遊戯王GX ふたりぼっちの僕たちは   作:未OCGのアルカナフォース達に未来を!

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タイトルには無いですけど前編です。ですが今回はちょっと後編の更新は遅いかもしれません。


19話 ひとりぼっちの世界!

「もう着替え終わったかな?」

「うん。終わったわよ」

 

 僕は部屋のドアを開け、2階中央の部屋に入る。

 部屋の中にいる深月は、パーティーで着る様な綺麗なドレスを身に付けている。

 胸や背中を出した、袖の無いイブニングドレスという種類の物だ。

 宵闇の様な黒いドレスが、深月の白い肌をより一層美しく引き立てている。

 しかしスカートが長く、動きにくそうではある。

 

「うん。やっぱり似合ってるよ。深月に似合うドレスをしまっておいて良かった」

「ありがとう。嬉しいわ」

 

 他にも何着も新品のドレスは用意してあるけど、これが1番深月に似合うだろう。

 この間の肝試しで見られてしまったときはヒヤリとしたが、結果として着て貰えて良かった。

 深月は変わらず、虚ろな瞳で微笑んでいる。

 彼女を、いずれ解除するとはいえこうしてしまった罪悪感と彼女への愛しさが臨界を突破し、彼女の手を引いて抱き締める。

 

「……ごめんね、深月。すぐに深月が幸せになれる世界が出来るから。だから、それまでのちょっとの間だけ……僕のものでいて」

 

 これは、僕のワガママだ。

 こんなことをしても、深月は幸せにはならないだろう。それでも、ほんの一時でも良いから、この美しい少女を自分だけのものにしたかったのだ。

 

「……もの扱い、か」

 

 結局、僕はヒトにはなれないのだ。僕は自己中心的で倫理観に欠けた存在。今でさえ、この状態の深月を連れて何処かへ逃げてしまいたいとも思っている。

 それでも深月を幸せにしたいし、返せる恩は返したい。だから僕は逃げたりはしない。

 ……まぁ、仮に僕が逃げたとしても、三幻魔の復活を避けることは不可能だけど。

 

「……?何を言ってるのよ遊陽。私はあなたの物じゃない」

 

 心の無い、虚ろな瞳のまま彼女が言う。彼女の言葉の抑揚こそ普段のそれだが、今の言葉に感情はこもっていない。

 

「……そうだったね、深月」

 

 彼女の美しい体を穢してしまいそうな気がして、僕は彼女から離れる。

 

「……お腹が空いてきちゃうよね。ちょっと寮まで食べ物を取りに行ってくるから、ここで楽にしててよ」

「ありがとう、遊陽」

 

 僕は他の人に目をつけられ無いよう、オベリスクブルーの寮へと戻る。今は授業をしている時間だから、誰とも会うことは無かった。

 自室に入り、備え付けの冷蔵庫から食品をいくつか持ち出す。

 周囲を見渡してみると、机の上に1枚のカードが置いてあることに気がついた。

 

「あ、うっかり忘れてたよ」

 

 深月に似合うカードだ。後でプレゼントしようと思って机の上に置いておいたのを忘れてしまっていた様だ。

 僕はそのカードを取り、ブルー寮を出る。

 

「……待て」

 

 背後からかけられる声。振り向くと、そこには背の高い男子生徒……丸藤先輩が居た。

 

「……こんな時間にサボりですか?先輩」

「お前も言えたことでは無いだろう」

「……そうですね。何か用でもあるんですか?」

「……お前は、本当にセブンスターズなのか?」

 

 何をしてくるのかと思えばそんなことか。あんまり日光の当たる場所に食べ物を置いておきたくは無いんだけどなぁ。

 

「はい……あ、デュエルはしないですよ。丸藤先輩はもう鍵を持って居ませんし……深月が僕の帰りを待っているので」

「闇のデュエルとやらで洗脳した彼女か」

「洗脳……まぁ、そう言うことになるでしょうね。でもああでもしないと、深月は僕の考えに納得してくれませんから」

 

 丸藤先輩はかなりのポーカーフェイスだ。常に厳しそうな表情をしている。でも、今の彼は普段よりも強張っているように思えた。

 

「……明日香達から話は聞いた。彼女から君の記憶を消し、彼女が支配者となった世界で……幸せになれると思っているのか?」

「……なれますよ。深月はひとりぼっちが苦手なんです。でも彼女は友達がいれば強くなれる。だから世界を支配することで彼女の友達を増やせば、深月は幸せに過ごせるんです。誰の目を気にする事なく歌って、苛められる事もない。これ以上なく幸せな世界じゃないですか」

