遊戯王GX ふたりぼっちの僕たちは   作:未OCGのアルカナフォース達に未来を!

4 / 43
ちょっと長くなりました4話です。

発動条件を満たしていなかったため、一部カードを差し替えました。(ウェーブ・フォース→エア・フォース)


4話 鏡泉王子の華麗なる決闘

「そうとも!必ずやボクは彼女の心をつかんで見せるとも!この華麗なるデュエルでネ!」

「えっと……やることがなければターンを終わってもらって良いかな?」

「いいやまだだ!」

「えっ、いったい何を……」

「まだボクの華麗さを語り尽くして居ないじゃないか!」

 

 その発言に、すでに実技授業を終え観戦していたほとんどの生徒がズッコケた。

 

 

 ……こんなことになるちょっと前のこと。

 クロノス先生の講義が始まる前。それ以外の講義はいくつかあったけど、デュエル関連の授業は今回が初めてだ。

 

「三沢君は予習はしてきた?」

「当然だ。とりあえず入学前に出された予習課題は何周かしてきた」

「すごい熱心だね。僕は……何をやったら良いやら分からなかったよ」

 

 三沢君と話しながら廊下を歩く。教室に到着しようかというとき、前から4人の女子が歩いてくる。

 

「じゃあじゃあ、深月さんって黒野君と……?」

「ちょっ、そんなんじゃないわよ!」

「あらあら。お顔が真っ赤ですわ」

「もう!」

「ももえもジュンコも、あまりからかっちゃダメよ?」

 

 深月と、名前を知らない女子が3人。さん付けで呼ばれてはいるものの、仲は良さそうだ。さっそく友達が出来たのかもしれない。

 

「おはよう、深月」

「あ!遊陽!」

 

 深月は僕を見るなり駆け寄ってくる。

 

「すごいのよ遊陽!夕食がバイキングなの!」

「食べ放題ってこと?」

「そう!こんな贅沢しちゃって良いのかしら……」

「受験も頑張ったんだし、ご褒美だと思っておこうよ」

「そうね。夕食は男女で一緒みたいだから、早く遊陽と一緒に食べたいわ」

 

 そんな僕達の様子を、女子3人(の内特に2人)はほほえましく見守っている。

 

「あら、あらあらあら」

「朝から熱いわねー」

 

 深月の話を聞いてか、三沢君が話しかけてきた。

 

「へぇ、黒野はオベリスク・ブルーを狙っているのか?」

「あ、うん。やっぱり深月と一緒に居たいなって」

「なるほどな。黒野ならすぐ行けるさ。この俺に勝ったんだから」

「ありがとう、三沢君」

 

 深月は三沢君に少しだけ変な視線を向ける。

 

「ふーん……?私は星見深月。えっと、三沢って言うのかしら。よろしくね?」

「あら~、あらあらあらあら」

「ちょっ、ももこ!?なんかあんた怖いんだけど!?」

 

 ジュンコと呼ばれていた茶髪の少女が、若干引いた様子で黒髪の少女から距離をとった。

 

 

 

 流石に邪魔になるだろうと判断し教室に入る。席の順番は特に決められては居なかったものの、生徒達は自然と寮ごとに固まっていた。僕と深月はラー・イエローとオベリスク・ブルーのちょうど境目に座る。

 

「いよいよ始まるのね」

「うん。デュエルの授業ってどんなものなのか想像もできないよ」

 

 しばらく雑談しながら待っていると、教壇に背の高い男が立つ。パンフレットとかにも顔がのっていた先生だ。名前は確か、

 

「えー、デュエルアカデミア新入生の皆サーン、私が実技最高責任者、クロノス・デ・メディチなノーネ。私の担当する授業では、カードの種類やルールなどの基礎的なものから、実践における戦術ナード幅広く受け持っていくノーネ」

 

 そうそう。クロノス先生だ。オベリスク・ブルーの寮長をしているようだし、きっと実力もすごいのだろう。

 

「それではさっそく始めていくノーネ。まずはカードの種類について説明してもらうノーネ。では……シニョーラ深月!モンスターカードの種類を答えるノーネ」

「え、は、はいっ!」

 

 まさか最初に指名されるのが深月とは。クロノス先生のお眼鏡にかなったのか、それとも……?まぁ深月が問題を起こすとは思えないし、目をつけられている訳じゃないだろう。

 

