遊戯王GX ふたりぼっちの僕たちは   作:未OCGのアルカナフォース達に未来を!

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1期の最終回、デュエル描写はありません。


27話 僕たちふたりと

 あれから、理事長は元の年齢まで体が戻った。私達のような若い人を見て、もう一度あの若さを取り戻したいと思ってしまったようだ。

 ……私達もいつか年老いた後、彼のように感じてしまうのだろうか。

 三幻魔が再び封印されたことで遊陽を引きずり出していた力も消え、彼はまたぬいぐるみの中に戻ってしまった。

 それから数日。一時期は異常気象や噴火によってパニックだった生徒達も落ち着きを取り戻し、すぐそこまでに迫った期末試験に備えて勉強を再開していた。

 そして期末試験や3年生の卒業デュエルも終え、今は夏休み。前田君はI2社にスカウトされた事でこの学校を中退し、半数以上の生徒達は船に乗って本土へと帰っている。

 ……でも、私はここを離れるわけにはいかない。

 

「ファラオさーん……大徳寺先生を出してよー……」

 

 私はレッド寮の食堂でファラオにお願いしに来ている。

 三幻魔とのデュエルで、賢者の石を手に入れたのは良い。十代君も、遊陽を復活させるために是非!と私に譲ってくれた。

 だがしかし。

 ……賢者の石の使い方が分からない。

 三幻魔戦で分かった最後の効果は、あくまでもデュエルモンスターズのカードとしての効果だ。試しにデュエルディスクに置いてみようかとも思ったけど、良く分からないものを良く分からないまま使って浪費してしまうのが怖い。このカードに代わりは無いのだから。

 だから私はこのカードの元々の所有者である大徳寺先生に会いたいのだが……。

 

「ニャーン」

 

 ……ファラオが言うことを聞いてくれないのだ。

 いや、そもそもファラオの意思で出せるのかも謎だ。

 私達とのデュエルで死亡した大徳寺先生は成仏する筈だったのだが、その直前に魂がファラオに食べられてしまい、今はファラオの中にいるようだ。

 だからこの間のデュエル中にも助けに来てくれたのだろう。

 

「ダメかぁ……」

 

 私はファラオの頭を撫でる。

 ファラオは嬉しそうに喉をゴロゴロと鳴らすものの、大徳寺先生を召喚してくれそうにはない。

 

「今日もダメかぁ……なぁファラオ、そろそろ良いだろー?」

「僕には見えないっスけどね」

 

 同じ食堂にいた十代君や丸藤君も、困ったような顔でファラオを見ている。

 

「うーん。ダメね。今日はもう帰るわ」

「そっかぁ……もし大徳寺先生が出てきたら、すぐ連絡するぜ」

「うん。ありがと!」

 

 私は自室に帰り、デッキケースに入っている1枚のカードを取り出す。

 賢者の石-サバティエル。元々3枚のカードだったのに、あのデュエル以降は1枚のカードになって、虹色の光を放っている。

 

「……遊陽。後ちょっとなのになぁ……」

 

 そのカードを机に置いて、ベッドの上に置いてある遊陽のぬいぐるみを抱き締め、寝転ぶ。

 最近はもはや抱き枕の様な扱いになってきている。ベタベタと触っている割には全然汚れていないけど、やっぱり元々人間だったものだから、普通のぬいぐるみとは違うのだろうか。

 ……いや、汚れちゃったとして、洗濯したらどうなるのか……きっと恐ろしい結果が待っているに違いない。

 

「……今度もう1度、エメラルド・タブレットを翻訳してみようかしら」

 

 あんな頭の痛くなる作業をもう一度やるのは嫌だけど、遊陽の為だ。

 鏡泉君は童実野町にあるという実家に帰ったみたいだし、取り巻きの2人組も居ないから今度はひとりでやらなくちゃ。

 そんなことを考えていると、電話がかかってきた。

 

