遊戯王GX ふたりぼっちの僕たちは   作:未OCGのアルカナフォース達に未来を!

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お久しぶりです。投稿が遅れに遅れ気がつけば9月。本当に申し訳ないです。
相変わらずデュエルしない主人公。

9/9 次回予告を一部変更


40話 光の進軍

「突然デュエルを挑んできたと思ったら……」

「3人相手にどう勝つつもりよ?」

「そのへんてこな制服といい、星見さん最近変よ?」

 

女子A LP4000 手札0

モンスター:エンシェント・クリムゾン・エイプ

魔法・罠:セット セット

 

女子B LP4000 手札0

モンスター:ヘルフレイムエンペラー

魔法・罠:セット バーニングブラッド

 

女子C LP4000 手札0

モンスター:氷の女王

魔法・罠:セット 一族の結束

 

 私の前には3人の女子。そして彼女達の操るフィールド魔法と永続魔法により強化された最上級モンスター達。

 

「このデュエルは自分以外のデュエリストが全員敵になるサバイバルデュエル。一番最初に攻撃できるのは、2番目にターンが回ってきた私よ」

 

深月 LP4000 手札7

モンスター:無し

魔法・罠:無し

 

「1ターン目に何もせずにターンエンドしてたみたいだけど、そんなデッキで勝てるのかしら?」

「わざと何もしなかったのよ。その必要がないから。でもこのターンでデュエルは終わり。斎王様から頂いたこの力を見せてあげるわ!【融合】を発動!」

 

 手札のモンスターを融合させ、新たなモンスターを呼び出す。幻奏ではない。あの愚かな私が使っていたカードとは違う、神聖なるモンスター。

 

「さらに墓地のモンスターを除外して効果発動!手札のこのモンスターを特殊召喚して、効果発動!」

 

 妖艶な女性型のモンスターが3人を見て微笑む。

 

攻4800

 

「攻撃力、4800!?」

「何よ、その融合モンスター!」

「あははっ!これこそ私の光の象徴!闇にとらわれた貴女達の心を救う、一筋の光なのよ!」

 

 私が発動した装備魔法カードを纏い、その融合モンスターが来ているドレスが純白に染まる。

 

「さぁ、バトルよ!」

「っ!リバースカードオープン!【魔法の筒】!」

「私も同じカードを発動!」

「無駄よ!斎王様の光は全てを照らすわ!」

 

女子A LP4000→0

女子B LP4000→0

女子C LP4000→0

 

 倒れる3人の女子。彼女達の心にも光の波動が届いたことだろう。

 

「さぁ、貴女達も光の結社に入りなさい。そして斎王様に全てを捧げるのよ!」

 

 

 

「な、なんなんスか皆!?」

「……明らかに様子がおかしい。それにあの白い制服は……」

「レディが着ていたのと同じだネ。様子を見るに、デュエルに負けると仲間入りしてしまう様だ。1度このブルー寮から逃げるべきだネ」

 

 オベリスクブルー男子寮。白い制服を着た数人の男子が、他のブルー寮の生徒にデュエルを挑んでいた。

 鏡泉達は部屋に隠れ白い制服の生徒をやり過ごしていたが、その数は増すばかり。

 

「「「サンダー!サンダー!万丈目ホワイトサンダー!」」」

「さぁ行けお前達!斎王様の威光で、この世界を白く染めるために!」

「「「うぉぉぉっ!!」」」

 

 白い制服の男子達は、皆おかしな目をしていた。やたらとギラついて活気がある。

 鏡泉はその集団が廊下をかけていくのを、壁に耳を当てて聞き届ける。

 

「万丈目君……?彼が関係していると言うのかい?」

 

 3人が居るのは2階。窓から飛び降りる事は可能ではあるが、それなりには危険だ。

 

「や、やっぱりダッシュで逃げるしかないッスね!」

「……しかし、それではあいつらと鉢合わせる恐れも……」

「……仕方ない。あいつらに見つからないよう窓から逃げるしかないネ」

「で、でもこの高さからは危なくないッスか!?」

「大丈夫サ右橋。……左河、カーテンを持ってきてくれるかい?」

「……はい、ここに」

 

 左河は鏡泉に言われると、窓についていたカーテンを外し持ってくる。

 

