「着きましたよ原田"提督"」
村松元帥の秘書官、大和さんにそう言われる。
「なんかやっぱり慣れないので提督ってやめてもらえませんかね?」
「これから慣れていかないといけないんですよ?これくらいで恥ずかしがってちゃダメです!」
「はーい」
まるで小学校の先生みたいだ。
さて、そんなこんなで配属先の鎮守府に着いてしまった。
呉鎮守府。
名前くらいは知ってる鎮守府だ。
確か最前線じゃなかったか?こんなところ任されていいのだろうか。
僕は提督としての素養が全くないというのに。
「原田提督、多分門のところで艦娘が待っていると思います。私がお連れできるのはここまでです」
「えっ?一緒に来てくれないんですか?」
「…私はあそこには入っちゃダメなんです。きっとあなたもわかります。ですけど彼女たちを責めないであげてください!」
涙目になりながら大和さんは言う。
ちょっといきなりシリアスな展開になってしまい、これからの提督ライフも憂鬱だしなんか問題がさらに山積みになっていて混乱が一周回って冷静になってしまった。よかったじゃん。
「わかりました。その件に関しては僕は完全に部外者です。なので艦娘達からその話を振られても触らないようにしておきます」
「ありがとうございます!」
大和さんは深々と頭を下げてしまった。
あぁ、綺麗なポニーテールが地面に…
「あ、頭をあげてください大和さん!ポニーテールが痛んじゃいますよ!あっ!もう行かなきゃですね!原田正樹!いっきまーす!」
この空気を断ち切るために荷物を引っ掴んで鎮守府の方向へ走り出した!
「あっ!原田提督!」
「何ですかぁー!?」
背後の大和さんに呼び止められる。
「お元気でー!また村松元帥と私でお茶でもしましょう!」
「あっ…はーーーい!!!」
また出来ない約束をしてしまったかと思って言葉が詰まってしまった。
まあ同じ提督だし、大丈夫かな?
うん!大丈夫だろう!多分…きっと…
さぁ!長らくお待たせした!
僕の華麗なる着任!
これから始まる怒涛の提督ライフ!
艦娘達とともに日々切磋琢磨!一所懸命に励もう!
………誰に向かって言ってるんだ僕は
もうなんか高校卒業から怒涛の海軍学校で揉まれふらふらになりながら村松元帥にあれよこれよと振り回されここまで来た。
未だにメンタルは高2のまんまだよ!無理だろ!
はぁ…あの日学校を休んだけばあんなことにならなかったかなぁ。
ドレス、完成させたかったなぁ…
「あなたがこの鎮守府に着任される新しい提督様ですか?」
突然声をかけられる。
声の主は目の前にいた。
頭の中ではしゃぎすぎて全く周りが見えていなかった。
てか、この人も艦娘、なのかな?
すごいスタイルのいいメガネの女性。
でも、顔がとても白い。色白とかではなく死んでいる。
目も死んでる。
「あ、はい!原田正樹と言います!こちらでお世話になります!」
合宿所に来た野球部並みの挨拶しか出てこなかった。
階級も知らないんだよなぁ。
すると、目の前の女性が、
「ではご案内しますのでついて来てください」
と、歩いていった。
ついていったほうがいいんだよね?
僕は戸惑いながら門をくぐった。
「あれが新しい提督か…」
「長門さん…私たちはもう提督に従うのはやめると誓いました。あいつ、殺しますか?」
「殺しはまずい。あのクズ野郎を解任させた時みたいに、青葉と明石に逐一あいつの行動を監視させよう。少しでも変な動きをしたら懲罰房にぶち込んで餓死させればいい。そしたら沖に投げ捨てて殉職したとでも報告すればいいだろ」
「そうですね…人間は信用ならないです…」
「吹雪…お前は、いや、みんなは私が守ってやるからな…」
「…はい」