『深月か?』

『十代君、何かあったの?』

『さっきファラオから大徳寺先生が出てきたんだよ!すぐ食べられちゃったけどな』

『えっ!……そっか、残念』

『それでさ、気づいたんだよ。大徳寺先生は、あくびかゲップと一緒に出てくるんじゃないか?』

『あくびと……ゲップ?』

『そうそう!だからさ、ファラオをお腹一杯にさせて、大徳寺先生を召喚しようぜ!』

『……えっ?』

 

 

「こんな所に呼び出して何の用だ十代!」

「また海を前にしてドローの訓練をするのか?よし、俺も付き合うぞ!」

「十代、そもそもあなた何を持ってるのよ?」

「釣竿ッスよ!」

「いやいや、見ればわかるわよ丸藤君」

 

 ファラオの餌を集めるから来てくれと呼ばれた先は、オシリスレッド近くの崖。崖と言っても落ちても死にはしないだろうという高さだ。

 そこには明日香や万丈目君、三沢君も集まっている。十代君と丸藤君はバケツと何本もの釣竿を担いで立っていた。

 

「大徳寺先生がいたときは、こうして釣りをして晩飯の材料を集めてたんだぜ」

「十代君、まさかここで魚を沢山釣ってファラオに食べさせて……」

「そう!お腹一杯になったところで大徳寺先生を召喚してもらうのさ!」

 

 大徳寺先生の話をする私たちを、他の皆は変な目で見ている。

 

「深月?大徳寺先生がどうしたのよ?」

「そっか、皆には見えてないのよね」

「……?」

 

 明日香達は心当たりが無いようで首をかしげている。

 

「俺にも見えたぞ。まぁ、精霊を見る力があるかどうか、ってところだろうな」

『流石だねぇアニキィ~』

「うるさいぞ!」

 

 何かの声が聞こえた気がする。万丈目君は、きっとその精霊とやらと話しているのだろうか。

 ……よくよく眼を凝らしてみると、万丈目君の頭上を黄色い何かが回っているように見える。

 十代君や万丈目君には精霊と心を通わす力があるらしいけど、私のはそれほど強くないのかもしれない。

 

『マシュ?』

 

 たまに、幻聴の様に何かの声が聞こえるだけだ。

 

「ま、とりあえずそういうことさ!皆で釣りを楽しもうぜ!」

 

 そんな十代君の声を合図に、釣り大会が始まった。万丈目君はかなり嫌そうだったけど、十代君とつった魚の大きさを競いあっている。

 

「……うーん、ちょっとこのエサは苦手ね……」

 

 明日香が釣り餌であるゴカイの入ったケースを気味悪そうに見ている。

 

「明日香は虫とかダメ?つけましょうか?」

「大丈夫よ。餌は団子の方を使うわ」

 

 私は団子状の餌を針に取り付ける明日香を横目に、ゴカイの頭を押さえ噛まれない様にして針を突き刺す。

 

「深月はそういうの平気なのね」

「あー、ゴカイを見るのは初めてだけど……ムカデとそんなに変わらないわね」

「ムカデ?」

「うん。私の育った施設はね、建物とか設備は良いんだけど、裏に森があるからか虫が入ってくることが多かったのよ。だから、ほとんどの虫には慣れちゃったわ……」

 

 昔はムカデなんてそれはもう恐ろしかったけど、今目の前に来られても冷静に対処できるだろう。

 私はゴカイをつけた釣り針を海に投げ入れる。あとはかかるのをおとなしく待つだけだ。

 

「へへっ!大物ドローだぜ!」

「フン!この俺様の方が大きいだろう!」

「えー?そうかぁ?見栄を張るなよ万丈目」

「ぜ、全然つれないッス……」

「大丈夫か?釣りも全部計算さ。風向きと波の大きさから、針を右斜め48度の方角に……」

「そんな細かいの無理ッスよ!」

 

 男子達はもう既に何匹かの魚を釣り上げていた。大きさは様々だけど、太平洋の中心ということもあってか、色とりどりな魚達だ。

 ……うん。いかにも熱帯魚って感じで、食欲の湧く魚じゃない。

 そんな風に皆の様子を眺めていると、竿が引かれている感覚を手に感じる。

 

