生き残った軍人と潜水艦   作:菜音

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産みの親 育ての親 7日目

 

 

 

私が部屋を訪ねると閣下は例の通信端末で電話をしていました。

 

「そうかそうか。わかった、引き続き頼んだぞ。」

 

閣下は通信を終えたようだ。

それを確認した私はいつも通りお茶とお菓子を乗せたお盆を閣下の前に差し出した。

 

「おう?今日の茶は違うな?」

 

「ええ、今日はいつもと違う茶葉を用意しました。」

 

「だろうな。香りが違う。」

 

かすかな匂いだけで気付かれたようだ。

これがこの方の凄い所で怖いところですよ。

 

 

閣下のわずかな情報や痕跡だけでみやぶれるこの能力こそが彼が陸軍の長である所以の1つである。

 

 

 

「それで閣下、先程の連絡は雪村大佐ですか?」

 

「そうだ。なんでもマリアナの過激派勢力との交渉に成功したらしいぞ。」

 

「あの強硬派の港湾夏姫とですか?!」

 

閣下があの時雪村大佐にこの件を依頼した時はどうなるやと思ったが、どうやら閣下の見立ては間違ってなかったようだ。

 

「航海権のみならず周辺海域のはぐれの掃討も取り付けたそうだ。」

 

「しかし、どうやってそんな取引を?」

 

つまりこちら側が支払う対価は‥‥

 

「月にラノベ数冊で手を打ったそうだ。」

 

「な、なんと!?」

 

それから閣下から交渉の詳細を話した。

 

「この本は私のポケットマネーで買わせてもらう。」

 

「お言葉ですが、取引の品であれば経費で落ちますが?流石に毎月買うのは閣下の財布に響くのでは?」

 

「バカモン。内密にやらねばならぬのに経費で買えば記録が残るだろうが。それに我が国の人命と国益を本数冊の金で買えるのであれば安いもんだ。」

 

これでひとまずこの件は安心できると判断できる。

閣下はあるチラシを見た。一仕事終わったら行くつもりだったようだ。

 

しかし、それは叶わなそうだ。

 

 

「閣下‥‥」

 

「それよりお前、あの件で何か進展は?」

 

ああ、どうやら勘づいてたようだ。

名残惜しそうにチラシを置く。

 

「はい、閣下の影達からの報告があがって来てます。」

 

「‥‥聞こうか。」

 

 

 

 

部下からの報告を聞いた濱崎は部下を下がらせるとある人物に電話を入れた。

 

 

その人物は数回で出た。

 

「もしもし、桜田か?」

 

『おお!濱崎君か。待ってたぞ。』

 

 

電話の相手は桜田。

 

国防海軍の元帥であり、日本国防軍のトップである。

そして、濱崎大将の親友でもある。

 

 

「郡体との交渉の件だが、なんとか上手くいったぞ。」

 

『ほほう、そうかそれはなりよりだ。内容を聞いても?』

 

濱崎は詳しい内容を伝えた。

 

『ふむ、そうか。この内容は政府には知らせない方が良いな。』

 

「俺もそう思った。」

 

だから経費を使う事を拒んだのだ。

 

もしこの内容を知れば政府の官僚どもはこれを材料にして何か取引を求めるかもしれない。

 

深海棲艦の侵略で世界中のほとんどの国が被害を受けており、そのせいで行政が崩壊していたり、内部分裂や紛争が起きている国などは珍しくもない。

 

逆に日本は珍しいケースで、深海棲艦の攻撃にさらされながらも国が割れたり混乱が起きたりはしなかったのだ。

 

それも政府の官僚達による見えない努力の賜物であり、日本が1つにまとまっていられたのも彼等の功績あってこそだ。なので別に彼等の能力を疑うわけではない。

 

しかし、彼等は深海棲艦を知らない。

何も分かってないのだ。

 

それな彼等が交渉でもして何かを切っ掛けに深海側を怒らせでもすればすべては水の泡、他国の二の舞になる。

 

『この案件は信頼できる者のみで行わなければならない。』

 

「分かっているさ。」

 

これが政府に伝えない第2の理由でもある。

この件は軍としては扱わない。自分と自分の直属のみでやるつもりだ。

 

一見独断専行に見えるが政府は勿論のこと、軍にも信用できない状況なのだから仕方がない。

 

 

「それでだが、丁度奴等についての報告が来たぞ。」

 

『そうか‥‥』

 

「どうやら残党がまだいるようだ。」

 

『彼女達もこの戦争の被害者なんだがなぁ。』

 

「アイツらにしてみればまだ戦争は終わってないんだろうな。詳しいことは後で送る。」

 

『ふむぅ‥‥また何か進展があれば教えて欲しいのう。』

 

「わかった。しかし、ここからは‥‥」

 

『分かっとる。何が欲しい?』

 

濱崎は先程のチラシを見た。

 

「今度東京の店で出る新作のケーキ。」

 

『分かった。いくつだ?』

 

「ホールで頼む。」

 

『‥‥食べ過ぎだぞ?』

 

「その分苦労して働いてる。」

 

『それは‥‥すまんね。後日届けさせる。』

 

「期待してるぞ。」

 

 

ここで二人の会話は終わった。

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

軍人さんこと雪村大佐達は目的の島にたどり着いた。

 

 

深海棲艦の施設があると言うのに誰とも会わなかったのだ。逆に恐ろしいとさえ思えてしまう。

 

 

しかし、島の周囲には砲台やPTボートがかなりの数配備されており、飛行場には恐ろしいほど数の機体が並んでいた。

 

後で聞いたが、ここは元々秘匿された基地だからそんなに目立つ警備体制を取ってないそうです。

 

 