「モンスターカードには、効果を持たない替わりに比較的高いステータスを持つ通常モンスターがいます。またステータスは通常モンスターと比べて控え目ですが魔法・罠カードの様な効果を持つ効果モンスターが存在します。えっと……そして融合という魔法カードを使い、決められた2体以上のモンスターを素材に融合召喚される融合モンスターがいます。それから……儀式モンスターは儀式魔法によって特殊召喚されるモンスターで、召喚する儀式モンスターのレベル以上のレベルになるようにモンスターを生け贄に捧げなければなりません」

 

 見事な説明だ。流石は深月。ちゃんと予習もしてきたんだろう。

 クロノス先生は満足げに頷くと、深月に着席を促す。

 

「流石はオベリスク・ブルーの生徒ナノーネ。でも少しだけ惜しいノーネ。えーそれデーハ……シニョール遊陽!」

「はい」

「効果モンスターは効果モンスターでも、さらに細分化することが可能ナノーネ。効果モンスターにはどんな種類があるのか答えるノーネ。」

「はい。効果モンスターには普通の効果モンスターの他に、特殊なカテゴリに含まれるものがあります。裏側表示から表側表示になることで効果が発動するリバースモンスター、特定のモンスターの装備カードになることが可能なユニオンモンスターや、基本的に特殊召喚出来ず、召喚・リバースしたターンのエンドフェイズに手札に戻るスピリットモンスター、またフィールド・墓地では通常モンスターとして扱い、召喚権を利用してもう一度召喚することで効果モンスターになるデュアルモンスターが存在します」

「非常に宜しい!」

 

 クロノス先生が黒板にそれらの名前を書く。

 

「えー、これまではモンスターについてお話しして貰いましたーガ、次は魔法・罠カードについてお話ししてもらいマショウ。シニョーラ明日香?」

「はい。魔法・罠には――」

 

 

 オシリス・レッドの生徒が質問に答えられなかったり、その隣の生徒が先生をからかったりしたけど、それ以外は特に問題なく授業が進んでいく。

 

「さて。それでは次の時間は、さっそく実技授業を行ってもらうノーネ。今回は初回と言うことでデュエル結果を成績には入れませんーガ、お互いが高め合えるような相手を見つけてデュエルして欲しいノーネ」

 

 どうやらさっそく実技授業が始まるみたいだ。デュエルの相手は自分達で決めて良いらしい。三沢君とは昨日デュエルしたし……折角だから、深月とデュエルしようかな。

 授業が終わったので深月に話し掛けようとすると、一気に男子生徒が集まってくる。

 

「星見さん!俺とデュエルしよう!」

「いいや僕と!」

「なに言ってんだイエローとレッドの雑魚ども!星見さんとデュエルするのはブルーの俺様だ!」

「え、えっと、あの……」

 

 数人の男子生徒が深月を囲む。深月はそれに驚いてしまいあたふたしている。

 

「ねぇ、深月が困ってるんだけど」

 

 僕が彼女を庇うように出ると、ブルーの制服を着た男子が鼻で笑う。

 

「なんだお前?ラーイエローの雑魚が俺様に口出ししていいと思ってんのかよ?」

「っ、何よ!遊陽はあんたより強いんだから!」

 

 深月はブルー男子の発言に腹をたて、いよいよ混沌としてくる。そんな言葉の乱闘を沈めたのは、やたらと偉そうな声だった。

 

「待ちたまえ!星見さんとデュエルするのはこのボクなのサ!」

 

 ……いや、沈めたというか、『なに言ってんだこいつ』的な空気が流れただけだ。

 緩くウェーブのかかった金髪の、まるで童話の王子様の様な人だ。その後ろには恐らく取り巻きなのだろう男子が2人いる。

 

「さっさと退くっすよ!」

「……鏡泉さんの前だ。邪魔をするな」

「やぁレディ、また会ったね」

「え、えーと……鏡泉(カガミズミ)君だっけ……?」

「名前を覚えてくれたんだネ!あぁなんと光栄な事だろうか!」

 

 鏡泉君は深月の手をとり、もう片方の手で天を仰ぐ。

 

「ちょ、やめてよ!」

 

 しかしすぐに繋いだ手を弾かれてしまった。

 