「来たっ!」

 

 リールを回転させて糸を引き、魚を釣り上げる。

 釣れたのは手のひらサイズの小さな魚だ。魚には詳しくないから名前はわからないけど、これまたトロピカルな色合いをしている。

 

「こ、これ、食べられるのかな?」

「少なくともお店には並んでないわね」

 

 明日香と2人で釣り開けた魚を見て笑う。

 

「ニャーン」

 

 いつの間にか足元にいたファラオが魚を見上げている。

 

「食べるの?ファラオ」

 

 私は釣った魚をファラオの前に置くと、ファラオはその魚をペロリと舐め、かじりつく。

 

「こういう魚も食べるのね」

「たっくさん食べて、大徳寺先生に会わせてよね」

「ニャーオ」

 

 私の言葉を理解しているのかは分からないけど、ファラオは鳴いて返事をすると魚を食べる。

 

「さて、釣りを続けましょうか!」

「ええ」

 

 とはいえ、そう簡単に釣れるものでもない。

 雑談のネタを大体話尽くした私達は、ぼーっと海を眺めながら釣竿が揺れるのを待っていた。

 

「そういえば、最近また歌ってるわね」

「あぁ、やっぱり隣の部屋だと聞こえちゃうわよね」

 

 遊陽が居なくなって、私は精神的に不安定になり、歌を歌う余裕すらなかった。でも今は遊陽が居ないとはいえ彼を助け出す方法は手に入ったから、落ち着いてきた。だから部屋の中で歌っていたりしたんだけど……聞かれていたみたいだ。

 

「うるさくない?」

「全然!むしろ今ここでも聞きたいわ」

「そ、それは照れちゃうなぁ……」

「魚もあんまり来ないし、歌ってたら引き寄せられたりするかもしれないわね」

「えー、そうかなぁ」

 

 まあ、それでも聞きたいのなら歌ってみようかな。

 

「ちょっとだけよ?……あー、あー」

 

 声を整えて、海に向かって歌い出す。

 

「Mary had a little lamb♪Little lamb♪little lamb♪Mary had a little lamb♪Its fleece was white as snow♪」

 

 メリーさんのひつじ。童謡として日本でも有名な曲だ。

 

「It followed her to school one day♪School one day♪school one day♪It followed her to school one day♪Which was against the rule♪」

 

 この曲は、祖母が教えてくれたものだ。メリーという女の子と、彼女の大切な友達の歌。

 

「Why does the lamb love Mary so♪Mary so♪Mary so♪Why does the lamb love Mary so♪The eager children cried♪」

 

 施設にいた頃、年下の子供たちからはいつも歌ってとリクエストされていた。私の十八番だ。

 

「Why, Mary loves the lamb, you know♪Lamb, you know♪ lamb, you know♪Why, Mary loves the lamb, you know♪The teacher then replied♪」

 

 メロディーはほとんど変わらない歌だけど、だからこそ小さい子供たちと一緒に歌えた。

 

「素敵ね。海外版は聞いたこと無いけど、どんな意味なの?」

「日本でのメリーさんとそんなに変わらないわよ」

 

 確か、日本語に訳していくと、

 

「メリーさんの友達の羊が、学校までやって来て大騒ぎ。学校を追い出されちゃうけど、羊は外でメリーさんを待ってるの」

「そんな歌詞だったのね」

「うん。そして生徒の一人が先生に聞くの。どうして羊は、メリーさんの事が好きなの?って」

「どうして?」

「先生が答えるわ。それはね、メリーさんも、羊の事が大好きだからだよ、って」

「ふふ、なんだか、あなたと黒野君みたいね」

「えっ?……あっ」

 

 顔が熱いのは、この夏の日差しのせいでは無いだろう。今鏡をみたら耳まで真っ赤になっているかもしれない。

 

「ち、ちがっ!そんなつもりじゃないのよ!?」

 

 慌てて取り繕うとするが、明日香は暖かい目を私に向けている。

 

「あっ!今竿が引かれた気がするわ!」

「本当?」

「本当よ!」

 

