遊戯王GX ふたりぼっちの僕たちは 作:未OCGのアルカナフォース達に未来を!
さて、ようやく主人公のデュエルです。お相手はタイトルからも察せられる通りあのお方。
「起きろよ先輩!朝だぜ?」
ドアを叩く音。僕はレッド寮の一室で目を覚ます。
「ありがとう、有朱さん」
ドア越しの有朱さんにお礼を言い、ゆっくりと体を起こす。
あのあと、天上院さんは万丈目君に敗北し、光の結社に入団した。かくしてブルー寮の奪還は失敗。住む場所を追われた僕と有朱さんはレッド寮に、鏡泉君は三沢君のところに泊まらせて貰っている。
クロノス先生がブルー寮を取り戻すために校長権限で色々やっているらしいけど……上手く行っていない様だ。この学園の理事会や株主の一部には既に終理先生が手を回していたようで、サイオウホワイト寮が正式なものとして認められてしまっていた。
何人かがラーイエローに昇格した事で余っていたこの部屋に住んでいるのは僕だけ。有朱さんは天上院さんが使っていた部屋に泊まっている様だ。
制服に着替えて食堂に向かうと、既に有朱さんが朝食をとっていた。
トメさんの手作りなのだろう、卵焼きの匂いだ。
「おはよう、有朱さん」
「おはよ、黒野先輩」
十代と彼の弟分の姿がない。今日は休みの日だし、学校はない筈だけど……?
「あれ、十代と2人は?」
「あぁ、ホワイト寮に呼ばれていったよ。何でも遊城先輩を光の結社に入れるための刺客が居るんだってよ」
「向こうは十代を仲間にしたいんだね」
「そりゃそうだろうな。こんなことになるまで交流は無かったけど、あの先輩すごく強いな?」
トメさんは購買に向かったのだろう。ラップに包まれている僕の分の朝食を温め、食べる。
「いただきます」
「トメさん?って人が作ったんだっけか。旨いなこのご飯」
「うん。絶品だよね。使っている材料はそんなに高級じゃないのに……やっぱり料理人の腕だね」
僕ら2人ではあまり会話が発展することなく、食器と箸が当たる音だけが響く。
しばらくそのままの状態が続き、有朱さんが口を開いた。
「……明日香先輩が負けるとは思わなかった」
「……うん」
天上院さんと万丈目君のデュエルは、終始万丈目君にペースを握られていた。深月も使っていた『白のヴェール』というカード……あのカードからは、何だか嫌な感じがする。
「あたし達、どうなるんだろうな」
「僕達?」
「……ブルー寮がこのままなら、あたし達、ずっと戻れ無いだろ?鏡泉先輩だって……」
「……うん。深月や皆がそのままって言うのも、許せないしね」
「結社のやつらを倒しても正気には戻らない。となれば大元を叩くしかねーけどよ、その斎王とやらはどこにいるんだよ……」
有朱さんが大きなため息をついたそのとき、背後から声が聞こえた。
「おや、私を探しているのですか?」
「なっ、なっなぁぁぁ!?」
有朱さんは声にならない悲鳴をあげて飛び退き、僕は咄嗟に振り向く。
そこに立っていたのはオベリスクブルーの制服を着た背の高い男と、深月だった。
「おはよう、遊陽」
「失礼。自己紹介が遅れましたね。私は斎王琢磨。今週からデュエルアカデミアの3年生に転校してきたため、ご挨拶に伺いました」
「……この人が斎王なの?深月」
「うん。そうよ。このお方が斎王様」
物腰は柔らかく、丁寧な口調。でもその瞳はギラギラと輝いていて、攻撃的だ。
「……そう。なら丁度良いよ。斎王、深月を返してもらおうか」
「遊陽?」
「彼女を……ですか?」
「深月にかけた洗脳、解いてもらえないかな?」
「洗脳だなんてそんな物騒なことではありませんよ。彼女は単純に、私の思想に賛同していただけただけです」
「チッ、白々しい……!」
有朱さんが舌打ちをする。僕もそうしてやりたい気分だ。