「っ、何だよ鏡泉!星見さんとデュエルするのはこの俺様だ!」

「……なんだと?」

 

 口の悪いブルー生徒と一触即発になった取り巻きの1人を、鏡泉君が抑える。

 

「左河、あまり喧嘩はよろしくないよ。さて、『イエローとレッドの雑魚はデュエルする資格がない』と言っていたネ?ならボクよりも成績の悪い君がボクを押し退けてデュエルできるとでも?」

「……チッ!覚えてろよ卑怯者のナルシスト野郎!」

「はっはっは!負け犬は良く鳴くんだネ!おととい来たまえよ!」

 

 オベリスク・ブルーの男子は悪態をついて退散し、イエローとレッドの男子もそれにつられて行ってしまった。

 

「さて、邪魔者は……あと1人居たようだネ」

「ちょっと!遊陽が邪魔者って言いたい訳!?」

「おっと、友人だったのかな?これは失礼した……ラー・イエローの君!」

「えっと、何?」

「ボクの名前は鏡泉王子!これから同じアカデミアの仲間として宜しく頼もうじゃないか!」

「え?あぁ、うん。僕は黒野遊陽です」

 

 そう言って右手を差し出してきたので、僕もとりあえずそれに応え握手する。

 

「さて、それでは星見さん、ボクとデュエルを――」

「嫌よ!私は遊陽とデュエルするの!」

「あ、うん。だからごめんね、鏡泉君」

「ガーン!」

 

 口でショックを表現し、天を仰いで頭を掲げる。なんでいちいちモーションが大きいんだこの人。

 

「っ……それならば黒野君!星見さんとデュエルする権利を賭けて、僕とデュエルしないかい?」

「なに言ってるのあなた……」

「……うん。まぁ、良いよ。受けて立つよ」

「遊陽!?」

 

 深月が驚愕の声をあげる。

 

「それで、鏡泉君はなんで深月とデュエルしたいの?」

「おお、聞いてくれるのかい?……そう、彼女との出会いは君達の入学試験だった。僕はその会場で未来のライバル候補たちを観察していたのだが、そのとき出会ったのサ!女神にネ!」

「それが深月の事?」

「そうとも!艶やかで美しい黒髪に宝石の様な瞳!整ったその顔立ちは世界各国の女神象ですら敵わないだろう!何故なら彼女は!紛い物ではなく本物の女神なのだから!」

 

 ベタ褒めである。きっと彼にはデュエリスト以外の道がいくつもあったに違いない。実況者とか俳優とか評論家とか。

 

「確かに深月は女神だけど……」

「ゆ、遊陽っ!?」

 

 今度は深月が顔を真っ赤にする。

 

「それじゃあ、さっそくデュエルしよう、鏡泉君」

「望むところサ!」

 

 

「……ねぇ、あなたたち鏡泉君の取り巻きでしょ?彼、いつもああなの?」

「……その通りだ」

「わ、悪い人じゃ無いっすよ?その……態度がでかいだけで」

 

 

  実技授業を想定した、いくつもデュエルフィールドが並ぶ体育館の様な場所へ移動する。

 僕達がトラブルに巻き込まれている間に実技を終えてしまった生徒も多いようで、雑談や他の生徒のデュエルを観戦していた。

 

「もうみんな終わっちゃってるね」

「ああ。だが問題など無いサ!このボクの華麗なるデュエルのオーディエンスが増えるのだからネ!」

 

 彼の自分への自信はどこから沸いてくるのか。

 

「遊陽ー!負けるんじゃないわよー!」

「「鏡泉さーん!頑張って下さいー!」」

 

 最初の観客3人を横目に、僕達はデュエルディスクを構えた。

 

「「デュエル!」」

 

遊陽 VS 王子

 

「ボクの先攻、ドローォッ!」

 

 鏡泉君は手札を見て、肩を震わせる。大事故でも起こしてしまったのだろうか?そんな事を考えながら心配していると、彼はいきなり顔をあげる。

 ……満面の笑みで。

 

「ふ、ふふっ、はははっ、ハッハッハ!完璧な手札じゃあないか!」

 

 心配するだけ無駄なようだ。

 

「自分の力が怖いくらいさ!まずボクは手札の【ヴィジョン・リチュア】の効果を発動!このカードを手札から捨てる事で、デッキから【リチュア】と名のつく儀式モンスターを手札に加える!」