「2人はこのカーテンに掴まって降りるんだ。その後カーテンを2人で持ってクッションにしてくれ。その上に僕が飛び降りよう」

「そ、それじゃあ鏡泉さんが……!」

「僕は大丈夫サ。体の丈夫さには自信があってネ」

「……やるぞ、右橋。鏡泉さんの言う通りにしよう」

「わ、分かったッス……!」

 

 右橋と左河はカーテンに掴まって順番に脱出し、それをトランポリンの様に広げる。

 

「オッケーッスよ、鏡泉さん!」

「フフ、僕の華麗なるジャンプを今、ご覧にいれよう!」

 

 鏡泉は窓から飛び降りると、カーテンの上に着地した。

 

「……大丈夫ですか?」

「あぁ。勿論サ」

 

 しかし安心したのも束の間。ガサガサと草の根を掻き分ける音が森の中から聞こえ、白い制服の生徒達が次々と現れてくる。

 

「っ、女子達まで来てるッスよ!?」

「フハハハ!この万丈目様の目をごまかせると思うなよ?」

「……万丈目」

 

 白い制服の生徒を引き連れているのは万丈目準と、深月だ。

 

「随分時間かかっているのね、万丈目君?」

「こちらの方が人数が多いんだ。仕方ないだろう」

「ふーん。あ、遊陽には手を出して無いでしょうね」

「勿論だ。……というかあいつ、寮にいなかったぞ?」

「あー、そういえば今日は朝からトメさんの手伝いに行くとか言ってたわね」

 

 完全に取り囲んでいるからだろう、余裕そうに会話を続ける2人を前に、鏡泉は汗を流す。

 

「これは一体何のつもりだい?レディまで……」

「あなたにもすぐに分かるわよ」

「あぁ。斎王様の為に、我々の考えに賛同してくれる人間が必要なのだ」

 

 2人以外の生徒達は、ジリジリとその距離を詰めてきている。

 

「う、うぉぉぉっ!」

「……退け!鏡泉さんのお通りだ!」

 

 右橋と左河が互いの顔を見て頷くと、その包囲網の1ヶ所に突撃する。

 

「な、何をやっているんだい!?」

「鏡泉さんは逃げてくださいッス!」

「……鏡泉さん、早く!」

 

 2人が数人の男子を抑えようとするが、逆に捕まってしまう。しかしそのお陰で、包囲網の一部に穴が開く。

 

「っ!すまないお前達!必ず助けると約束する!」

 

 鏡泉は意を決するとその穴から包囲網を脱出し、振り替えることなく校舎へと走っていった。

 

「チッ!余計なことを……」

「逃げられたわね。鏡泉君の頭脳は欲しかったのに」

 

 

 

「はい。お疲れ様。ごめんねぇ、こんなに朝早くから」

「いえ。最近は体の調子も良いので、力仕事も任せてください」

「頼りになるわぁ」

 

 船からやって来る大量の段ボールを購買部奥の倉庫まで運ぶ。とはいえ、台車があるからそれに乗せて押していくだけだ。

 いつもはトメさんがやっていたらしいけど、トメさんも結構な歳だろうし、あまり力仕事をさせるのは心配な部分もある。

 

「あれから深月ちゃんとはどうなんだい?」

「あ、えっと……ちょっとまた問題が……」

「そうなのかい?」

「……大丈夫です。絶対に、深月は取り戻します」

「……あんまり思い詰めちゃダメよ?深月ちゃんと何があったのかは分からないけど、2人なら大丈夫よ」

 

 校内にある購買部。段ボールの中に詰められた商品をならび終え、ブルー寮に向けて歩いていると誰かが走ってくる足音が聞こえてくる。

 

「黒野君!」

「鏡泉君。どうしたの?」

「それが……だネ」

 

 

 光の結社によるブルー寮の侵略。それはあまりにも突然すぎる事件だった。

 男子・女子寮のほとんどがあの白い制服を着て、斎王とやらを崇拝している。

 

「右橋と左河はボクを逃がすために……」

 

  デュエルに敗北すると光の結社になってしまう。まるで形を変えた闇のデュエルだ。

 

「……デュエルに負けて仲間に入るなら、デュエルで勝てばもとに戻せるのかな?」

「分からない……ボク達は逃げるのに必死だったからね」

 

