遊戯王GX ふたりぼっちの僕たちは   作:未OCGのアルカナフォース達に未来を!

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正位置の『月』:不安定、幻惑、不信。


37話 揺蕩う月に光差す

「おーい、十代!」

『どこにいるのぉーん?』

 

 暗い森の中、万丈目準は行方不明になった十代を探していた。

 あのアイドル騒動の後、突如姿を消した十代。彼の友人達はパニックだった。しかし島中を探しているのに、彼が見つかることはない。

 

「あのバカ、一体どこをほっつき歩いているんだ……!」

『全然見つからないねぇん』

 

 そんな準の前に白い服を着た男が現れた。

 

「やぁ、探し物でもしてるのか?万丈目君」

「終理先生!?どうしてここに、いや、その服は……?」

「あぁ、これかい?これはちょっとしたイメチェン、かな。そういえば万丈目君、十代君を探しているのかい?」

「知ってるのか!?いや、知っているんですか?」

「あぁ」

 

 創はそう言うと、コートに付いたデュエルディスクを構える。突き刺すような刺々しい白いオーラが、彼の背後から立ち上がる。

 

「教えてあげよう。俺に勝てたら、な」

「ふざけないでください!僕たちは必死に……!」

「君には悪いけど、簡単には教えられないんだよ。これも運命の導きだから、ね」

 

 しびれを切らした準はデュエルディスクを展開し、創の前に立つ。

 

『ま、待ってよアニキィ、あいつ、怪しいよぉ』

「うるさい!お前達はすっこんでろ!」

「「デュエル!!」」

 

 

「くっ……なんだ?このカードは……!」

 

 空に浮かぶ大きな1つ目。創のフィールドには、白い霧の様なモンスターが4体。

 

「これで終わりだね、万丈目君。全てを光に包むために、君にもその素晴らしさを知ってもらおうか!」

『あ、アニキー!』

 

 4体のモンスターが強い光を放つ。暗い森の中に現れた『白』に全てが飲み込まれ――消えた。

 

 

 

「……あれは、万丈目君なの?」

「多分……?」

 

 場所はレッド寮の食堂。

 トメさんお手製の夕御飯を食べにレッド寮に来た私達を迎えたのは、真っ白な制服を着た万丈目君だ。万丈目君といえばあの真っ黒なコートの筈なのに、これはどういう心境の変化なのか。

 

「やぁ黒野、それに星見!」

「万丈目君、その服装はどうしたの?」

 

 私が直接聞いてみると、万丈目君は上機嫌な様子で答える。

 

「気づいたか?素晴らしい白だろう?」

「う、うん。綺麗な制服ね。でも、そんな制服あったかしら?」

「この俺が特別に頂いたのだ。斎王様が遣わした光の使者からな」

 

 光の使者?言っていることがちんぷんかんぷんでよく分からない。なんだか目もギラギラしているし、誰が見て様子がおかしい。

 

「君達も早く光に目覚めるがいいさ。それでは、俺にはやることがあるのでな」

 

 高笑いをしながら、万丈目君はレッド寮を去っていく。

 

「……三沢君、何があったのか知ってる?」

 

 遊陽が食堂で鯖の塩焼き定食を食べていた三沢君に話し掛けるが、首を横に振られてしまう。

 

「いや……今朝から急にあの白い服を着るようになってな。俺も何があったのかは……」

「万丈目君が変なのはいつもの事ッスけど、今日のは流石に変だと思うッス」

「十代が居なくなって、万丈目君までおかしくなっちゃうなんて……レッド寮はどうなるのかしら」

 

 丸藤君と明日香も食堂にいる。3人ともレッド寮の生徒ではない筈なのに、随分と馴染んでいる。

 相変わらず十代君は見つかっていない。あれからかなり経っているし、もし飲まず食わずなら餓死しているかもしれない。

 

「やっぱりあんなやつじゃレッド寮は守れないドン!今こそここに残った俺達が、アニキの留守を守りきるザウルス!」

「「「おー!」」」

 

 皆が息を合わせて右手をあげる。皆の結束は強い。けど、万丈目君の言っていた斎王様っていうのは誰の事なのかな?