「儀式モンスター……!」

「そうとも!このボクの制服と同じブルーのカード!それこそがボクの愛するデッキなのサ!」

 

 儀式モンスターか。融合モンスターと違って素材にするモンスターに制限はないけど、召喚する儀式モンスターも手札に揃えなければならない。使いこなすにはかなりの知識とデッキ構成力が求められるテーマだ。

 

「ボクは儀式魔法、【リチュアの儀水鏡】を発動する!」

 

 鏡泉君の背後に、巨大な水色の鏡が現れる。

 

「ボクが召喚するのは、サーチした【イビリチュア・ガストクラーケ】!そのレベルは6!手札からレベル6の【イビリチュア・マインドオーガス】を生け贄に捧げ、降臨せよ!【イビリチュア・ガストクラーケ】!」

 

 鏡の中に6つの星が吸い込まれ、鏡の中からイカの様な足が伸びてくる。

 下半身がイカの化けものと化した少女のモンスターが現れ、妖艶な笑みを浮かべた。

 

攻2400

 

「イビリチュア、ガストクラーケ……」

「そうとも!ボクの操る降魔儀式(イビリチュア)の恐ろしさ、とくと味わうが良い!【イビリチュア・ガストクラーケ】の儀式召喚に成功したとき、相手の手札をランダムに2枚確認する!さらにその内の1枚を相手のデッキに戻す!」

 

 ガストクラーケが、とくに長い2つの触腕をのばし、僕の手札を貫く。

 

「ほう、【ファーニマル・ベア】と【融合】か……切り札を封殺させてもらおうかナ?ボクは【融合】をデッキに戻させてもらおう!」

 

 僕の手札の融合が泡のように消え去りデッキへ移動する。

 

「ピーピングだけじゃなく……ハンデスまで!遊陽!気を付けて!」

「……頑張れ、鏡泉さん!」

「その調子っすよ!」

 

 融合召喚は手札の消費が大きい。つまりは手札がなければ何も出来なくなってしまう。そういう意味ではハンデスデッキとの相性は最悪だ。

 

「さらにボクは、【リチュア・キラー】を守備表示で召喚!」

 

 鮮やかな色合いの半魚人が現れる。

 

守800

 

「【リチュア・キラー】の召喚に成功したとき、他に【リチュア】と名のつくモンスター1体がいる場合、ボクは【リチュア・キラー】以外の自分フィールドのモンスターを手札に戻すことが出来るのサ!」

 

 リチュア・キラーの巻き起こした渦潮がガストクラーケを呑み込み、何処かへと飛ばしてしまう。

 

「わざわざ儀式召喚したモンスターを手札に……?」

 

 深月が怪訝そうな顔で首をかしげた。

 

「いや、鏡泉君の狙いは、2回目の儀式召喚だと思う」

「そうなの?」

「うん。【イビリチュア・ガストクラーケ】は儀式召喚に成功したときしか効果を発動できない。だからわざわざ手札に戻して、もう1度儀式召喚するつもりだと思う……そうだよね?鏡泉君」

「御名答!ボクは儀式魔法【高等儀式術】を発動!このカードは儀式召喚の為の生け贄をデッキの通常モンスターで賄う事が可能サ!デッキの【ネオアクア・マドール】を生け贄に、再び降臨せよ!【イビリチュア・ガストクラーケ】!」

 

 再び現れた海の魔女が、僕の手札を触腕で刺し貫く。

 

攻2400

 

「君の手札は……ふむ、【ファーニマル・ドッグ】と【パッチワーク・ファーニマル】か。【パッチワーク・ファーニマル】を戻したところですぐにサーチされてしまうネ。【ファーニマル・ドッグ】にはおかえり願おう!」

 

 これで手札が3枚。もっとも鏡泉君の方も手札の消費は大きいけど、それでも彼のフィールドには上級モンスターがいる。

 

「ボクはカードを1枚セット。ターンエンドサ!」

 

 

王子 LP4000 手札0

モンスター:イビリチュア・ガストクラーケ リチュア・キラー

魔法・罠:セット

 

 

 もうデュエルを終えた人も多いようで、観戦者が続々と増えてくる。

 

「っ、僕のターン!ドロー!」

 

 ……うん。何とか助かったかな?