 もしデュエルでもとに戻せるのなら、深月を正気に戻すことができるかもしれない。

 

「……それは多分無理だぜ」

 

 僕たちの会話に割り込む声。くすんだ金髪をかきながら、有朱さんが歩いてくる。その体は引っ掻き傷だらけだ。

 

「有朱さん!?どうしたの、そのケガは……」

「森の中を突っ切って逃げてきたんだよ。女子寮もその光の結社とやらに襲われてな」

 

 男子寮を襲ったのが万丈目君なら、女子寮を襲ったのは……。

 

「途中何人か白いやつらを倒したけどよ、全然ダメだ。正気になんて戻りやしねぇ」

 

 無事なブルー生徒は、もしかして僕たちだけなのだろうか。……いや、レッド寮にいる天上院さんなら大丈夫だろう。

 

「一旦、皆でレッド寮に行こうよ。皆にもこの事を伝えた方がいい」

 

 レッド寮は、校舎から一番離れた崖の上に建っている。僕は何度か行ったことのある場所だけど、鏡泉君と有朱さんは初めてだろう。

 

「へぇ……ここがレッド寮なのか」

「なんだか親しみ深い場所だネ」

 

 ボロボロの寮のすぐ隣。天上院さんがいる新しい建物の前には、女子が3人立っている。光の結社じゃない、青い制服のままだ。

 

「明日香様!いい加減ブルー寮に戻りましょうよ!」

「そうですわ!」

「でも、私はレッド寮を守らないと……」

 

 浜口さんと枕田さん、それに天上院さんだ。天上院さんを連れ戻しに来たのだろうけど……そのお陰で襲撃を免れたのは皮肉な話かもしれない。でも良かった。

 

「3人とも、無事だったんだね」

「あら、黒野君。こんなところで何してるのよ」

「お久しぶりですわ」

「無事……って、何かあったの?」

「うん。万丈目君と深月がおかしくなったのは知ってるでしょ?」

「え、えぇ……」

「その2人が光の結社だとかいう組織を名乗りはじめてネ。オベリスクブルー寮を襲撃してきたのサ」

「お陰でこのザマだよ」

「鏡泉君に、真希ちゃんまで……」

 

 有朱さんのケガを手当てしながら、天上院さんの部屋で話し合う。十代君や丸藤君も集まってきた。

 

「俺もいるぞ!」

「どうしたの、三沢君?」

「……いや、何でもない」

 

 突然叫びだした三沢君を皆が見る。

 

「とりあえず、由々しき事態だドン」

「万丈目のやつ、俺がいない間にそんなことになってたのかよ」

「深月がそんなことするなんて……」

「その斎王?とやらのせいなのですわね」

「本当に、困ってしまうノーネ」

 

 ……?

 

「「「く、クロノス先生!?」」」

「校長ナノーネ」

 

 突然会話に和って入ってきたクロノス校長に、皆が跳び跳ねて驚く。

 

「クロノス先生、どうしてここに?」

 

 三沢君が丁寧に片手をあげて質問する。クロノス校長はうなずくと、沈痛な面持ちで語り始める。

 

「本日は1年生の授業があったのデスーガ、ブルー寮の生徒が誰一人として出席しなかったノーネ」

「ブルー寮の……やっぱり、深月達のせいで……」

「シニョーラ深月がどうかしたのデスーカ?」

「その……ブルー寮の皆が、おかしくなってしまったんです」

「な、何でスート?」

 

 僕達はことの発端を説明した。斎王と言う男に皆が操られてしまったことを。ブルー寮が占拠され、光の結社になってしまったことを。

 

「ナポリターナ……」

 

 クロノス校長は顔を真っ青に染める。

 

「そんな恐ろしいことが起きていたトーハ……仕方がないノーネ!その光の結社とかいうチンケなグループ、見過ごせないノーネ!」

 

 クロノス校長は立ち上がると、ブルー寮の方角へと歩き始める。

 

「ま、待ってくださいクロノス校長!」

「そうです!何があるか分からないんですよ?」

「それデーモ、大切な生徒たちがおかしくなってしまったのを、見過ごすことは出来ないノーネ」

 

 僕達は皆でうなずくと、クロノス校長の跡を追い、ブルー寮に向かった。

 

 

「それで?光の結社を解散してほしい、と言うわけか」

 