「彼女が光の結社を脱退するか否かは彼女の意思に委ねられることです。私や、貴方が口を出すことではありませんよ」
「……お前……」
沸々と腸が煮え繰り返る。ここまで怒ったのは初めてかもしれない。
「そうだ、私とデュエルして頂けませんか?」
「デュエルを?」
「えぇ。貴方の力に、私は興味を持っていましてね?」
「……やってやる。僕が勝ったなら、深月を元に戻すんだ」
「それは約束できませんね……彼女は自身の意思で私の下にいるのですから」
僕に対してデュエルを挑んだ斎王に、慌てて深月が声をあげる。
「待ってください斎王様!遊陽を光の結社に誘うのは、遊陽が自分から――」
「えぇ、分かっているとも。しかし私とデュエルを行えば、きっと彼も我々の考えに賛同しくれるでしょう」
……やっぱり、僕を洗脳するつもりなのだろう。
「……良いよ。相手になってあげる」
「遊陽っ!?」
「それは良かった」
「待てよ黒野先輩!コイツ、かなり胡散臭いぜ?」
「わかってるよ。でも、深月を奪われた恨み、晴らさずにはいられない」
元々僕はそういうものだ。恨みと呪いに満ちた怨霊の類。それに、この男を倒せば深月の洗脳も解けるかもしれない。
「さぁ、それでは外に出ましょうか」
斎王の提案に従い、レッド寮を出る。互いにデュエルディスクを構え、向かい合う。
「デュエ――」
「失礼、デュエルディスクを使うのは初めてでして……どうすればよいのやら」
「斎王様、まずはここのボタンを……」
「あぁ……これですか……」
デュエルディスクを使ったことがない?深月とのデュエルに勝っているのに?本当に、得体の知れない奴だ。
「では、改めまして――」
「「デュエル!!」」
遊陽 VS 斎王
「私の先攻、ドロー……私は、【アルカナフォースVII-THE CHARIOT】を召喚します」
斎王のフィールドに現れたのは、壺の様な形をした奇っ怪なモンスター。光属性、天使族のモンスター……らしいけど、とてもそうとは思えない。
攻1700
「何だ?あの気味の悪ぃモンスターは……」
「斎王様の使うアルカナフォースは、運命を司るモンスター。フィールドに現れたときに正位置か逆位置かの運命を定め、それによって持つ効果が異なるわ」
「つまり……ギャンブルデッキってことか?」
正位置か逆位置か。タロットをモチーフとしているカードなのだろう。それならきっと、逆位置なら悪い効果が発揮されると思うけど……。
「それでは、貴方の運命を占って見ましょうか」
モンスターの頭上にカードが現れ、回転を始める。
「さぁ、ストップと。貴方の口からおっしゃって下さい」
「……ストップ」
回転していたカードが、逆さまの状態で止まった。
「なるほど、逆位置の『戦車』ですか……随分と焦っている様ですね?」
「当たり前だよ。お前みたいな良くわからないやつに、深月を好き勝手されているんだからね」
「そんなつもりは無いのですがねぇ。それではここは1つお詫びの品をお贈りしましょう。逆位置の【THE CHARIOT】は、自身のコントロールを相手に移します」
斎王の前からモンスターが消え去り、僕のフィールドに現れる。
「コントロールを……?」
「えぇ。そういう運命だったようですね。私は3枚のカードをセットし、永続魔法【千里眼】を発動。ターンエンドです」
斎王 LP4000 手札1
モンスター:無し
魔法・罠:千里眼 セット セット セット
「僕のターン、ドロー!」
相手のフィールドはがら空きだけど、伏せカードが多い。警戒して行かないと。
「貴方のスタンバイフェイズ、永続罠発動!【群雄割拠】!この効果により、お互いフィールド上に出せるモンスターの種族は1種類のみとなります」
その為にこのモンスターを送りつけてきた……!?
