遊戯王GX ふたりぼっちの僕たちは 作:未OCGのアルカナフォース達に未来を!
アカデミアに入学してからだいぶ経ち、色々な事に慣れてきた頃。
『――それでジュンコがね?』
僕と深月はPDAで連絡するのが日課になっていた。
お互いの寮を行き来することは出来ないから、せめて今日何があったかを話している。
深月の体調はすぐに回復して、後遺症のようなものは全くない。最近は枕田さんや浜口さん、天上院さんとはより仲良くなったようで、呼び捨てにする仲になっているようだ。
友人の事を嬉しそうな声音で言われると、僕も嬉しくなってくる。
『あ、そうそう!遊陽に話そうとしてたことがあって』
『何?』
『ももえから聞いたんだけどね?遊陽はさ、旧特待生寮って知ってる?』
「……け、けっこう雰囲気あるわね」
「深月ってホラーに弱かったよね?」
「う、うん……」
「なんで来ちゃったかなぁ……」
「遊陽は怖くないの?」
「んー、全然?」
僕達が立っているのは、かつてオベリスク・ブルーの特待生が使っていたと言う廃寮。ところどころツタが張っていたり、窓が割れていたりとかなり雰囲気がある。壁自体はしっかりしているようで、崩壊の恐れはなさそうだ。
「っていうかここ、立入り禁止だし……」
「で、でも行くよ!き、肝試し、だから……!」
そういう彼女の足はガタガタと震えていてまともに歩けそうにない。そんなに怖いのになぜ拘るのだろうか。
「……そうよ、吊り橋よ、吊り橋……」
なんだか良くわからないことを呟いている。おおかた浜口さんに何か吹き込まれたのだろう。
「そ、それじゃあ、行くわよ!」
深月に腕をガッチリと掴まれながら廃寮へと足を踏み入れる。
当然明かりは無いので、持ってきた懐中電灯のスイッチを入れた。
「クモの巣とかも多いから気を付けてね」
「う、うん……きゃっ!?」
深月の目の前を何かが飛ぶ。蛾の様な虫の類いだろうか。
「……あれ?」
「どうしたの?深月」
「えっと、何て言うか……結構片付いてる、って思ったの」
「片付いてる?」
「うん。クモの巣とかは多いけど、ところどころ埃が積もってない場所があるの。……まるで、誰か住んでるみたい――」
そこまで言って固まる。そしてギギギと擬音のしそうな動きで僕の方を見て、抱きついてくる。
「み、深月!?」
「だ、誰もいないよね……!?お、お化けとか住んでないわよね……!?」
「落ち着いて深月。幽霊が住んでても綺麗にはならないよ」
「そ、そうよね。……ねぇ、お化け以外のものが住んでるとか――」
「………」
「何で目を逸らすのよ!」
パニックになりかけている深月に体を揺さぶられる。
「ま、まぁ……きっと管理人とかが度々来てるんじゃない?使われてなくても手入れは必要だろうし……」
「そ、そうね!それだわ!」
肝試し、なんて言っておきながら何の目的も無いので、とりあえず僕達は部屋を見て回る。
「あれ、なにかしら、この写真」
「10JOIN……?何かの暗号かな?」
謎のイケメンの写真はとりあえずもとあった場所に戻した。
軋む階段を登り、僕達は2階に到達する。
「に、2階で1部屋見たら、それで帰りましょ?」
「えっと、別にすぐ帰っても……」
「う、ううん!ここまできたら意地よ!」
そういう深月の顔は覚悟を決めたようにキリリとしていたが、僕の腕を掴む彼女の腕は震えていて、明らかに無理をしていることがわかる。
「ねぇ、深月」
「ほら、あそこの部屋!」
僕達が入った部屋は2階の中心にある部屋だ。他の部屋より少しだけ大きく、窓から眺める景色もいい。
「やっぱり、何か綺麗なのよね……ほら見て、遊陽。このクローゼット、取手のところ」
「どうしたの?」
「全然埃が無いの」
「開けてみようか?」
「……う、うん」
ゴクリと唾を飲む深月の前に立ち、クローゼットを開ける。
「これは……ドレス?かしら」
「そうだね」
クローゼットの中には何着ものドレスが入っている。パーティーで着るようなゴージャスな物から、ちょっとしたオシャレで着られる様なものまで。
「どれも結構新しいわ。まるで新品みたい……」
「深月が着たら似合いそうだね」
「そ、そう?……ううん。私はこんな綺麗な服似合わないわよ」
「着て見ればわかるんじゃない?」
「服があれば、ね」
服なら目の前にあるけど、まぁ誰のものだかわからない服なんて着たく無いだろう。
「それじゃあ、帰ろうか」
「うん!」
そう言って部屋を出る。その時のこと。
「っ、きゃあっ!?」
暗闇の中から大柄な男が現れ、深月の手を掴む。
「深月!」
深月を取り戻そうと手を伸ばすが、大柄な男は首からかけた金色のアイテムを掲げる。
「っ!」
そのアイテムから強い光が発せられ、反射的に目をつぶってしまう。
そして次に目を開けたとき、彼女の姿は何処にもなかった。
「深月……!」
やられた。まさかこんなところに人がいるなんて。1体何が目的なんだろうか。
そして数十秒の後、
「きゃぁぁぁっ!?」
再び悲鳴が聞こえる。深月とは違う声。音が聞こえてきたのは……下の階だ!