 今日2匹目の魚を釣り上げる頃には、太陽が沈みかけていた。

 

 

「……と、いうわけで!」

『ファラオがまた太っちゃうのニャー……』

「わりぃな大徳寺先生!」

「ごめんね、ファラオ。ちょっとだけ待っててね」

「ニャーン……」

「まさか本当に猫の中に先生がいるなんてな……」

 

 大徳寺先生の姿を見えない他の人をよそに、私達は召喚に成功した大徳寺先生を囲んでいた。

 他の皆には、大徳寺先生がまた食べられないよう、ファラオを見て貰っている。

 

『それで、用件は分かるニャ。遊陽君を復活させたいのニャ?』

「はい。賢者の石は手に入ったんですけど、使い方が分からなくて……」

『それなら、あの廃寮の地下に行くのニャ。あそこには機材が揃っているから、遊陽君の体をまた作り出すこともできるのニャ』

「作るんですか?」

『その通りニャ』

 

 私達は廃寮に向かう。もう時間は夜で真っ暗だけど、先生のお陰で迷うことはない。

 

「ほんとにそこに居るんスか?」

「俺達には何も見えないからな」

 

 三沢君と丸藤君が怪訝な瞳で私達を見ている。

 でも確かに、大徳寺先生の魂は私達を先導するように浮遊しているのだ。

 

「……もう少しだよ、遊陽」

 

 私は抱き抱えたぬいぐるみに囁いた。

 私が以前地下の研究所にやって来たときは連れ去られたようなものだから、自分の足でここまで来たのは初めてだ。

 大徳寺先生が部屋の明かりの場所を十代君に教え、明かりをつける。

 

『まさか本当に、サバティエルの最後の力を使わずに倒すとは思わなかったのニャ』

 

 私の手には、光輝く賢者の石のカードが握られている。

 

「……私も、正直勝てるかは不安でした。十代君と、遊陽がくれたあのカードと、ブルーム・ディーヴァのお陰です」

「いや、あれは確かにお前のお陰だぜ、深月」

「そう、かな?」

『そういえば、ブルーム・ディーヴァのあの召喚条件なら最初から出せていた筈だニャ』

「確かにそうなんですけど……あのカード、デュエルを始めた時点では持ってなかったんです」

『ニャんと……?』

 

 幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ。私はデッキケースからそのカードを取りだし、眺める。

 

『……なるほど、ニャ』

「何か、分かったんですか?」

『サバティエルは、融合に関係するカードを作り出すものなんだニャ。だから君達はその奇跡によって、融合回収や再融合のカードを手にいれた』

「そして、最後に融合のカードですね」

『それニャ。きっと最後に奇跡を起こしたのは……遊陽君だったのではないかニャ?』

「遊陽が?」

『そうニャ。賢者の石は奇跡を起こすもの。深月君に新しい力を与え、それを呼び出すのに必要な融合へと姿を変えたんだニャ』

「……そう、かもしれませんね」

 

 大徳寺先生が、大きな機械の前にとまりふわふわと浮いている。幾つものレバーやスイッチのついた、水槽のような機械だ。

 ガラスの様なもので出来た扉がついており、中身は空っぽだ。

 

『それじゃあ、私の言う通りに機械を動かすのニャ』

「お願いします、先生」

 

 ファラオが大徳寺先生を食べようとしても皆が抑えてくれると思うけど、限界もあるだろう。だからテキパキとやらないと!

 扉を開けて遊陽のぬいぐるみを水槽に入れ、いくつかのスイッチを入れる。

 そしてその水槽の中に、賢者の石を入れた。

 さらに私の指をナイフで切り、絞り出した血を何滴か注ぐ。

 

『ひぇぇ……』

「あんな闇のデュエルしておいて、血はダメなんですか?」

『闇のデュエルじゃ流血はしないのニャー……よくそんなに躊躇いもなく指を切れるのニャ』

「指が離れるほど切ってるわけじゃ無いですし、遊陽の為ですから」

『愛の力だニャあ……あとはしばらく待つだけだニャ』

「これってホムンクルスの作成ですよね?こんなに簡単でいいんですか?」

『私や、前の遊陽君の体を作ったときにはもっと大変だったニャ。色々な材料も必要になってくるんだニャ。今やっているのが簡単なのは、賢者の石のお陰だニャ』

 