 ブルー寮の前には、お神輿の様な椅子に座った万丈目君と、それを呆れ顔で見ている深月が待っていた。

 

「その通りナノーネ!ワタシは校長の座に着きましターガ、ブルー寮の寮長であることに変わりはありませんーノ!」

「残念ねクロノス校長?もうここはブルー寮ではないのよ」

 

 深月が普段からは想像できない嘲る声でそう言うと、寮の扉が開き中から誰かが出てくる。

 

「「は、ハジメ様!?」」

 

 枕田さんと浜口さんの声が重なる。

 白い服を着た終理先生がクロノス先生を睨む。

 

「あぁ!ここはもうオベリスクブルーではない。ここはサイオウホワイト寮として生まれ変わったのさ!そして今の寮長は俺、終理創さ!」

「ペペロンチーノ!?」

「教師まで組織に取り込んでいるとはネ」

「てめぇら、どういうつもりだよ?」

 

 ショックを受け崩れ落ちるクロノス先生を足蹴にして、有朱さんが前に出る。

 

「そうだぜ!万丈目、お前その服似合ってねーぞ!」

「そうッスよ!」

「黙れ十代!貴様には白の素晴らしさがわからぬか!」

 

 そのまま言い合いになるかともおったが、万丈目君はすぐに視線を天上院さんに移す。

 今までの彼ならもっと十代に食って掛かった筈だったろう。

 

「ちょうど良かったよ天上院君。君も光の結社に入らないかい?」

「はぁ?なに言ってるの?」

「そうだぞ万丈目君!明日香を誘うのなら、もっとムードを大切にしてだね!」

 

 どこから出てきたのか吹雪先輩が天上院さんと万丈目君の間に割ってはいる。

 

「ごめんなさい、兄さん。少し退いてて貰えるかしら?」

「そんなっ!?」

 

 ショックを受けた吹雪先輩が、クロノス校長の隣に座り込む。

 

「あぁそうだ。デュエルしようか天上院君。それが一番手っ取り早い」

「てめぇ、明日香先輩を洗脳するつもりだな?」

「洗脳だなんて人聞きの悪い。光の素晴らしさを知ってもらうだけさ」

「……いいわ、相手になってあげる」

「明日香!?いや、ここは俺が……!」

「いいえ十代。これは私たちブルー寮の問題よ。万丈目君、もし私が勝てば、この光の結社とやらは解散して貰うわね」

「良いだろう」

 

 光の結社とデュエルするのは危険だ。みんなそれを知っているから、天上院さんを止めようとする。

 

「お待ちになって明日香様!」

「そうですよ!あんな挑発に乗ることなんて……!」

「ごめんなさい。でも、これは私がやるべきことよ」

「っ!なら、私もデュエルしますわ! 私も、ブルー寮の一員ですのよ!」

「そ、それならあたしだって!」

「っ、ももえ先輩もジュンコ先輩も!あいつらを倒しても洗脳はとけねーっすよ!?」

 

 二人がそう言うと、待ってましたと言わんばかりに深月が笑う。

 

「あはは!なら、二人は私が相手してあげるわ」

「深月さん……」

「深月……」

「あなたたち二人、まとめてデュエルしてあげる。手札もライフも2倍で良いわよ?万丈目君か私、どっちかでも負ければ、光の結社は解散する。良いわよね、万丈目君?」

「フン、負けるなよ星見」

「それは私のセリフよ」

「ももえ、ジュンコ……」

「さぁ、すぐにでも勝負を始めようじゃないか!終理先生、デュエル場の使用許可を」

「勿論だ。存分に使えばいいさ」

 

 

 ざわつくデュエルフィールド。ここでデュエルが行われていることは僕達と光の結社しか知らない。

 深月の後ろ側の観客席には、白い制服の生徒達がずらりと並んでいる。

 

「目を覚まさせてあげるわよ、深月!」

「えぇ!黒野君の隣にいないなんて、貴女らしくありませんわ!」

 

 深月か万丈目君、どっちかに勝てば光の結社は解散。先に深月のデュエルが始まる。

 

「私が先にやるのね。まぁいいわ。応援しててね、遊陽!」

 

 深月が僕の方を見て大きく手を振る。

 