 出来ればこのモンスターはまだ召喚したくなかったんだけどね。

 

「僕は魔法カード【融合賢者】を発動。デッキから【融合】を手札に加えるよ。そして【パッチワーク・ファーニマル】を召喚」

 

 色々な布を継ぎ接いで作られた、栗色のクマのぬいぐるみが現れる。

 

守0

 

「……あれ、あのモンスター、何処かで……」

 

 深月がぽつりと呟く。

 

「……ずっと前のデュエルで使ってから、しばらく出てこなかったからね。深月も忘れているんだよ」

「そう、かな……?うん。そうよね……遊陽がそう言うんだもの」

 

 フィールドのパッチワーク・ファーニマルはデストーイモンスターの融合素材とするとき、素材の代用として扱うことができる。僕の手元にエッジインプ・シザーは居ないけど、このカードとベアを使えば……!

 

「僕は魔法カード【融合】を発動!フィールドの【パッチワーク・ファーニマル】と手札の【ファーニマル・ベア】を融合!」

「ハッハッハ!それはさせないよ!【リチュア・キラー】を生け贄にリバースカードオープン!【水霊術-「葵」】!」

 

 ……!自分フィールドの水属性モンスターを生け贄に、対戦相手の手札をすべて確認し1枚を捨てさせるカード!

 

「さあ!君の全てを見せておくれ!」

 

 巨大なカードが僕の背後に表示される。今の僕の手札だ。

 

「ふむ、【ファーニマル・ベア】、【ファーニマル・クレーン】かならば【ファーニマル・ベア】を墓地へ!これで君の【融合】は不発サ!」

 

 融合素材モンスターを失い、召喚できるモンスターがいなくなったことにより融合は不発となる。

 

「ゆ、遊陽!」

「これは……ちょっと不味いかな?僕はカードを1枚セット。ターンエンド」

 

 まぁセットされたカードもバレバレなんだけど……。

 

 

遊陽 LP4000 手札0

モンスター:パッチワーク・ファーニマル

魔法・罠:セット

 

 

「ボクのターン!ドロー!」

 

 鏡泉君はドローしたカードを確認し頷く。

 

「素晴らしい!それでこそボクの愛するデッキさ!ボクは【リチュア・アビス】を守備表示で召喚!」

 

 水飛沫と共にサメの半魚人が現れる。

 

守500

 

「【リチュア・アビス】の召喚に成功したとき、デッキから守備力1000以下の【リチュア】を手札に加える!さぁおいで!【シャドウ・リチュア】!さらに墓地の【リチュアの儀水鏡】は、自身をデッキに戻すことで、墓地の【リチュア】と名のつく儀式モンスターを手札に戻せるのサ!」

 

 鏡泉君の足元に現れた儀水鏡は、1枚のカードを打ち上げる。

 

「確か墓地にいた儀式モンスターは、【イビリチュア・マインドオーガス】……」

「その通り!まずはバトルといこうじゃないか!【ガストクラーケ】で【パッチワーク・ファーニマル】を攻撃!」

 

 ガストクラーケの触腕は、まるで刃のような鋭さでパッチワーク・ファーニマルをズタズタに引き裂く。

 

「……ぁ……」

 

 その光景に、深月の顔が青ざめていく。

 

「っ!リバースカードオープン!【ファーニマル・クレーン】!戦闘で破壊された【パッチワーク・ファーニマル】を手札に戻し、1枚ドロー出来る!」

 

 空中に現れた巨大なUFOキャッチャーのクレーンは、パッチワーク・ファーニマルの残骸を集め1枚のカードに戻す。

 

「メインフェイズ2だ。ボクは【シャドウ・リチュア】の効果を発動!このカードを捨てる事で、デッキの【リチュアの儀水鏡】を手札に加える!そして発動!」

 

 再び鏡泉君の背後に水色の鏡が現れる。イビリチュア・ガストクラーケは6つの星に変わり、鏡の中に吸い込まれていく。

 

「【イビリチュア・ガストクラーケ】を生け贄に、降臨せよ!【イビリチュア・マインドオーガス】!」

 

 鏡の中から夥しい水流が現れ、その波に乗って巨大な魚が現れる。大きな胸鰭を足のように使うホウボウの様なモンスターだ。その上部にはガストクラーケとはまた違った女性が乗っている。