僕は急いで階段を降り、音の聞こえた方へと向かう。
「誰もいない……1階には居ないってことだよね」
僕はすぐに地下へと降りていく。
そこには先程の大柄な男と、棺のような物に入れられた深月と天上院さんが居た。
2人は眠っているようで、周囲の状況に反応する様子はない。
「明日香!」
その時、1階から3人のオシリスレッドが降りてくる。
「見つけたぞぉ……遊城十代ぃ……」
「お前は誰だ!……って、お前も誰だ?」
遊城十代と呼ばれた男子は、頭をかきながら僕に問いかけてくる。
「黒野遊陽君ッスよ!こないだ儀式デッキの人とデュエルしてた!」
「可愛いぬいぐるみを使う人なんだなぁ」
「……僕は黒野遊陽。深月を返してもらうよ」
遊城君には名前だけ答えて、大柄な男を睨み付ける。
「我が名はタイタン……遊城十代、貴様を抹殺するために雇われた殺し屋である……」
「俺を?それに殺し屋だって?」
「そうだぁ……この2人を助けたければ、私とデュエルを行うのだぁ……」
「くそっ!やってやる――」
「遊城君、僕がデュエルしていいかな?」
拒否なんてさせない。僕は遊城君が答える前にデュエルディスクを展開し、タイタンの前に立つ。
「用があるのは遊城十代だけだぁ……貴様とデュエルする時間など……」
「その闇のアイテム、本物?」
僕は男の持つ金色のアイテムを指差す。その形は千年パズルと言われるアイテムにそっくりだ。
「当たり前だぁ!」
「それは興味深いなぁ。ぜひ僕とデュエルして欲しいんだけど」
「私は依頼を果たすだけだぁ……」
「……本物じゃなくてハリボテなのかな?偽物なら1回デュエルしたらバレちゃうからね。だから頑なに僕とはデュエルしないの?」
「……ふん、後悔するがいぃ!まずは貴様から始末してやるぞぉ!」
「お、おい黒野!大丈夫なのかよ?」
「アイツ、嫌な予感がするんだなぁ」
「ぜ、絶対危ないやつッスよ!」
危険だろうと何だろうと、僕は深月を助けなければいけない。深月がこんな良くわからない男の手中にあるだなんて絶対に許せない。
「……深月にさえ手を出さなければ良かったのにね」
「何か言ったかぁ?」
「ううん。始めよう」
「「デュエル!」」
遊陽 VS タイタン
「私のターンだぁ、ドロー!私はぁ、【デーモンの騎兵】を攻撃表示で召喚するぅ!」
馬の鳴き声と共に駆け付けるのは騎兵。ただし乗っている兵隊は悪魔だ。
攻1900
「デーモンデッキ……!」
「ふははは!私の闇のデッキと、そしてこの闇のデュエルを恐れるがいい!」
気づけば、僕らの周りには霧が立ち込めている。
「な、なんだこれ……」
「息苦しいんだなぁ……」
「これが、闇のデュエルッスか……!?」
……確かに呼吸がしづらい。水の中に居るような圧迫感だ。
「私はカードを1枚セットぉ。ターンエンドだぁ」
タイタン LP4000 手札4
モンスター:デーモンの騎兵
魔法・罠:セット
「僕のターン、ドロー」
シザーとベア、そしてライオ。それ以外は罠カードだ。悪くない手札だけど、融合をサーチ出来るカードが欲しかったところ。でもあの騎兵を倒すだけなら、このカードでも大丈夫!