 

「それじゃあ、レッド寮を守るため、何が出来るか考えるッス!」

 

 夕御飯を食べながら皆で話し合う。

 今はクロノス校長も大人しいけど、また何かをたくらんでくるかもしれない。そんな内容の話をして、解散の流れになった。

 

「それじゃあ、僕たちは帰ろうか、深月」

「そうね。それじゃあまた、明日ね」

「待ってるザウルスー!」

 

 レッド寮に残る皆に別れを告げ、ブルー寮へと戻る。この島には街灯がないから、月の光が唯一の明かりと言っても過言ではない。やがて湖に反射した月の光に照らされたブルー寮が見えてくる。

 

「それじゃ、また明日」

「うん!電話するわね、遊陽!」

 

 遊陽は小さく手を振ると、男子寮へと入っていく。私もそれに答えて手を振ると、少しだけ離れた女子寮に向けて歩き始めた。

 月の明かりを頼りに森の中の道を進んでいく。

 

「こんばんは、良い夜ですね」

「だ、誰!?」

 

 男性の声。振り向くと、道の真ん中にはオベリスクブルーの制服を着た背の高い男性がいる。彼の前には真っ白な丸いテーブル。

 あんなもの、さっきまで無かった筈なのに。

 

「ふふふ、警戒しないでください。私はただ、貴女の進むべき道を示しに来ただけなのですから」

「ここは女子寮の近くよ。男子生徒はあまり近づかない方が良いんじゃない?」

 

 誰だか分からない。3年生かな?いや、でもこんな目立つ人がいたら、すれ違ったことくらいは覚えている筈だ。

 

「それは承知しています。しかし貴女の運命を見てしまったからには、放って置くわけには行かないのですよ」

 

 口調こそ丁寧だけど、有無を言わさない威圧感を感じる。彼の、まるで心の中までも覗き見られてしまいそうなその視線と目が合うたび、背筋に冷たいものが走る。

 

「私の……運命?」

「えぇ。最近、彼との間に何か問題はありませんか?」

「……っ!」

 

 遊陽の事が頭に浮かぶ。この人、私達の事を知っている?

 

「私の占いによると……良くない予兆が見えているのですよ」

 

 そう言って彼は、デュエルモンスターズとは別のカードを取り出した。

 

「占い?」

「ええ。申し遅れました。私の名前は斎王琢磨。エド・フェニックスのマネージャーをやっておりますが……本職は占い師でしてね」

 

 この人が、万丈目君の言っていた斎王?それにあのエド・フェニックスのマネージャー?万丈目君はこの得たいの知れない人を、様付けて崇拝しているって言うこと?

 

「ふふ、あまり一気に情報を出されても、整理しきれませんよね」

「っ……」

 

 斎王は私の心を見透かしたようにそう言うと、今度はデュエルモンスターズのデッキを取り出した。

 

「さて、星見さん。私とデュエルして頂けませんか?その代わり貴女に眠る運命を、私が導いて差し上げましょう」

「あなたが?お断りよ。占いは嫌いじゃないけど、それに支配されるなんてまっぴらよ」

「そうですか?しかし……知りたくはないのですか?彼が何を考えているのかを」

「っ!」

 

 斎王はデッキをシャッフルして机の端に置く。

 

「さぁ、少しこちら側へ来てください」

 

 私は警戒を解かず、机の前に立つ。

 

「このカード……タロットカードと言いますが、名前はご存じでしょう。さぁ、シャッフルした後、カードを1枚引いてください。それが黒野遊陽君の運命です」

 

 私は言われるがままにタロットカードをシャッフルし、一枚のカードを引いて表にする。

 

「これは『太陽』。しかし逆位置です。逆位置の太陽の意味は不調や落胆、そして『衰退』。貴女方の関係はやがて衰えて行き、自然消滅、という形になるかもしれませんね」

「っ!ふざけないで!遊陽と私が別れるだなんて、そんなこと無いわ!」

「果たしてそう言い切れるでしょうか?何で彼が貴女と一緒にいるのか……分かっていますか?」

「それは……遊陽が、私の事を」

「いいえ。彼は貴女によって産み出された存在。貴女の側にいたのは、貴女に利用価値があったからではありませんか?」

 

 何でもない事の様に言われたその言葉に言葉がつまる。

 この人、私達の事を知っている。付き合っているとかそう言った話じゃない。遊陽の正体を知っている……!