 

 全ての……は不可能だろうけど、無数の人間達が深月を崇める世界。今まで彼女を虐げてきた人間は復讐に怯えるのだろうけど。

 ……まぁ、優しい深月の事だ。きっと許してしまうんだろうなぁ。

 

「星見がお前に幸せにしてくれと頼んだのか?」

「……いいえ」

「それなら、お前の行為は自己満足だ。彼女を幸せにしたと思い込み、自分を幸せにしたいだけだ」

 

 丸藤先輩はそれだけ言うと、僕に背を向け去っていく。

 

「……丸藤先輩、あなたには分からないでしょうね。僕の様な、誰かを不幸にすることしか出来ない存在の気持ちなんて」

 

 その声は誰に届くこともなく、風に流され消えていった。

 

 

 

 夜の帳が降り、都会では見られなかった綺麗な星空が浮かぶ頃。僕と深月は地下のデュエル場で皆の到着を待っている。

 他の階からなるべく豪華で損傷の少ない椅子を運びだし、深月をそこに座らせた。

 

「ねぇ、遊陽。立っているのは辛くない?私が代わりましょうか?」

「良いんだよ。深月。君はそこに座っていて」

「……分かったわ」

 

 やがて複数の足音が聞こえてくる。十代達だ。

 

「……来たぜ、遊陽」

 

 彼の首からは、2つのネックレスがかけられている。……ダークネスの持っていたものだ。恐らくあれの依り代になっていた男から受け取ったのだろう。

 

「こんばんは、皆」

 

 深月は虚ろな瞳のままで、鍵を持った彼らに笑顔を振り撒く。

 まるで造花のような美しい笑顔なのに、彼らの纏う空気は一向に軟化しない。

 

「深月……」

 

 天上院さんが深月から目をそらす。

 

「昨日ぶりだね……今日は誰が相手になってくれるの?」

「……俺だぜ」

 

 十代が一歩前に踏み出し、デュエルディスクを構える。

 

「分かったよ。ルールは分かってるよね?このデュエルに負けたものは、ぬいぐるみへと変わる」

「上等だぜ。星見を助け出して、そしてぬいぐるみになったお前ももとに戻してやる!」

「……十代、君は闇のデュエルについて履き違えていないかな?罰ゲームを解除するには、闇のアイテムを持つものの敗北か、それ相応の奇跡が必要だよ。それこそ錬金術の叡智……賢者の石でも無い限りはね」

 

 今回は丸藤君や前田君は居ないようだ。カミューラみたいな例もあるし、無関係な彼らを巻き込むのは良くないと思ったのだろう。

 

「行くぜ!」

 

「「デュエル!!」」

 

遊陽 VS 十代

 

 デュエルが始まると同時に、イヤーカフから黒い霧が溢れ出し僕と十代を覆う。やがて霧は完全に僕たちを包み隠し、闇のドームを形成する。

 

「な、何だこれは……!?」

「僕はカミューラとは違って人質をとったりはしない。あくまでもデュエルは公平に行うよ」

 

 僕と十代の息遣いだけが聞こえる。外の空間とは完全に隔絶されたようだ。

 

「外からこの内部を見ることは出来ず、逆に中から外を見ることも出来ない。ここはひとりぼっちの世界。さぁ、闇のデュエルを始めようか」

 

 十代君には沢山の味方がいる。羨ましくは無い。僕には深月がついているのだから。だけど彼にも知ってもらおう。知ればきっと僕の意見に賛同してくれる。

 ひとりぼっちの恐ろしさというものを。

 

「僕の先攻、ドロー!」

 

 この間は負けてしまったけど、もう手加減はしない。

 

「魔法カードを2枚発動するよ。【魔玩具補綴】、そして【融合徴兵】!【デストーイ・シザー・ベアー】を十代に見せ、デッキから【融合】と【エッジインプ・シザー】、そして【ファーニマル・ベア】を手札に加えるよ」

「っ!融合素材を一気に揃えた!」

「その通り。僕は【融合】を発動し、手札の【エッジインプ・シザー】と【ファーニマル・ベア】を融合!おいで、全てを切り裂く戦慄のケダモノ!」

 

 ファーニマル・ベアにハサミが突き刺さり、クマのぬいぐるみに悪魔が取り憑く。

 

「【デストーイ・シザー・ベアー】!」

 

攻2200

 

「さらに僕は装備魔法【孤毒の剣】を発動し、【シザー・ベアー】に装備させるよ」

 

 紫色の毒々しい剣が地面に突き刺さり、シザー・ベアーがそれを引き抜く。

 