 

攻2500

 

「【イビリチュア・マインドオーガス】が降臨したとき、お互いの墓地のカードを5枚まで選択しデッキに戻す!」

「なるほど、ただ墓地に送られただけじゃ再利用されるおそれがある。だから捨てさせた上でデッキに戻して、確実に手札を削っていくんだね」

「よく分かってるじゃないかイエロー君!ボクが戻すのは君の【ファーニマル・ベア】と【融合】、そしてボクの【高等儀式術】、【ネオアクア・マドール】、【シャドウ・リチュア】の5枚さ!」

 

 イビリチュア・マインドオーガスは渦潮を作り出し、墓地から5枚のカードを巻き上げ、持ち主のデッキに送る。

 

「どうだ!これこそが華麗なるボクの華麗なる戦術!」

 

 ほぼ1年生全員となった観客へ向け、鏡泉君は得意気に語り始める。しかし――

 

「うるせぇ卑怯者!」

「ハンデスしないと勝てないんだろ?」

「手札の覗き見だなんて、決闘者の風上にも置けないぞー!」

 

 観客からの反響は辛辣だ。

 デュエルモンスターズのルールにおいて、ハンデスは禁止されていない。しかしピーピングやハンデス等の行為は多くの決闘者から嫌われている様だ。

 理由は僕には良くわからないが、相手の戦術を完成する前に潰すと言う性質上、エンターテイメント性を大きく損なってしまうから……なんて話を聞いたことがある。

 

「ふん、君達にはこの華麗さが理解できないのだろうネ!相手に行動を許すことなく、自らの輝かしいモンスターでフィールドを飾る完成されたデュエルを!そうとも!必ずやボクは彼女の心を掴んでみせるとも!この華麗なるデュエルでネ!」

「えっと……やることがなければターンを終わってもらって良いかな?」

「いいやまだだ!」

「えっ、いったい何を……」

「まだボクの華麗さを語り尽くして居ないじゃないか!」

 

 その発言に、すでに実技授業を終え観戦していたほとんどの生徒がズッコケた。

 

「さっさとターン終われよー!」

「お前もう手札ねーだろー!」

 

 ……これに関しては賛成だ。

 

「ふむ。あまり華麗なるボクを見ていると、自分に自信が持てなくなってくるのかも知れないネ。ターンエンドだ!」

 

 

王子 LP4000 手札0

モンスター:イビリチュア・マインドオーガス リチュア・アビス

魔法・罠:無し

 

 

「僕のターン、ドロー!」

 

 チラリと横目で深月を見る。彼女は青ざめた顔で震えている。

 

「違うの。ごめんなさい。違う、わた、わたしは……」

「ちょ、ちょっと大丈夫っすか!?」

「……体調が悪いのか?」

 

 やっぱりパッチワーク・ファーニマルを召喚するべきじゃなかった。早いところこのデュエルを終わらせないと。

 

「僕は魔法カード【魔玩具補綴(デストーイ・パッチワーク)】を発動!デッキから【融合】と【エッジインプ】と名のついたモンスター……【エッジインプ・チェーン】を手札に加える。そして【融合】を発動!」

「何度目の前から消しても融合してくるとは……ここまで来ると執念だネ」

「……手札の【エッジインプ・チェーン】と【ファーニマル・シープ】を融合!全てを縛れ、沈黙のケダモノ!おいで、【デストーイ・チェーン・シープ】!」

 

 僕の前に現れたヒツジのぬいぐるみ。それは機械に使われる様なチェーンに絡め捕られ、ねじ切られる。

 チェーンが溶けてヒツジの体を覆い、新たなモンスターとして生まれ変わる。

 

攻2000

 

「さらに【エッジインプ・チェーン】が手札・フィールドから墓地へ送られた場合、デッキから【デストーイ】と名のつくカードを手札に加える。僕が加えるのは【デストーイ・カスタム】だよ」

 

 墓地から伸びた鎖がデッキに突き刺さり、1枚のカードを引きずり出す。

 

「バトルだよ。【デストーイ・チェーン・シープ】で【リチュア・アビス】を攻撃。モノポライズ・チェイン!」

 

 シープはケタケタと笑い声をあげながら、リチュア・アビスに突進する。

 