 機械を作動させると液体が水槽を満たす。

 ぬいぐるみが光を放ち始め、水槽の中は見えなくなってしまう。

 

『本来ならホムンクルスの寿命は短いのニャ……でも、賢者の石なら完全な生命体を作り出す事ができる。永遠の命とまでは行かなくとも、遊陽君はちゃんと、人並みの寿命を持った人間として生まれ変わるのニャ』

 

 時間はまだまだ掛かりそうだ。ファラオはお腹一杯なのか、大人しく大徳寺先生を見ているだけだ。

 

「……これで、やることは終わりですか?」

『そうだニャ。……深月君、深月君は、遊陽君を責めないであげて欲しいのニャ』

「先生?」

『彼はずっと、君を裏切り続けていた。でも、方法は間違ってしまったけど、彼が君のために行動していたのは本当なのニャ』

「……分かってますよ。先生。私だって、先生と同じくらい……ううん。ぬいぐるみの頃も含めれば、先生以上に遊陽と一緒にいるんです」

 

 私はファラオを抱き抱え、頭をなでる。ファラオは大人しく喉をならしていた。

 

「私と一緒にいた遊陽は、いつだって優しかった。私が嫌なことをされたら怒ってくれたし、私が困ってるときは助けてくれた。隠し事があったとしても、私と遊陽との思い出は……嘘じゃないと思うんです」

『そうだニャ』

 

 水槽の光がさらに強くなり、排気口から蒸気が出てくる。

 

『そろそろ、だニャ』

「遊陽……!」

 

 蒸気の排出が止まり、扉が開く。

 その中から遊陽が現れ、倒れそうになる。

 

「ちょっと、遊陽!?」

 

 私は彼を支えようと前に出て、押し倒されてしまう。

 

「……あれ、ここは……?」

「遊陽……!」

「深月……?」

 

 遊陽はぼんやりした瞳で私を見る。その顔が少しずつ赤く染まっていき、飛び跳ねるように私から離れようとする。

 私は遊陽の体を掴み、そのまま逃がすまいと抱き締める。

 

「ご、ごめんっ、深月!」

「良かった……良かったぁぁ!遊陽ぃぃ……!」

「黒野!」

「フン!ようやく戻ってきたか!」

「久しぶりだな、遊陽!」

「良かったわね、深月」

「ほんとに、良かったッス……!」

「おいおい、泣くなよ翔」

「な、泣いてないッスよ!」

 

 皆が倒れたまま抱き合う私達を微笑ましそうに見ているのに気づく。

 私の顔はきっと真っ赤で、涙でグシャグシャだ。

 私達はさっと立ちあがり服を整える。

 遊陽は消えてしまった時と同じく、オベリスクブルーの制服を着ていた。あの水槽の中に居たからか、制服はびしょ濡れだけど。

 

『制服ごと巻き込んでぬいぐるみになったから、制服もちゃんと戻ったのニャ。良かったニャー』

「大徳寺先生?その姿は……」

『あぁ。これはまぁいろいろあったのニャ』

 

 大徳寺先生は遊陽に今まで何があったのかを説明する。

 

「そう、でしたか。僕に体をくれた錬金術師は、大徳寺先生だったんですね」

「知らなかったの?」

「うん。彼はアムナエルと名乗っていたし、仮面をつけていたから」

『影丸理事長も秘密主義が過ぎるのニャ……』

 

 遊陽は自分の体を確かめる様に見回し、動かしている。

 

「……すごいや。今までと全然違う。体が軽いし、思ったように動ける」

「えへへ、良かったわ!遊陽!」

「……ありがとう、深月」

 

 そうだ。遊陽に言わなくちゃ。ずっと言おうとしていた事。ここなら、今なら、言える筈。

 