「……攻撃力が変化しない?」

「ひとりぼっちの恐ろしさを、せいぜい思い知れば良いよ。僕はこれでターンエンド」

 

 

遊陽 LP4000 手札3

モンスター:デストーイ・シザー・ベアー

魔法・罠:孤毒の剣

 

 

「くっ……俺のターン、ドロー!」

 

 十代がカードをドローする。彼はセブンスターズの1人、ダークネスを倒している。油断はしない。

 

「来い!【E・HEROスパークマン】!」

 

 雷光が黒い霧を照らし、光のヒーローが現れる。

 

攻1600

 

「永続魔法【補給部隊】を発動。さらにフィールド魔法【摩天楼-スカイスクレイパー-】を発動!」

 

 黒い霧のドームが、夜空の広がるビル街へと変化する。

 映像だとしても美しい満月が僕達を照らし、この闇の世界に僕達の影が現れる。

 

「ここはヒーローの戦う舞台、スカイスクレイパー!行くぜ、バトル!【スパークマン】で、【シザー・ベアー】を攻撃だっ!」

 

 スパークマンが夜空を舞う。纏った稲妻が夜闇を照らし、美しく彩っていく。

 

「【スカイスクレイパー】の効果発動!自分の【E・HERO】が自分よりも攻撃力が高いモンスターへ攻撃するとき、その攻撃力を1000ポイントアップする!」

 

攻1600→2600

 

「スカイスクレイパー・スパーク!」

「この瞬間、装備された【孤毒の剣】の効果が発動するよ。このカードは装備モンスター以外のモンスターが自分フィールドに存在すると消えてしまう代わりに、モンスターと戦闘を行うとき、元々のステータスを2倍にする!」

 

 そう。僕はひとりでも戦っていける。

 孤毒の剣から紫色のオーラが現れ、それがシザー・ベアーを包み込む。

 

攻2200→4400

 

「何っ!?」

「反撃だよ!モンスターイート!」

 

 摩天楼から雷を纏って落下するスパークマンを剣でいなし、もう片方の手で捕らえ口に放り込む。

 

「ぐっ……!」

 

LP4000→2200

 

「そして【シザー・ベアー】が戦闘でモンスターを破壊したことで、その相手モンスターを攻撃力1000アップの装備魔法へと変えるよ」

 

 シザー・ベアーの体が一回り大きくなる。

 

攻2200→3200

 

「だけど、【補給部隊】の効果が発動するぜ!1ターンに1度俺のモンスターが破壊されたとき、1枚ドローできる!」

「……中々厄介なカードだね」

「カードを1枚セット。ターンエンドだ」

 

 

十代 LP2200 手札3

モンスター:無し

魔法・罠:補給部隊 セット スカイスクレイパー

 

 

「僕のターン、ドロー!」

 

 孤毒の剣を維持するためには、モンスターを召喚してはいけない。最も今手札にいるモンスターは戦闘要員としてはとてもじゃないけど考えられない。

 

「バトルだよ!まさかこれで終わらないよね?【デストーイ・シザー・ベアー】でダイレクトアタック!」

 

 シザー・ベアーが夜の街を駆け抜け、十代に剣を振り下ろす。

 

「あぁ!まだまだだ!リバースカードオープン!【トゥルース・リインフォース】!デッキからレベル2以下の戦士族モンスター1体を特殊召喚するぜ!来い、【ヒーロー・キッズ】!」

 

 十代を守るように、年若い少年のヒーローが現れる。

 

守600

 

「【ヒーロー・キッズ】は、実力はまだまだ未熟だけど、仲間との絆で戦いを乗りきるのさ!【ヒーロー・キッズ】の特殊召喚に成功したとき、デッキから同名モンスターを任意の数特殊召喚するぜ!俺は2体の【ヒーロー・キッズ】を召喚だ!」

 

守600×2

 

 孤独なシザー・ベアーの前に、3人のヒーローが現れる。

 

「……なら、その内の1人には犠牲になってもらうよ。【シザー・ベアー】の胃の中で、ひとりぼっちで苦しめばいい!最初に召喚された【ヒーロー・キッズ】を攻撃だ!」

 

攻3200→5400

 

 か弱い抵抗も虚しく、ヒーロー・キッズがシザー・ベアーに飲み込まれる。

 

攻3200→4200

 

「【補給部隊】の効果でドロー。すぐに助けてやるからな!」

「【孤毒の剣】の効果で、戦闘を行うときには攻撃力6400になるこのカードを倒せるのかな?カードを1枚セット。ターンエンドだよ」

 