「僕は【ファーニマル・ライオ】を攻撃表示で召喚」
PON!という爆発の中から、小さな天使の羽を持つライオンのぬいぐるみが飛び出す。
攻1600
「可愛いモンスターなんだなぁ。でも、攻撃力が足りないんだな」
「そうっスね。でも確かあのモンスターの効果は……」
「バトル!【ファーニマル・ライオ】で【デーモンの騎兵】を攻撃!ファニー・ファング!」
「何ぃ?【デーモンの騎兵】の攻撃力は1900だぞ?」
「【ファーニマル・ライオ】は攻撃するとき、攻撃力を500ポイントアップさせる!」
攻1600→2100
これで攻撃力は逆転だ。ファーニマル・ライオの牙は、馬に乗る悪魔を直接狙い、その首を噛み千切る。
「ぐぅぅぅ……」
LP4000→3800
「さらに僕はカードを3枚セット。ターンエンドだよ」
遊陽 LP4000 手札2
モンスター:ファーニマル・ライオ
魔法・罠:セット セット セット
「私のターンだぁ!私はリバースカードオープン!【悪魔の憑代】!この効果により、私はレベル5以上の悪魔族モンスターを召喚するとき、生け贄が不要となるのだぁ!」
「リリース軽減でも肩代わりでもなく、無しに……!?」
「その通りだぁ!私は【デーモンの巨神】を攻撃表示で召喚するぅ!」
地面が揺れる。地鳴りと共に現れるのは、見上げるほどに巨大な悪魔。
攻2400
「さらに私のフィールドに【デーモン】が存在するとき、【デーモンの将星】を特殊召喚できるぅ!」
白く輝く骨の鎧をまとった悪魔が、巨神の足元に現れる。
攻2500
「【デーモンの将星】がこの方法で特殊召喚されたとき、私は自分フィールドの【デーモン】を1体破壊しなければならない。しかし【デーモンの巨神】がカード効果で破壊される場合、代わりにライフを500払うことができるのだぁ!」
LP3800→3300
「れ、レベル6の上級モンスターが2体……!」
「大ピンチなんだなぁ」
「うぉー!負けんなよ!黒野!」
僕のフィールドには下級モンスター。相手フィールドには上級モンスターが2体。かなりの戦力差だ。
「行くぞぉ!【デーモンの将星】で【ファーニマル・ライオ】を攻撃!将雷断!」
デーモンの将星が雷を纏い、ファーニマル・ライオをその爪で引き裂こうと飛び掛かってくる。
「罠カード発動、【びっくり箱】!相手モンスターの攻撃宣言時に2体以上のモンスターがいる場合、攻撃していないモンスター1体を墓地へ送り、そのステータスの高い方だけ攻撃モンスターの攻撃力を下げる!」
将星の目の前に現れたプレゼントボックスは爆発し、将星を驚かせる。将星はひっくり返り、雷を纏った爪は逆に巨神の体を引き裂いた。
絶命した巨神はその場に倒れ、将星を下敷きにする。
攻2500→100
「将星の攻撃力が下がったッス!」
「すげぇ、あの2体のモンスターを同時に無力化したぜ!」
「ぬ、ぬぅ……私はカードを1枚セット、ターンエンドだぁ」
タイタン LP3300 手札2
モンスター:デーモンの将星
魔法・罠:悪魔の憑代 セット
「僕のターン、ドロー。よし、僕は【融合】を発動!手札の【エッジインプ・シザー】と【ファーニマル・ベア】を融合し、融合召喚!全てを切り裂け、戦慄のケダモノ!【デストーイ・シザー・ベアー】!」
切り裂かれたクマのぬいぐるみが、黒い液状の金属に呑まれ姿を変える。
そして現れる、傷と刃物にまみれた悪夢の化身。
攻2200
「バトル。【デストーイ・シザー・ベアー】で【デーモンの将星】を攻撃、モンスターイート!」
「リバースカードオープン!【攻撃の無敵化】だぁ!このターン受ける全ての戦闘ダメージを0にするぅ!」
「それでも、【デーモンの将星】は破壊させて貰うよ!」
シザー・ベアーは両手でデーモンの将星を掴むと、ひと口で飲み込んでしまう。
「【デストーイ・シザー・ベアー】は戦闘破壊したモンスターを攻撃力1000アップの装備魔法として自身に装備できる!」
デーモンの将星を飲み込んだシザー・ベアーは一回り大きく成長する。