「くっ……」

「カードを1枚セット。ターンエンド」

 

 

遊陽 LP4000 手札1

モンスター:デストーイ・チェーン・シープ

魔法・罠:セット

 

 

「ボクのターン!……素晴らしいね。バトル!【イビリチュア・マインドオーガス】で【デストーイ・チェーン・シープ】を攻撃!」

 

 マインドオーガスの産み出す水の球がチェーン・シープを飲みこみ、水圧で押し潰す。

 

LP4000→3500

 

 このデュエルが始まって初めてのダメージだ。……でも。

 

「デストーイ・バックアップ」

 

 フィールドに残った鎖の残骸が回転し、墓地からチェーン・シープを引き上げる。

 

攻2000→2800

 

「な、何ィッ!?」

「1ターンに1度、【チェーン・シープ】が破壊された時、攻撃力を800アップさせて自己再生を行うよ」

「まさかそんな効果を持っていたとはネ。カードを1枚セットしてターンエンドサ」

 

 

王子 LP4000 手札0

モンスター:イビリチュア・マインドオーガス

魔法・罠:セット

 

 

「僕のターン、ドロー」

 

 良い引きだ。これで決着を付けられる。

 

「待っててね、深月。このターンで終わらせるから。だからちょっとだけ……我慢してて」

「何をするつもりだい?」

「すぐにわかるよ。僕は【パッチワーク・ファーニマル】を召喚」

 

 栗色のクマのぬいぐるみが飛び出す。

 このモンスターが視界に入る度、深月の呼吸は荒くなっていく。

 

「だからさっさと退場してもらおう。僕はリバースカードオープン、【デストーイ・カスタム】!墓地の【エッジインプ】または【ファーニマル】を特殊召喚する。おいで、【ファーニマル・シープ】」

 

 モコモコとした綿の塊……ヒツジのぬいぐるみが現れる。

 

「【ファーニマル・シープ】の効果を発動。自分フィールドの【ファーニマル】を手札に戻す事で、手札か墓地の【エッジインプ】を特殊召喚できる!【パッチワーク・ファーニマル】を手札に戻し、蘇れ、【エッジインプ・チェーン】!」

 

 シープがクマのぬいぐるみを綿で包み隠す。シープが離れる頃にはぬいぐるみの姿はなく、そこには鎖の怪物が存在していた。

 

「そして【デストーイ・ファクトリー】を発動!このカードは墓地から【融合】または【フュージョン】と名のつくカードを除外する事で、【デストーイ】の融合を行える。墓地の【融合賢者】を除外し、フィールドの【チェーン】と【シープ】を融合し、融合召喚!【デストーイ・チェーン・シープ】!」

 

 僕のフィールドに2体目のチェーン・シープが現れる。

 

攻2000

 

「そして【エッジインプ・チェーン】が墓地へ送られた事で、デッキから【デストーイ】と名のつくカードを手札に加える」

「さっきのターンと同じだネ」

「ここまでは、ね。僕は手札に加えたカードをそのまま発動するよ!魔法カード、【魔玩具融合(デストーイ・フュージョン)】!」

 

 僕の足元に、ピンクや水色を中心とした色のファンシーな渦が現れる。

 

「このカードはフィールド・墓地に存在する融合素材モンスターをゲームから除外する事で、【デストーイ】と名のつく融合モンスターを融合召喚できる!」

「な、手札1枚から融合召喚だって!?」

「墓地の【チェーン】と【シープ】をゲームから除外し、融合召喚!おいで、【デストーイ・チェーン・シープ】!」

 

 渦の中から現れるのは、3体目のチェーン・シープ。3匹の笑い声が重なり、反響する。

 

攻2000

 

「融合モンスターを3体も召喚してくるとはネ」

「行くよ、バトル!攻撃力の上がった【デストーイ・チェーン・シープ】で、【イビリチュア・マインドオーガス】を攻撃!」

 

 僕の攻撃宣言を聞き、鏡泉君はその口をニヤリと歪ませる。

 

「その言葉を待っていたのサ!リバースカードオープン!【神風のバリア-エア・フォース-】!相手の攻撃表示モンスター全てを手札へ戻す!これで君の攻撃は届かない!」

 

