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あらすじ
ブラドー伯爵の居城への潜入後、ピート側の味方との合流して進撃のための作戦会議を終えたところまでです。
今回はオリキャラ視点の過去語り(伯爵の過去にも関わるシリアスな内容)があります。
お嫌でしたらブラウザバッグお願いします。それでは良ければ楽しんでください
それではどうぞ!
視点、カーミラ・ブラット
私が生まれたのは、もう七百年以上も前のこと。正確な年齢は、もう忘れてしまったわ。
物心ついた時には、ヨーロッパのどこかで人間の母に育てられていた。その頃の私には吸血鬼らしいところなどほとんど無く、とても幸せな日々だった。
でも、私が三歳か四歳くらいの時、母と一緒に暮らしていた村の近くの貴族邸で騒ぎが起きた。もちろん、貧しい庶民だった私や母に詳しい事情など分かるはずもなかったけれど。私を育ててくれた母の兄――おじ様が、身を挺して母と私を逃がしてくれた。その後、おじ様と再び合流することは叶わなかった。
逃げている途中で母ともはぐれてしまった私は、一人でさまよいながら、ただ生きることに精一杯だった。
でもあの日、絶望の淵にいた私の前へ、空から一人の男が降りてきたの。見た目は二十代前半ほどのその男に、私は助けられた。
――後に分かったことだけれど、その人こそが私の父親、バロール・ブラットだったわ
そのバロールに拾われ、私がハーフ・ヴァンパイアであり、自分の子供であるということに、父は私の顔と眼を見て気づいたらしい。父は、私が母につけられたお気に入りの花の名前をひどく嫌った。そして私に『カーミラ』と新しい名を与え、以前の名前は今すぐ忘れろと厳命してきたの。
拾われてすぐにこのブラドー島へと連れてこられたけれど、父は私の存在を忌み嫌いながらも、自身の血を引く娘だからという理由だけで、容赦なく厳しく教育したわ。
さらに、私の育ての母となったラーミカ様は、ご自身の名前をもじった『カーミラ』などという名が、汚れ者であるハーフの、しかも自分とは何の関係もない娘に与えられたことで、いっそうご機嫌を損ねてしまわれたようだった。
飢えからも、命の危機からも救われた。けれど、私の心の部分は、ただの地獄だった。
――このブラドー島に連れてこられて二年ほどが経ち、弟のカインが生まれるまでは。
生まれたばかりのカインは、とても可愛かった。
ラーミカ様たちの目を盗んで、私がこっそり様子を見に行くたびに、カインはいつも笑顔で私を迎えてくれて、それだけで私は心の底から幸せだった。
――あの幼い温もりに、会いに行っていることが、父とラーミカ様にバレてしまうまでは。
その後、父とラーミカ様の怒りは凄まじいものだった。ラーミカ様は、私をこの家から追い出せ、でなければあなたと別れる、とまで仰ったそうだ。
父は自分の血を引く者を簡単に追い出すことはできなかったらしく、代わりにこのブラドー島の領主である、ブラドー伯爵様の城へ行儀見習いとして私をやった。
その当時の伯爵様は、とてもお優しいお方だった。
伯爵様はご自身が愛された方が人間であること、そして、その方のお腹にはご自身のお子様がいらっしゃるということを、新参者の私にも優しく教えてくださった。
伯爵様と奥様は本当に仲睦まじく、私にはお二人が世界のすべてのように輝いて見えた。だからこそ私は、この尊いお二方のお子様を、自分の生涯を懸けて守り抜こうと心に誓ったの。
ちょうど同じ頃、私と同じハーフ・ヴァンパイアであり、伯爵様の遠縁にあたるナハトとも出会った。ナハトは両親を人間に殺され、伯爵様に引き取られてきたのだと聞いた。初めて会った時のナハトの眼は、何も映していないのではないかと思うくらい光を失っていた。
ナハトは常に黙々としており、その姿は何故か、弟のカインと重なった。似ているわけではないのに、何故重なったのかは今でも分からないけれど。だから私は、時間を作ってはナハトを無理やり連れ回した。お城のメイドさんと一緒に作ったお菓子をあげたり、本を読んであげたり……そんなことを続けているうちに、ナハトはほんの少しだけ、笑ってくれるようになった。