 

遊陽 LP4000 手札3

モンスター:シザー・ベアー

魔法・罠:孤毒の剣 スパークマン ヒーロー・キッズ セット

 

 

「俺のターン、ドロー!永続魔法【冥界の宝札】を発動!」

 

 モンスター2体以上を生け贄に捧げて生け贄召喚したとき、2枚のドローが可能なカードだ。そして彼のフィールドには2体のモンスター。

 

「俺は2体の【ヒーロー・キッズ】を生け贄に、【E・HEROエッジマン】を召喚だ!」

 

 2人のキッズが力を合わせ、十代のデッキの中では最もステータスの高いヒーローが現れる。

 

攻2600

 

「【冥界の宝札】で2枚ドローし、さらに【融合】を発動!手札の【フェザーマン】と【ワイルドマン】を融合素材に、融合召喚!【E・HEROワイルド・ウィングマン】!」

 

 風が吹き荒れ、月を背後にフェザーマンの翼を持ったワイルドマンが現れる。

 

攻1900

 

「【ワイルド・ウィングマン】は、手札を1枚捨てることで魔法・罠カードを1枚破壊できるぜ!俺は2枚の手札を捨て、【孤毒の剣】と装備された【ヒーロー・キッズ】を破壊する!」

 

 ワイルド・ウィングマンがその翼で突風を起こし、孤毒の剣を吹き飛ばす。さらにシザー・ベアーに掴みかかり、その頭の中からヒーロー・キッズを引きずり出した。

 救出されたヒーロー・キッズは安心したような笑みで消えていく。

 

攻4200→3200

 

「これでもう攻撃力は上がらない!バトル!【エッジマン】で【シザー・ベアー】を攻撃だ!【エッジマン】の攻撃力は【スカイスクレイパー】により、1000ポイントアップする!」

 

攻2600→3600

 

 エッジマンの攻撃力がシザー・ベアーを超え、僕のモンスターはズタズタに切り裂かれる。

 

「くっ……」

 

LP4000→3600

 

「さらに続けて、【ワイルド・ウィングマン】でダイレクトアタック!」

「リバースカードオープン!【ガード・ブロック】!その戦闘ダメージを0にし、1枚ドローするよ」

 

 ……うん、悪くない。

 

「俺はこれでターンエンドだぜ!」

 

 

十代 LP2200 手札0

モンスター:エッジマン ワイルド・ウィングマン

魔法・罠:補給部隊 冥界の宝札 スカイスクレイパー

 

 

「僕のターン、ドロー」

 

 フィールドこそ十代の方が優位だけど、手札は0枚。つまりフィールドが空になってしまえば、十代は次にドローする1枚のカードで戦わなければいけない。

 

「行くよ、手札を1枚デッキの上に戻すことで、墓地の【エッジインプ・シザー】は守備表示で特殊召喚できる!」

 

守800

 

「さらに僕は【ファーニマル・マウス】を召喚!」

 

 ポン!という可愛らしい音がして、僕の前には青い色の小さなハムスターが現れる。

 

守100

 

「守備力100のモンスター……何をたくらんでいるんだ?」

「……さぁ、ね。君の言う絆っていうのは、こう言うことなのかな?【ファーニマル・マウス】の効果発動!同名モンスターをデッキから2体まで特殊召喚する!」

 

 同じ見た目のハムスターがさらに2体、デッキから召喚される。

 

守100×2

 

「そして永続魔法【デストーイ・ファクトリー】発動!墓地から【融合徴兵】を除外して、その効果を発動させる!」

「融合召喚を行う効果か!」

 

 僕の足元に黒い渦が広がっていく。

 

「僕はフィールドの【エッジインプ・シザー】と【ファーニマル・マウス】3体、そして手札の【ファーニマル・シープ】を融合!」

「なっ、5体のモンスターを融合素材にしただと!?」

「刃向かう者を処刑せよ、冷徹のケダモノ!おいで、【デストーイ・シザー・タイガー】!」

 

 4体のファーニマルが、ハサミによって一気に切り裂かれる。

 エッジインプ・シザーはドロドロに溶けて残骸を吸収し、新しい形を手に入れる。

 

攻1900

 

 美しい水色の毛皮を月光に輝かせ、ハサミの生えたトラのぬいぐるみは、血走った目を十代に向けた。




今回のカード紹介コーナーもお休みです。

イチャイチャタイム(洗脳)。

自分で言うのもあれですけど駆け足過ぎて超展開ですね。とはいえ2回目となる原作主人公戦。それではまた次回もお会いできればうれしいですー!
ではでは。
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