攻2200→3200
「【攻撃の無敵化】でダメージを受けないから、これ以上攻撃しても意味ないね。ターンエンドだよ」
遊陽 LP4000 手札0
モンスター:デストーイ・シザー・ベアー ファーニマル・ライオ
魔法・罠:セット セット デーモンの将星
「私のターン、ドローだぁ!見せてやろう、このデッキの切り札を!【悪魔の憑代】によって生け贄を無視し、現れるがいい!【戦慄の凶皇-ジェネシス・デーモン】!」
いっそう暗い霧が立ち込め、その中からデーモンの皇が現れる。ジェネシス・デーモンは赤い血塗れの剣を地面に突き刺すと、玉座に腰掛ける。
攻3000
「攻撃力、3000だって!?」
「大丈夫ッスよアニキ!デストーイ・シザー・ベアーの攻撃力は3200。あのデーモンなんか敵じゃないッス!」
「それはどうかな?」
ジェネシス・デーモンが床に刺した剣を抜き、掲げる。
すると天井に暗雲が現れ、放たれた電撃がデストーイ・シザー・ベアーを破壊した。
「な、何が起こっているんだ?」
「【ジェネシス・デーモン】は1ターンに1度、墓地のデーモンを除外することでフィールドのカードを破壊することができるぅ……私は【デーモンの騎兵】を除外して効果を発動したのだぁ。さらに魔法カード【二重召喚】を発動ぉ!このターン私は2回目の通常召喚を行える。いでよ、【デーモン・ソルジャー】!」
凶皇の前に現れ、跪くのはデーモン界のエリート兵士。
攻1900
「さぁ、バトルだぁ!【デーモン・ソルジャー】で【ファーニマル・ライオ】を攻撃ぃ!」
デーモン・ソルジャーの剣がライオを貫き、破壊する。
LP4000→3800
「くっ……でも、僕は罠カード、【ファーニマル・クレーン】を発動。ライオを手札に戻し、ドロー!」
「ふははは!さぁ、闇のデュエルを恐れるがいい!」
タイタンが黄金のアイテムを掲げる。
「自分の体を良く見るがいい、ダメージを受けた分だけ体が消えていく……これが闇のデュエルだぁ!」
そう言われて自分の体を見てみる。だけど、特におかしな点はない。
だが、
「お、おい黒野!お前体が透けて……」
「こ、このままライフが減っていけば……」
「体が消えてなくなってしまうんだなぁ!?」
3人は恐ろしいものを見るかの様に僕を見る。……なるほどね。
「……君の方がライフが減っているのに、なんで君は無事なの?」
「ふはは!私は闇のデュエルの支配者だぁ!この私が闇の生け贄となるわけが無いだろう!」
「……ふーん」
「随分と余裕だなぁ?【ジェネシス・デーモン】で直接攻撃だぁ!」
ジェネシス・デーモンは気だるげに立ちあがり、僕の体を切り裂く。
「この瞬間、リバースカードオープン!【炸裂装甲】!攻撃してきた相手モンスターを破壊する!」
「させぬわぁ!【悪魔の憑代】は自身を墓地へ送ることで、通常召喚した悪魔族モンスターの破壊を防ぐことができるのだぁ!」
LP3800→800
「くっ……!」
「黒野ぉ!」
「もう、ほとんど体が残ってないッス……」
「も、もうダメなんだなぁ……」
3人の絶望的な声を聞き、タイタンは満足げに笑う。
「次はお前だ遊城十代ぃ!私はこれでターンエンド」
タイタン LP3300 手札0
モンスター:戦慄の凶皇-ジェネシス・デーモン デーモン・ソルジャー
魔法・罠:無し
「僕のターン、ドロー」
……来た。このターンで終わらせてしまおう。この偽りの闇のデュエルを。
「ねぇ、これって本当に闇のデュエルなのかな?」
「そうだと言っているだろう!」
「……僕には、自分の体は消えてるようには見えないんだけど」
「な、何ぃ!?」
「それに闇のデュエルは平等だよ。片方だけがその影響を受けないなんてあり得ない」
「私は闇のデュエルを完全に制御したのだぁ!」
「……ねぇ、遊城君。僕の体はどう消えていってるの?」
遊城君は僕の右腕を指差して答える。
「み、右腕からだんだん上半身が消えていったぜ」
その答えに驚いたのは、僕やタイタンではなく、他の男子2人だ。