いや、まさか。だってこのモンスターが逆位置になる保証はない。そうなってしまった場合の保険だろう。
それにしても……このモンスターがいる限り、僕はデストーイとエッジインプを召喚することはできない。セットすることなら可能だけど、表側表示になった瞬間に破壊されてしまう。
「さて、どうしますか?」
今の僕の手札に攻撃力の高いモンスターは居ない。
「僕はモンスターをセット。そしてバトル!【THE CHARIOT】でダイレクトアタック!」
「なるほど、それならばリバースカードオープン!【チェンジ・デステニー】!」
THE CHARIOTの動きが止まり、守備表示になる。それと同時に、斎王の背後に赤と青の扉が現れる。
攻1700→守1700
「【チェンジ・デステニー】は攻撃してきたモンスターを守備表示にした上で、表示形式の変更を不可能にします。その後貴方は1つの選択を迫られる。赤の扉を選べば、私は【THE CHARIOT】の攻撃力の半分である850のダメージを受ける。青の扉を選べば、貴方は850のライフを得る……さて、このカードはデュエルの勝敗を左右するカード……貴方はどちらを選びますか?」
厄介なカードだ。これで僕はモンスターを自由に召喚できず、攻撃すらもまともに行えない。
とはいえ、僕の手札には今の状況を打開するカードがある。次のターン、斎王がモンスターを召喚してくれば。
ここは、少しでもライフを削って、短期決戦を狙う。
「赤の扉だよ」
「ほう、貴方も彼女と同じ選択を」
LP4000→3150
これ以上はなにもできない……かな。
手札に罠カードはあるけど、このカードが発動できる相手なのだろうか。ブラフにはなるかな?
「カードを1枚セット。ターンエンド、だよ」
遊陽 LP4000 手札4
モンスター:THE CHARIOT セット
魔法・罠:セット
「遊陽……」
深月が僕を不安そうに見つめている。
「私のターン、ドロー。このスタンバイフェイズ、私は【千里眼】の効果を発動すると共に、永続罠【不吉な占い】を発動します」
不吉な占い……?
「私のスタンバイフェイズ毎に相手の手札をランダムに1枚選択。私がそのカードの種類を言い当てれば、貴方に700のダメージを与えます……さて、それではどのカードを視ましょうか。好きな手札を1枚、貴方が選んでください」
これもギャンブルカードだろう。発動するタイミングから、ほとんどモンスターか魔法かの2分の1。罠カードが手札にあればセットしているだろうから。
「このカードだよ」
僕は一枚の手札を選び、表側が見えないように掲げる。
「確率は2分の1。そう思っているのでしょう?」
「……うん。大抵の場合は、ね」
「それなら今回は特別に、カードの名前まで宣言してしまいましょうか。魔法カード【融合】です」
「っ!?」
カードの名前まで……!?
インチキやイカサマ?いいや、僕の手札を覗きみるなんて、どうやって……。
「……正解、だよ」
LP4000→3300
「な、何なんだよお前!黒野先輩の手札を見たのか!?」
「手札ではありません。私は未来を見通したのですよ」
「未来……だと?」
「えぇ。私はこのデュエルの結果を見ました。黒野遊陽は敗北する、とね」
僕が、負ける……?
「運命とは絶対的なのです。未来には無限の可能性がありますが、しかし未来が観測されたとき、それは確定した運命へと成るのです。私は貴方の手札を読んだ訳ではありません。精々貴方のデッキに入っているであろうカードを宣言したのみ」
「まるで意味が分からねーぞ?」
「このデュエルで僕が勝つ可能性はあったけど、斎王が僕の敗北を未来視した事で未来が確定され、その可能性がなくなった……ってことだよ」
「はぁ?どんな理論だよ、それ」
「現に私が宣言したカードは正解でした。今、運命が、私の勝利へとこのデュエルを運んでいるのです」
未来なんて見ることができるはずはない。……って言いたいところだけど、オカルティックな存在である僕がそれを否定することは出来ない。
もしこの男がただのペテンではなく、本当に未来を見られるのなら。この先のギャンブル効果も全て、斎王に都合のいいものになると言うことだろう。
「さらに永続魔法【千里眼】の効果により、私はスタンバイフェイズ毎に100のライフを支払い、貴方のデッキの1番上のカードを確認できます」
