民たちが警戒するのも無理はない。だが、その特徴を聞いて、俺の脳裏には(あ~、もしかして……)と思い当たる人物が浮かんでいた。
「……すいません」
俺はざわざわと騒ぐ島民たちの間で声をかけた。
「なんですか?」
「もしかしてその二人組って、一人は長身の偉そうな銀髪の男性で、もう一人は美人だけど無表情な女性ではありませんか?」
「男と女とは聞いてるが……」
「……たぶんですけど、俺達の仲間だと思います」
俺の言葉に、大部屋に動揺のようなものが広がる。俺は神父にここを任せると、一人で港へと二人を迎えに行った。
港へ着くと、やはり予想通りの二人が見張りの島民たちに尋問されているところだった。俺が近づいて声をかけると、見張りの島民らはしぶしぶといった様子で彼らから離れて行った。
「カオス! マリア! 無事に着いたんだな? 連絡くれれば空港まで迎えに行ったのに」
「うむ、無事に頼まれとったものが完成してな、持ってきてやったぞ! 連絡は……うっかり忘れとった」
やっぱり、頭がはっきりして若返っても、カオスはカオスだな。そんな考えを頭の隅に振り切りながら、俺は彼が抱えているアタッシュケースに視線を落とした。頼んでいた物。それは、ピート側の仲間たちが戦闘中に連携をとるための『簡易連絡装置』だ。
いくら味方とはいえ、ひみつ道具を第三者にそのまま渡す訳にはいかない。だから俺は、あらかじめカオスに『糸なし糸電話』を解析してもらい、ピート側の者たちで連絡がとれるオリジナルの簡易連絡装置を別口で作ってもらっていたのだ。
カオス自身に渡しておいた『糸なし糸電話』を使って連絡してくるのを忘れていたらしい。
「まったく、困った人だな……」
ため息をつきつつも、俺は二人を連れて地下室へと向かった。移動しながらカオスとマリアに簡単に現状を説明し、地下室に到着する。
カオスが神父や島民たちに「わしが偉大なる錬金術師、ドクター・カオスである!」と派手に挨拶と自己紹介をしている、まさにその時だった。奥の部屋から、ピートが慌てた様子でこちらへと走ってきたのだ。
「先生! 横島さん! 大変です!」
「どうしたんだい? ピートくん、そんなに慌てて……もしや!?」
「はい……ブラドー伯爵に操られている島民たちが、城からの道を降りてきているようです!」
どうやら相手もこちらの上陸を察知したらしい。俺たちがこのブラドー島に着いてから、まだ少ししか経っていないというのに、まさかもう向こうが動き出すとは。
「ふむ、前座というものかな? ならば私が抑えよう」
「先生! いくら先生でも、一人で全ての軍勢を抑えるなど無理です!」
ピートが必死に止める。確かに、いくら当時の記憶を覚えていないとはいえ、相手の大将はあの歴戦のヴァンパイア・ブラドー伯爵だ。いくら優秀な現代のGS(ゴーストスイーパー)であっても、神父一人でどうにかなる相手ではない。だが、俺のひみつ道具には、この状況をひっくり返せる物がある。
「先生。先生にはギリギリまで、俺たちと一緒に動いてほしいです」
「横島くん、何故だい?」
「当然じゃないですか。こういう時、ボスのいるエリアの近くには四天王や側近が控えているのがセオリーでしょう?」
「シテンノウ……?」
ピートが聞き慣れない日本の単語に小さく首を傾げた。だが、700年という長い時を生き、様々な戦いを潜り抜けてきた彼だ。言葉の意図はすぐに察したようで、真剣な表情で頷く。
「なるほど……大将の傍を固める強力な精鋭への警戒、というわけですね。確かに一理あります。……あ、それなら横島さん、少し希望が見える情報があります」
「希望?」
「はい。父を護衛するその四人の側近のうち、実は二人が僕たちの側に味方してくれているんです。彼らも、今の父の世界征服という極端な話にはついていけないと、僕が説得したところ、内側から手引きをすると約束してくれました」
「マジで!? 四天王のうち半分が味方って、それめちゃくちゃデカいじゃん!」
思わぬ大収穫に、俺は思わず声を上げた。純血のヴァンパイアの城へ潜入するとなれば大苦戦を覚悟していたが、内部に二人も協力者がいるなら話は別だ。
一方で、唐巣神父は別のベクトルでピンときたらしい。聖職者らしからぬ、どこか少年のように目を輝かせた。
「フム、なるほど! まさにデス・スターの最深部、皇帝の玉座の前に控えるロイヤル・ガードのようなものだね! しかもその中に寝返ってくれる味方がいるとは、実に熱い展開じゃないか!」
(いや、神父さまの脳内ソースは相変わらずそっちの宇宙映画かよ……。まあ納得してくれたなら何でもいいけど!)