「大丈夫よ黒野君。深月はあたし達が取り戻すから!」

「……うん。お願い、枕田さん、浜口さん」

「……へぇ、遊陽から応援してもらえるなんて、羨ましいわ……叩き潰してあげる」

 

「「デュエル!!」」

 

深月 VS ももえ&ジュンコ

 

「私の先攻ですわ!ドロー!」

 

 ライフは8000。手札は実質10枚。圧倒的に深月が不利なデュエル。だけど深月は不敵な笑みを浮かべている。

 

「私は2枚の永続魔法を発動しますわ!【黒蛇病】、そして【暗黒の扉】!」

 

 黒蛇病は自分のスタンバイフェイズ毎にお互いに200のダメージを受けるカードだ。受けるダメージは毎ターン倍になっていくから、早く処理しないと大ダメージを受けることになってしまう。

 そしてもう1枚のカードは暗黒の扉。お互いに1体のモンスターでしか攻撃できなくなるカードだ。

 

「さらに【デス・ウォンバット】を召喚しますわ!」

 

 浜口さんの目の前に小動物が現れる。

 

「このモンスターの効果によって、私は効果によるダメージを受けませんわ!」

「良いわよももえ!」

 

 デス・ウォンバットと黒蛇病が並んだことで、深月だけが毎ターンダメージを受けることになる。暗黒の扉で相手の攻撃を封じるロックバーンという部類のデッキなのだろう。

 

「早速いい調子ね。頑張って、ももえ」

 

 隣の席に座る天上院さんが呟く。浜口さんとしては理想的な初動が出来ているのだろう。でもそれは深月も理解しているはず。

 

「カードを1枚セット。ターンエンドですわ!」

 

 

ももえ&ジュンコ LP8000 ももえ手札2

モンスター:デス・ウォンバット

魔法・罠:黒蛇病 暗黒の扉 セット

 

 

「私のターンね。ドロー!」

 

 深月はドローしたカードを確認し、ニヤリと笑う。

 

「見せてあげるわ!斎王様から頂いた、私の新しい力を!来なさい、【月光紅狐(ムーンライト・クリムゾン・フォックス)】!」

 

フィールドが一瞬闇に包まれ、紅の光と共に狐の衣装を纏う女性が現れる。

 

攻1800

 

「深月?何よ、そのモンスター」

「……幻奏じゃ、無い……」

 

 深月の使っていた華やかなモンスターとは違う。暗く、美しく、妖艶なモンスター。

 

「な、何ですの?」

「あんた、自分のデッキはどうしたのよ!?」

「あんなデッキなんてもう必要ないわ。私は月光。闇に囚われる貴女達を救う一筋の光!行くわよ、バトル!」

 

 月光紅狐が飛びあがり、デス・ウォンバットへ向け蹴りを放つ。

 

「させませんわ!【くず鉄のかかし】発動!このカードは相手の攻撃を無効にしますわ!」

 

 紅狐の攻撃は割って入る様に現れたかかしに防がれる。

 

「さらに【くず鉄のかかし】は発動後、セットされますわ」

「毎ターン攻撃を無効に出来るカードに、攻撃回数を制限するカード……私の攻撃は封じたってことね」

「さっすがももえ!」

「私はカードを2枚セット。ターンエンドよ」

 

 

深月 LP4000 手札3

モンスター:月光紅狐

魔法・罠:セット セット

 

 

「あたしのターン、ドロー!」

 

 黒蛇病の効果が発動し、深月の肌に黒い蛇の模様が浮かび上がる。

 

「くっ……」

 

LP4000→3800

 

 次は枕田さんのターンだ。枕田さんのデッキは、どんなものなのだろう。

 

「良い手札だわ!あたしはフィールド魔法【霞の谷(ミスト・バレー)の神風】を発動!」

 

 枕田さんの背後から、美しく輝く風が吹く。彼女のデッキは風属性デッキか。

 

「そしてあたしは、【ハーピィ・ダンサー】を召喚するわ!」

 

 女性モンスターとしてはトップクラスの知名度を誇るハーピィシリーズのモンスターだ。

 露出度の高いその衣装は踊り子と言うに相応しい。

 

「【ハーピィ・ダンサー】の効果を発動するわ!自分の風属性モンスター1体を手札に戻して、手札から風属性モンスターを召喚するわ。【ダンサー】を手札に戻して、来て!【ハーピィ・レディ1】!」

