ブラック鎮守府と僕   作:なかい

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第1話

高校2年の冬。

教室では進路決めで騒がしくなっていた。

男子は提督になる!とか女子は艦娘になろうかな!とか。

まあ適正試験を受からないとなれないものだから受からなかったときのリスクが高いため多分冗談だろうと思う。

僕はそんな喧騒を横目に窓の外を見ていた。

 

「はぁ〜、今日中にドレスを完成させないと来週の展示に間に合わないなぁ…」

 

憂鬱な気分になりながらため息混じりにそう呟く。

 

「おいまだ完成してねえのかよ正樹…」

 

後ろの席の天城大成がどやしてくる。

僕は肩越しに天城を見る。

 

「だってさぁ…最後の展示だと思ったら張り切って装飾凝り出したら止まんなくなっちゃってさぁ…はー、どうすりゃいいんだよぉ〜」

 

「あーあーわかったわかった!俺も手伝ってやるから!」

 

とてもいい友人だ。

こういう時に頼りになる。

そんな天城はいきなりどんよりとした顔になる。

 

「なぁ正樹、てーとく?ってそんないいもんなのかねぇ」

 

「さぁね〜、みんな良いと思ってるからなりたいんじゃないかな。僕はそう思わないけどさ」

 

「だよなぁ〜。だって何百人って女の子が部下なんだぜ?無理だろそんなの」

 

提督。

この世に深海棲艦が出現してから日本の平和を守る役職の人を指す。

艦娘と呼ばれる第二次大戦時代の戦艦の記憶を持つ女の子達を率いて深海棲艦と戦ういわば救世主である。

しかし、誰もがなれるわけではない。

艦娘の力を引き出すために必要なのが『妖精さん』という不可視の存在を視認出来なければならない。

妖精さんとコミュニケーションを取ることで艦娘を建造したり装備を開発したり出来ないのだ。

 

そんな確率も低いような役職に飛びつくほど僕らはバカじゃない。

別に提督以外にもちゃんとした職業は存在しているし、何より僕にも夢がある。

 

 

「まあ僕はファッションデザイナーになるつもりだから関係ないや」

 

「お前は良いよなぁ。俺はサッカー一筋だったし、就職もだりいなぁ」

 

「サッカー選手になればいいじゃん。お前何だかんだインターハイで唯一ハットトリック決めてて注目選手とかになってなかった?」

 

「あれ載せられる時俺は断ったんだけど両親がめっちゃ推してきてよ〜。しかも来年にドイツ留学とかあるんだぜ?」

 

「いいじゃないか。それだけ期待されてるんだよ」

 

そう、僕らは日本のために戦うなんてことは関係ない。

進むべき道は自分で決めてある。(天城はちょっと違うけど)

周りに流されず、進路希望調査票に『ファッションデザイナー』を書こう!

 

放課後は天城にも手伝ってもらって来週の展示にー

 

 

 

「あー、原田正樹はおるか?」

 

 

突然名前を呼ばれる。

あれは教頭か。特に何かしたわけではないが。

 

「はい!いまーす!」

 

「ちょっと校長室に来なさい。大事なお話があります」

 

周りがざわつく。

天城はニヤニヤしている。

 

「なんだよ正樹w何かやらかしたかぁ?」

 

「んなわけないだろ。親が事故にでもあったんじゃないか?」

 

「いやだったら今のお前の反応はサイコパスだろ!」

 

そう笑いながら僕は教頭のところに向かう。

 

「じゃあ後で家庭科室に来てくれ。その時にやることを教えるよ」

 

「おうよ!」

 

そう言い拳を合わせた。

 

 

 

この時の僕は知らなかったんだ。

ドレスは完成しないし、ファッションデザイナーになれないってこと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

教頭に連れられ校長室に着いた僕は中に校長以外の人物が2人いることに気づいた。

真っ白い軍服でヒゲを蓄えたおじいさん。

そしてその後ろには背の高いポニーテールの女の人。

しかもやたら露出の高い服。

 

その人の対面に座らされた僕はこう言われた。

 

「原田正樹くん、君には提督になってもらいたい」

 

「………は?」

 

僕は聞き返してしまった。

 

「原田くん!村松元帥殿になんて口の聞き方だ!すぐ謝りなさい!」

 

「いや良いですよ校長先生。誰でもこうなりますよ」

 

僕の失礼な発言に焦った校長先生を収める目の前のおじいさん。

村松元帥。

確か日本の提督をすべてまとめている総理大臣の次くらいの権力を持ってる人だっけ。

 

「原田くん、君は妖精さんを見たことはあるかい?」

 

目の前のおじいさn…ではなく村松元帥が聞いてくる。

見たことは、ない。ないんだよ。うん。

なのでこういうしかない。

 

「いえ…無いと思いますが…」

 

「え?ほんとに?」

 

「えぇ…生まれてこの方…」

 

「今わしの頭の上に乗っているんだけど…それも見えない?」

 

「いや、見えないっすね…昔提督の適正がある友達に説得されましたけど見えないから僕は提督適正はないんだなぁって今まで思って生きてきましたけど。本当は適正あるけど僕の目がおかしいってことなんですかね?」

 

「いや、いいんだ。とりあえず提督になってもらえるかな?」

 

なぜ!?

あれ?説明下手だったかな?

提督になれないってことを事細かにうざったらしく無知な学生っぽく言ったつもりなのだけど…

そもそも本当に見えないんだから勘弁してくれ…

 

「いや、妖精さんが見えたりしないと艦娘とうまくいかないんじゃないんですか?だから試験というものを「大和くん!彼を車で連れて行きなさい!」っておい!待ってなんで!あっ!強い!この人強い!うそ!艦娘すごい!待って!せめて肩に担いで!お姫様抱っこはイヤ!お婿に行けなくなる!」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

ふぅ…大和くんが連れて行かなければ危ないとこじゃった…

未だにわしの周りに彼専属の妖精さんがおる…

 

マサキヲツレテクナ!

セッカクコウガクメイサイマントヲツクッタノニ...

アッ!?ソレイッチャダメ!

 

彼専属の妖精さんは彼のことを慕っているらしい…

見えない謎も分かった…(透明マントまで作れるのかこやつら)

しかし、何故彼はこの子達のことをわかっておらんのじゃ?

ここまで慕われておる理由が分からない…

 

マサキヲオイカケルゾ!

シカタネエ!マサキハオレタチデマモルンダ!

オ-!

 

わしの周りを囲んでいた妖精さん達が窓から出て行く。

彼らがいるなら安心じゃろう。

なんたって彼の配属先は、

 

 

 

 

 

元、ブラック鎮守府じゃからな。

 

 

 

 

 

 

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