そんなある時、ついに伯爵様のお子様――ピエトロが生まれた。伯爵様は私とナハトに、生まれたばかりのピエトロをそっと抱っこさせてくださって、『この子を頼むよ』と、優しく仰ってくださった。
――その後、詳しい詳細は分からないけれど、奥様が姿を消された。
伯爵様は必死にその後を追いかけ、お城へと帰られた時……伯爵様の腕の中には、冷たく変わり果てた奥様のお身体があった。
その日を境に、お優しかった伯爵様は人間を憎むようになられた。それでも、人間の血を引く私やナハトへの態度は、決して変わることはなかった。どこかの人間と戦闘を行い、その深い傷を癒すために、長い、長い眠りにつかれるまでは。
そして最近、お目覚めになられた伯爵様は、昔のことをほとんど覚えていらっしゃらなかった。ピエトロがご自身の最愛の息子であることと、世界を征服すること――ただそれだけを繰り返していらっしゃる。
風の音が、私を過去の記憶から今という現実へと引き戻す。
私の目の前には、あの時守ると誓った伯爵様の息子であり、私やナハト、そして島のみんなで大切に育てあげたピエトロがいる。
この子はまだ物心つく前から両親がいなかったというのに、本当に、とても優しい子に育ってくれた。
できることなら、変わってしまわれたけれどお目覚めになられた伯爵様と、今度こそ温かい親子として幸せになってほしいと思うけれど……やはり、難しいことなのかしらね。
『よし、それじゃあ、カーミラさんとナハトさんがシュメルツを引き剥がして、連絡をくれたら作戦開始だな。みんな、準備はいいか?』
そのピエトロの弟弟子だという、横島くんの声で意識を戻した私は、彼らに向けてしっかりと返事を返した。
そうだわ、昔のことを考えている場合ではないわ。これから私たちは、最古参であるシュメルツ様と、私の実の弟であるカインの二人を相手にすることになるのだから、何を考えているのかしら。
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視点、横島
作戦が決まり、いざ出陣! という時、俺はあることを思いついた。それは万が一のためにあれをカーミラとナハトに渡しておくことだ。
それは『階級ワッペン』。
これの大将をカーミラに、中将をナハトにつけてもらっておき、最弱の二等兵を全員二枚ずつ持っておく。シュメルツやカインに万が一近づくことができたら、これを相手の視覚外のどこかに貼っておけば、カーミラやナハトが危険になったら命令してもらうことで解決できる!
我ながら名案だ。さっそく、それをカーミラとナハトに説明しよう。
「みんな、あともう一つ話があって」
俺はみんなに、階級ワッペンの性能について話した。これを使えば、まともに戦ったらヤバい四天王相手でも、力づくではなく『命令』によって無力化できる。説明を聞いたみんなが驚くなか、神父は深く感心したように、穏やかな笑みを浮かべて頷いた。
「なるほど、戦いを避けて一気に謁見の間を目指すための知恵だね。横島くん、実に見事な作戦じゃないか」
(神父がそう言って納得してくれるなら心強いな。大人のストッパー役が味方にいるのは助かる)
「それじゃあ、みなさんワッペンは持ちましたね? 俺達は石ころ帽子で進みます。カーミラさんとナハトさんは、シュメルツさんへのおとりをお願いしますね」
「分かったわ。ピエトロ、みなさんから絶対に離れてはダメよ?」
その注意にピートは、嬉しさ半分といったところか、少々ぶっきらぼうに返事をしていた。
そして、謁見の間への侵入組が石ころ帽子を被り、カーミラとナハトが部屋を出ようとした――その時。
扉の木目を引き裂いて、一本のナイフが突き刺さった。
そのナイフは、ドロリと形を崩すと、一瞬にして生々しい『血』へと姿を変えて滴り落ちる。
直後、廊下の影から冷徹な声が響いた。
「……こんなところでコソコソと、何の真似だ? 半端者共」
開いた扉の向こうにいたのは、カーミラと瓜二つ。
けれど、見るからに冷酷な眼差しを宿した、息を呑むほどに美しいヴァンパイアだった。
出来ましたので更新します。
オリジナルキャラ3人目の登場です。
それでは次回もいつになるとお約束できませんがよろしくお願いします。
失礼します。