 

「しかし今、彼は完全に人となりました。お分かりですか?貴女との繋がりが消え去った彼にとって、貴女を必要とする理由など無いのです」

「そんなこと、無い……!」

「最近、他の女性と話す機会が多くなったのではありませんか?」

「っ!」

「貴女は魅力的な女性ですが、もし貴女以上に素晴らしい女性が彼の前に現れたら?」

 

 そんなこと無い。遊陽は、私を好きでいてくれる。私が遊陽に居て欲しいと思う限り、彼は一緒に居てくれる。

 

「……彼自身は、本当に貴女の事が好きなのでしょうか?貴女と一緒に居たいのでしょうかね?」

「っ!やめてよ!」

「失礼、怒らせる積もりは無かったのですよ。自慢ではありませんが、私の占いは良く当たる。如何です?デュエルをしながら、貴女の運命を導いてあげますよ?」

 

 それはまるで悪魔との契約だ。乗ってはいけない。そう分かっている筈なのに、正常な判断ができない。

 ……不安だった。遊陽は私の儀式で生まれたから、そんな義務感だけで私の側にいるんじゃないか。そう思ってしまうことが何度もあった。

 

「……良いわ!相手になってあげる!私が勝ったら、今すぐ目の前から消えなさい!」

「ええ。それでは、始めましょうか」

 

 斎王はタロットカードを仕舞うと、デッキをシャッフルして机の上に置き、5枚のカードを裏側で置く。

 

「デュエルディスクは使わないの?」

「ええ。あまり馴染みがないもので……今回はこのまま進めましょう。あぁ、貴女はデュエルディスクを使用していただいて構いませんよ」

 

 私はデュエルできる距離まで離れると、デュエルディスクを構えた。

 

「「デュエル!!」」

 

深月 VS 斎王

 

「運命の導きは絶対なのです。それを貴女に教えてあげましょう」

「運命なんて信じないわ!私は、私と遊陽を信じる!」

「そうですか……私の先攻、ドロー。ふふふ、このデュエルは、次の私のターンで終わりを告げるでしょう」

 

 突然の勝利宣言。まだ何のカードも出してない。それどころか、手札として出した5枚のカードを確認すらしていないのに。

 

「バカにするのもいい加減にしてよ!手札の確認もしてないでしょ?」

「そんなもの、必要はないのです……言うよりもお見せしたほうが早いでしょう。私は魔法カード【運命の選択】を発動」

 

 斎王は確認することなく1枚のカードを前に出し、表にする。宣言した通りの魔法カードだ。

 

「なん、で……?」

「これが運命の導きです。さて、その効果により貴女は私の手札をランダムに1枚選択し、それがモンスターカードだった場合には特殊召喚されます。さぁ、こちらに」

 

 私は再び机の前まで移動し、裏側のままのカードを1枚選ぶ。

 

「そしてここで選ばれたカードが、私の予知した貴女の運命なのです」

「……これよ」

「ふふ、選択されたカードは【アルカナフォースXVIII-THE MOON】です!」

 

 ギャンブル効果の筈なのに、よりにもよって最上級モンスターだ。

 月光を背に現れた月の化身は、おおよそ天使族とは思えない見た目をしている。

 長く伸びた首に両腕、腹部は膨らんでいて、宇宙人らしき何かが中で眠っている。

 

攻2800

 

「【THE MOON】……それはタロットにおける『月』のカードです」

 

 モンスターの頭上にMOONのカードそのものが現れ、回転を始める。

 

「これは……?」

「【アルカナフォース】共通の効果として、フィールドに現れたとき正位置か逆位置かが決定し、それに応じた効果を得ます。さぁ、貴女自身の声で運命を決めるのです。ストップ、と言ってください」

 

 つまりは、形を変えたコイントスと言ったところかな。やっぱり運任せのデッキだ。わざわざコイントスを行うということは、片方の効果はデメリットの筈。そっちを引き当てたい……!