 

 ハーピィ・レディ三姉妹の1人。翼となった両腕をはためかせ、枕田さんの前に現れる。

 

攻1300

 

「【ハーピィ・レディ1】の効果で、私の風属性モンスターの攻撃力は300アップするわ!」

 

攻1300→1600

 

 ダンサーのモンスターを入れ替える効果。一見無意味にも見えるけど、今発動しているフィールド魔法は……。

 

「さらに【霞の谷の神風】の効果を発動!あたしのフィールドの風属性モンスターが手札に戻った時、デッキからレベル4以下の風属性モンスターを特殊召喚出来るわ!来て、【霞の谷(ミスト・バレー)のファルコン】!」

 

 神風に乗り、剣を構えた鳥人の戦士が現れる。

 

攻2000→2300

 

 レベル4にしては高いステータス。所謂デメリットアタッカーに該当するカードだ。

 

「それだけじゃないわ!魔法カード、【万華鏡-華麗なる分身-】を発動!あたしのフィールドに【ハーピィ・レディ】が存在することで、デッキから【ハーピィ・レディ三姉妹】を特殊召喚!」

 

 ハーピィ・レディ1の姿がブレ、3人に増える。元となったハーピィ・レディ1もそのままフィールドに残っている。

 

攻1950→2250

 

「モンスターを一気に3体も……!」

「へへっ!どんなもんよ!」

 

 こんなに大量展開しても、浜口さんの暗黒の扉が邪魔になって一斉攻撃は出来ないだろう。

 ……普通なら。

 

「バトル!【霞の谷のファルコン】で、【月光紅狐】を攻撃するわ!」

 

 霞の谷のファルコンが剣を掲げると、暗黒の扉のカードが竜巻に吸い込まれていき、枕田さんの手札に入る。

 

「何ですって!?」

「【ファルコン】はその攻撃力の代償に、攻撃するときに自分フィールドのカード1枚を手札に戻す必要があるわ!」

「けれど発動コストも無い永続魔法ならデメリットなんてほぼ無いでしょうし……この状況じゃむしろメリットね」

 

 暗黒の扉が消え去ったことで、枕田さんのモンスターの攻撃を遮るカードはない。

 深月は小さく舌打ちすると、セットされていたカードを発動させる。

 

「リバースカードオープン!【逆さ眼鏡】!フィールドの全てのモンスターの攻撃力はこのターンの終わりまで半分になるわ!」

 

月光紅狐攻1800→900

デス・ウォンバット攻1600→800

ハーピィ・レディ1攻1600→800

ハーピィ・レディ三姉妹攻2250→1125

霞の谷のファルコン攻2300→1150

 

「けど、深月のモンスターの攻撃力も下がるなら関係無いわ!」

 

 攻撃力が下がることでダメージこそ減らせたものの、戦闘破壊は免れない。

 月光紅狐は妖しい笑みを浮かべると、無抵抗に剣を受け止める。

 

LP3800→3550

 

「掛かったわね!リバースカードオープン!【月光輪廻舞踊(ムーンライト・リンカネーション・ダンス)】を発動するわ!私のモンスターが破壊されたとき、デッキから【ムーンライト】と名のつくモンスター2体を手札に加える!」

 

 深月の手札に、新たに2枚のカードが加えられる。

 

「くっ!でも総攻撃よ!」

 

 2人のフィールドに残る3体のモンスターが続けざまに攻撃していく。

 

「きゃぁぁっ!」

 

LP3550→2750→1950→825

 

「どんなもんよ!あたしたちのこと、甘く見てたでしょ?もう一度【暗黒の扉】を発動してカードを2枚セット。ターンエンドよ!」

 

 

ももえ&ジュンコ LP8000 ジュンコ手札1

モンスター:デス・ウォンバット ハーピィ・レディ1 ハーピィ・レディ三姉妹 霞の谷のファルコン

魔法・罠:黒蛇病 暗黒の扉 セット セット セット 霞の谷の神風

 

 

「ふふ、ふふふ……」

 

 深月が顔を伏せたまま笑う。

 

「深月……?」

 

 深月はユラリと顔をあげる。2人のライフポイントはほぼ10倍。それなのに彼女からは、なんの不安も感じられない。

 