僕の前に巨大なカードが現れる。僕の方からは裏側のカードが見えるだけで、次のターン何をドローするかは分からない。
LP3150→3050
「なるほど……【エッジインプ・シザー】ですか」
「っ!何のつもり……?」
「ただの独り言に過ぎませんよ。それではメインフェイズです。魔法カード【カップ・オブ・エース】を発動」
斎王の頭上に魔法カードが現れ、さっきのモンスターと同様に回転を始める。
「それでは、ストップの掛け声をどうぞ」
「……ストップ」
カードは正しい向きで止まる。
「正位置の効果により、私はカードを2枚ドローします」
「こいつ……やっぱりイカサマでもしてんじゃねーのか?」
「斎王様がそんなことなされる筈はないわ。全て定められた運命に従っているだけよ」
まだ、まだ運が良い、で済むレベルだろう。だけどきっと、斎王の言う通りこれは必然。
ギャンブルカードは全てを運に任せる代わりに、成功時のリターンは大きい。その結果を好き勝手に出来るのだ。絶対に勝てない訳じゃないけど、厳しい戦いになるだろう。
「では行きます。私は【アルカナフォースVI-THE LOVERS】を召喚」
再びエイリアンの様な見た目のモンスターが現れる。大アルカナの6番目、『恋人』のカードだ。
モンスターの頭上でカードが回転する。
「……ストップ」
「おや、正位置ですか。正位置の『恋人』は絆や深い繋がりを示すカード。お2人の仲はとても良いようだ」
攻1600
正位置を得たアルカナフォースの効果は分からないけど、このモンスターもかなり強力なはず。
「さぁバトルだ!【THE LOVERS】でセットされたモンスターを攻撃!」
THE LOVERSが2対の光を放ち、セットされたファーニマル・ライオを貫く。
「ふふ、カードを2枚セット。ターンエンドです」
斎王 LP3050 手札0
モンスター:THE LOVERS
魔法・罠:千里眼 不吉な占い 群雄割拠 セット セット
「僕のターン、ドロー!」
ドローしたカードはエッジインプ・シザー。でもこのカートが手札にあることは、斎王は既に知っている。
手札にいるファーニマルモンスターと融合しようにも、群雄割拠とTHE CHARIOTのせいでデストーイは特殊召喚出来ない。
「……なら、魔法カード発動、【ミニマム・ガッツ】!【THE CHARIOT】を生け贄に捧げることで、【THE LOVERS】の攻撃力を0に!」
THE CHARIOTが光の塊となってモンスターに襲いかかり、その攻撃力を削る。
攻1600→0
「っしゃ!これで黒野先輩のフィールドにモンスターは居ない!」
「デストーイを融合召喚できるわね!」
心なしか、深月が僕を応援してくれているような気がする。
「そして【融合】を発動。手札の【エッジインプ・シザー】と【ファーニマル・ウィング】を融合!」
僕の背後に赤と青の渦が巻き、2体のモンスターが飲み込まれていく。
「刃向かうものを処刑せよ、冷徹のケダモノ!来い、【デストーイ・シザー・タイガー!】」
青く美しい毛皮を陽光に煌めかせ、トラのぬいぐるみが腹部のハサミで空を切る。
攻1900→2200
「【シザー・タイガー】の効果によって、【デストーイ】の攻撃力はフィールドの【デストーイ】と【ファーニマル】1体につき300アップ。さらに融合召喚に成功したとき、融合素材の数までフィールドのカードを破壊できる!」
僕が破壊するのは、群雄割拠と不吉な占いだ。
2枚のカードはハサミによって一刀両断。不吉な占いが消えたことで、安定したダメージソースは消えたはずだろう。
「ほう……」
「【ミニマム・ガッツ】の効果を受けたモンスターが戦闘で破壊されたとき、コントローラーはその元々の攻撃力分のダメージを受ける」
シザー・タイガーの攻撃力と、THE LOVERSの攻撃力の合計は、今の斎王のライフよりも多い!
「これで終わりだ!【デストーイ・シザー・タイガー】で【THE LOVERS】を攻撃!」
シザー・タイガーが吼え、腹部のハサミでTHE LOVERSの首を断ち切った。
運命を自在に操作する斎王を相手に苦戦する遊陽。
運命の輪はただひたすらに太陽を沈ませる。
永続魔法『千里眼』による完全な未来視に対して、遊陽がとった行動とは。
次回、「陽はまた昇る」
次回はなるはやで頑張ります……。