 

「……ストップよ」

 

 回転していたカードは、普通のカードと同じ向きのまま止まった。

 

「正位置の効果は、私のスタンバイフェイズ毎にトークンを産み出します」

 

 トークン生成効果?デメリットには思えない。この人、凄く運が良い?これが運命だとでも言うの?

 ……違う。そんなものあり得ない。絶対に、勝って見せる。

 

「正位置の『月』。その意味は不安定、裏切り、そして『不信』。貴女は、彼の事を信じきれていないのでは無いでしょうか?」

「何を、言って……!」

「運命の前に、あらゆる嘘は無意味なのですよ」

 

 背筋が凍る。斎王が、私を見つめている。

 視線が合う度に頭を殴られた様な衝撃が走る。怖い。彼はただ私を見て、不気味な笑みを浮かべている。

 

「ふふふ、あまり怖がらせるのは可愛そうです。私はカードを3枚セット」

 

 3枚のカードをクイッと前に出す。斎王の手札は残り1枚だ。

 

「残る私の手札は通常魔法カード。次のターン貴女がどんな選択をしたとしても、次の私のターンで発動することを宣言しましょう」

「……何のつもりよ?」

「このカードは貴女にとっての救いの綱。貴女が選ぶのですよ。自らが勝つか、負けるかを。ターンエンドです」

 

 

斎王 LP4000 手札1

モンスター:MOON

魔法・罠:セット セット セット

 

 

「っ、私のターン、ドロー!」

 

 周囲に白い霧が立ち込めてくる。これは幻覚?それともあの斎王が何かしたの?

 何もかもが不気味だ。あまり長引かせたくはない。

 

「一気に終わらせるわ!私は永続魔法【神の居城-ヴァルハラ】を発動!」

 

 私の背後に、神聖なる玉座が現れる。

 

「私のフィールドにモンスターが居ないとき、手札から天使族モンスターを特殊召喚できるわ!来て、至高の天才!」

 

 ヴァルハラに光が溢れ、音姫が私のフィールドに降り立つ。

 

「【幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト】!」

 

 私のメインデッキの中では最強のモンスター。大量展開を行うときのキーカード!

 

攻2600

 

「私は【幻奏の音女カノン】を召喚」

 

 自らの効果は使わずに、カノンを守備表示で召喚する。

 

守2000

 

「そして魔法カード【トランスターン】を発動!自分のモンスター1体を墓地へ送り、そのモンスターよりレベルが1高いモンスターへ進化させるわ!来て、【幻奏の音女エレジー】!」

 

 カノンが光に包まれると、デッキから同じ属性・種族でレベル5のエレジーが現れる。

 

攻2000

 

「【エレジー】の効果で、私の【幻奏】と名のつくモンスターの攻撃力は300ポイントアップするわ!」

 

 エレジーが歌うと私のフィードが五線譜に囲まれ、それが幻奏達の力を高めていく。

 

モーツァルト攻2600→2900

エレジー攻2000→2300

 

「ほう、【MOON】の攻撃力を越えてきましたか」

「それだけじゃないわ!【プロディジー・モーツァルト】の効果で、手札から【幻奏の音姫ローリイット・フランソワ】を特殊召喚!」

 

 モーツァルトが曲を奏でると、音符や休符がフィールドを埋め尽くし、その中から新たな幻奏を呼び出す。

 

攻2300→2600

 

「そして【フランソワ】の効果!1ターンに1度、墓地の天使族モンスターを手札に戻すわ。私は【カノン】を手札に戻し、自身の効果で特殊召喚!」

 

 カノンはフィールドに幻奏がいるだけで特殊召喚できるモンスター。でもその召喚方法は1ターンに1度しか使えない。だから最初のカノンは、わざわざ通常召喚したのだ。

 

守2000

 

「素晴らしいものですね。こんなにモンスターを並べるとは」

「余裕ぶっていられるのも今のうちよ!バトル!【プロディジー・モーツァルト】で【THE MOON】を攻撃!」

 

 攻撃力2800は高いけど、私のモンスター達の結束の前には敵じゃない!

