ただ青い春を想う   作:畑の蝸牛

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今回、主演女優の内在テンション数値が高いため、文字含有量が多くなっております。ご注意ください。


BARに探偵は来る

まだ同窓会もしてないから、黒崎君とは本当に卒業ぶりになる。遊ぶ機会はそれなりにあったと思うけど、その度に彼は居なかった。どんな嘘と言い切れないタイプの、性悪な嘘をついて騙してやろうかとか考えてあったのに。それがパーになる度、ハンカチかんで悔しがる演技して来てるメンバーで笑ったっけ。ふざけ七割、ホントに悔しいの三割くらいだった。

そう、過去形だ。

佐藤君から連絡を受けたのが一週間まえ、その連絡から仕込みを速攻で準備し終わったのが五日まえ、で、幼馴染の占いによると、今日。夜七時から九時にかけて。この店に現れるとのこと。

・・・前々から薄々思ってはいたけれど、占いがあまりに具体的でこわい。しかも、めっちゃ当たるのでさらにこわい。「占い師になるの?」って聞いたら苦笑いでごまかされた。え、こわ・・・ってなった。妙に優しくされたら、今日あたり死ぬかもしれないと覚悟しないとかも。自分で考えながらも、それはやだなーって思う。かなり思う。

というか、グラス拭きながら考えごとができるようになってきたあたり、バイトに慣れてきたなと実感する。いくら親戚の店とはいえ、最初はテンぱりまくりのドッジドジだったからね。グラスさえ割らなかったものの、それ以外のドジというドジを働いたからね。四ヶ月前のことだけど、ずいぶん昔な気がしてくる。

カランコロン、お客さんの音。時計を見ると、七時半をちょっと過ぎたころ。これはもしやとお客さんに目をやる。目が合うと、その客は気まずそうに礼をした。そしてキョロキョロあたりを見回した。・・・こういう怪しいやつはたまーに来る。いつもならそれほど気にしない、が。占いが頭にちらつく。もしや、とは思いながらも、自分からは声をかけずにいよう。

その客は、花束を持たせたらプロポーズしにいく人と勘違いされそうな服装をしている。ドレスコードは突破できそうな。でもね、合ってない。なんかズレてる。着こなしとしては問題ないんだろうけど、着る人が合ってない。たぶん着慣れてないんだろう。よく言えば初々しい。靴もどうやら新しいもののようで、これから就活?って聞きたくなってしまう。

しかし、その衝動はこらえなければ・・・この客がほんとうに彼かどうか分かるまでは・・・

拭き終わったグラスをまた拭くことでどうにかポーカーフェイスを保っている。耐えろ・・・耐えろ・・・負けるな花音・・・!

「あの・・・ここに羽田さんって方が働いてるって聞いたんですけど・・・」

うわ〜〜〜ぜんぜん声変わってね〜〜!!超懐かしい。しかも知らん人にはこんなしゃべり方すんの!?マジ!?やばくない!?

と、言いたいのをどうにかこらえる。

「ハタさん?ですか?そんな名前の人は・・・」

「あ、えと、名前じゃなくて名字で!羽に田んぼの田って書いて羽田って読むんですけど!」

あの、あの黒崎が必死、必死ですよ皆さん!しかも探してんのは私!これ当時のメンバーが聞いたらぜっっったい信じないよね!だって「絶対零度より冷たい態度の黒崎」だもん!やばいよ。やばいって!

表情筋は固めたまま、胸を張った。

「・・・・・・・・・」

え、なにこの人、とでも言いたげな顔。ほれほれ、見えないのかいクールガイ。距離を詰める。

「・・・え?」

わけがわからないよ、とハテナマークを浮かべた。カウンター越しではあるが、黒崎の肩に手は届く。掴んだ。

「えあのなんなんですうわっ!?」

気付きそうもないので、背伸びして耳元にささやいた。

「な・ふ・だ」

そして手を離す。

「なっ・・・えっ・・・ええ!?お、おまえじゃん!!!」

「そうです羽田ちゃんことー、花音ちゃんでーす!」

燃え尽きたボクサーよろしく黒崎は目の前の席に座った。

「お、なんかお疲れだねー?」

「誰の、せいだよ・・・」

その額には汗が見えた。ふむ。純情なのは治ってないらしいね。安心。

「ご注文は?」

「・・・・・・おまかせで」

あ、迷ったけど何があるか分かんないし、メニュー見ても分からないから諦めたな?って、やっぱり単純だから思考読みが楽だ。私、相手の考えを読むのが得意なのは自負してるけど、これほどまでに通じるの、黒崎君ぐりなんだよねー。ホント、幼馴染とは真逆だよ・・・。足して割ったらちょうどいいくらいだから足されればいいのに。

とか思いながら、何を飲ませようか考える。・・・・・・・・・なんとかここまで来た、佐藤君に手伝ってもらった、来てるのはドレスコード、あ!舞踏会!じゃあ魔法使いは佐藤君ってことで。

「はい、どうぞ。シンデレラになります」

「お、おう・・・様になってんなぁ」

後半は聞こえないよう言ったつもりかもしれんが聞こえておるぞよ・・・まぁ、悪い気はしないけど。あ、そうそう。渡さなきゃいけないモノがあるんだった。

「こちら、王子からの預かりものになります」

「はぁ?靴なんて落としちゃいねぇぞ?・・・って予告状?」

そう、それは一枚のカードである。なんかすごい宝石持ってる大富豪の家に届きそうなグリーティング・カード。つまり怪盗の予告状だ。かなり洒落てると思う。

「・・・観てんのか?アイツ」

送り主は早々に察しがついたらしい。こんなことするの、あいつだけだもんね・・・よし。私の任務完了。で、こっからが本題。

「さて、卒業後の話を聞かせてよ」

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