心の中でツッコミを入れつつ、俺は内心で笑いながら、こちらに向かってきている前衛をなんとかする方法を伝える。
「とりあえず、今最優先で考えるべきは、こちらに向かってきている前衛の島民たちを、誰一人傷つけずに安全に確保する方法です」
俺は着ている服のポケット――四次元ポケットへと滑らかに手を伸ばした。取り出したのは、何の変哲もない一台の懐中電灯。……に見えるが、実は言わずと知れた超一級のチートガジェットだ。
「横島くん、それは……?」
神父様が、俺の手元にある何の変哲もないライトを不思議そうに覗き込んでくる。ピートに至っては「ただの懐中電灯では……?」と困惑を隠せていない。
「これ、『スモールライト』っていうんですよ」
「スモールライト?」
「はい。この光を浴びせれば、どんな相手も手のひらサイズに縮小できちゃうんです。これなら、洗脳された島民たちを誰一人傷つけずに、安全に無力化できるでしょう?」
「なるほど! 縮小光線銃(シュリンク・レイ)か! だが、相手は数が多すぎる。君一人では手が足りないのではないかい?」
神父の至極真っ当な指摘に、俺はニヤリと笑ってみせる。ポケットからさらにもう一つの道具――昭和の手鏡のような物を取り出した。
「だから、これを使います。『まほうのかがみ』。これにスモールライトを映せば、本物と同じ機能を持ったコピーをいくらでも量産できるんです」
鏡にスモールライトを移して次々と実体化したコピーを引っ張り出していく。
「これを、こちら側の島民の方々に配ります。ピートさん、大部屋の島民たちにライトを配って、小さくなった敵を閉じ込める箱や籠を用意させてください! 飛び出さないように蓋ができるやつを!」
「わかりました! すぐに手配します!」
デタラメな霊能便利グッズの連発に目を丸くしつつも、ピートはすぐに島民たちの元へと走り、的確に指示を出し始めた。これで大部屋の防衛戦は完璧だ。島民たちが自分で自分を守る、文字通りの不殺の防衛線が完成する。
ピートが島民たちを集めて準備を整えている間、俺は四次元ポケットから黄色い二択の機械――『○×うらない』を取り出した。
「ブラドー伯爵の城の謁見の間に、『どこでもドア』で直接行って問題はない?」
俺の問いかけに、機械は無情にも「ブッブー」と低い電子音を鳴らした。
やはりダメか。ボケていても、さすがに純血のヴァンパイアの城。空間移動を拒む結界くらいは張ってあるらしい。
すると、その突然の音に驚いた神父が、俺の手元を覗き込んできた。
「おや、横島くん、そのおもちゃのようなものはなんだい?」
「あ、これはですね。質問をすると正確に答えを返してくれる……簡単に言えば、100%信頼できる占いのような物です」
「ほう、それはすごい! ではこれに安全なルートを聞くことも可能なのかい?」
「確率は100%ですけど、聞き方にはちょっと気をつける必要がありまして」
「聞き方?」
「はい。これ、○か×かでしか答えてくれないので、何を聞きたいのかを正確に言う必要があるんです」
命がけの戦場だというのに、そんなどこかとぼけた話を二人でしていると、ピートが戻ってきた。どうやらこちら側の精鋭たちを、『拠点を防衛する班』と、攻撃というよりはスモールライトを扱う『確保部隊』の二つに分けたそうだ。
準備が整ったのを見届け、俺は二人に先ほど得た情報を伝える。
「ピートさん、先生。どうやらブラドー伯爵の城には、『どこでもドア』で直接向かうのは難しいようです。だから、今こちらに向かってきている敵の先遣隊には、こちら側の確保部隊に相手をしてもらいましょう。俺と先生とピートさんは、『どこでもドア』で行けるところまで行きます。そのあとは……」
俺はポケットから、何の変哲もない一つの石ころのような帽子を取り出した。
「この『石ころ帽子』を使って存在を薄くして、こっそりと城に侵入します」
「イシコロボウシ……ですか?」
手渡された帽子を、ピートが不思議そうに見つめる。
「そう。これを被ると、道端の石ころみたいに周囲から完全に存在を無視されるんだ。だから、どれだけ警戒が厳重な城であっても、誰にも気づかれずに堂々と侵入できるってわけ。……あ、それでピートさん。城の周辺に張ってある結界について、具体的にどのあたりまで張られてるか分かりますか?」
俺の問いかけに、ピートはハッとしたように顎に手を当てた。
「そうですね……協力者からの情報によれば、城のふもとにある『古い跳ね橋の手前』までは結界の影響はありません。ですので、そこまではその『どこでもドア』で一気に近づくことができます」
「なるほど、着地点は跳ね橋の手前か。……ちなみに、その結界の『性質』はどんなもの? ただの空間転移を阻むだけのものなのか、それとも物理的な侵入そのものを拒むタイプのものなのか、分かる?」
ここが一番の命綱だ。もし物理的な侵入すら弾く結界だったら、『石ころ帽子』で気配を消して歩いて進むこと自体ができなくなってしまう。俺の疑問にピートは心強い笑みを浮かべて首を振る。
「安心してください、空間転移を拒むだけの結界です。実体を持った者が歩いて境界線をまたぐ分には、何の抵抗もありません。父も、まさか僕たちが島の内側から徒歩で正面突破してくるとは思っていないはずですから、結界に引っかかることもないでしょう」
「よし、なら『石ころ帽子』の隠密作戦は100%通じるな!」
俺はガッツポーズを作り、全員分の帽子をみんなに配った。ずっと後ろで話を聞いていたカオスは「フム、空間の位相を歪めるだけの結界か。中世レベルの古臭い術式よな」と不敵に笑い、マリアは無表情のまま帽子を頭にポンと被っている。
「大部屋の確保部隊に後方を任せて、俺たちは跳ね橋の手前までジャンプするぞ。みんな、準備はいいか?」
「はい!」
「いつでもいけるよ、横島くん」
俺は壁に『どこでもドア』を置き、そのノブを引き開けた。ドアの向こうは、肌を刺すような夜気に包まれたブラドー城のふもと。すぐ目の前には、古びた跳ね橋と、それを見下ろすように巨大な黒い城壁がドーンとそびえ立っていた。夜闇に浮かぶその姿は、まるでこちらを睨みつける怪物のようだ。
俺たちは『石ころ帽子』を深く被り直し、跳ね橋へと足を踏み出した。
更新出来ました!
なんか違和感などありましたら、教えていただければ助かります。ただ優しくお願いします。
それでは次回もいつになるとはお約束できませんが、よろしくお願いします。
失礼します。