「あははっ!ええ!正直馬鹿にしてたわ!まさかここまで追い込まれるなんてね」

「余裕そうですわね……」

「えぇ。だってこのデュエルに勝つのは私。そういう運命だもの」

 

 深月がデッキの一番上に手を置き、カードを引く。

 

「私のターン、ドロー!……さぁ、行くわ!私は魔法カード【融合】を発動!」

 

 深月の背後に、青と赤の巨大な渦が現れる。

 

「【融合】……!?」

「来ますのね、深月さんのエースモンスター……!」

「私は手札の【月光紫蝶(ムーンライト・パープル・バタフライ)】と、【月光白兎(ムーンライト・ホワイト・ラビット)】を融合!」

 

 紫色の装飾を纏う蝶の踊り子と、バニーガールのような服装の白兎が渦へと飲み込まれていく。

 

「宵闇に差す光のように!輝き、魅了し、舞い踊れ!来なさい、【月光舞猫姫(ムーンライト・キャット・ダンサー)】!」

 

 月明かりの下に舞う、猫の姫。彼女はそのしなやかな肢体を鮮やかに操り、主である深月の側に降り立つ。

 

攻2400

 

「綺麗なモンスター……ですわ」

「えぇ……」

 

 攻撃力2400。2人のフィールドにいるどのモンスターよりも攻撃力が高い。

 とはいえ暗黒の扉とくず鉄のかかしのコンボで攻撃は通らないけど……。

 

「私は墓地の【月光紫蝶】の効果を発動!このカードを墓地から除外し、手札から【月光蒼猫(ムーンライト・ブルー・キャット)】を特殊召喚!」

 

 紫色に輝く鱗粉が深月の目の前に集まり、蒼い猫の衣装を纏う可愛らしい少女が現れる。

 

攻1600

 

「【月光蒼猫】の効果発動!このカードの特殊召喚に成功したとき、【月光蒼猫】以外のモンスター1体の攻撃力を2倍にするわ!」

「深月のフィールドに対象になるモンスターは……1体!」

 

 舞猫姫が蒼い光を纏う。

 

攻2400→4800

 

「攻撃力、4800……!?」

「これが斎王様のお力!貴女達もすぐにわかるわ!この素晴らしさが!」

「っ、でも、いくら攻撃力をあげたところで」

「攻撃できない。そう言いたいんでしょ?」

「っ!」

「【月光舞猫姫】の効果を発動!私のモンスター1体……【月光蒼猫】を生け贄に捧げることで、このターンももえとジュンコのモンスターは1度だけ戦闘では破壊されず、【月光舞猫姫】は全てのモンスターに2回ずつ攻撃できるわ!」

 

 攻撃力4000超えの全体攻撃……!?それもわざわざ戦闘破壊耐性を付与してまでの2回攻撃。

 守りを主軸に置いていた幻奏とは違う、相手を攻めることだけを考えているかのような、超攻撃的なデッキだ……。

 

「【暗黒の扉】はモンスター1体でしか攻撃できなくなるカード。それなら、1体のモンスターで複数回攻撃すれば良いのよね?」

「そんなっ!」

「大丈夫よ、ももえ!リバースカードオープン!【迷い風】!特殊召喚された相手モンスター1体は、このターン効果が無効になり、元々の攻撃力も半分になるわ!」

 

 霞の谷から吹く暗い風が舞猫姫を取り囲む。

 

「ふふ、光は全てを照らすのよ!まやかしなんて通用しないわ!私は墓地の【月光紅狐】の効果を発動!【ムーンライト】と名のつくモンスターを対象として発動したカードを無効にし、お互いに1000ポイント回復するわ!」

 

 紅い月の光が闇を払うようにフィールドを照らす。

 

深月LP825→1825

ももえ&ジュンコLP8000→9000

 

「運命の輪は回り始めた!」

 

 深月が1枚のカードを掲げる。全てを突き刺すような、強い光を放つカードだ。

 

「装備魔法、【白のヴェール】を発動!」

 

 強い光がフィールドを覆い、月が純白に染まっていく。

 ウェディングドレスのような真っ白なドレスを身に纏った舞猫姫が、妖艶な笑みを浮かべた。

 