 風の膜で作られたバリアがチェーン・シープの突進を受け止める……直前。

 チェーン・シープは体に絡み付いた鎖を伸ばして、ウェーブ・フォースのカードを縛り付ける。

 

「んなっ!?」

「【デストーイ・チェーン・シープ】が戦闘を行う時、相手はカードの効果を発動出来ない!」

 

 神風の障壁は消え去り、マインドオーガスはチェーン・シープに押し潰される。

 

LP4000→3700

 

「これで終わりだよ。【チェーン・シープ】2体で直接攻撃!」

「嘘だ、そんなぁぁっ!?」

 

LP3700→1700→0

 

 ソリッドビジョンが消え去り、鏡泉君はその場に崩れ落ちる。

 それを見て彼の取り巻き2人が駆けつけてきた。

 

「「かっ、鏡泉さん!」」

 

 僕も早く深月を助けなければ。僕は鏡泉君達には目もくれず、壁に背を任せ座り込んだ深月に近づく。

 

「……ぁ……遊陽、お疲れ……」

 

 やっぱり彼女の前でパッチワーク・ファーニマルを使うのはやめた方がいい。これ以上彼女の罪悪感(・ ・ ・)を刺激するのは良くないだろう。

 

「体調は大丈夫?」

「ううん。良くないかも……」

「すぐに保健室に行こう。肩を貸して」

 

 力のない僕じゃ深月を抱き抱えることは出来ない。だけど支えることなら何とかできる。

 深月の肩を支えデュエルフィールドを出ようとすると、三沢君に声をかけられた。

 

「黒野、大丈夫か?」

「あ、三沢君!……良ければ片方お願いしても良いかな?」

「いや、俺1人でも大丈夫だ。保健室でいいか?」

「うん。ありがとう」

 

 三沢君は深月をおぶさり、保健室へと連れていく。

 彼なら深月を任せても問題ないだろう。僕は落ち込んだ鏡泉君とそれを励ます取り巻き2人に声をかける。

 

「相手の手札を見て、先手を打って行動する。僕は、そのデッキを使いこなせるのはすごいと思うよ」

「イエロー君……」

「黒野遊陽、だよ。それじゃあ、僕は深月を看て来なくちゃ」

 

 それだけ言って立ち去る。行きしなに売店でスポーツドリンクを購入。結構汗をかいていたし、水分補給は大切だ。

 

 

 

 時刻は深夜の2時3時。部屋の明かりは消しましょう。

 お風呂一杯にお湯を張り、そこに『あなた』を沈めましょう。

 テレビをつけてチャンネル替えて、砂嵐だけを映しましょう。

 刃物を持って犠牲者見つけ、刺し貫いて斬りましょう。そしてこう呟きましょう。

 

「次の鬼は――」




「見るがいい!これが今回の最強カードサ!」

イビリチュア・ガストクラーケ
儀式・効果/星6/水属性/水族/攻2400/守1000
「リチュア」と名のついた儀式魔法カードにより降臨。
このカードが儀式召喚に成功した時、
相手の手札をランダムに2枚まで確認し、
その中から1枚を選んで持ち主のデッキに戻す。

「召喚すれば確実に相手の手札を1枚減らす事が可能サ!さらにマインドクラッシュ等でもう片方のカードを捨てさせることだって出来る!レベル6で使いやすい点もメリットだネ」


鏡泉王子 カガミズミ オウジ
デュエルアカデミア中等部ではトップの成績だった超エリート。ナルシスト気味でプライドが高く、女の子を口説くのが趣味。だがそれを除けば基本的には真面目で優しく面倒見の良いみんなの王子。勉強の面倒などをよく見ているため取り巻きからは慕われている。取り巻きの名前はチャラい方が右橋(ミギハシ)で寡黙な方が左河(ヒダリカワ)。
整った顔立ちやその仕草から名家のお坊っちゃまの様に思われているが、実家は一般庶民。
深月に惚れ込み度々口説き始めるが、いつも躱されてしまっている。でもめげない素晴らしいメンタルの持ち主。
ウェーブのかかった金髪に水色の瞳。
使用デッキは【リチュア】。


4話でした。これで一期分のオリキャラは(モブを除けば)終わりのはず。

それと最後に、何がとは言いませんが、絶対に実行してはいけません。
もしやるならば良く調べた上で、どんな事が起きたとしても自己責任でお願いしますね?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。