「何言ってるんすかアニキ!消えてるのは下半身っすよ!」
「み、右半身なんだなぁ……」
それぞれ僕の体の消え方が違うようだ。
「催眠術か何かかな?薬を混ぜた霧で呼吸をしにくくさせた上で、その闇のアイテムもどきで催眠術をかけ、言葉で誘導して幻覚を見せる」
「ぬ、ぬぅ……」
「っ!じゃあこれは」
「ただのデュエルだよ。雰囲気が違うだけのね」
「チィッ!ばれてしまっては仕方がないなぁ!」
そう言うや否や、タイタンは僕たちの前から逃げ出そうとする。しかし、
「な、何だぁ!?これはぁ!?」
いつのまにか僕達の周囲を、真っ黒な何かが覆っている。
タイタンの使った演出用の霧ではない、闇そのものだ。
「……皆は知ってる?ここはかつて、闇のデュエルの研究が行われていた場所」
「あ、あぁ。そんな話を聞いたことあるぜ」
「つまりここは闇のデュエルにとって聖地とも言える存在なんだ。……そんな場所で闇のデュエルを騙るだなんて、罰当たりな人もいたものだね」
「ま、まさかぁ、これはぁ!?」
「闇のデュエルそのものだよ」
僕らを押し潰すようなプレッシャー。戦え、戦えと何処かから声が聞こえる。
「この闇のデュエルからは逃げられない」
「だ、だが私の方がライフは上!消えるのはお前だぁ!」
「……僕は永続魔法【デストーイ・ファクトリー】を発動。墓地の【融合】を除外して、【デストーイ】と名の付くモンスターを融合召喚できる」
僕の足元に黒い渦が広がる。
「手札の【ファーニマル・ライオ】と【エッジインプ・ソウ】を融合。全てを引き裂け、狂乱のケダモノ!来い!【デストーイ・ホイールソウ・ライオ】!」
エッジインプ・ソウの中にファーニマル・ライオが引きずり込まれる。その体は原型をとどめないほどに崩壊し、僕の周囲に綿が舞う。
エッジインプ・ソウは溶解し綿を全て飲み込むと、その姿を変えた。
血走った目でタイタンを睨み付けるライオンのぬいぐるみ。体は真っ二つに割れている。そして腹に、顔に、タテガミに取り付けられた丸鋸が、その存在を主張するように回転する。
攻2400
「ひ、ひぇぇっ!?」
「こ、怖いんだなぁ……」
「バトル。【デストーイ・ホイールソウ・ライオ】で【デーモン・ソルジャー】を攻撃。ジェノサイド・ソウ!」
ホイールソウ・ライオは爪でデーモン・ソルジャーを貫き捕まえ、自分の腹部で回転する丸鋸に押し付ける。
声にならない叫びを上げながら、デーモン・ソルジャーは肉塊へと変貌し破壊された。
「ぐぬぅ……!」
LP3300→2800
「だが【ジェネシス・デーモン】の攻撃力は3000!【ホイールソウ・ライオ】など相手ではないのだぁ!」
「……そう。攻撃力は3000だよ」
「……な、何をするつもりだぁ?」
「【デストーイ・ホイールソウ・ライオ】は1ターンに1度、相手フィールドに存在するモンスターを破壊し、その攻撃力分のダメージを与える事ができる」
タイタンの顔が青ざめていく。この後何が起こるのかを理解したのだろう。ダラダラと汗が流れ、足元にシミをつくる。
「う、嘘だぁ!た、助けてくれぇ!」
「……深月に手を出しさえしなければ、こんなことにはならなかっただろうにね」
「い、嫌だぁ!し、死にたくないぃ!」
「【ホイールソウ・ライオ】の効果を発動。【ジェネシス・デーモン】を破壊し、その攻撃力分、3000ポイントのダメージを与える!深月に気安く触れた事を後悔して消え去れ!ジェノサイド・ソウ・アドバンス!」
ホイールソウ・ライオのタテガミに付けられた丸鋸が飛ばされ、ジェネシス・デーモンの体を細切れにして行く。その破片はタイタンへと落ちていき、その体を潰す。
「やめろ、やだ、ぬぅわぁぁぁっ!?」
LP2800→0
ソリッドビジョンが消えるが、黒い霧が消えることはない。霧はタイタンの元へ集まり、その体を飲み込んでいく。
「はなせぇ!嫌だぁ!わた、わたしはぁ……」
やがて声が聞こえなくなり、黒い霧が消える頃には、タイタンが立っていた場所に黒いぬいぐるみが落ちていた。