「バトル!【月光舞猫姫】で【ハーピィ・レディ1】を攻撃!」

「くっ……!」

「まだまだ!リバースカードオープン!【神風のバリア-エア・フォース-】!」

 

 霞の谷から強い風が吹き荒れ、月光舞猫姫を吹き飛ばそうとする。

 

「無駄よ!【白のヴェール】を纏ったモンスターが戦闘を行うとき、相手は魔法・罠カードを発動することは出来ず、その効果は無効になるわ!」

 

 純白のヴェールが光を放つ。その光を浴びた伏せカードと表側表示のカードは真っ白に染まってしまい、その効果を失う。

 

「さぁ、切り裂け、【月光舞猫姫】!」

 

 片手に持ったナイフを煌めかせ、ハーピィ・レディに突き立てる。

 

「「きゃぁぁっ!!」」

 

LP9000→5800

 

「さらに【月光舞猫姫】は、同じモンスターに2回攻撃できるわ!」

 

 休むまもなく、もう片方の手のナイフで切り上げ、ハーピィ・レディは破壊される。

 

LP5800→2600

 

「【白のヴェール】を装備したモンスターがモンスターを戦闘破壊したとき、貴女達の魔法・罠カードは全て破壊されるわ」

 

 真っ白に染まったカードたちが風化して行く。

 

「続けて攻撃!【デス・ウォンバット】を引き裂きなさい!」

 

 舞猫姫は踊るようにくるりと向きを変え、デス・ウォンバットの背後まで跳び跳ねると、背中にナイフを突き刺した。

 

「そん……な……こんなことって……」

「深月……あんた……」

 

LP2600→0

 

「ももえ……ジュンコ……」

「先輩っ……!」

 

 モンスター達が消えていき、浜口さんと枕田さんが倒れる。

 

「どうかしら?負けたことを悔しく思う必要は無いわ。貴女たちは光に導かれる。そういう運命だったのだから」

 

 深月が倒れた二人を見下ろすように歩く。

 

「ええ……そうですわね」

「なんて素敵なのかしら。光って……」

 

 浜口さんと枕田さんがユラリと立ち上がる。

 

「私も光の結社の一員として、斎王様のお手伝いをさせていただきますわ」

「うん。あたしも、斎王様に従うわ。これからはよろしくね?深月」




「今回の最強カードよ!」

月光舞猫姫
融合・効果/星7/闇属性/獣戦士族/攻2400/守2000
「ムーンライト」モンスター×2
(1):このカードは戦闘では破壊されない。
(2):1ターンに1度、自分メインフェイズ1にこのカード以外の自分フィールドの「ムーンライト」モンスター1体をリリースして発動できる。このターン、相手モンスターはそれぞれ1度だけ戦闘では破壊されず、このカードは全ての相手モンスターに2回ずつ攻撃できる。
(3):このカードの攻撃宣言時に発動する。相手に100ダメージを与える。

「斎王様から頂いた、私の新しいエースモンスターよ。相手全体に2回攻撃を行ない、ライフを削ることを追求した効果を持っているわ。今回はデス・ウォンバットに遮られてしまったけど、攻撃の度に100のダメージを与える効果を持っているわ。これと悪夢の拷問部屋を組み合わせれば……フフッ」


ブルー寮の奪還に失敗し、明日香、ももえ、ジュンコまでもが光の結社に入団してしまう。
元いた寮を追い出され、今後の学園生活を考える遊陽と真希の前に、光の結社の盟主たる斎王が姿を表す。
次回、「光の盟主・斎王!」


星見深月(光の結社)
斎王によって洗脳され、光の結社に堕ちた深月。その心には斎王への忠誠を深く刻まれているが、遊陽への想いには敵わなかった。光の結社に入ってからも遊陽と行動をとることが多い。
洗脳前と比べるとスキンシップが多くなっており、遊陽に近づく女子を敵視している。また遊陽や斎王以外には冷淡な反応をする。
その実力は斎王からも高く評価されており、遊陽と関係の無い命令なら素直に従うため、一般生徒をデュエルで負かし洗脳した数は万丈目に次いで多い。
使用デッキは【月光】。


さて、更新が滞ってしまい申し訳ありませんでした。今後もかなりノロノロ更新になるかとは思いますが失踪しないよう頑張ります。
それでは次回、漸く主人公のデュエルです。
ではではー!
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