 

「ではリバースカードオープン!【チェンジ・デステニー】!これから貴女には選択をしてもらいます。しかしその前に、【プロディジー・モーツァルト】は守備表示となり、表示形式の変更が不可能になります」

 

 エレジーの効果で破壊はされないけど、それ以外はどうしようもない。

 

攻2900→守2000

 

「さて、それでは選択していただきましょうか」

 

 斎王の後ろに、赤と青の扉が現れる。

 

「赤の扉が選ばれた時、私は表示形式を変更したモンスターの、攻撃力の半分のダメージを受けます。一方青の扉が選ばれた時、貴女は表示形式を変更したモンスターの、攻撃力の半分のライフを回復します」

 

 つまり斎王にダメージを与えるか、私のライフを回復するか。

 そんなの、考えるまでもない。このデュエルを早く終わらせるんだ!

 

「私は赤の扉を選ぶわ!」

 

 赤い扉が開き、中から放たれた電撃が斎王を襲う。

 

LP4000→2550

 

「クックック……」

「な、何がおかしいのよ?」

「いえ。やはり人は運命には抗えない様だ、とね」

 

 斎王は不気味に笑っている。この人と話をしていると、自分の心までおかしくなってしまいそうだ。

 

「っ、カードを1枚セット。さらに【カノン】の効果で【モーツァルト】を攻撃表示に戻してターンエンドよ」

 

 通常の表示形式変更が出来なくても、効果でなら可能だ。

 カノンがモーツァルトを元気づける様に歌い、奮い立たせる。

 

守2000→攻2900

 

「ではターンが終わる前に、私はリバースカードを発動しましょう。罠カード【運命のドラ】。相手モンスター1体を選択し、次の私のターンにそのモンスターよりもレベルの1つ低いモンスターを召喚したとき、貴女に選択したモンスターのレベル1につき500ポイントのダメージを与えます」

 

 ローリイット・フランソワの頭上に銅鑼が浮かび上がる。フランソワのレベルは7。次のターン、レベル6のモンスター召喚されたら、3500のダメージを受けることになってしまう。

 

 

深月 LP4000 手札0

モンスター:モーツァルト エレジー フランソワ カノン

魔法・罠:セット

 

 

「では私のターン、ドロー。まずは【THE MOON】の効果により、【ムーントークン】を特殊召喚します」

 

 THE MOONの腹部が膨らみ、中で眠っていたエイリアンが産み出される。

 

守0

 

「では約束通り、宣言した魔法カードから発動させていきましょうか。私は【来世のヴィジョン】を発動します」

 

 斎王は1ターン目に1枚離していたカードを発動させる。

 

「さぁ、このカードで貴女の来世を覗いてみましょうか。貴女のデッキを、上からモンスターが出るまでめくります」

 

 私は彼に言われるがまま、デッキのカードをめくり始める。コート・オブ・ジャスティス、月鏡の盾、融合、そしてジェルエンデュオ。

 

「出てきたモンスターは【ジェルエンデュオ】よ」

「素晴らしい。めくられたモンスターの種族がフィールドにいるモンスターと同じとき、貴女のライフを1000回復します。めくったカードはその順番のまま、デッキに戻ります」

「私のライフを回復?何のつもりよ」

 

LP4000→5000

 

「言ったでしょう。このカードは救いの綱。もっとも貴女が私にダメージを与える選択をした今、これは無意味な祝福なのですがね」

 

 MOONでエレジーを破壊されれば、ステータスでは完全に勝っている。だからこんなに余裕ぶっているのだろう。だけど私の伏せたカードは光子化。攻撃してくれば、次のターンには返り討ちだ。

 

「さらに魔法カード【カップ・オブ・エース】を発動します」

 