タイタンをそのまま小さくしたようなぬいぐるみだ。
「な、何が起こってるんだよ……」
「彼がここで闇のデュエルを偽ったせいで、本物の闇のデュエルが始まってしまった。それに負けた彼は罰ゲームを受けたんだ」
「ば、罰ゲーム?」
「……闇のゲームの敗者には、罰が与えられる。魂を奪われたり、封印されたり……どうやら今回はぬいぐるみになってしまったようだね」
僕はタイタンのぬいぐるみを拾い上げる。
「そ、それはどうするつもりッスか?」
「……さぁね。深月に軽々しく触れる奴なんか知らないよ」
僕はそのぬいぐるみをその場に投げ捨てる。
こんなものよりも大切なのは深月だ。
「君達は天上院さんを助けに来たんだよね?多分催眠術で眠らされているだけだから大丈夫。助けに行ってあげてよ」
「そ、そうだな。とりあえず、助かったぜ、黒野」
早く深月を助けなければ。そう思って彼女の棺へ向かおうとしたとき、何かが落ちる。
「あれ、何か落としたんだなぁ」
僕の耳から外れたそれを、コアラみたいな男子が拾ってくれた。
「これは、黒野君のものかぁ?」
「あ、うん。ありがとう」
彼が拾ったのは、金色のイヤーカフ。普段は長い髪に隠れて見えないけど、今回の闇のデュエルの衝撃で外れかかっていたのかも知れない。
「随分と派手なアクセサリーッスね」
「自分に似合わないのは分かってるんだけど……恩人から貰ったものだからね」
「恩人って?」
「あぁ、育ての親、とでも言えばいいのかな?」
僕はそのイヤーカフをつけ直すと、棺の中で眠る深月を揺り起こした。
「ん、ぅ……」
「深月、大丈夫?」
「ぁれ、遊陽……?ここは……?」
「廃寮の地下室だよ。怪我はしてない?」
「ん……大丈夫」
まだ寝惚けているのだろう。深月はトロンとした瞳で周囲を見渡している。
「遊陽に助けられちゃったみたいね。……ありがとう」
「どういたしまして。こんなところにいたら風邪引いちゃうし、寮に戻ろうか。立てる?」
「うん」
深月の手を取り立ち上がらせる。向こうでは目を覚ました天上院さんを、遊城君達が嬉しそうに囲んでいた。
僕達は一足先に廃寮を出ていく。PDAで時間を見れば、かなりの深夜だ。丑三つ時とはこの事か。
それを言っても深月を怖がらせてしまうだけなので、僕は明るい話題で深月を元気付けながらオベリスクブルーまで送っていった。
「さーて、ドロップアウトボーイーは?……誰もいないノーネ。……ん?何なノーネあのぬいぐるみーハ。……これはきっとサービスか何かなのーネ?しかしドロップアウトボーイをギャフンと言わせることは出来なかったノーネ……このぬいぐるみは、とりあえず持ち帰っておくノーネ」
「今回の最強カードだよ」
デストーイ・ホイールソウ・ライオ
融合・効果/星7/闇属性/悪魔族/攻2400/守2000
「エッジインプ・ソウ」+「ファーニマル」モンスター
このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。
「デストーイ・ホイールソウ・ライオ」の効果は1ターンに1度しか使用できず、
この効果を発動するターン、このカードは直接攻撃できない。
(1):相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを破壊し、破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。
「相手モンスターを破壊した上で、さらにその攻撃力分のダメージを与える強力なモンスターだよ。効果を発動するターン、ホイールソウ・ライオは直接攻撃できなくなってしまうけど、融合解除で召喚した融合素材モンスターで追撃をかけるのもありだね」
もっと耳にゴールド付けるとかSA!
と言うわけで5話でした。
哀れタイタンさん。ここでリタイア。それにしてもようやく出てきた主人公の扱いがこれでいいのか。
色々突っ込みどころは満載ですが、次回もまた読んで頂けたら嬉しいです。
それではー。