ここでもルリさんのおかげで荒事にはならなかった。

 

しかし、ここの責任者に会わせてと頼むと渋られたが聖夏さんの一筆のおかげで会わせて貰える事になりました。聖夏さん、ありがとうございます♪

 

 

 

「お前が雪村大佐か?」

 

「はい、私が雪村です。あなたが集積地棲姫さんですか?」

 

「そうだ。まずは掛けよう。」

 

集積地棲姫のすすめで私達は彼女に案内され、会議室のような場所にやってきた。

 

「さて、これによると私に何か聞きたい事があるとか?」

 

集積地棲姫が聖夏の一筆を示す。

 

 

「はい!実はマシロ、潜水新棲姫を探しています。」

 

「潜水新棲姫?あれは量産されていてかなりの数がいるぞ?」

 

「いえ、彼女達が製造される前にいた最初の子です。」

 

「最初の子‥‥ひょっとして、あの子のことか‥‥」

 

どうやら心当たりがあるようです。

 

私は彼女に、潜水新棲姫、マシロの事を聞いた。

彼女がここに来た事、そしてどこにいるのかを。

 

 

 

「あの子の事か‥‥。話しても良いがお前はあの子の事をどこまで知っている?」

 

「あの子の事を?」

 

もちろん知っていますとも!なんせ何年も一緒にいたのだから。

 

「いや、私が言いたいのは‥‥まぁいいか。話す前にお前には教えておこうか。そのマシロって子、潜水新棲姫がどのように生まれたのか、そして彼女がここに来た理由を。」

 

 

集積地棲姫は軍人達に話したのはマシロが話さなかった彼女の誕生に至る話、そしてどうしてあの島に流れ着いたかだった。

 

 

彼女はここで研究されていた潜水艦の姫、潜水棲姫の製造を行う過程でここが攻撃にあい施設に被害が出て、その時に彼女は巻き込まれてしまったのだ。

 

成長途中で生まれてしまい、気が付いたら海に流され生死をさまよったのだ。その苦しみは私には想像ができなかった。

 

彼女は艦隊に戻った後、自分でここにやってきた。

当然集積地棲姫は驚いた。死んだと思った実験体が独自に進化して戻ってきたのだ。

 

 

彼女はずっと自分のルーツを知りたがっていたようでわずかな手掛かりでここを見つけたそうです。

 

「あの子が自分のルーツを知りたがっていたなんて知らなかった‥‥」

 

「そうなのか?とりあえず続きを聞いてくれ。」

 

幼いながら彼女は力が強く、もし彼女のデータを基に生産ができればコストは潜水棲姫の何分の一で済み、量産の姫を作る彼女の夢も夢ではなかった。

 

それに気付いたマシロは集積地棲姫に取引を提案した。

 

 

自分のデータを取らせる代わりに欲しい情報を教えて欲しいだそうだ。

 

集積地棲姫はこの小さな姫が生意気にもこっちの足元を見て提案した事にムッとしたが、悪くない条件なので飲んだのだ。

 

「その情報とは?」

 

「主に2つだな。完全体の潜水棲姫の居場所と、潜水棲姫の建造を依頼した姫についてだ。」

 

「潜水棲姫とその依頼主?」

 

「多分だが、あの子は自分が本来生まれていた姿やその訳を知りたかったんじゃあないか?」

 

「そんなに思い詰めていたと言いたいのですか?」

 

「いや、お前の話では何かあったから帰って来ないと言っていたが、本当は自らの意思でやりたい事があるから帰らないんじゃないかと思ってね。」

 

マシロが何よりも優先したいやりたい事‥‥

 

「つまり、探しに行くのは止めないが、彼女の意思を尊重してやって欲しいのさ。」

 

「あなたは‥‥」

 

「まぁーそのーなんだ‥‥」

 

集積地棲姫が少しばつの悪そうにしている。

 

「一応その、産みの親だからな‥‥」

 

なんだかんだあっても自分の作った子には愛着はあるのだ。

 

「そうですね。」

 

この人も私と同じくあの子の事を大切に思ってくれてるのだろう。

 

「ふふふ。」

 

「ハハハ。」

 

「うーん、姫様はマシロちゃんのお母さんなの?」

 

今まで黙っていたカナが口を開いた。

 

「みたいなものだな。」

 

「う~ん、ならマシロちゃんのお母さんなら私達のお母さんでもあるの?」

 

「ぶっ!か、カナ先輩何を!?」

 

「だってマシロちゃんは私の妹だし。」

 

「えっ?!姫様が妹なんですか!流石はカナ先輩、じゃあなくてですね!あの方はマシロさんのお母さんであって」

 

「エッ?マスターはお母さんじゃあないの?私達のお母さんじゃあないの?」

 

「いやいや、一旦マシロさんと先輩が姉妹である事は忘れて下さい!」

 

「そんな!マシロちゃんと縁を切れと?!そ、そんな‥‥」

 

「だからですね‥‥あーもう!」

 

ヨウはカナ翻弄されていた。

 

 

「‥‥ほっといていいのか?」

 

「いいんだよルリさん。」

 

見ていて和むから。もうしばらく見てたい。

 

 

 

「ふん、人間が深海棲艦の、しかも潜水艦の親と聞いた時に疑ったけどそのようだと大丈夫そうね。」

 

「集積地さん。」

 

「潜水新棲艦の事、よろしくお願い。」

 

「もちろんです。」

 

「じゃあ話を聞いてくれたから約束通りに、あの子は今はここにいると思う。」

 

集積地棲姫が地図に示した場所

 

 

「ここは‥‥」

 

ここにマシロがいるかもしれない。

 

そんな期待に胸を踊らせ大佐だった。

 

 

 

 

 

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