 斎王の頭上に魔法カードが現れ、アルカナフォースと同じように回転を始める。

 

「正位置なら私は2枚ドロー、逆位置なら貴女は2枚ドロー。さぁ、ストップの掛け声を」

「……ストップよ」

 

 カードは正位置に止まり、斎王が2枚のカードを引く。これではまるで、禁止カードの強欲な壺だ。

 

「では、【ムーントークン】を生け贄に捧げ、【アルカナフォースXIV-TEMPERANCE】を召喚します」

 

 ムーントークンが消え去り、代わりに長いスカートを履いたような、新しいアルカナフォースが現れる。

 

攻2400

 

「【TEMPERANCE】のレベルは6!選択した【フランソワ】よりもレベルが1つ低いモンスターです」

「っ!私に3500のダメージ!?」

 

 運命のドラが鳴り響く。頭を割るようなその不協和音に目眩がしてくる。

 

「きゃぁぁっ!?」

 

LP5000→1500

 

 かなりのダメージ。でも大丈夫。フィールドは圧倒的に私が有利!

 

「それでは、【TEMPERANCE】の効果を決めましょうか」

 

 TEMPERANCEの頭上に現れたカードが回転する。

 

「何度も何度も……!ストップよ!」

 

 カードは正しい向きで止まる。そんな気はしていたけど、あまりにも酷い。

 

「正位置ですね。その効果により、私が受ける全ての戦闘ダメージは半分になります」

 

 やっぱり、正位置ならメリットと言うことなのだろう。強力な効果ではあるけど、そこまで厄介ではないかな?

 

「【TEMPERANCE】……タロットにおける『節制』のカード。正位置ならばその意味は調和や『献身』……貴女は彼を求めている。しかしそれ以上に、彼に求められたいのでは?」

「――っ!」

「その様ですね。彼に必要とされたい。彼のためなら何だってやりたい。しかし彼は貴女の要望に答えるだけで、自ら貴女を求めたりはしない」

 

 そうだ。遊陽は私の事を好きだといってくれた。だけど彼から、私に何かをして欲しいと言われたことはない。

 遊陽は、本当に私の事を好きでいてくれるの?

 

「……やめて」

「ふふ、いかがですか?運命の素晴しさが、分かってきたのでは?」

「……素晴らしくなんか、無い」

「ではこのままで良い、と?彼に不信感を抱いたまま、衰退の道を辿るのですか?」

「それ、は……!」

「運命には逆らえない。ですが従い、好転させることは出来る。お見せしましょう。リバースカード【逆転する運命】!」

 

 MOONの頭上に浮かぶカードが一回転し、逆位置で止まる。

 

「なっ!?」

「逆位置の『月』。その意味は未来への希望。貴女は都市伝説を行ったと言う過去から脱却し、貴女達は徐々に好転して行く事でしょう」

「……ほん、とう……?」

 

 聞いちゃダメだ。だめ、なのに。

 斎王の声から、意識を離せない。

 

「ええ。運命の偉大さを知れば、ね。私は装備魔法【反目の従者】を【THE MOON】に装備して、ターンエンドです」

「攻撃してこないの?」

「ええ。その必要はありませんから。【THE MOON】の逆位置の効果を発動。自分のエンドフェイズ、私のモンスター1体のコントロールを相手に移します」

 

 想像以上に大きなデメリットだ。今斎王のフィールドにいるのは、どちらも攻撃力2000超えのモンスター。どちらのコントロールを移しても斎王からすれば大打撃だろう。

 

「受けとるが良い!これが光の洗礼だ!私は【THE MOON】のコントロールを貴女に移す!」

「攻撃力が高い方のモンスターを?」

「ええ」

 

 MOONの姿が掻き消えたと思うと、私の後ろに現れる。

 

「なんだか知らないけど、ありがたく貰っておくわ!」

「ええ。存分に受け取るがいい。【反目の従者】の効果が発動。装備モンスターのコントロールが移った時、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを、コントロールを得たプレイヤーに与える」

「……っ!」

「もしあのとき青い扉を選んでいたのなら、貴女のライフは150残っていた筈なのですがね」

 