「あのね、遊陽」

「ニャー!」

『にゃぁぁ!?』

 

 大人しくしていたファラオが急に飛び上がり、大徳寺先生の魂を丸のみにしてどこかへ逃げていく。

 

「み、深月!?大徳寺先生が食べられたんだけど!?」

「あはは。また出てくるわよ。いつかね」

「え、そうなの?」

 

 遊陽が不安そうにファラオが出ていった扉を見ているけど……ファラオは、もしかしたら気を利かせてくれたのかもしれない。

 

「……チッ、お前ら、ファラオを追いかけるぞ!」

「……あぁ、そうだな。行こうか十代」

「ふふ、そうね。行くわよ」

「えっ、黒野君とお話ししなくて良いんスか?」

「そうそう、俺も話したいこと色々あるし――」

「「「いいから行く!」」」

 

 十代君と丸藤君を引っ張って、他の皆も研究室を出ていく。皆、良い人達だ。

 

「ねぇ、遊陽」

 

 心臓が高鳴る。幻魔達を前にしたときとは違う、どこか心地のいい緊張。

 

「ずっと、ずっと言おうと思ってたの。私ね、遊陽の事……大好き!」

「深月……」

 

 遊陽は一瞬嬉しそうに目を輝かせるが、すぐにその表情は曇ってしまう。

 

「……僕は、君を裏切ったんだよ?それに僕は人間じゃない。恨みと呪いによって産み出された化け物なんだ」

「遊陽は人間よ!例えどんな経緯でここにいるとしても、私が遊陽を好きなことは……変わらない、から……」

 

 段々と恥ずかしくなってきて、言葉が尻すぼみになってしまう。遊陽はそんな私を微笑みながら見つめて、言った。

 

「僕も、だよ。僕も深月の事が、世界で一番大好きだ」

 

 そう言って遊陽は私の体を抱き寄せて――

 

「~!?」

 

 キスをした。

 

 

 

 僕たちの学園生活、その最初の1年はこれで終わり。

 あの後僕はクロノス先生にこっぴどく叱られた。闇のデュエルを行っていたことを、深月や皆を危険にさらしたことを。あとついでに試験を受けられなかったことも。

 それでも反省文と追加課題・追加試験だけで許してくれたのは、クロノス先生なりの優しさなのかもしれない。

 無事追加試験を突破した僕は、深月達と一緒に2年生になれることが決まった。金銭面はどうしようかと思っていたけど、深月の分も含めここを卒業するまでは影丸さんが面倒を見てくれるらしい。

 影丸さんは十代の直接攻撃によって腰を痛めていたようだけど、今でも元気なようだ。……ありがたいけど、ちょっと複雑な気分だ。

 

「ねぇ、遊陽!久々にデュエルしましょ?」

「うん、勿論!」

 

 夏休みも後半に差し掛かり、新しい1年がやって来る。

 

「おっ?面白そうじゃん!俺も混ぜてくれよ!」

「私もやるわ!最近デッキを新しくしたのよ」

 

 もう決められた役割なんか無い。だから次の1年は、僕が何をするかを決めなくちゃいけない。

 

「待て!まずは俺とデュエルするのが先だろう!お前のせいでブルー寮を追い出されたこと、まだ許してないからな!」

「ハハハ。どうせならトーナメント形式にするのはどうだ?」

「あ、居たんスか三沢君?」

 

 これは、僕たちふたりと、愉快な仲間達の物語。




ここまでお読みいただきありがとうございました。皆様の応援のお陰で、1期の最後まで書ききることが出来ました。
今までで全く出てこなかった謎の人物(仮面の男とか)は今後出てくる予定です。
次回以降の投稿ですが、大まかな方向は決まっているのですが細かい部分がまだなので、かなり遅めになりそうです。
失踪はしないように頑張りますので、のんびりと待っていただけたら嬉しいです。

ようやくアルカナフォースの出番ですよ皆さん。
GX出身で一番好きなカテゴリです!
今から楽しみですよ斎王様!

それでは、また次回もお会いできたら嬉しいです。
ではではー!
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