 MOONが発光し、私の視界が白く染められていく。

 

「そん……なっ……」

 

LP1500→0

 

 デュエルが終わる。フィールドに居たモンスター達は消え去る。

 

「わ、わたし、は……」

 

 頭が痛い。何も考えられない。意識が、心が、白く塗り潰されていく。

 私はその『心地良い』感覚に耐えられず、意識を手放しその場に倒れ込んだ。

 

「私は運命を覗き見たとき、いつも悲しい気分になるのです。何故ならば運命は残酷で、不条理で……あまりに絶対的だ」

「……」

「しかし心配することは無い。貴女は今、光を導く我が使いの1人となったのだから。さぁ目を覚ますのだ、深月」

 

 声が、聞こえる。

  私は目を覚まし、立ち上がると、目の前の男性に向け跪く。

 

「斎王様。私に光の素晴らしさを教えていただき、ありがとうございます」

 

 あぁ、なんて清清しい気分なのだろう。世界が一層輝いて見える。これが光!これこそが運命!

 

「光の使徒、深月よ。お前に指令を与えよう。黒野遊陽を、光の結社の一員とするのだ!」

 

 斎王様からのご命令。あぁ、私は斎王様に必要とされている!なんと素晴らしいことだろう!

 

 ……でも。

 

「お断りします、斎王様」

「……何?」

「……私には、出来ません。遊陽が自らの意思で光に身を委ねる決意をしたなら、私は喜んで彼を導きます。ですが、彼がそれを望まないのなら、私は彼の意思を優先します」

 

 これは斎王様に対する裏切り行為だ。罰を受ける事になるかもしれない。それでも私は、遊陽を裏切ることは出来ない。

 

「これもまた運命……か。良かろう。君達光の結社への指令は、また別の手段で伝えるとしよう」

「ありがとうございます、斎王様」

 

 斎王様はそのまま霧のように消えていく。素晴らしいお力だ。遊陽と一緒に彼に仕える事が出来たのなら、それはとても幸せなことなのだろう。

 

 夜の空に浮かぶ月は、太陽が無ければ輝けない。

 でも太陽が輝くのに、月なんて必要ない。

 それでも私は必要とされたかった。太陽の側に居ても良いんだと、そう思いたかった。




~カード紹介のコーナー~

アルカナフォースXVIII-THE MOON
効果/星7/光属性/天使族/攻2800/守2800
このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、
コイントスを1回行い以下の効果を得る。
●表:自分のスタンバイフェイズ時に自分フィールド上に「ムーントークン」(天使族・光・星1・攻/守0)を1体特殊召喚する事ができる。
●裏:自分のエンドフェイズ時に1度だけ、自分フィールド上のモンスター1体を選択し、そのモンスターのコントロールを相手に移す。

アルカナフォースの1体、月を象徴するカードですね。2800打点は優秀ですが、効果が若干使いにくいカードです。表でもメリットが発揮されるのが次のターンで、裏では毎ターン相手にモンスターを献上してしまいます。
ので、反目の従者とのコンボが出来ますが、純アルカナフォースデッキじゃ使いにくいですかね……。
デメリット効果持ちが多いからか斎王様のデッキにはコントロールを送りつけるカードが多い(ストレングス然り)気がします。
作者の一番好きなアルカナフォースはこの子だったり。


光の結社が3人となったアカデミア。レッド寮を潰そうとナポレオン教頭はエドを呼び出すが、その対戦相手をめぐって剣山と真希が対立し……?
次回、「暴走少女の突撃デュエル!(前編)」


この作品で一番早く決着がついた気がします。流石は斎王様ですね。
タロットカードの意味については諸説ありますが、この作品での月は不信の意味も含みます。
ついにやって来た深月の光堕ち。これが書きたくてこの小説を始めたまであります。
創が光の結社になっているのは、前の方の回を読んでいただけると分かるかもですね。遊陽君にはこれから頑張ってもらわなければ。
さて、それではまた次回も読んでいただけると嬉しいです!
ではではー!
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